(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる! 作:大目玉
シーダはリブローで応急手当をした後、近くの砦に運んだ。服を着替えさせて体を拭く間に、一番広い部屋にベッドを運ばせ、そこに寝かせる。
「ひどい傷でしたが、一命は取り留めました」
レナがそう言ったので、俺はようやく安心した。それが夕方の出来事だ。
俺はシーダのベッドのそばに椅子を置いて座っている。さすがに俺の手当てももうすんで、服も着替えていた。戦後処理はいい機会だからニーナに押しつけた。半日やそこらは様子を見てもいいだろう。
シーダが目を覚ましたのは、日が沈んでだいぶ時間が過ぎた頃だった。シーダは何秒間かぼんやりと天井を見ていたが、俺に気づいてこっちを見た。
「ガザック様……」
こいつが目を覚ましたら、きつく叱ってやる。そのつもりだったのに、俺の口からはそういった言葉がひとつも出てこなかった。俺らしくねえ。いや、疲れてるせいだ。
「戦には勝った」
ようやくそれだけを言った。シーダは微笑を浮かべた。
「おめでとうございます……」
「俺も無事だ。お前のおかげでな。だが、あんな真似は二度とするな。わかったか」
「気をつけます」
「わかりましたと言え」
「……わかりました」
シーダはわずかに首を動かして頷いた。俺は何だか腹が立ったので、毛布の上からシーダの股間を軽くつついてやる。
シーダが微妙な顔になったのを確認すると、立ちあがった。
「ゆっくり休め。俺はまだまだお前を抱き足りねえんだ」
そこでもう立ち去ってもよかったはずだが、どうにもすっきりしない。シーダを見下ろして、言った。
「……ありがとよ」
礼の言葉一つにどれだけ時間をかけてるんだ、まったく。ガキか。
シーダの顔は見ず、俺は足早に部屋を出た。
外で待機していたレナが、俺を見た。
「シーダ様は?」
「目を覚ました。後は任せる。応援はいるか?」
「私一人で大丈夫です。ウェンデル様はニーナ様のお手伝いをしてらっしゃいますから。ガザック様も休んでください」
レナと別れて、俺は一人で廊下を歩く。さすがに今日はまいった。まだ体中が痛え。
デビルアクスはウェンデルのジジイに預けた。あの時は勢いで何とかしたけど、ぶっちゃけあれ怖い。意識乗っ取り系の武器じゃねえか。そんなとこまでベル○ルクを真似なくていいんだよ。
いっそ捨てようかとも思ったが、二度と手に入らねえし、よくある怪談みたいに俺の部屋に勝手に戻ってきそうな気もするし、ウェンデルのところに置いておくのが一番だ。あれが必要になる時は二度と来ないでくれ。
俺は自分の部屋に入ると、ベッドに転がる。礼を言えたからだろう、いくらか気分はすっきりしていた。
俺は、すぐにいびきをかいた。
数日が過ぎて、シーダはすっかり回復した。もうペガサスに乗って空を飛ぶことも問題なくできる。胸のあたりに傷跡は残っているが、それもいずれは消えるだろうというのがレナの見立てだ。もちろん俺も回復した。海賊らしく肉を食いまくったからな。さすがに傷が痛くて女を抱くことはできなかったが。
ニーナは戦後処理をまあまあ頑張ったが、やっぱりと言うべきか未処理の案件がそこそこ残った。俺はハーマインが使っていた城に拠点を移し、執務室の椅子に座って、シーダに手伝わせながらそれらを片付けた。
「そういや、聞きたかったんだが」
書類仕事を終えた後、俺はじろりとシーダを睨みつけた。
後で知ったことだが、シーダは派手にやられたマチスの姿を見て、すぐに異常事態だと認識したらしい。途中までしかマチスに同行せず、遠くにヴィクターたちの姿が見えたところで、俺のもとに引き返したのだそうだ。
「お前、なんで体を張ってまで俺を助けた?」
デビルアクスを投げたのはいい。いや、あれも冷静に考えると、瀕死の人間に斧をぶん投げるのはどうかと思うが。まあ非常事態だったし、あれはいいんだ。
だが、ハーマインの背後に回りこんだのは理解できねえ。
「そこまでする理由はねえだろ。お前からしてみれば、俺にはせいぜい苦しんでくたばってほしいはずだ」
シーダは俺に睨みつけられても怯まなかった。自分の胸に手を当てる。思いを言葉にしようとしているように見えた、というのは気のせいだろうか。
「きっと、ガザック様のことを信じているからです」
俺はかなり間の抜けた顔をしたと思う。
レナも、この前そんなことを言ってたな。何考えてんだ、こいつらは。目にハートとか浮かんだりしてねえだろうな。うん、してねえ。
じゃあ、俺たちのこの関係で、なんで信じるだのという言葉が出てくる?
