ガルパン日和   作:アセルヤバイジャン

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オススメされた、君の神様になりたいを聞きながら書いたらこうなった(´・ω・`)


でも途中でブリキノダンスとボコのテーマとフニクリ・フニクラとくるみぽんちお(激熱)も聞いたからたぶんこれが原因(´・ω・`)



ちゅっぱっぱ☆(´・ω・`)


くろもりm「ハンバァァァァグッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一回長野さん攻略会議!!」

 

「「「「………はいぃ?」」」」

 

ドドンと効果音を背負いながら宣言する沙織に、思わずあんこうチームがペコちゃんみたいな返事を返してしまう。

 

同時刻に聖グロでペコちゃんがくしゃみをしているが置いておく。

 

「沙織さん…今度はどうしたの?」

 

「またいつもの発作か…」

 

「沙織さん、そんなに飢えて…」

 

「武部殿、遂に毒牙を長野殿にまで向けるように…」

 

苦笑してまたいつもの病気かなと質問するみほ、ため息の麻子、悲しむ華に戦慄する優花里。

 

どうやらいつもの恋愛病の発作と思われている模様。

 

「今度は違うの!これは長野さんの為なのよ!」

 

バンバンとテーブルを叩く沙織、本日彼女達が集まっているのは沙織の部屋である。

 

夕飯を一緒しようと提案され、ホイホイ着いてきたら突然こんな事を宣言されたのだ、そりゃ困惑するか呆れるかだろう。

 

「何が叢真さんの為なの?」

 

「このままじゃ長野さんがイケナイ道に進んじゃうの!だからその前に真っ当な道に戻してあげないといけないの!」

 

「沙織、妄想は大概にしろよ」

 

「麻子ってばひどぉい!本当なのよぉ!」

 

バッサリの麻子の言葉に半泣きになりながら力説する沙織。

 

「まぁまぁ麻子さん。沙織さんがこんなに言うんですから、理由を聞きましょう?」

 

「そうですね、何やら今回は明確な危機感があるみたいですし」

 

華と優花里の言葉で、仕方ないなと矛を収める麻子。

 

「詳しくは話せないんだけど、長野さんが危ない道に足を踏み出してる証拠を掴んじゃったの…!」

 

「エロ本でも見つけたか」

 

「なんで分かるの!?」

 

麻子のズバリの指摘に、エスパー!?と驚く沙織。

 

「沙織さん…何してるの…」

 

「あらあら、いけませんよ男性の秘密を覗き見るなんて…」

 

「長野殿の秘蔵の書物ですか、興味深いですね…」

 

「あれ、みんなそんなアッサリなの?普通、エッチな本とか持ってたら怒らない!?」

 

アッサリした態度のみほ達に、逆に驚く沙織。

 

「それは、叢真さんだって健全な男子だから…」

 

「むしろ男として正常って証拠だろう、良いことじゃないか」

 

「そうですねぇ、むしろ長野さんに異性への興味があったことが驚きですね」

 

「長野殿、度を超えた紳士ですからね。小山先輩の水着とか見ても、そっと視線を逸してましたし」

 

サバイバルウォー参照。

 

あの刺激的な水着姿の波を、視線を逸したりして回避しつつ褒めるという高等テクニックで凌いだ叢真。

 

大多数は紳士だと思って感心したのだが、一部はもしや興味がない…?と疑念を抱いていたりする。

 

だが沙織がエロ本を見つけたというなら、その疑念も払拭された事になる、これは逆に喜ばしい事だと感じる面々。

 

「えぇ~、普通怒るもんじゃないの~?」

 

「お前は彼女か。怒れるのは親か恋人だけだろう」

 

麻子の至極真っ当な言葉にガックリと崩れる沙織。

 

確かに怒れる立場ではない。

 

だが。

 

「その本の中身が問題なのよー!」

 

「えっと……もしかして沙織さんとは180度違うタイプだったとか?」

 

「沙織の逆…清楚でお淑やかで貧乳でスレンダーで男を立てるタイプか…」

 

「あと眼鏡じゃなくて恋愛には消極的でしょうか」

 

「うーん、我々の周りには居ませんねぇ…」

 

「みんなひどーい!確かに巨乳物は無かったけどそういうレベルじゃないのー!」

 

