ガルパン日和   作:アセルヤバイジャン

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おちゃけはほどほどに(´・ω・`)










サンダース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「かんぱーい!」」」

 

港に程近い高架下で、楽しそうな女性達の声が響く。

 

戦車を象った屋台で、戦車道審判団のジャケットを着た3人組が、お酒の入ったグラスを勢いよく口にする。

 

「いい仕事した後はやっぱりこれよねー!」

 

「今日も良いジャッジしたもんねぇ」

 

「そんな事言いながらアンタ達仕事中に今夜何食べるかを手旗信号でやり取りしてたでしょ、真面目に仕事しなさいよね」

 

髪型をポニーテルにした高島レミ、副審を担当している彼女はお酒の美味しさをしみじみ感じながら笑う。

 

それに答えながらおでんを頬張るのは同じく副審の稲富ひびき、セミロングの髪型をした女性である。

 

今日も良い仕事をしたと感想を漏らす2人に、主審であり3人の纏め役でもある眼鏡にショートヘアーの篠川香音が今日の試合中の事を持ち出して注意する。

 

3人は日本戦車道連盟に所属するプロの審判、戦車道の試合や大会で対戦を安全かつ公正に執り行う重要な仕事をしているプロフェッショナルである。

 

そんな彼女達は、本日行われた練習試合の審判を務め、この屋台で一杯やっていた。

 

しばらくあれこれ言い合いながらお酒を楽しみ、3杯目を頼んだ辺りで香音が深くため息をついた。

 

「出逢いが無い…」

 

「「ぶはっ」」

 

深刻そうな声色で呟いた言葉にレミとひびきがお酒を吹く。

 

「またそれぶっこむ…?」

 

「この前もそれ言ってたよね」

 

レミが口を拭いながら苦笑いし、ひびきが香音の肩を叩きながら笑う。

 

どこぞの大学選抜同様の悩み、特に彼女達は既に社会人、仕事場は女性ばかりの戦車道連盟。

 

一応男性も居るには居るが、理事長のような中年の男性や既婚者ばかり。

 

仕事先である戦車道の試合の審判も、彼女達は高校戦車道が担当なので出逢いが無い。

 

あったとしても、顧問の先生とかそういう限られた人であり、大抵が既婚者だ。

 

戦車道に深く理解のある男性というのは貴重だ、それ故直ぐに取り合いになり上手くやった者だけが勝者になる。

 

ではそのチャンスすら無い女性はどうなるか。

 

「戦車道やっててもモテませーん!一部の女子にしか人気がありませーん!」

 

「落ち着こう香音!ほら飲んで飲んで!」

 

「おじちゃんお酒追加!」

 

こうなる。

 

それもこれも戦車道という競技そのものが日本で低迷しつつあるからだ。

 

その為、戦車道連盟も文科省も2年後の世界大会の誘致、その為のプロリーグ開設に力を入れている。

 

戦車道が盛り返せば、戦車道選手や関係者への理解も深まり、彼女達の深刻な悩みも解決出来るだろうと理事長は考えている。

 

「毎日真面目に仕事して、清く正しく慎ましく生きてるんだから、出逢い位あってもいいじゃない!!」

 

「そーだそーだ!ぎぶみー出逢い!」

 

「ひびきまで…まぁ私も出逢いが欲しいけど…」

 

良い感じにお酒が回ってきた3人。

 

屋台のおじさんはどこも女性は大変だなぁと苦笑しつつおでんを仕込むのだった。

 

そんな屋台を見つけ、コツコツと靴を鳴らしてやってくる人影が1つ。

 

「すみません、食事だけでも良いですか?」

 

「へい、どうぞどうぞ!」

 

暖簾を上げて、食事だけでも良いかと確認を取る若い青年。

 

一度聞けば忘れられない甘いイケメンボイスに、ピタリと笑い声が止まる3人。

 

「ふぅ………ん?」

 

屋台のおじさんに迎え入れられた青年は安堵しつつ椅子に座り、自分に向けられた視線に気付いて顔を向けた。

 

「おや……審判団の皆さん…?」

 

「「「(出逢いきたーーーーーーーーーー!?)」」」

 

青年の顔を見て、内心でシンクロした言葉を叫ぶ3人。

 

そこに居たのは、彼女達もよく知る人物…長野叢真だった。

 

「お久しぶりですね、こんな所で会うなんて…今日はお仕事ですか?」

 

「は、はひ!」

 

「と言うか、私達の事覚えてて…?」

 

微笑みながら問い掛けてくる叢真に、思わず声が裏返るレミと、自分を指さしながら聞き返すひびき。

 

「勿論ですよ、皆さんにはお世話になってますからね。忘れる訳がありません」

 

「「はぅっ!」」

 

耳に心地よいイケメンボイスで、非常に嬉しいことを告げる叢真に、胸を抑えて仰け反るレミとひびき。

 

「あ、おじさん、おでんを適当に。あとお茶ありますか」

 

「へい、烏龍茶と緑茶がありますが」

 

「では烏龍茶で」

 

美味しそうなおでんをお任せで注文し、お酒は飲めないのでお茶を頼む叢真。

 

「(ど、どうしよう!まさか長野くんとこんな所で会うなんて…!)」

 

「(私ちゃんと化粧してるよね!?髪型変じゃないよね!?)」

 

あわあわと慌てるレミと、身嗜みを確認するひびき。

 

色気もなにもあったもんじゃない審判団のジャケット姿なのを見て、終わった…と頭の上に白旗が上がるひびき。

 

「(不味いわ…審判と戦車道関係者が仲良く食事だなんて姿を見られたら、スキャンダルになる…!)」

 

