ガルパン日和   作:アセルヤバイジャン

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アンツィオの子は良い子(´・ω・`)



アマレットちゃんに襲われたい(´・ω・`)



そう思う私はペパロニ派(´・ω・`)


そのはち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すんませんでしたっ!!」

 

「自分からも、すいません旦那!」

 

「あぁ…まぁ、未遂だし…」

 

試合後、アンツィオによる盛大なお持て成しが行われている場所で。

 

俺は、アマレットから謝罪を受けていた。

 

アマレットの頭を掴んで一緒に頭を下げるのは大天使ペパロニ。

 

「長野先輩を思う気持ちがついノリに乗っちゃって…本当にすんませんでしたぁっ!」

 

「本人も反省してますし、許してやって下さい旦那…!」

 

「分かった、分かったから泣くな、ほら、綺麗な顔が台無しだぞ」

 

俺を勢いで襲いそうになったアマレットは、あの後反省してペパロニに付き添われて謝りにやってきた。

 

うん、ノリと勢いが良いだけで根は本当に良い子なんだよな、アマレット含めて。

 

涙でグシャグシャになっているアマレットの顔をハンカチで拭いて綺麗にしてやる。

 

パーティーをやっている会場の裏、人気が無いとは言えあまり見られたい場面ではない。

 

と言うか、俺が泣かせていると思われる。

 

「うぅ、優しいっす長野先輩……やっぱり好きぃぃ痛い痛い姐さん痛いっす!?」

 

「お・ま・え・はっ、反省したんじゃなかったのかぁっ!?」

 

俺の胸に飛び込んできたアマレットの後頭部を掴んでギリギリと握るペパロニ。

 

戦車道やってる子って握力とか腕力とか強いのよね…。

 

「そーうーまーさん♪」

 

「ヒェッ!?」

 

突然耳元で甘い声で囁かれて思わず悲鳴が漏れる。

 

こんな登場をするのは彼女しかいない、カルパッチョだ。

 

「お話は終わりました?」

 

「あ、あぁ…カルパッチョこそ良いのか、たかちゃん…カエサルとの会話は」

 

カルパッチョの親友、俺がアンツィオで大洗所属である事を知られる原因となったたかちゃんは、案の定歴女チームの一人、カエサルだった。

 

試合前にカルパッチョと再会して嬉しそうにしているカエサルと言う珍しい光景が見れたものだ。

 

「はい。所で、ドゥーチェが呼んでいましたよ?」

 

「そうか…あの、カルパッチョ…?」

 

なんで手を握ってその手をニギニギしてくるの…?

 

「本当は試合に勝ったらにしようと思ってたんですけど…負けちゃいましたから」

 

「あ、あぁ…」

 

何を?何をしようと思ったの?

 

そんな顔を赤く染めてモジモジするような事をしようとしてたの?

 

「また次の機会にまでとっておきますね…ふふ♪」

 

「は、ははは…そうしてくれると助かるかな…」

 

何をされるの俺…?

 

カルパッチョの笑顔が怖い、握った手の握力が怖い。

 

「おいカルパッチョ、旦那に変な事すんじゃねーぞ!」

 

「大丈夫よ、変な事じゃないから…」

 

ほんとぅ?

 

「カルパッチョ姐さんずるいっす、私もしたいっす!」

 

「あらぁ、でもダメよ、アマレットは抜け駆けしようとした罰で私の後ね?」

 

何の?何の順番なの!?

 

したいって何をする気なんだアマレット…!

 

えぇい、こんな場所に居られるか!

 

「アンチョビが呼んでるんだったな!それじゃまたなッ!」

 

長居すると取り返しの付かない事になりそうなので急いでその場を離れる。

 

笑顔で手を振るカルパッチョと、指を咥えて物欲しそうなアマレット、頭をかくペパロニを残し、アンチョビの元へ。

 

大洗アンツィオ両校の生徒がお祭り騒ぎをする中、アンチョビの姿を探す。

 

居た、こういう時アンチョビのあの髪型は目立って良い。

 

「アンチョビ、呼んだか?」

 

「おぉ、叢真、どうだ食べているか?」

 

「あ、長野さん、お疲れ様~」

 

アンチョビの隣にはみほちゃんが居て、アンチョビと楽しそうに会話していた。

 

こういう交流を行う経験が無かった大洗にはいい経験になる。

 

「いやー、改めてお疲れ様だ、負けたが気持ちが良い敗北だった、行けるとは思ったんだがまだまだ私も甘かった」

 

「そんな事は無いさ、欺瞞作戦が成功していたらどうなっていたか分からなかったしな」

 