親友達の総口撃(誤字ではない)に憤慨する沙織。

 

「長野さんのプライバシーだから詳しくは言えないけど、このままだと私達みんな、勝負すら出来ずに終わる可能性が高いの!」

 

「え、えぇっと…つまり、私達だと長野さんの好みじゃない…?」

 

「下手すると眼中に無い可能性すらあるよ!」

 

「それは……困るな…」

 

沙織の力説に、視線を伏せる麻子。

 

「勝負すら出来ないというのは、困りますねぇ…」

 

「ライバルがただでさえ多いのに、その上勝負すら出来ない…あの、まさか、長野殿…そっちなのでありますか?」

 

優花里恐る恐るの質問に、視線を明後日の方向に向ける沙織。

 

麻子と華と優花里が「あっ(察し」となった、みほちゃんだけは首を傾げていた。

 

「いけません!華は咲かせるもの、散らすだけの行為はいけませんわ!」

 

「散らすとか抽象的だけど具体的な事言わないでよ華!?」

 

「それでか…それで私には何もしないのかあの男……人が散々甘えていたのに…」

 

「あんたの場合はもう介護レベルだからそれ以前の問題よ麻子!」

 

「長野殿…道理で二人っきりでの野営にあっさり来てくれた訳ですね…うぅ、意識すらされてなかったとは…」

 

「ちょっとゆかりん、その二人っきりの野営について詳しく!」

 

「沙織さん、落ち着いて、落ち着いて、ね?」

 

キレッキレのツッコミを披露する沙織に、みほが慌てて抑え込む。

 

「とにかく!このままだと長野さんがイケナイ道に入っちゃうから、なんとかしないと!みんなも嫌でしょう!?勝負すら出来ずに奪われて行っちゃうのなんて!」

 

沙織の言葉に、脳内でそれぞれ勝手な対象を想像して叢真が奪われる姿を想像する面々。

 

みほちゃんだけは、思い浮かべた相手がまほだったりするが置いておく。

 

「そんな訳で!長野さんを悩殺して私達に興味を持ってもらう作戦を考えるのよ!」

 

テーブルを叩いて宣言する沙織に、おー…と声をあげる面々。みほちゃんだけは苦笑。

 

「で、具体的にはどうするんだ。あのヘタレ紳士、下着を見ても速攻で目を逸らして謝罪するだけだぞ」

 

「う”…1番近道かなと思ってた方法なのに…って!麻子下着見せたの!?」

 

「寝ぼけて下着のまま長野さんの前に出ていったら、顔を真赤にして背けて、謝罪された。可愛かったぞ」

 

「あんた何してんのよー!?」

 

まさかの麻子の行動に、ギャースと怒る沙織。

 

無防備にも程があるが、麻子なりのアピールだとすると見事に空振りである。

 

「そうですねぇ、胸を当てたりするのは皆さんやってますけどそれも恥ずかしがって逃げてしまいますし…」

 

「サンダースのケイさんとか、プラウダのノンナさんとか、胸が大きい人達も良く押し付けてますけど、長野殿恥ずかしがるだけで喜んでませんもんね」

 

叢真の日常を思い浮かべて嘆息する華、自分を含めて胸が大きな子がやるスキンシップだが、基本的には逃げられる。

 

世の男性からしたら血涙物なスキンシップすら逃げる、流石ヘタレ魔王である。

 

「いっそ一緒に寝るか…」

 

「野営で一緒に寝ましたけど効果ありませんでしたよ」

 

「ゆかりん、後で詳しく」

 

「武部殿、目が怖いであります…」

 

麻子の提案に、効果無かったと報告する優花里。

 

実際は滅茶苦茶意識してて叢真は殆ど寝てないのだが、気付いてなかった様子。

 

「あのぉ、あんまり過激な事をして叢真さんを困らせないでね…?」

 

「分かってるわよみぽりん、長野さんには、周りに魅力的な美少女が居るって事に気付いてもらうだけよ!そこからが本当のスタートなんだから!」

 

みほの控えめな静止、だが沙織は止まらない。

 

「叢真さん、大丈夫かなぁ…」

 

特集記事の事もあるのに、沙織が変なスイッチが入っている状態。

 