「(えぇ…?だ、大丈夫よ食事位なら…)」

 

「(何言ってるの、相手は長野君よ!?戦車道でアイドル級の人気を誇る子よ!?何処にファンの目があるか分かったもんじゃないのよ…!?)」

 

「(それは、そうだけど…ここで席を立つのは失礼だし、かと言って長野くんを追い返すのはもっと可哀想だし…!)」

 

内緒話をしながらチラリと叢真の方を伺う3人。

 

当の本人は、屋台のおじさんに選んでもらったおでんを美味しそうに頬張っていた。

 

「(あ^~、美味しそうに食べてるんじゃ^~…)」

 

「(食べてるのおでんなのに絵になるぅ~…)」

 

「(アンタ達ね……)こほん、長野君、どうしてこんな所に?もう遅い時間だし、帰りは大丈夫なの?」

 

レミとひびきが役に立たないと見切りをつけ、咳払いを1つして叢真に問い掛ける。

 

問われた叢真は口にしていたちくわをもぐもぐと食べて飲み込むと、口を開いた。

 

「連盟と戦車道履修学校からのお願いで学園艦巡りをしてまして…今日はそこのビジネスホテルに泊まって明日飛行機で次の学園艦へ向かう予定なんです」

 

飲食店が時間で閉まってて、ここが駄目だったらコンビニご飯でしたよと苦笑する叢真。

 

そう、聖グロリアーナから逃げ出し、この土地に辿り着いた叢真。

 

次の学園艦に行くには明日のフライトの飛行機に乗るしかないので、本日はこの街で一泊する事になった。

 

着替えを聖グロリアーナに置いてきてしまったので、量販店で適当に衣服を購入し、制服から着替えて夕飯を求めて街に出た叢真。

 

だがホテルにチェックインする時間が遅かったので、飲食店は軒並み営業時間が終わっていた。

 

遅くまでやっているチェーン店などは見当たらず、最悪コンビニで夕食かと思っていたら美味しそうなおでんの香りがする戦車屋台を発見。

 

未成年なので入店を断られるかなと思いながら入ってみたら、屋台のおじさんは気にせず迎え入れてくれた。

 

「そうなの…」

 

事情を聞いた香音は、大人として、そして戦車道連盟の審判として、まだ子供である叢真を帰す事を考えていたが、夕飯を求めて彷徨っていた彼を追い返すのは気が引けた。

 

かと言ってこのまま仲良く同席する事は出来ない、これがただの学生なら問題なかったが、彼は大洗の監督役だ。

 

無名校でありながら電撃的に全国大会へ出場、優勝を勝ち取った話題校。

 

そんな学校の戦車道関係者と審判団が食事。

 

わかり易い程のスキャンダルのネタである。

 

しかも場所が屋台のおでん、叢真の未成年飲酒ネタまで付いて来てしまう。

 

ここは大人として自分達が去ろう、そう考えて立ち上がろうとした香音の両手が掴まれた。

 

「………(フルフル」

 

「………(フルフル」

 

何かと思えば、両隣のレミとひびきが、涙目で自分の腕を掴んで首を振っていた。

 

まるで拾ってきた子犬を返してきなさいと言われて、親に縋り付く子供のようである。

 

「(あ、アンタ達ね…分かってんの、これは長野君のためであって…!)」

 

「(でも勿体無いよ…折角の出逢いだよ…!?)」

 

「(ここで去ったら長野くんが逆に可哀想だよ香音、ちょっとだけ、ちょっとだけだから…!)」

 

出逢いが無い事に悩む戦車道乙女の、悲痛な叫びだった。

 

乙女と言っていい年齢なのかは問わない事とする。

 

「どうかしましたか…?篠川さん」

 

「い、いえ、ちょっと…え、私の名前…」

 

「はい、篠川香音さん、高島レミさん、稲富ひびきさんですよね、練習試合の時からずっと審判を務めてもらってたので、ちゃんと覚えてますよ」

 

そう言っていつもありがとうございますと頭を下げる叢真。

 

自分達の事なんてただの連盟から派遣された審判としか見てくれていない、そう思っていた3人が思わず赤くなる。

 

「(どうしようどうしようっ、反則だよルール違反だよ大会規定違反だよあんなの!)」

 

「(イケメンでアイドルでその上良い子とかもうなんなの、なんなのこの、なんなの!)」

 

「(神様ありがとう!真面目に審判の仕事してきてよかったぁ!)」

 

いやんいやんと頭を振ってポニーテールが大暴れなレミ、赤くなった顔を隠すように両手で顔を抑える香音、神に感謝してしまうひびき。

 

突然の3人の奇行に、首を傾げつつ切り分けた味の染みた大根を頬張る叢真。

 

自分が誘い受けをしている自覚がないどうしょうもない男である。

 

これでいざ相手が釣れると逃げるヘタレである、釣られた相手が可哀想になる。

 

とは言え叢真としては、本当にお世話になっている人、と言う認識でしかない。

 

大洗戦車道が始動した時からの審判であり、全国大会も毎回お世話になった。

 

そして全国大会決勝で、大洗が勝利した時に泣いて喜んでくれた人達だ。

 

本人たちは隠そうと必死だったが、叢真は確り見ていた。

 

特定のチームに情が移るのは公平性を旨とする審判として本当は良くないのだろうが、大洗の優勝を泣いて喜んでくれた人達だ、悪い人の筈がない。

 

そんな考えなので、大洗の戦車道履修者達と同じ様な無防備な態度でいる叢真。

 

「(もういいよね、一応ちゃんと距離を取ろうとしたし!決まり守ろうとしたし!)」

 