「はい、気が抜けない戦いでした」

 

反省をするアンチョビに、言葉を返す俺とみほちゃん。

 

実際、欺瞞作戦が成功していたら、アンツィオのノリに乗られて危なかっただろう。

 

ペパロニのうっかりとアヒルさん、ウサギさんチームの冷静な対応で助かった所だ。

 

そう言えばどちらのチームも初撃破だったな、後でうんと褒めておこう。

 

「次に来るのはきっとプラウダだ、我々も全力で応援するから頑張るんだぞ、叢真、西住!」

 

「あぁ、努力するよ」

 

「頑張ります!」

 

アンチョビの気持ちのいい声援に、握手をしながら返す俺達。

 

本当に、アンツィオは気持ちがいい選手が多くて気分がいい。

 

若干、身の危険を感じるが…。

 

しかし次はプラウダか…またあの6校とは、まぁ出場校の総数を考えると当たるのは仕方のない事なんだが。

 

今度は小細工が通用するような相手じゃない、辛い戦いになるな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖グロが黒森峰に敗北した。

 

その情報を聞いた俺の感想は、やっぱりか…と言う物だった。

 

聖グロは決して弱くない、だがOG会なる集団によって所有戦車に大幅な制限が掛けられている聖グロと、一切の制限のない黒森峰。

 

保有戦力の差で、ダージリンはまほさんに敗北した。

 

俺がアンツィオで叩きのめした時にOG会も考え直して、ダージリンの代でやっとクルセイダー隊を組織できたのだ。

 

逆を言えば、まーだOG会が頭の悪いこと言っているのである、ダージリンの苦労が伺える。

 

「長砲身にしたついでに、外観も変えておいたよ」

 

「F2ぽく見えますね!」

 

アンツィオとの試合も終わり、大洗は戦力の拡充に専念していた。

 

あんこうチームのIV号が長砲身に変更になり、見た目も秋山さんが言う様にF2型の様になった。

 

口径が大幅に上がり、長砲身なので射程と命中性も格段に向上した。

 

そしてルノーの修理が完了し、その搭乗者として風紀委員チームが新たに戦車道履修者に加わってくれた。

 

念願の重戦車、1両とは言えこれで選択肢の幅が増える。

 

戦力が増えた事で気合を入れ直す激を飛ばす河嶋先輩。

 

だが、1年生チームから相手は去年の優勝校、負けても次があると意見が出る。

 

「負けたら駄目なんだっ!」

 

「河嶋先輩…落ち着いて」

 

「っ…すまん」

 

事情を知るだけに熱くなる河嶋先輩を止める。

 

生徒会以外は、皆知らないのだ、敗北の先にある喪失を。

 

「勝たなきゃダメなんだよね…」

 

会長の呟いた言葉に、全員が黙り込む。

 

「みほちゃん、指揮を。練習を開始しよう」

 

「あ…はい、練習を開始します!」

 

「「「「「はいっ」」」」」

 

走り出すメンバー、会長に視線を向けると、小さく頷いて口を開いた。

 

「西住ちゃん、長野ちゃんも、後で大事な話があるから生徒会室に来て」

 

「あ…はい」

 

話す気になったか…。

 

練習を終え、武部さん達を見送った俺とみほちゃんは揃って生徒会室へ。

 

そこには、会長特製のあんこう鍋が準備されていた。

 

北緯50度を超えてすっかり寒くなってきたから鍋はありがたい。

 

河嶋先輩が会場をルーレットで決めるのは止めてもらいたいと苦言を呈するが、それは同意だ。

 

ただ、ルーレットで決まるからこそ、お互い見知らぬ土地での戦いをする事になる。

 

その点に関しては公平だ。

 

ただ、今回の会場は北、プラウダの得意とする寒冷地戦になる。

 

ルーレットでの決定が仇になった形だ。

 

用意されたテーブルがコタツなので、みほちゃんと並んで足を入れる。

 

どうしてこう、コタツには抗えない魅力があるのか…。

 

思い出話に華を咲かせる生徒会チーム、様々な行事の写真を見せてくれる。

 

どの写真も奇抜な事をやっているが、会長達は全員楽しそうだ。

 

だが、その言葉も止まる。

 

みほちゃんがどうしたのかと視線を彷徨わせると、鍋が煮えたと河嶋先輩が口にし、あんこう鍋を頂く事に。

 

……話せない、か。

 

あんこう鍋を頂き、みほちゃんと2人帰路に付く。

 

結局会長が言っていた話は聞けなかった、言えなかったのだろう、転校してきたばかりのみほちゃんの、これ以上の重荷になる事を。

 