それが伝播して冷静な麻子や華までその気になっている、優花里は純粋に楽しそうだ。

 

「私がなんとかしないと…」

 

なんとか穏便に事が済むようにしないと、そう考えるみほちゃん。

 

彼女は知らない、他の巨乳連合加盟者により、戦車道履修者全体に話が広がっている事を。

 

叢真がどうなるか、全てはみほの手腕にかかっている…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンバーグの場合(ペロ、これは…デミグラス!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄く戻り辛い…」

 

先程の光景がフラッシュバックして、赤星さんの事を考えると勝手に股間がヒュッとする。

 

自然と腰が引けて中腰になってしまう、それ位インパクトがあった。

 

温和で良い子だと思ってたのに…そう言えばカルパッチョも最初は温和で良い子って印象だったなぁ…。

 

赤星さんもあぁなるの?やだ考えたくない。

 

どうしようかと講堂前でウロウロしていたら、廊下の窓の外、道の脇に設置されているベンチに人影が見えた。

 

街路灯に照らされているのは…逸見さん?

 

講堂脇の階段、その先にある外へ出る扉から外へ出てベンチへ足を向ける。

 

ベンチの上で項垂れているのはやはり逸見さんだ。

 

「どうかしたんですか、逸見さん」

 

「……え………あ、長野さん…」

 

俺が声をかけると、ビクリとして顔を上げる逸見さん、その表情は落ち込んでいる様に見えた。

 

「いえ、ちょっと…酔冷ましに」

 

「雰囲気酔いって奴ですか」

 

ノンアルコールビールだからね、お酒じゃないからね。

 

どう見ても酔っ払ってる生徒居るけど。

 

「今日はありがとうございました、とても勉強になりました」

 

「こちらこそ。逸見さんにはしてやられたよ」

 

「え……私は別に、何も…」

 

「何度かこっちの作戦に乗らずに対処してきたでしょう?もうちょっと上手く乗ってくれるかと思ったんですけどね」

 

そう言いながらベンチに座る、勿論逸見さんからは距離を空けて。

 

「そんな、あれは咄嗟にそうしただけで…結局撃破されてしまって…」

 

「咄嗟に対応出来るだけ、逸見さんが優れてるって証拠じゃないですか。言い方が悪いですけど、他の車長に比べたら格段に良い対応してましたよ」

 

「………でも、副隊長ならもっと上手く対応した筈です」

 

副隊長?副隊長は逸見さんじゃ……あぁ、みほちゃんか。

 

そう言えば逸見さん、みほちゃんや大洗の生徒にはキツい態度してたっけ。

 

まほさんのポンコツ暴走と俺にサインを強請る姿で上書きされてたけど。

 

「副隊長なら、もっと隊長の意図を汲んで、もっと最適で的確な行動を取った筈なんです…彼女にはそれだけの才能がある…私とは違って…」

 

……逸見さんと違って、か…。

 

確かにみほちゃんの才覚は凄い、西住流でありながら全く違うやり方を構築し、実践している。

 

西住流に足りなかった部分を、見事に埋めて新しい姿にしている。

 

だが、逸見さんだって彼女なりの才能がある。

 

無ければまほさんが自分の後継者として抜擢し、育てたりしない。

 

「本当なら、本当なら今頃、西住隊長の元で、副隊長が支えて、黒森峰の足りない所を補って、そして私が…私が、そんな副隊長を支えている筈だったんです…!」

 

膝の上の手をぎゅっと握り、俯く逸見さん。

 

彼女が描いていた未来、まほさんが率いて、みほちゃんが支えて、そんなみほちゃんを自分が助けて支える。

 

そしてまほさんが居なくなっても、みほちゃんが率いて、彼女が支える。

 

そんな未来を描いていたのだろう。

 

「なのに副隊長は、黒森峰を去った…西住隊長が、戦車道の立て直しに大変な時に学園を去って…それだけでも許せないのに、大洗なんて聞いたこともない学校で逃げた筈の戦車道をまた始めて…!全国大会にまで出てきて、しかもあんな脳天気なメンバーと楽しそうにして…!隊長や小梅が……私がどんな思いで…!」

 

「逸見さん…」

 