「(お酒が…お酒と長野君のフェロモンが悪いのよ…、出逢いが無いのが全部悪いのよ…!)」

 

「(清い交際なら、清い交際ならセーフ!圧倒的セーフ…!)」

 

当然アウトである。

 

お忘れの方は居ないとは思うが、長野叢真、まだ高校2年生の未成年である。

 

対して審判団のお姉さん、年齢はあえて言わないが歴とした社会人である。

 

圧倒的アウトである。

 

だが、出逢いの無さと極上過ぎる素材(叢真)が自分からまな板の上に乗ってきて「……いいよ」と両手を開いている、そんな風に見えるのだ、3人には、これはもう美味しく料理するしかないと意気込む3人。

 

普通ならこんな事にはならない、だが彼女達は叢真が来る前からお酒で出来上がっていたのだ。

 

思考が鈍り、善悪の判断のハードルが下がる下がる。

 

結果は、肉食獣お姉さまの降臨である。

 

「長野く~ん、この玉子も美味しいよ、ほらほらお姉さんがあ~んしてあげる…♪」

 

「え、いや、あの…」

 

素早く自分の皿を持って叢真の左隣へと移動し、半分に切った卵を口に運ぼうとするひびき。

 

「お酒…はダメだから、お茶だよね、おじちゃん烏龍茶お代わり!」

 

「あの、まだ残ってますから…」

 

レミがずずいと身体を寄せておじさんにお茶のお代わりを頼む、まだ半分近く残っているので戸惑う叢真。

 

「ここで会ったのも何かの縁、お姉さん達が奢ってあげるから楽しく飲んで食べましょう、ね!」

 

そして叢真の後ろに移動して肩を掴んで揉む香音。

 

審判団包囲、逃さないという気持ちが溢れ出る姿である。

 

それを見ながら、未成年者うんぬんの事案かなぁと思いながら携帯に手を伸ばすおじさん、常識的な対応である。

 

お酒のせいでピンチな3人と、肉食獣に狙われてピンチな叢真だが、本当の危険は後ろから迫っていた。

 

「大丈夫、遅くなってもお姉さん達が送っていってあげるから…!」

 

「なんなら明日の学園艦行きも送ってあげようか?私明日休みなのよ~」

 

「あ、ずるい!私も明日暇だから付き添ってあげ―――」

 

「おじさ~ん、お酒追加で!」

 

「「「ヒェッ!?」」」

 

「ちょ、蝶野教官…?」

 

スリスリと叢真に擦り寄る3人、そんな3人の、レミの右肩に手、ひびきの左肩にも手、そして香音の顔の横に、ぬっと現れるのは、蝶野亜美教官。

 

大雑把で豪快な女傑だが、決まりや礼節には厳しい人である。

 

そんな人の前で、現役高校生を口説こうとしている仮にも決まりを守る審判の仕事をしている3人。

 

レミとひびきが慌てて逃げ出そうとするが、蝶野教官の手がガッシリとジャケットを掴んで離さない。

 

香音は自分達がこの後どうなるか予想が出来たので真っ白になっている。

 

「えーと…どうしたんですか…?」

 

逃げようとしてもがくレミとひびき、自分の肩に手を置いたままカタカタと震えている香音。

 

そんな3人の姿に困惑する叢真。

 

自分が捕食されそうになっていた事に気付いていない、そんなだから歴女チームから怒られるのである。

 

「安心して長野君、私が居るから何の問題もないわ」

 

レミとひびきを猫のように片手で持ち上げて笑う蝶野教官、凄い腕力である。

 

蝶野教官は戦車道連盟の役員だが、大洗の特別講師でもある。

 

なので彼女が居れば講師と生徒が食事しているだけになる、審判団3人は同席しただけ、違法性はない、いいね?

 

「さ、お酒はダメだけど乾杯しましょ、かんぱ~い!」

 

「か、乾杯…あの、大丈夫ですか皆さん…」

 

「「「オワタ…オワタ…」」」

 

お酒片手にハイテンションな蝶野教官と、絶望する3人。

 

叢真が心配するが、焼け石に水である。

 

そんな様子を見ながら、屋台のおじさんは罪深き叢真におでんを出すのであった。

 

肉食獣も、怪獣には勝てないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

全部出逢いが無いのが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンダースの場合

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずここの空港は豪華だな…」

 

飛行機のタラップから滑走路に降り立った俺の視界一面に映る、サンダース大付属の学園艦。

 

大洗の飛行場なんて田舎の滑走路並に小さくて1個しか滑走路がないのに、サンダースのは3個もある。

 

まぁ、スーパーギャラクシーなんて超巨大輸送機を所有してる学校だからなぁ。

 

その上生徒の私物であるセスナや大戦時の複葉機もあるのだ、そりゃ空港も豪華になる。

 

滑走路を歩いていると、車のクラクションが聞こえた。

 

視線を向けると、滑走路内に車が入ってきた。

 

オープンカーの助手席には、立って両手を振るケイさんの姿。

 

となると運転してるのはナオミさんか…。

 

「ハーイダーリン!久しぶり!」

 

「おっとと…お久しぶりですケイさん」

 

止まった車からケイさんがジャンプして抱きついてくるのを両手を広げてキャッチする。

 

相変わらずオープンな性格である。

 

「…………?」

 

「どうしました?」

 

俺の腕の中で不思議そうに俺を見上げるケイさん、はてどうしたのだろうか。

 

「うぅん…なんでもないわ。それよりよく来てくれたわね!最近は何度パーティーのお誘いをしても来てくれなかったのに!」

 