大凡を推測している俺に何も言わないと言う事は、俺にも責任を負わせたくないのだろう。

 

全く、そんなに優しいなら無理してみほちゃんを引き込まなければ良いだろうに。

 

結局生徒会も、一杯一杯だったのだろう。

 

学校全体に関わる事、大きな喪失…廃校、か。

 

学園艦の維持運用には莫大なお金がかかる。

 

特に秀でた成績のない学園艦を廃校にして、その分のお金を他の学園艦やイベント運営管理に当てる…。

 

道理と言えば道理だが、それではいそうですかと納得出来るほど、会長達は大人じゃない。

 

そして…俺も、そこまで割り切れない。

 

「みほちゃん」

 

「はい?」

 

「俺は、自分が思っていた以上に、ここが好きらしい」

 

「……」

 

「世の中が嫌になって、逃げ出してきた先だが、案外居心地が良かった様だ」

 

「えっと…?」

 

「…何でも無い、ただの感想だ。帰ろう」

 

「あ、待って下さいよぅ」

 

帰り道で、みほちゃんに胸の内を明かす。

 

何だかんだで、皆に囲まれた今の生活を、俺は好きになっていたらしい。

 

だからこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、俺に出来る事を。

 

そう思って、やってきましたプラウダ高校学園艦。

 

いやー、寒空の下のスカイダイビングは冷えるねー。

 

アンツィオでは身内のまさかのうっかりで大変な事になったが、今回は大丈夫だろう。

 

広場に降り立った俺を、偶々通りかかった戦車道履修者のニーナとアリーナが見つけ、カチューシャの元へ案内してくれている。

 

プラウダは厳格な部分があるから、アンツィオの様に熱狂的な歓迎は無いが。

 

それでも、ニーナ達は嬉しそうに俺を迎えてくれた。

 

こうも嬉しそうに出迎えられると、偵察で来た事が心苦しくなる。

 

だが俺は今は大洗の生徒、心を鬼にして情報を得なければ。

 

「ちびっ子隊長はこの先ずら」

 

「ありがとうニーナ」

 

小柄なのでついカチューシャにするように頭を撫でてしまうが、キャーキャー嬉しそうなので良しとしよう。

 

2人が案内してくれた通路の先にはカチューシャが来客を迎える部屋がある。

 

何度かお茶会をしている部屋だ。

 

その部屋に入ろうとして…背筋を通り抜ける悪寒に従い、コートを翻してバックステップ。

 

「ち…っ流石ですね、同志長野」

 

「何のつもりですか、ノンナさん…」

 

扉を開け、その右手にスタンガンを持って現れるノンナさん。

 

危な、なんて物を用意してるんだこの人。

 

「の、ノンナ!?何をしているのっ?ソーシャに失礼じゃない!」

 

「やぁカチューシャ、今日の歓迎は随分手荒いじゃないか」

 

「ち、違うのよソーシャ!?ノンナ!説明しなさいっ!」

 

扉の向こうで突然のノンナさんの行動にプリプリと怒るカチューシャ。

 

この様子だと、ノンナさんの独断らしいな。

 

「カチューシャ、同志長野は大洗からの偵察です。捕縛すれば、試合終了までこのプラウダで過ごす事になるんですよ?」

 

「え、そうなの?ソーシャ、大洗なんて聞いたことも無いような学校に行ってたの!?」

 

バレテーラ。

 

えー、なんでー、なんでもうバレてるのー…。

 

そしてノンナさんの発想がカルパッチョと同じだ。

 

「ダージリンが先のお茶会で教えて下さったじゃないですか」

 

「聞いてないわよっ!?」

 

「何度も説明しました」

 

おのれ、犯人はあの格言淑女か!

 

なんてタイミングでバラしてくれてんだ!

 

「ま、まぁいいわ、そう言う事なら仕方ないわね!ソーシャ、カチューシャを裏切った罪は重いのよ、罰として永遠のシベリア送りなんだからっ!」

 

「プラウダで卒業まで過ごす権利を与えるとの事です、良かったですね同志長野」

 

良くねぇです。

 

それって転校させられるって事じゃないですかやだー。

 

「すまないカチューシャ…だが許してくれ、俺はもう大洗の人間なんだ」

 

「ソーシャ…!」

 

「逃しませんよ、同志長野」

 

ノンナさんが指を鳴らすと、背後に人の気配。

 

最初から誘い込む気だったのか。

 

スタンガンまで用意している辺り、逃がす気がないらしい。

 

「あまり手荒な事はしたくありません…大人しくして下さい同志長野」

 

そう言って微笑むノンナさん…あの、貴女、なんでそんな嬉しそうなんですか?