「あの時だって…なんで1人で飛び出して…私達が傍に居たのに!フォローするように指示してくれれば、私だって…私だって…!」

 

あの時…赤星さんの車両が水没し、みほちゃんが飛び出した時か…。

 

あの局面でみほちゃんの傍に居たのは、護衛の赤星さんの車両と…同じく護衛だった逸見さんの車両。

 

咄嗟に飛び出してしまったみほちゃん、動けなくなるフラッグ車。

 

そんな中、フラッグ車を守ろうとして動いていたのが、逸見さんの車両なのだろう。

 

だが間に合わずに撃破されてしまった。

 

赤星さんと同じで、みほちゃんの助けになれなかった事を、逸見さんも悔やんでいたのだろう。

 

仲間なのに、支える立場なのに、自分を頼ってくれなかったみほちゃん。

 

そしてみほちゃんは黒森峰を去った。

 

やはり自分達を頼ってくれずに。

 

そして大洗で逃げた筈の戦車道を始めた姿に、怒りが湧いたのだろう。

 

みほちゃんが何故戦車道をまた始める事になったのか、知らない彼女からしたら当然の怒りだ。

 

自分達を放っておいて、何も知らないような脳天気なメンバーと楽しそうにする姿。

 

ある意味正当な怒りだけに、下手なフォローは出来ない。

 

「分かってるんです、自分の実力がない事を副隊長へ八つ当たりしてるだけだって…でも、でも!副隊長の実力は本物だった、リーダーとしての才能は私より上だった…だから私は、副隊長を支えて、黒森峰で一緒に…一緒にやっていきたかった…!」

 

自分の実力とみほちゃんの才能、それを理解しているから、みほちゃんを支える事を選んだ。

 

だがみほちゃんは居なくなってしまった。

 

残されたのは、敗北の余波で揺れる黒森峰と、それを立て直そうと必死なまほさんだけ。

 

だから彼女は全力でまほさんを支える事を選び、みほちゃんの事を諦めた。

 

だがそのみほちゃんが、敵として立ち塞がった。

 

そして彼女が選んだ、彼女の戦車道が、黒森峰を倒した。

 

だから逸見さんは、複雑な感情を溜め込み、みほちゃんへのコンプレックスも合わさって…今の状態って事か。

 

初めて会った時の皮肉げな態度も、まほさんのポンコツ凶行に面食らっていた態度も、俺へのミーハーな態度も違う。

 

彼女が抱え込んでいる、積み重なった闇を発露している姿。

 

……似合わないな。

 

彼女にはこんな姿、似合わない。

 

彼女は、みほちゃんが認めている、優秀な存在だ。

 

まほさんだって彼女を認め、後継者として育てている。

 

確かに指揮官としてはまだ足りない、だが劣っている訳ではない。

 

まだ彼女が、彼女自身が自分と、自分の戦車道に向き合えていないから。

 

自分が作る道を見つけられていないから。

 

「……すみません、急にこんな、訳の分からない事を…」

 

「みほちゃんが言ってたんだ」

 

「………?」

 

「逸見さんは凄い人だ、私にないモノを持っている。逸見さんが自分を引っ張ったり、背中を押してくれたから黒森峰でも頑張れたって」

 

みほちゃんと大洗アウトレットモールで買い物をした時に、俺が買ったボコを抱きながら教えてくれた。

 

黒森峰での生活は大変だったけど、中等部の時から逸見さんに背中を押されて頑張れた事。

 

自信がない自分を、叱咤しながら腕を引いてくれた事。

 

その事を思い出しながら、楽しそうに、そして寂しそうに語るみほちゃん。

 

そこに、一切の悪感情は無かった。

 

何度もエリカと言い掛けてから逸見と言い直した事を考えると、みほちゃんは親しい友人として逸見さんを見ていたのだろう。

 

赤星さん達と同じ様に。

 

「そんな、嘘です!私なんかにそんな…!」

 

「俺が嘘つきだと?それともみほちゃんが嘘つきだと?」

 

「どっちも有り得ません!長野さんも、副隊長も、嘘なんて……嘘なんて…」

 

みほちゃんは兎も角、俺への信頼は何なんだ。

 

俺結構嘘つきだよ?奇策搦め手騙し討、その為ならどんな嘘でもつくよ?