「あはは…まぁ、サンダースには大洗の応援とかでお世話になりましたからね」

 

一回戦で負けてから、その後の試合は全部応援に来てくれたケイさん達。

 

決勝戦ではみほちゃんの応援に来てくれて、間違いなく大洗の後押しになってくれた。

 

その御礼も兼ねての訪問である。

 

「相変わらず義理堅いわねーダーリンは。さ、乗って乗って!もう歓迎パーティーの準備は済んでるのよ」

 

「あの、あんまり派手なパーティーは勘弁して下さいね…」

 

ケイさんに背中を押されながら車に乗り込む、運転はやはりナオミさんだった。

 

「久しぶり、長野さん」

 

「えぇ、お久しぶりですナオミさん」

 

相変わらずガムを噛んでいる、砲手として集中力を高める為の大切なルーティーンなのだろう。

 

車は滑走路を横切りそのまま空港の外へ。

 

大洗とは違う、アメリカっぽい街並みを眺めていると、車が学校ではなく住宅地へ向かっている事に気付いた。

 

「ケイさん、学校へ行くんじゃ…?」

 

「アハハ、折角ダーリンが来てくれたのに学校で歓迎パーティーじゃ味気ないでしょ?」

 

そう言って豪快に笑うケイさん。

 

いや、俺一応戦車道の授業の一環で訪れてるんですけど…。

 

車が辿り着いたのは、庭にプールのある豪華な一軒家が並ぶ地区。

 

信じられるか?これ…全部学生寮なんだぜ…?

 

ルームシェアして暮らしてる生徒が大半だが、中には1人でこの一軒家に暮らしてる生徒も居る程だ。

 

リッチってレベルじゃないな。

 

ブルジョワだブルジョワ。

 

車が止まったのは、白い壁が眩しい一軒家。

 

何度か訪れたことがある、ここはケイさんの家だ。

 

「さ、行きましょうダーリン、皆待ってるわよ!」

 

「荷物持つよ。…これだけ?少な過ぎないかい?」

 

ケイさんに腕を組まれ、持ってきた手荷物はナオミさんが持っていってしまう。

 

少ないのは昨日急遽買った私服だからだ、鞄を買うのもアレだったのでお店の袋に入れてある。

 

門を通ると広い庭とプールがあり、そこにバーベキューセットや飲み物が置かれたテーブル、バルーンやクラッカーなどのパーティーグッズがあちこちに置いてある。

 

そして、私服姿で寛いでいる生徒達。

 

サンダースの戦車道の選手達だ。

 

「みんなー、ダーリンが来たわよ!」

 

ケイさんの言葉に反応して、口笛や歓声が響く。

 

相変わらず開放的な生徒が多いなぁ…。

 

しかし…ちょっと…と言うかかなり、目に困る格好の生徒が多いんだが…。

 

ラフと言うレベルじゃない、上半身が水着の子とか、完全に水着の子とか、下着なんじゃないかと思うような服装の子とか、ちょっと、いやかなり刺激が強い。

 

そんな所まで開放的じゃなくても良いんじゃないですかねサンダースの皆さん。

 

「んー、ダーリンだけ制服じゃ良くないわね、アリサ!」

 

「イエス・マム!用意してあります」

 

パーティー会場でせっせと準備していたアリサさんにケイさんが声を掛けると、敬礼して答える。

 

アリサさんに案内されて家の中へ入り、2階の部屋へ。

 

「この部屋で着替えて下さい、衣装は用意してありますから」

 

「あ、はい…」

 

なんか着替える流れになっているが、確かにあのパーティー会場で制服姿は浮くし…。

 

客室と思われる部屋に通される、学生の一人暮らしになら十分な広さの部屋だが、信じられない事にこの広さでも狭いらしい。

 

本当に色々とアメリカサイズだよな。

 

「………って、これに着替えるのか…?」

 

ベッドの上に広げられてあった衣服を手に取る。

 

えぇ……に、似合うかなこれ…。

 

俺が普段着ている服と180度方向性が違う…。

 

いやでも折角用意してくれたんだし…。

 

もそもそと着替え、部屋の姿見で自分の姿を見る。

 

派手な半袖Yシャツみたいなのに、明るい色のハーフパンツ。

 

おまけにテンガロンハット。

 

サングラスもある。

 

「………靴下脱ぐか」

 

致命的に靴下が似合わない。

 

改めて姿見を見る。

 

………に、似合わない気がする…。

 

夏場の寝巻きより露出が多い。

 

胸元とか腹筋とかチラ見えだし。

 

元々俺は肌を晒す姿が得意じゃない、夏場も長袖のシャツを着ているくらいだ。

 

まぁ元を辿れば祖父とのキャンプ訓練で、肌を晒していると小枝や小石で怪我をするから、自然と肌を守る格好が癖になったのだが。

 

その為、無性に恥ずかしい。

 

特にハーフパンツ、ハーフパンツなんて中学の体操着以来だぞ…。

 

「おーい、ケイさん…本当にこの格好じゃないとダメですか…?」

 

部屋を出て階段を降り、キッチンで何かを取り出しているケイさんに声を掛ける。

 

「ワオ!似合ってるわよダーリン、ダーリンの薄着姿なんて凄く貴重ね、みんなに見てもらいましょ!」

 

「え、ちょ、押さないで…!」

 

ケイさんにグイグイ押されて庭へ。

 

「みんなー、ちゅうもーく!」

 

ケイさんの大声、戦車道をやっているだけあって物凄い声量だ。

 

庭に居た参加者全員が振り向く、そして俺の姿を見るとワァオ!と声を上げる。

 

いやぁぁぁぁ、見ないでぇぇぇぇ…!

