(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

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「プリンセス・ミネルバ」1

 ディールというのは、サムスーフやレフカンディなどと並ぶ、アカネイアの五大侯爵家の一つだそうだ。

 そのディール家が治めていた領地は、そのままディール地方と呼ばれている。俺たちが着いたこの一帯もそうだ。要塞があることからも、軍事的にけっこう重要な場所らしい。ここをおさえておけば、アカネイア攻略はだいぶ楽になる。

 

 

 俺はいま要塞の北にある崖の上にいた。鍬だの鋤だのといった農具を使って地面に溝を掘り、文字を書いている。海賊の体力をもってすれば余裕だと思ったが、けっこうつらい。

 やっぱり手下どもに手伝わせるべきだったか。だけどここまで来るのって、歩きだと森を抜けて崖を登らないといけないからな……。

 ある程度作業が進んだところで、シーダが俺のそばに降りてきた。こいつには、俺が書いている文字を上空から確認してもらっていた。

 

「どうだ?」

 

「はい、これならたしかにペガサスやドラゴンに乗っていても気づくと思います」

 

 そう、俺の書いている文字は、マケドニア兵たちに見せるためのものだ。

 

「マリアは助けた」という一文だが、これだけでもかなりきつい。とっくに汗だくだ。SOSって、たった三文字で伝えたいこと伝えてるんだからすげえわ。

 

「でも、これは本当に効果があるのでしょうか」

 

「わからねえ。やらねえよりはいいだろ」

 

 俺の狙いは、とにかくミネルバを攻撃に参加させないことだ。

 ゲームなら、ミネルバは攻撃してこない。だが、俺たちの場合はわからねえ。とにかくあいつをおさえるために手を打っておく必要があった。

 

 どうにか文字を書き終えると、掘った溝に石を埋めて、よりはっきり読めるようにした。かなり時間かかったぞ……。

 俺はシーダの後ろに乗って崖向こうの本陣に戻った。

 テントで休んでいると、ニーナとレナがやってきた。

 

「用意できました」

 

 二人は五十枚ぐらいの羊皮紙を分担して抱えていた。俺はその一枚を手に取る。綺麗な文字で「マリア王女は我々同盟軍が救出した」と書かれている。

 

「よし。あとでシーダにこれをばらまかせるぞ」

 

 ここに来るまでに多少情報を集めてみたものの、ミネルバの戦い方はよくわからなかった。だから、最悪の場合として、俺は脳筋と仮定した。違うことを祈る。

 で、脳筋だと地面の文字に見向きもしない可能性があるので、こういうものも作らせたのだ。とにかく多方面から訴えるしかねえ。

 手下どもにも、ミネルバらしきドラゴンナイトが近づいてきたら「総指揮官がマリア姫を救出に向かったぞ!」と大声で叫ぶように命じてある。

 

 俺はレナに水を持ってこさせて一気に飲むと、主だった連中を呼んだ。ここの地図はもう用意してある。マチスとリカードに偵察させた上で、俺の知識も合わせてつくったものだ。

 マチスはなんだかんだ言いつつちゃんと働いている。まさかこいつが主力になるとは、読めなかった、このリ○クの目をもってしても、って感じだ。

 

「いいか。この要塞を管理しているのはグルニアのジューコフだ。そろそろ俺たちに気づいて迎撃の兵を出すだろう。そこで兵を二手に分ける」

 

 敵の拠点からまっすぐ飛んでくるマケドニア軍を撃退するのはカシムやアイルトンに海賊連中だ。他の奴らには南下してソシアルナイトを迎え撃ってもらう。

 闘技場で雇ったエイブラハムとエステベスは、自分で判断できるだろう。

 新兵同然のカーツが率いるソルジャー部隊は、ヴィクターに面倒を見させる。

 

「状況次第では要塞に突入しろ。出入り口だけを確保して応戦するんだ」

 

 要塞を迂回して向かってくるのが、ゲーム通りソシアルナイト3ユニットだけなら、マチスにナイトキラーを持たせればいいんだが、何が起きるかわからねえからな。

 

「レナ。俺をワープで要塞の中に飛ばすことができるな?」

 

「可能ですが……」

 

 レナの顔を見ると、気が進まないらしい。シーダと同じでレフカンディからこっち、俺を心配するようになった。

 

「ワープで送ってしまえば、そちらの状況は分からなくなります。一人で無謀な真似を繰り返すことは、いいと思えません」

 

「いいからやれ。Mシールドもな」

 

 重要なのはマリアの扱いだ。多少の怪我を負ってでも、あいつを守らないといけない。逃がしてもいけない。となると、俺しかいねえ。今度は予測も立てたし、何とかなるだろ。

 俺たちは行動を開始した。

 