 

いや、対人関係で嘘は言わないけどさ…。

 

「副隊長が嘘なんて……あのふわふわボケボケのお人好しでドジで情けなくて泣き虫で隊長に甘やかされてて手がかかってどうしょうもない副隊長が…嘘なんて言うわけない…」

 

凄いみほちゃんの印象…長年一緒だっただけあってみほちゃんの良い面も悪い面も知ってるんだなぁ…。

 

「みほちゃんが色々大変だったって事も、逸見さんなら言わなくても理解してるよね?」

 

「……はい。副隊長は、強い人です…そんな彼女が黒森峰から、戦車道から逃げる位辛い目にあった事は…理解してます」

 

助けられなかった他ならぬ自分だから、悔しそうに手を握り込む逸見さん。

 

「でも、大洗なんてど田舎の無名校で戦車道を始めたのが許せないんです…どうして、戻ってきてくれなかったのか…!」

 

「………実はハッキリ言っちゃうとね」

 

「…?」

 

「脅されたんだよ、みほちゃん」

 

「――は?」

 

「俺も脅されたの、戦車道やらないと秘密をバラすよって」

 

「はぁ!?」

 

「みほちゃんは確か、戦車道やらないとこの場所に居られなくなるとか、庇ってくれた友達も退学にさせるとかそんな感じで」

 

「はあぁぁぁぁ!?」

 

逸見さん大絶叫、それはそうである、まさか逃げた先で脅されて無理矢理戦車道をやらされてたとは思わなかったのだから。

 

武部さん達に囲まれて楽しそうにしているみほちゃんの姿しか見てないもんなぁ。

 

「逃げた先で脅されて居場所が奪われるなんてなったら、そりゃ頑張るしかないよね。しかも友達になってくれて庇ってくれた友達まで退学になる所だったんだから」

 

まぁ会長達も本気でそんな事はしないだろうけど。

 

……いや分からないな、暴走してやる可能性もあったか…主に河嶋先輩が。

 

あ、でもあの人広報だからそんな権限無いか。

 

「…………ちょっと大洗行ってきます」

 

「まぁまぁまぁ落ち着いて。気持ちは分かるけどもう終わった事だから」

 

目をギラリと光らせながら立ち上がる逸見さんを引き止めて座らせる。

 

やだこの子実はみほちゃん大好きでしょ絶対。

 

好きじゃなければ支えたり感情を拗らせたりしないか。

 

みほちゃんの人誑しは昔からか…。

 

「主犯と仲間の情報をください、確実に仕留めてみせます」

 

「大丈夫、ちゃんと本人たちで話し合って解決してるから。だからそのヒットマンな目は止めよう、な?」

 

タマとったる的な視線が怖い、喜んで鉄砲玉になっちゃうタイプだこの子。

 

会長達はちゃんとみほちゃんに謝罪してるし、今後みほちゃんが困ったら全力で支援すると言っていた。

 

俺?俺は会長に「私の事好きにしていいよ」と言われたのでウメボシグリグリの刑に処した。

 

女の子が軽々しく身体を差し出すんじゃありません全く。

 

春日部の一家も言っている、拳骨、ウメボシ、足の臭いは暴力や虐待ではない、教育的指導だと。

 

「……副隊長にも深い事情があったことは理解しました…」

 

「それは良かった。それに逸見さん全国大会で言ってたじゃないか、次は負けないって」

 

あれは俺が聞いた限りでは、みほちゃんの事を、みほちゃんの戦車道と大洗の選手達を認めたから。

 

だからこそ、次は負けない、ライバルとして勝つという宣言だと俺は感じた。

 

まほさんのポンコツ奇行でちゃんと言えてなかったけど…。

 

あの人余計なことしかしてないな…。

 

「あれは、その…副隊長が、やっぱり凄いって証明されたのが嬉しくてつい…」

 

嬉しくてか…自分が負けを認めた相手を敬える、やっぱり逸見さんは凄い人だ。

 

問題はまほさんみほちゃんへのコンプレックスと、そこから来る自信の無さか…。

 

時々見られる彼女の突撃思考と言うか、焦りはそこが原因なんだろうな。

 