 

「ほらほらダーリン、そんな恥ずかしがらないで堂々として!綺麗な肌と腹筋してるじゃない!ワァオ、グレイトなシックスパック…!」

 

「ちょ、やめ、擽ったい…!」

 

シャツの隙間から見える腹筋を触られる。

 

こそばゆい…!

 

「長野さん写真いいですか!」

 

「長野さんこっち向いて―!」

 

「スマイルスマイルー!」

 

聞きながら撮るんじゃないよ!

 

ちょ、なんで俺の生足なんて何でそんな熱心に撮るの!?

 

「さ、主役も来たしパーティーを始めるわよ―!」

 

『イエー!』

 

ケイさんの言葉に片手を振り上げて叫ぶ選手達。

 

この辺りのノリはアンツィオにも通じる。

 

バーベキューセットで大量の肉が焼かれ、パーティー料理が選手達の口に運ばれていく。

 

もう何度目かわからないが…本当に野菜が少ないなサンダース。

 

でもこれでもマシになった方だ、アリサさんが来る前のサンダースは肉一色である。

 

サンダースとの縁は例の試合のしばらく後。

 

俺の頭が冷えた辺りで、招待状が届いた。

 

今更何の用だろうと思いつつ、一応顔を出したら、戦車道選手達から盛大な歓迎を受けた。

 

当時の隊長に理由を聞いたら、指揮をしたOGの支配から開放してくれた英雄だからと言われた。

 

聖グロと違い、OGにあれこれ言われる事の無いサンダースだったのだが、1人のOGがサンダース大学を卒業した事で悪夢が始まった。

 

そのOGがサンダース大学の理事の娘で、その立場を使って好き勝手していたらしい。

 

OGだからと後輩を無闇に扱き、その有様は汚いハートマン軍曹と言われる程。

 

戦車道は戦争ではない、武道である。

 

その為、そのOGへは反発が大きかったのだが、母体である大学の理事の娘という立場とOGという立場からサンダースの戦車道を自分勝手にしようとした。

 

あまりの酷さに戦車道の履修者が減ってしまう程。

 

だがそんなOGを、俺がトラウマになる程に追い詰めて敗北に追い込み、その上娘がやった事をマスコミが根掘り葉掘り掘り起こし、その手は父親である理事にまで及び、癒着や汚職の証拠が出てきたために理事の職を追われ、OGは二度とサンダースに足を踏み入れる事が出来なくなった。

 

OGの支配から開放されたサンダースは履修者も戻り、平穏が戻った事で俺に感謝し、招待してくれたのが事の真相。

 

とは言え、俺が磨り潰した為に軽くトラウマになっている生徒も多く、俺が本格的にサンダースと関わったのはその主要メンバーだった3年生が卒業してからだが。

 

試合に出なかった2年生や1年生には非常に感謝されていた。

 

この辺りは聖グロでも同じだが。

 

そしてケイさんが入学し、俺と出会った。

 

そのフランクな性格と聡明な頭脳で1年生にして頭角を表していたケイさんは、あっと言う間に1年生のリーダーに昇格。

 

サンダースでの俺の世話役に抜擢された。

 

ダーリン呼びはこの時からである。

 

ケイさんのそのオープンな性格と人の良さからすっかり心を許した俺は、色々と意見を交わしたりアドバイスしたりと友好的な関係を築いてきた。

 

年下と言う事もあり、弟のように俺の事を可愛がってくれたケイさんに、俺は頭が上がらない。

 

ダージリンとは友好的な同盟、アンチョビとは友人と言った関係を築いたが、ケイさんとは姉と弟が1番似合うだろうと思っている。

 

カチューシャとは……兄と妹…かな。

 

言ったら粛清されるけど。

 

そんな関係を続けていたが、俺がストーカーに襲われ、戦車道を離れる時も、ケイさんは今はゆっくり休んでいいわと慰めてくれたのを覚えている。

 

俺が完全に戦車道から縁を切らずにいられたのは、恐らくケイさんとアンチョビのお陰だ。

 

ケイさんは俺をサンダースに招いても、こうしてホームパーティーに招待するだけで戦車道の授業には巻き込まなかった。

 

彼女なりの気遣いだったのだろう。

 

アンチョビはアンツィオの戦車道を立て直そうと必死で、放っておけなかったのが理由だが。

 

いや、本当に大変だったんだよ、アンチョビが入学した時点で履修生は数人。

 

その数人も卒業してしまい、遂にはアンチョビ1人になってしまった。

 

この時に1年生としてペパロニとカルパッチョが入ってきて、アンチョビの副官として抜擢された。

 

同時期にサンダースにはナオミさんとアリサさんが入学し、2年生になり副隊長になっていたケイさんの目に止まり、将来の副官として抜擢された。

 

人数が兎に角多いサンダースの戦車道で頭角を表すのは大変だ。

 

そういう意味では、選ばれたナオミさんとアリサさんがどれだけ凄いかが分かるし、その2人を選んだケイさんの目が確かなのも分かるというもの。

 

凄い人なんだよケイさんは…凄い人なんだけど…。

 

「ヘーイダーリン、楽しんでる~?」

 

「た、楽しんでますはい…」

 

このスキンシップ過多な所が無ければ…ね…。

 

制服から着替えたケイさんは、ビキニみたいな水着にシャツと短パンを履いた姿。

 

そんな格好で俺に抱きついてくるのだ。

 

昔からスキンシップが過剰な人だったけど、今日は何時になくアグレッシブだぞ…どうなってる…。

 

「ん~…」

 

「ど、どうしたんですかケイさん…」

 