 

 レナがワープの杖を使う。

 次の瞬間には、俺は薄暗い部屋の中に立っていた。

 目の前には赤い髪をショートカットにした小柄な女の子。マリアだ。

 

「ひっ!?」

 

 そのマリアは俺を見ていきなり悲鳴をあげた。

 ええー。お前、マルスが来たときは(へぇー、ステキな人なんだ)とか心の中で言ってたじゃねえか。

 

「マリア姫だな?」

 

 俺は斧で肩をとんとんと叩きながら聞いた。

 マリアはあきらかに怯えている。俺が答えをじっと待っていると、少しは落ち着いたのかこくりとうなずいた。でも、ライブの杖をぎゅっと握りしめて、俺を滅茶苦茶警戒している。仕方ねえけど傷つくぜ。

 

「俺はガザック。アカネイア同盟軍の偉い人だ。お前を助けに来た。俺に従えば、ミネルバに会わせてやる」

 

「ミネルバ姉様に!?」

 

 姉貴の名前は効果覿面だった。マリアは目を輝かせて身を乗りだす。だが、すぐに思い直して後ずさりして、俺を睨みつけた。

 

「だ、騙されないわ! そうやってわたしをどこかに連れていって、ひどいことをする気でしょ!」

 

 俺は凶悪な感じを出して笑った。

 

「察しがいいなあ。俺はお前をものにしに来たんだ。ぐへへへへ」

 

 いや、レナにワープを使ってもらうまではそのつもりだったんだがな。

 実際のマリアを目にして、俺はどうしたもんかと思い始めていた。

 だって、ちょっと未成熟すぎね? こいつ何歳? さすがに十歳てことはねえと思うが……。もしかして人質生活でろくなもの食わせてもらえなくて痩せたとか?

 

 入るのかよ、これ。先っぽぐらいなら何とかなるかもしれないけどさあ……。いや、この体ですんなり入ったらそれはそれで嫌だけどさあ……。正直いって、もう三、四年は待ちたい。

 だが、今の時点でも使い道はある。

 マリアは今にも泣きそうな顔で俺を見ている。俺は言った。

 

「ミネルバに会わせてやる、ってのは嘘じゃねえ。ただし、俺についてくること、俺に従うことが条件だ。まだミネルバはグルニア軍にいるんでな。お前、今の情勢については知ってるか?」

 

「情勢……?」

 

「ミネルバは、本当はアカネイアのニーナ姫につきたいんだ。だが、グルニアの人質となっているお前の身を心配して、離れることができないでいる。ここまでは分かるか?」

 

 マリアはこくりと頷いた。

 

「さっきも言ったが、俺はアカネイアのえらいえらーいひとだ。どれぐらい偉いかっていうと、俺に命令できるのはニーナしかいないぐらい偉い」

 

「ニーナ様を呼び捨てにしていいの?」

 

 マリアは疑わしげな目で俺を見ている。信用ねえなあ、俺。

 

「そんな偉い人が、どうして私を助けに来たの?」

 

 たたみかけるように、マリアは疑問をぶつけてくる。怯えられるよりはマシか。

 

「お前の姉貴とは、戦うよりも味方につけたいからだ」

 

 それに、ミネルバさえ何とかものにしちまえば、マリアも、三姉妹も俺のものにできるからな。ぐふふふ。

 

 マリアは迷うようにうつむいた。少しだけ時間をやろう。こっちも急いじゃいるんだが、こいつに暴れられたらすべてがおじゃんだ。

 

「……ミネルバ姉様に、会わせてくれるのよね?」

 

 決意を固めた顔で、マリアが俺を見上げる。俺は念を押すように言った。

 

「お前が俺に従えば、だ」

 

「わかったわ。わたしは何をすればいいの?」

 

「上出来だ」

 

 俺は扉の方へ歩いていく。

 

「まずは、見晴らしのいい所へ出る。この要塞にいるグルニア兵を薙ぎ倒してな。お前は下がってろ。ただ、やばくなったらライブを頼む」

 一応、俺は銀の斧に鉄の斧に手斧を持ち、さらに傷薬と聖水も持ってきちゃいるが、ライブですむならその方がいいからな。

 じゃあ、始めるとするか!

 

 俺は勢いよく扉を開けた。

 物音を聞きつけて、スナイパーとアーチャーたちが向かってくる。数は実に5ユニット分。さらに魔道士が3ユニット現れた。

 俺の顔に笑みが浮かんだ。予想した通りだ。

 俺は手斧を持って部屋の外へ出る。

 

「来いや」

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