困惑していると、シーダは続けた。
「ガザック様は、タリスをお父様に任せるという約束を守ってくれました。もしもガザック様が死んだら、タリスが再び脅かされることくらいは私にも分かります。私が死んでも、ガザック様はきっとタリスを守ってくれるということも」
俺は眉間に皺を寄せて、少し考えこむ。
間違ってはいない。少なくともここで俺が死んだら、結成されたばかりの同盟軍は消えちまう。ニーナに海賊や山賊を統率できるわけがねえ。そうなれば、ドルーアはオレルアンとタリスに兵を向けるだろう。
そして、同盟軍として動く以上、タリスは大事な支援拠点だ。守るのは当然だ。
俺のことを信じている、っていうのは、そういうことか。
「ただ……今申しあげたことが本心なのは間違いないんですが、後になって、冷静になってから考えたことです。あの時の私は、とにかくガザック様を助けないと、何とかしないと、ってそのことだけを思っていました。自分でも不思議に思うくらい……。レナとニーナ様から、どうしてあんな無茶を、って叱られて……」
俺は慌てて気を引き締める。
ちょっといま、勘違いしそうになった。
こんな美少女が自分を助けるためにそこまで命懸けで必死になったとか、惚れちゃうだろ。
こいつが天然の説得上手だって知らなかったら。
「紋章の謎」をやりこんでいたころ、俺はシーダの説得について考えてみたことがある。あれだ、強さ議論をクソ真面目に考えたりするのと同じ感じ。
DSの新・紋章の謎でマイユニに「そ、そんな説得の仕方を……」と呆れさせていたあたり、公式からもネタ扱いだが、しかし考えてみてほしい。
寝返ったということは、どんな言い回しだろうと、その言葉が相手に届いたということだ。相手を突き動かすものだったということだ。
たとえばカシム。あいつの台詞から寝返った理由を並べると「裏切りを不問にしてもらった」「金をもらった」「母親を気遣ってもらった」の三つだ。エンディングでも親と一緒に暮らしていると書かれるあたり、家族思いなのは間違いないんだろう。だからこそ、シーダの説得は刺さった。
次にナバール。あいつの場合は「命を賭けてまで俺を欲しいというのなら」だ。以前に言ったようにただの女好きのかっこつけの線も捨てちゃいないが、誰かに雇われるなら、お前の剣の腕がほしいと身体を張って意思表示してくれる、それぐらいの相手じゃないと、自尊心が許さなかったのかもしれない。
FC版だが、ロジャーの場合は「友達が欲しいから」だった。シーダと一対一でおしゃべりができたってことは、ロジャーはぼっちだったってことだろう。親が死んで恋人もおらず、国を裏切るのは嫌だってだけで、好きで戦ってるわけでもなく、寂しさを募らせていたわけだ。
たぶん、シーダは相手が求めているもの、それを持ちだされると弱いというものを、直感でつかみとれるんだろう。
以前、そういうやつを見たことがある。小一時間ほど話しただけで、こっちの好みとか、求めているものをほぼ正確につかむやつ。
シーダもそういうタイプだと思う。
ただ、こいつが分かってないことがある。
俺は立ちあがると、シーダを正面から見据えてその胸を両手で掴んだ。今のこいつは金属製の胸当てをつけてないからな。最初の時より大きくなったかな? うわははは。
「な、何をなさるんですか……?」
シーダは羞恥に顔を赤くしながらも、健気に耐えて逃げようとはしない。俺はむにむにとその感触を楽しみながら言った。
「あのな、お前が死んだら駄目なの。まずいの。えらいことになるの。分かる?」
シーダはふるふると首を横に振った。乳首擦ってやろうかこいつと思ったが、ちょっと真面目な話になるので手を止めてやった。シーダはほっと息をつく。いや、手はまだおっぱいから離してねえよ?
「お前さ、親父に愛されてるだろ。タリス民にも」
こんな状況でも、さすがに正面から褒められると照れるのか、シーダはうつむいてこくりとうなずいた。
「タリスが俺たちを支援しているのは、もちろん俺のためじゃねえ。ニーナのためでもねえ。お前がいるからだ。お前がもし死んだら、タリスはその怒りを当然俺にぶつけてくる」
オレルアン王を、俺は思いだした。ハーディンを殺した俺を恨み、あの短い期間で反乱軍を組織してみせたあのジジイ。あいつでさえ、あれだ。
俺はタリスを焼き(細かいこと言うと、焼いたのは俺が目覚める前のガザックだが)、多くの要求を押しつけ、シーダを妾妃として奪った。
俺がタリス王の立場なら、こいつはただ殺すなんて生ぬるいって思うね。頭から皮を剥ぎとり、足からは一寸刻みに肉を削ぎ、長い時間をかけて死に至らせるとかやるね。蒼○航路みたいに。
あいつ、ロレンスの力を借りてとはいえ、戦いを重ねてタリスを統一した豪傑だろ。グルニアに味方して、軍の先頭に立って剣を振りあげて向かってくるとかやりかねねえぞ。
「たしかに、俺にとってもタリスは大事だ。手荒な真似はしたくねえ。だが、そのタリスが反旗を翻したら、力ずくでおさえつけなけりゃならねえ。オレルアンがタリスに呼応したらまずいから、容赦はできねえ」
再び派手に燃やすことになる。
「分かるか? タリスが大事なら、お前は万が一にでも死んだら駄目なんだ。そうなったら、どうにもならねえ。あの戦いでは、お前が駆けつけてくれたから助かった。お前がいなかったら死んでいた。それは間違いねえ。だが、今度からは俺が死にそうでも放っておけ」
あれ、これ考えてみるとけっこうハードじゃね。
マルスだったら、たとえシーダが死んでも、エンディング時に会話が変わるだけだ。マルス以外は誰が死んでも先に進むことができる。
俺はそうじゃねえ。
うん、一度真剣に考えないとまずいかもしれん。勝利条件が違う。
「ですが……」
シーダがまだ何か言おうとしたので、俺は自分の口でこいつの口をふさいで黙らせた。甘い匂いが漂ってきて股間がうずいた。
今日はもういい。明日明日。
俺はシーダの胸から手を離すと、すばやく抱きあげた。
「決めた。いまから夜明けまでお前を可愛がってやる」
「こ、こんな明るい内からですか」
「夜にならないと濡れないわけじゃねえだろう」
俺たちは部屋を出て、寝室へと向かった。
ガザック軍編成
ガザック シーダ アイルトン
海賊 海賊 カシム
レナ ヴィクター 戦士
戦士 マチス ニーナ
リカード ウェンデル バヌトゥ