口元に指を当てて何か考え込んでいるケイさん。

 

「ダーリン、何かあった?」

 

「何か…って何が?」

 

別に何か特別な事があった訳ではない…いや、大洗とか聖グロで強制羞恥プレイが行われたが。

 

「だってダーリン、今日はこんなに大胆に迫っても逃げないじゃない」

 

迫ってる自覚あったんですか。

 

自覚なしにスキンシップしてきてるのかと思ってましたよ。

 

「前まではハグですら逃げ腰だったのに、今日は自分から私を抱き止めたり、私が用意した衣装に着替えてくれたり、こうやって甘えても逃げないじゃない」

 

いえ、正直言えば逃げたいですアッアッやめてスリスリしないで。

 

「なにか心変わりするような事があったの?」

 

そう言って俺に伸し掛かる様にして、顔を近づけ頬を撫でてくる。

 

近い、凄く近いが、ケイさんの瞳は真剣だ。

 

「………特別何かあった訳じゃないです…ただ」

 

「ただ?」

 

「みほちゃん達と一緒に、大洗で過ごした時間が……俺に前に進む勇気をくれたんだと思います」

 

眼鏡を止めたあの時から、俺は何かが変わった気がする。

 

対人恐怖症の症状が、あの時から出ていないから。

 

「………Shit!出遅れたわ、あーもう悔しい悔しい悔しい!」

 

「ちょ、痛い痛い苦しいですケイさん!」

 

俺の胸の上にダイブし、バタバタと暴れるケイさん、手が当たって痛いがそれ以上にぐにゅりと潰れたケイさんの胸部装甲の感触がヤバい。

 

この人自分のダイナマイトバディ理解してるのか…!

 

俺じゃなかったら勘違いしてるぞ全く!

 

「ミホに負けたのも悔しいけど、アンジーに負けたのも悔しい!ダーリンは私が立ち直らせるつもりだったのにぃ!」

 

なんでそこで会長が出てくるのだろうか。

 

「ダーリンに必要だったのは逃げ場じゃなかったのね…アンジーがどうやって戦車道に誘ったのか知らないけど、ただダーリンの傷が癒えるのを待つだけじゃダメだったのね…Oh my God!」

 

俺の上に馬乗りになって頭を抱えて叫ぶケイさん。

 

アッアッやめてそこの生徒写真に撮らないで恥ずかしくて俺死んじゃう。

 

俺をどうやって戦車道に誘ったかって?脅しだよ。

 

逃げてきた先である大洗で脅されたらもう逃げられないじゃないか…畜生会長め。

 

まぁ今は感謝してるけど。

 

「あー悔しい、悔しいけど感謝しなくちゃか…ダーリンが立ち直って、昔みたいにスキンシップとっても平気になったんだし♪」

 

いえ、平気じゃないです恥ずかしいです勘弁して下さい何でもしまむら。

 

「Hey、ケイ。アリサが呼んでいたよ」

 

「あら、何かしら。良いところなのに…ちょっとごめんねダーリン、すぐ戻ってくるから」

 

いえごゆっくりどうぞ。

 

俺の上からケイさんがどいたのでやっと自由になった。

 

あの我が儘ボディは心臓に悪い…。

 

「お疲れ。これでも食べな」

 

「ありがとうございますナオミさん…」

 

ケイさんと入れ替わりに隣に座ったナオミさんから骨付き肉を受け取る。

 

流石アメリカ風、肉もダイナミックだ。

 

齧り付くとソースの味と肉汁が口の中に溢れる。

 

肉を食っているという気分になる、うんこれは美味い。

 

「今更だけど、私のことはナオミでいいよ、喋り方ももっとフランクに、同い年だろう?」

 

「そ、そうか…?それじゃお言葉に甘えて」

 

ナオミさ…ナオミとはそれなりに顔馴染みだが、彼女と出会った時既に俺はストーカーに襲われた後で対人恐怖症。

 

キリッとしたイケメン女子であるナオミには、ちょっと苦手意識があってあまり話した事がなかった。

 

1番長く話したのは、彼女をファイアフライの砲手に推薦した時か。

 

偶々サンダースで部隊編成ブリーフィングをしていた時に訪れたので、相談役として参加し、その時にケイさんと一緒に彼女をファイアフライの砲手に推薦したのだ。

 

ケイさんから良い砲手がいると言われ、注目したのが当時1年生だったナオミ。

 

まだ入ったばかりなのに、既に頭角を表していたので推薦した。

 

当時の隊長は俺の試合を生で見た1人だったので、俺の推薦はすんなり通った。

 

ケイさんに、私だけじゃ却下されたかもしれないと感謝されたな、ナオミの実力を考えれば放っておいても選ばれたと思うけど。

 

サンダースにとってファイアフライは保有戦車で随一の火力を誇る火力の要だ。

 

配備数もシャーマンに対して少なく、砲手として乗れるのは腕利きの選手だけ。

 

そんなファイアフライに1年生で抜擢される、大抜擢である。

 

副隊長とサンダースの救世主(当時の選手達からの俺への呼び名)からの推薦だ、当時の隊長もメンバーも異議を唱える事無くナオミの搭乗が決定した。

 

その際にお礼を言われ、ファイアフライ運用のアドバイスなどを求められて会話したのが最長だったな。

 

その後のナオミはメキメキと実力を付けてサンダース1の砲手になり、副隊長に抜擢された。

 

いや本当に、大洗との試合で彼女が出てきた時は冷や汗物だった、ファイアフライと彼女の腕をよく知っているだけに。

 

あの状況で勝てたんだから、五十鈴さんの胆力半端ない。

 

そんな事を考えながら肉を齧り取る。

 

すると、ナオミが俺の顔に手を伸ばしてきた。

 

「ソース、付いてるよ」

 

そう言って俺の口元のソースを拭い、ぺろりと舐めた。

 

ウィンク付きで。

 

トゥンク…

 

やだ、イケメン…!