結果を残そうとする事から焦り、気持ちが逸ってしまう。

 

「でも、今の私が副隊長の相手が出来るかどうか…来年はもう、隊長も…」

 

今日話された改革、それを実行していくのは他ならぬ逸見さん達だ。

 

精神的大黒柱であるまほさんは来年には居ない。

 

みほちゃん達に挑むのは、逸見さん達になる。

 

再び王者黒森峰が君臨する為に。

 

負けられない大事な戦い、その重圧を感じているのだろう。

 

「まぁ…ぶっちゃけてしまうと、みほちゃん達来年の大洗の最大のライバルは逸見さん、君なんだよ」

 

「………へ?」

 

俺の言葉に、鳩が豆鉄砲を撃ったような顔になる。

 

そんな顔見たこと無いけど。

 

「わ、私が!?」

 

「いや、だって他に居ないし。君レベルの指揮官」

 

聖グロ、ダージリンとアッサムさんが卒業したら次の指揮官はルクリリ、その補佐をオレンジペコとニルギリとなるだろう。

 

ローズヒップ?彼女は指揮官より小隊指揮で暴れ回らせた方が輝く。

 

下手するとオレンジペコが指揮官になる可能性もあるが…。

 

だが経験不足だ、才能に経験が追い付いていない。

 

サンダースはナオミとアリサさんだが、ナオミは勝負師タイプで指揮官に向いていない、そうなるとアリサさんが指揮官候補なのだが、ケイさん曰くまだまだ甘くて安心して後を任せられないという事でこちらも経験不足。

 

アンツィオはどっちが次のドゥーチェになるか不明だが、順当に行けばペパロニだろうな、そうなるとノリと勢いは維持出来るが作戦指揮がな…小隊指揮させれば有能なんだけどなペパロニは、ローズヒップと同じで暴れさせた方が良いタイプだし。

 

プラウダはニーナとアリーナが後を継ぐだろう、こちらはまだカチューシャの教育中だが、形になれば強力になる。

 

継続は…ここが1番分からないな、ミカさんがあの通りの人なので誰を指名するか…。

 

一応部隊を掌握してるのはアキちゃんだが、彼女もまだオレンジペコと同じで経験不足だしなぁ。

 

他の学校は…あんまりパッとした選手が2年生に居ない。

 

知波単が大会後に2年生が隊長に就任したとか月刊戦車道にあったけど、未知数…と言うか知波単は先ず突撃ありきなのをどうにかしろ。

 

突撃は数じゃない、質とタイミングだ。ただ突っ込めば良い訳じゃない。

 

そんな訳で、俺が知る限りだと指揮官として突出しているのがみほちゃんと逸見さんしか居ないのである。

 

逸見さんに関しては今回の紅白戦で判明した能力を加味しての評価である。

 

その辺りを詳しく説明すると、逸見さんはあんぐりと口を開いて呆然としている。

 

まぁ綺麗な歯並び。でも女の子がやるとはしたないから口を閉じようね。

 

「わ、私なんかがそんな…!」

 

「各学校を回った第3者による公平な分析です。自信を持ちなよ、君が副隊長になった時に反対の声はあったかい?」

 

「………無かったと、思います」

 

思い出しながら答える逸見さん。

 

まぁ裏では3年生とかから反対の声が出てたかもしれないが、まほさんが握り潰しただろう。

 

プラウダへの敗北とみほちゃんの離脱で揺れた黒森峰の立て直しに、逸見さんは必要不可欠。

 

まほさんからしたら逃さん、お前だけは…と強い気持ちで抜擢したのだろう。

 

「それだけ信頼されて期待されてるんだから、そろそろ自分を許してあげよう。みほちゃんは待ってるよ、君が自分の道を見つけて立ち塞がってくる事を」

 

みほちゃんは言っていた、逸見さんが私と同じで自分の戦車道を見つけたら、絶対に強敵になる。そんな逸見さんと戦って…もう一度、友達になりたい、と。

 

昨日の敵は今日の友、戦った相手と友達になれる、みほちゃんの戦車道。

 

そんな事せずとも普通に仲直りすれば良いのに…とは思うが、みほちゃんなりの贖罪なのだろう。

 

黙って黒森峰を去ってしまった事への。

 