 

凄い笑顔ですよね今。

 

「そうよ、ソーシャ、怪我したら危ないじゃない、大人しく捕まりなさい!」

 

相変わらず偉そうなのに良い子であるカチューシャ。

 

心配してくれてありがとうなカチューシャ。

 

でも大丈夫。

 

「逢えてよかったよ、カチューシャ…サラバだッ!」

 

「同志長野!?」

 

「ソーシャ!?いやぁぁぁっ!?」

 

窓を開いてその窓から身を投げる、3階の窓だから高いな。

 

背後からノンナさんとカチューシャ達の悲鳴が聞こえるが、構わず雨樋を掴んで滑り降りる。

 

手袋してて良かったー。

 

「ちっ、流石の身体能力ですね同志長野…追いなさい!」

 

「Понятно!」

 

「ソーシャ…ソーシャぁぁぁっ!」

 

元気でな、カチューシャ!

 

また試合で会おう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳で、プラウダの戦車の写真と情報」

 

「盗ってきたんですかっ!?」

 

「長野殿、私より無茶してるじゃないですかー!」

 

「あらまぁ、こんなにボロボロに…」

 

「ちょっとちょっと、怪我してないでしょうねー?」

 

「……映画のスパイみたいだな」

 

大洗に辿り着いて盗ってきた情報をみほちゃんに渡したら、驚かれた。

 

いやはや大変だった、あの後戦車倉庫に忍び込んで、資料を漁って、写真撮って逃げてきた。

 

久々に本気出して逃げたが、いやぁ戦車道履修者って何であんなにパワフルなんだろうね?

 

アンツィオの生徒もだけど結構人間離れしてる子居るよね。

 

バケモノ言われてる俺が言うのもアレだけど。

 

そう言えばみほちゃんも、荒れ狂う川に水没した戦車から何人も助けてるんだよね…。

 

あれ、それ考えると俺別に普通じゃないか?

 

「コートがボロボロじゃない、ほらかして、綺麗にしてあげるから」

 

「ありがとう武部さん」

 

「あ、あれ、今の流れってなんだか良妻賢母って感じじゃなかった!?」

 

うん、言わなければ良妻だったね。

 

「あ、擦り剥いてますよ、ここ」

 

「痛…、擦ったかな」

 

五十鈴さんに突かれてじんわりとした痛みが走る、狭いダクトの中這いずったりしたからなぁ。

 

「あ、私医療キット持ってますよぉ!」

 

「手当しましょう、はいこちらに座って下さい」

 

秋山さんが愛用の鞄から医療キットを取り出し、五十鈴さんが手当してくれる。

 

「何にせよ無事で良かったぞ」

 

「何度か身の危険を感じたけどね…」

 

別の意味で。ノンナさんとかノンナさんとかノンナさんから。

 

俺の本能が言っている、ノンナさんはカルパッチョと同じカテゴリーだと。

 

逆にカチューシャはペパロニと同じだ。

 

「うん…これだけ詳細な情報があれば…ありがとう長野さん!」

 

「試合になったら俺は何も出来ないからな…この位何てことはない」

 

少しでも試合の助けになるなら、俺も派手な潜入作戦を決行した意味がある。

 

しかし試合の日が怖いなぁ…カチューシャ泣いてなければ良いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合当日、会場は雪が降りしきる雪原地帯。

 

あまりの寒さに凍える生徒も居れば、元気に遊び回る生徒もいる。

 

こらこら1年生チーム、雪合戦は良いがちゃんと補充済ませたんだろうな。

 

歴女チームも雪像作ってないでちゃんと準備…どうやって作ったその信玄像!?

 

「小山先輩、これも各車両に積んでおいて下さい」

 

「はい?なにかなこれ」

 

「簡単なサンドイッチと、シチューです。長期戦になったら食べて下さい」

 

視界の悪い雪原での戦い、長期戦になる事も予想される。

 

いや、戦力差を考えると長期戦に陥る可能性のほうが高い。

 

「ありがとう、助かるよぉ!」

 

「人数分たっぷりあります、シチューは温めて食べて下さい」

 

「分かったわ、みんなー、長野くんが手料理作ってくれたわよー!」

 

「えっ、先輩の手料理!?」

 

「食べたい食べたい!」

 

「ダメよ、試合が長引いたら食べる分よ!」

 

「長野殿の手料理か、これはクるものがあるな」

 

「愛を感じるぜよ」

 

「コーチの手料理!これは気合が入ります!」

 

「いいから積み込んでくれ」

 