 

「夢中で齧り付いて、可愛い所があるじゃないか…」

 

「え…あの…ちょ…」

 

クイッと顎を持ち上げられ、ナオミの方を向かされる。

 

「長野、じゃ他人行儀だね…ソーマって呼んでもいいかい?」

 

「あ……あぁ…」

 

真っ直ぐに瞳を見つめられる、目が離せない。

 

やだ、俺なんかよりずっとイケメン的仕草が似合う…!

 

そう言えば、アリサさんがナオミが後輩を口説きまわって困ってるとか愚痴ってた気がしたが…あれマジだったのか、凄い手慣れてるぞこの人!

 

「コラーーー!何やってるのよナオミーー!」

 

「おっと、怖いお姉ちゃんがやってきた。またね、ソーマ」

 

両手を突き上げながらやってくるケイさん、その声にウィンクを残して去って行くナオミ。

 

「大丈夫ダーリン!?ナオミは手癖が悪いから注意しないとダメじゃない!」

 

「は…ははは…助かりました…」

 

いや本当に。

 

迫られる経験はあるが、まさか口説かれるとは思わなかった。

 

俺なんかを口説いて何が楽しいのやら…。

 

「ちょっとお手洗いに…」

 

「は~い、口説いてくる子に気をつけてねー」

 

え、他にも居るの…?

 

トイレを借りて戻ろうとしたら、キッチンで忙しそうにしているアリサさんを見つける。

 

彼女だけは一般的な私服姿で、テキパキと料理を盛り付けたりしている。

 

彼女がケイさんのホームパーティーに参加する前は、肉肉肉の肉一色だったが、彼女が来るようになってからはサラダやパンなどが料理に並ぶようになった。

 

それ以来、俺に好評という事でケイさんのホームパーティーはアリサさんが取り仕切っているらしい。

 

「お疲れ様、少しは食べた方が良いんじゃないですか」

 

「え…あぁ、長野さん、いえ仕事がありますから」

 

そう言って苦笑を浮かべながらデザートを用意するアリサさん。

 

サンダースの参謀役であり、何かとフランクでオープンなサンダースでは苦労している苦労人である。

 

大洗での試合では彼女が無線傍受を行っていた犯人だと思ったが、正解だった。

 

「手伝いますよ、これを切れば良いんですね」

 

「あ、ちょ、良いですよそんな…!」

 

まぁまぁと彼女を宥めながらホールで購入されたケーキを切り分ける。

 

流石サンダース、ケーキもデカい。

 

「あの……試合ではすみませんでした、傍受気球で無線傍受を行っていたのは私です…」

 

「なんで謝るんです?」

 

「え…だ、だって卑怯な手段を…」

 

「確かに戦車道では無粋な方法だけど…別に禁止されてる訳じゃないし」

 

ケイさんとかは怒るけどね。

 

「怒らないんですか?あれで私は大洗を追い詰めたのに…」

 

「大会規定に何個も禁止事項を追加させた俺が怒ると思います?」

 

「……あ~…」

 

崖崩し、ビル崩しに始まる危険行為で試合後に連盟からこっ酷く怒られた俺である。

 

無線傍受位で怒るとでも?

 

俺だって必要ならやる、使える物はなんでも使う。

 

みほちゃん達に怒られちゃうからやれともやろうとも言わないけど。

 

まぁ敢えて言うことがあるとすれば…。

 

「むしろ何で使ったんです?バレたらケイさんに怒られる事確実なのに」

 

使わなくてもまともにやりあえばサンダースの勝ちだっただろう。

 

無線傍受にこだわった為に招いた敗北だ。

 

「それは…その……長野さんが…」

 

「俺が?」

 

「長野さんが関わっていると分かったので、一応用意しておいた傍受気球と傍受装置を戦車に積み込みました。長野さんの指揮で1番怖いのは、何をしてくるか分からないっていう不気味さですから…」

 

それで無線傍受で指揮を聞いてしまえば怖くないと思った訳か…。

 

参謀役として俺の指揮も勉強しているらしいアリサさんが、俺の事前指示を警戒して無線傍受を行ったのか…。

 

うーん、それを聞くと俺が原因と言うことになるな、みほちゃん達には申し訳ない事をしたな…。

 

だが逆にそれで勝てたのだから結果オーライか…?

 

恐縮してすっかり縮こまっているアリサさん。

 

本来気が強い彼女には似合わない姿である。

 

「ほいアリサさん」

 

「へ…もがっ」

 

置いてあったスプーンでケーキを抉り取り、顔を上げた彼女の口に突っ込む。

 

「俺には叱る資格がないし、ケイさんがもう解決した事だから蒸し返すのはなしで。それにアリサさんが勝利のために努力した事なら俺は評価しますよ。まぁ、今後はケイさんにちゃんと許可取ってやりましょうって事で、ね?」

 

そう言って笑ってみると、暫くを俺の事を見上げていたが、突然アリサさんの顔が真っ赤になって頭から湯気が吹き上がった……気がする。

 

「わ、私には、私にはたかしが…たかしが居るんですぅーーーー!」

 

「ちょ、アリサさ…たかしって誰…?」

 

顔を抑えて走り去ってしまった。

 

たかしって誰?