「副隊長が……みほが…私を……」

 

「あ、この事は内緒で。俺が言ったと分かったら怒られちゃうから」

 

なんで教えちゃうんですか、内緒にって言ったじゃないですかってポカポカ叩かれて怒られる、うん絶対怒られる。

 

「あの……長野さん…失礼だと、思うんですけど………胸を、貸して下さい…!」

 

「こんな胸で良ければ」

 

両手を広げると、逸見さんが静かに頭を預けてくる。

 

そして静かに肩を震わせて、嗚咽を漏らす。

 

それを優しく、壊れ物を扱うように抱き締めて、頭を撫でる。

 

これ位は許してくれるよね、みほちゃん。

 

ライバルの背中を押したことを、みほちゃんなら許してくれると思って空を見上げる。

 

空に浮かぶ月に、笑顔のみほちゃんの顔が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ありがとう叢真さん…でも、それはそれ、これはこれです♪――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Nooooooooooo!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば逸見さん、俺のファンとか言ってたけどどこで知ったの?」

 

ガッチガチの西住ファンと言うか、まほさん命って感じで他の人に興味持たなそうなのに。

 

「えっと…あの、実は昔、大会で会ったことがありまして…」

 

泣き止んだ逸見さんが照れ臭そうに笑う。

 

はて、逸見さんみたいな子に会ったことあったか…?

 

まさか、秋山さんみたいに男の子だと思ってたオチか!?

 

逸見さん性格キツいと言うか気が強いから、あり得る…!

 

「熊本大会で、私が落としたうさぎのぬいぐるみを、長野さんが拾ってくれたんです…覚えないかもしれないですけど」

 

「うさぎ…?」

 

うさぎ…うさぎのぬいぐるみ……熊本大会でぬいぐるみ?

 

あ………。

 

「あの時のフリフリロリータファッションのお姫様!?」

 

「は、はい…お恥ずかしいです…」

 

覚えてる覚えてる、物凄いフリフリで可愛らしいお姫様みたいな格好して、うさぎのぬいぐるみを抱いた女の子。

 

俺が拾ったうさぎのぬいぐるみを、涙目で抱きしめていた。

 

あのお姫様がこうなっちゃうのか…意外!それはロリータ趣味ッ!

 

そう言えばみほちゃんが、逸見さんは私服が可愛いとか言ってたけど…今もなのだろうか。

 

うぅん、逆に見てみたいぞ、逸見さん美少女だし似合わないって事はないし。

 

逆にまほさんの私服についてみほちゃんが言葉を濁したのが謎だが。

 

しかし世間は狭いな、まぁ戦車道という枠組みの中だから仕方ないか。

 

「実は長野さんの試合を見るまで、戦車とか嫌いだったんですが…長野さんの正面から圧倒して倒していく王者の戦いに感銘を受けて、戦車道を始めたんです…」

 

意外!それは俺が切掛ッ!

 

まほさんとかじゃなかったのか…戦車が嫌いとか何があったのだろう。

 

まぁ今こうして戦車道に邁進しているから良いか。

 

王者の戦い…俺が搦め手を覚える前かな、最初の頃は俺も母に倣って西住流みたいな戦略してたし。

 

搦め手覚えてからは今みたいなスタイルになったけど。

 

そんな昔話に花を咲かせていたから気付かなかった。

 

何時まで経っても俺が戻らない事で、探しに出た人の存在に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………叢真」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おかしい、Bパートを書き始める時は「ぐへへ、ハンバーグネタで責めて責めて責めまくって主人公にハンバァァァァグッ!と叫ばせてエリカに胸キュンさせてやるぜごべべべべ」と笑っていたのに、気付いたらハンバーグネタが出ない上に半端に真面目な話になってしまった…(´・ω・`)


おかしい、こんな事は許されない…エリカはハンバーグとワニネタで弄られるキャラの筈…こんな未来は見えなかったぞ!(´・ω・`)



まさか、ネタの為に見たみほ☓エリ本の影響だと言うのか…あの尊さに負けたというのか…このらんらんが!このらんらんがぁぁぁぁ(´・ω・`)


(´・ω・`)



(´・ω:;.:…



(´:;….::;.:. :::;.. …..

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