何だか妙に人気だが、ただのサンドイッチとシチューだぞ、シチューは鶏肉とジャガイモたっぷりの普通のだし。

 

そんな準備を進めていると、プラウダの車両がやってきた。

 

試合前の挨拶か、こういう所は確りしてるからなぁカチューシャも。

 

車を降りてきたのは案の定カチューシャとノンナさん。

 

2人とも俺に何か言いたそうだが、その視線を会長が遮ってくれる。

 

「やぁやぁカチューシャ、会長の角谷だ」

 

「……ノンナ!」

 

「はい」

 

手を差し出す会長に対して、カチューシャは見下されるのを嫌ってノンナさんに肩車してもらう。

 

「あなた達はね、全てがカチューシャより下なの、戦車も技術も身長もね!」

 

流石に身長は無理があるぞカチューシャ…そんな肩車状態で言っても。

 

「唯一上な点を挙げれば、それはソーシャが居るって事だけよ。でもね、ソーシャはカチューシャの物なの、そうでしょノンナ!」

 

「はい、その通りです」

 

いや、俺は俺の物であってカチューシャの物じゃない。

 

あぁほら、誤解した1年生が先輩ロリコン…!?って目で見てくるじゃないか、違うんだ澤君、俺にそんな趣味はないから裏切られた!って顔しないでくれ!

 

逆に何で阪口と宇津木と大野は嬉しそうなんだ、もしかして自分達がロリ枠だと自覚してるのか…?

 

「試合に勝ったら、ソーシャは返して貰うからね!行くわよノンナ!」

 

「はい。同志長野、お部屋を用意しておきますね」

 

何の部屋。

 

やっぱりカルパッチョと同じ匂いがするぞノンナさん…信じてたのに…。

 

カチューシャ達が去った後、最後のミーティングを行うが、みほちゃんの慎重に行くと言う作戦に対して、一気に攻めようと言う意見が全員から出てくる。

 

これは…不味いな。

 

サンダース、アンツィオに勝ってきた事で、自信が付いたのは良いが、余計な驕りまで付いて来てしまった。

 

こうなると指揮が機能しなくなる、だが否定すると士気が下がる。

 

こういう時は、俺が嗜めるしかないな。

 

「全員待て、いくら相手が舐めているとは言え、それは実力が裏付けした強者の特権だ。舐めているからと言って迂闊に飛び込めば、どんな罠が待っているか分からないんだぞ」

 

「ですがコーチ!」

 

「勢いは大切だってアンツィオの人達も言ってました!」

 

それは何時もノリと勢いで突き進むアンツィオ生徒だから許される事であって、俺達が真似したら怪我じゃ済まないんだぞ…。

 

「……分かりました、一気に攻めます」

 

「みほちゃん…?」

 

「長野さんの懸念も尤もですが、勢いは大切です、皆が勢いに乗っている間に勝負を決めます…長引けば雪上での戦いに慣れた向こうのほうが有利になりますから…」

 

それはそうだが…いや、隊長であるみほちゃんが決めたならこれ以上俺が口を挟む事が出来ないか…。

 

会長達の後押しもあり、一気に勝負に出る事に決まった。

 

「全員、勢いも良いが決して前に出過ぎるなよ、プラウダは引いてからの攻防が強い、誘い込まれたら終わりだと思うんだ」

 

「分かってますコーチ!」

 

「大丈夫ですよ先輩、見ていて下さいね!」

 

「長野殿はどっしり構えて私達の勝利を待っていればいい、安心しろ、あんなちびっ子には渡したりしないからな」

 

念押しするが、通じてるのかいないのか…。

 

何にせよ、後は俺には待つしか出来ないな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、長野さん。会いに来て下さったの…あの、長野さん?」

 

「長野さん…え?これを私に?良いんですか?わぁ、美味しそうなサンドイッチ…」

 

「あの、長野さん、私の分は…あの、どうして視線を合わせて下さらないの?ねぇ長野さん?ちょっと?」

 

「ありがとうございます、頂きますね」

 

「どうしてペコにだけ…長野さん、私何か貴方を怒らせる事したかしら?え、自分の胸に聞け?ちょ、本当に怒ってますの長野さん!?」

 

「ダージリン様…一体何をしたんですか、長野さん怒ってましたよ?」

 

「ご、誤解よペコ、私何も怒らせるような事なんて…あぁ、何てことなの、一体何が…長野さん、どうしてなのぉぉぉ…!」

 

 

 

 

 

人の秘密をペラペラ話す人には差し入れはあげません。

 

 

 

 

 

 

 

 




ダージリン様は弄られてこそ輝く、そんな風潮(´・ω・`)ハヤレ

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