 

「副隊長、ケーキまだですかー?」

 

「車長、デザートは…あれ、長野さん!?」

 

そこへ見覚えのある2人組…確かアリサさんの車両の砲手と装填手の子かな。

 

水着姿でペタペタと歩いて来た。

 

アリサさんどっか行っちゃったんだよな…仕方ない。

 

「これとこれは持って行っちゃって、ケーキは今切ってるから待ってくれるか」

 

「さ、サーイエッサー!」

 

「運びます、なんでも運んじゃいます!」

 

俺の指示に、急に元気になって敬礼して用意が終わっているデザートを運んでくれる2人。

 

俺別に上官じゃないんだけどな…。

 

2人の協力もあってデザートの準備も終わる。

 

バケツサイズのティラミスを持っていこうとしたら、2人が慌てて受け取ろうとする。

 

「俺が運ぶから良いよ、デザート待ちきれなかったんだろう?」

 

「い、いえいえ、お客様にそんな事させたら隊長に怒られちゃいますから!」

 

「あ~…逞しい腕…」

 

「ちょ、何してるのよ羨ましい!」

 

なんかロングヘアーの子に腕を組まれていた、ティラミス受け取ろうとしたんじゃなかったの?

 

「ズルい、私も!」

 

「ちょ、動き難いんだけど…」

 

もう1人も腕に絡みついてきた。

 

……ケイさん程じゃないのでちょっとホッとした。

 

いやそうじゃないだろ俺、最近スキンシップに慣れてきたせいで色々とおかしい。

 

カエサル達にも無防備誘い受けをどうにかしろと言われてるし、ちょっと気を付けないと…。

 

水着美少女を2人も腕に絡めたままティラミス運ぶとか、なんの羞恥プレイだろう。

 

「あー!長野さんと腕組んでる!」

 

「ズルい、ケイ隊長が怖いから我慢してたのに!」

 

「次私、次私ね!」

 

「5分交代にしよう、そうしよう!」

 

「待って、腕は埋まってるけど…まだ胸板と背中が残ってる…!」

 

「お前天才か…!」

 

ヒェッ!

 

庭に出たら一瞬にして注目され、集まってきた。

 

やだ、この子達肉食過ぎ…!?

 

「ばっかもーーーん!なにやってるのよ!」

 

「「「「「きゃー!」」」」」

 

そんな騒ぎになれば当然ケイさんが黙っている訳も無く、雷が落ちた。

 

なんか一瞬部長という単語が脳裏を過ったが何の部長だろう…。

 

集まっていた選手達が散らされ、ケイさんの周りが空白地帯になる。

 

苦笑してティラミスをテーブルに置いてソファに座ると隣にケイさんが移動してくる。

 

「全くあの子達も油断も隙もないんだから…ダーリンも何でデザート運んでるのよ、お客様なんだからゆっくりしていていいのよ」

 

「いや、アリサさんが大変そうだったんでつい…」

 

「またぁ?あの子ったら本当にもう…なんでも1人でやろうとするんだから。もっと部下や同僚を上手く使えるようにならないと私も安心して後が譲れないじゃない」

 

「あぁ、やっぱりアリサさんが1人で張り切ってやってたんですね」

 

ケイさんがアリサさん1人に仕事を押し付けて自分だけ楽しむなんて想像出来ないからな。

 

「そうよ~、初めて私のホームパーティーに誘ってから『こんなんじゃいけません、私に全て任せて下さい!』って言って、何でも自分でやろうとするの。ちゃんとアリサも楽しみなさいって言ってるんだけどね~」

 

「自分の仕事を全うしようと必死なんですよ、アリサさんもケイさんを思っての事なんですから」

 

「分かってるわよ、注意はするけど怒りはしないわ。大事な副隊長だしね」

 

そう言ってHAHAHAと豪快に笑うケイさん。

 

こういう人柄だからサンダースという大所帯でも統率が保たれてるんだろうな。

 

大部隊の指揮で彼女に勝てるのって、まほさん位だよなぁ…。

 

少数精鋭の指揮ならみほちゃんが最強だろうけど。

 

「ちょっとダーリン、私が目の前にいるのに他のガールフレンドの事考えてるでしょ」

 

鋭い、なんで皆こんなに鋭いんだ…。

 

「今は私のことだけ考えないとNoなんだから…ね?」

 

そう言ってティラミスをスプーンですくい、俺の口に入れてくる。

 

「パーティーはまだ序盤よ?最後まで楽しんでいってね…ダーリン♪」

 

そう言って、スプーンをペロッと舐めた。

 

 

 

 

 

 

 

訂正、みほちゃんでも彼女に勝てそうにない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれだけ露出の多い可愛い子集めて酒池肉林にしたのに、ダーリンったら全然主砲を奮い立たせないわね……Erectile Dysfunctionかしら?」

 

「なんでそこだけ流暢な英語なんですか…というかその為に参加者全員に水着か薄着を命令したんですか隊長…」

 

「私にときめいていたからもしかして同性愛者の可能性が…?」

 

「やめたげなさいよ、掲示板とかで長野さんホモ説とか流れてるんだから」

 

「ゲイはダメよ、生産性が無いわ。かと言って無理に迫ると逃げちゃうし、それでトラウマを刺激しちゃったら最悪だわ…ここはジワジワと戦線を引き上げる方向で行くしかないわね」

 

「そう言いながら露出増やさないで下さい、長野さんが直視出来なくなりますよ」

 

「男を口説き落とした経験はないけど、ソーマは是非とも落としたいね…」

 

「だからやめたげなさいってば……長野さん逃げて、超逃げて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アリサちゃんマジ苦労人(´・ω・`)



たかし、彼女に振り向いてあげて?(´・ω・`)



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