(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる! 作:大目玉
話がちょっと脇道にそれるが、配置されている敵やアイテムなどから、ストーリー上では説明されていない部分が何となく想像できるっていう経験をしたことはないか?
この要塞の宝箱の中身はドラゴンキラー、サンダーソード、リブローの杖だ。そして、配置されているユニットはアーマーナイトが2、アーチャーが2、スナイパーが1。
そろそろ強力な武器をプレイヤーに与えよう。
そろそろ新たな敵の上級職をお披露目しよう。
スタッフにそういう考えがあったのは間違いないだろう。ドラゴンキラーとサンダーソードというチョイスも、次の章でマムクートもとい竜族のショーゼンを出すからそうしたのかもしれない。
だが、ある時、これはミネルバ対策を示しているんじゃないか、と俺は思った。
ドラゴンキラーはドラゴンナイトに特効がある。サンダーソードは魔法防御皆無のドラゴンナイトに効果的だ。弓兵たちは言うまでもない。そして、ここのボスのジューコフは、冒頭でもマリアを盾に使ってミネルバを脅していた。それだけミネルバを警戒していたという解釈もできる。
ドラゴンキラーが宝箱に入っているのではなく、要塞の外の勇者が持っていたなら確信を抱いたんだが……。まあ、ドラゴンキラーってアーマーキラーよりダメージが四点高いしな。あとは、ミネルバが意外にアーマーナイトと仲がよかった可能性か。四章ボスのムラクとかそうだったし。
ともかく、俺はそう考えた。もしも要塞内の兵が増員されるとしたら、それは弓兵や魔道士だろうと。しかも、秘密の店でしか買えないサンダーソードがあることから、飛行ユニットに特効を持つシェイバーを用意するんじゃねえかと。
大当たりだ! ざまあみやがれ、ジューコフの野郎!
魔道士たちが一斉にシェイバーを放つ。だが、Mシールドが効いている俺にはたいしたダメージにならねえ。反撃とばかりに手斧をぶん投げて、たちまち魔道士たちを薙ぎ倒した。
お次はアーチャーとスナイパーだ。部屋の内側まで下がれば、1ユニットしか攻撃できねえ。案の定、スナイパーが突っこんできた。
俺は銀の斧に持ち替えつつ、スナイパーの一撃に耐える。さすが上級職だけあってかなり痛え。
マリアが俺にライブを使う。それを待って、俺は前に踏みこんだ。
スナイパーを一撃で屠る。壁と床が血で染まった。
要塞内の敵をかたづけた俺は、マリアを連れて要塞の屋上とでもいうべき場所に出た。そこで火を熾して煙を出す。マリアを助けたという合図だ。
思ったより時間がかかっちまったが、あいつらはどうしてるかな。
十分ぐらい過ぎたころ、一騎のドラゴンナイトが北からまっすぐ飛んできた。マリアの顔がぱっと輝く。飛びあがってマリアは叫んだ。
「ミネルバ姉様! ミネルバ姉様だ!」
「来たか。じゃあ協力してもらうぞ」
俺は後ろからマリアを抱きすくめると、左腕でおさえつけた。右手には鉄の斧を持つ。
「な、何をするの!?」
マリアは驚いて、呆然と俺を見上げる。俺はいやらしい笑みを浮かべて言った。
「言っただろ。今は黙って俺に従え。これから、俺はミネルバと大事なお話をするんだ。下手なことを言ってこじらせるな」
ほどなく、ミネルバが俺たちの前にやってきた。
「マリア!」
息を切らし、血相を変えて、ミネルバはマリアの名を叫ぶ。よっぽど急いで飛んできたようだ。戦士らしい凜々しさも相まって、シーダたちとはまたタイプの違う美人だ。そそるねえ。
マリアを離そうとしない俺を、ミネルバはキッと睨みつけた。
「あなたが……同盟軍の指揮官か」
「おう。未来の海賊王ガザックとは俺のことだ」
「……あなたの目的は何だ? 同盟軍の兵たちは、あなたがマリアを助けにいったと言っていたが」
ミネルバの目には怒りと疑惑と焦りがある。俺はあらためてマリアをしっかりおさえつけながら、単刀直入に言った。
「お前、俺の女になれ。マリアともどもな」
「なっ!?」
「えっ!?」
ミネルバとマリアが同時に大声をあげた。俺はかまわず続けた。
「聞こえなかったか? 俺の女になれ、って言ったんだよ。俺が望んだら股を開いて奉仕しろ。体中を使って俺を楽しませろ。もちろんそれ以外でも役に立ってもらうが、お前たちが最優先すべき仕事はそれだ」
「ふ、ふざけるなっ!」
ミネルバが怒りに顔を赤くして叫んだ。持っていた手槍を握りしめる。肩がぶるぶる震えていた。ミネルバが乗っているドラゴンも俺を敵と見做したのか目つきが鋭くなってる。ちょっとびびる。爬虫類の目って怖い。
「ふざけてなんかいねえよ。本気だ、本気」
「ミ、ミネルバ姉様! わたしのことはいいからこの男を……!」
「黙れって言っただろうが」
俺はマリアをおさえつけている手を動かして、その左胸を乱暴に揉んだ。
「きゃーっ! いやーっ!」
「貴様! いますぐその汚らわしい手を離せ!」
やっべ、つい、いつものノリでやっちまった。
「わかった、わかった。お堅いミネルバ姉様のために真面目な話をしてやるよ。だからその槍を下ろせ。マリアが心配だろ? な?」
必死になだめすかして、ミネルバが武器を下ろすのを、俺は十秒ほど待った。多少は冷静になっただろうか。
「お前さ、自分の置かれた状況をいいとは思ってねえだろ? 大切な妹を人質にとられ、ならば手柄をたてて取り戻そうと思ってみたら、それもかなわなかった。これは俺の推測なんだがな……。お前、オレルアン攻めの途中で、無理矢理後方に戻されたんじゃねえか?」
ミネルバは驚いた顔で俺を見たが、すぐに警戒する表情に戻った。
「なぜ、そう思う?」
「マリオネスがお前のことをえらく尊敬していたんでな。ああ、ムラクもそうか。そこから俺なりにあれこれ考えた」
俺が二人の名を出すと、ミネルバは顔を曇らせた。
「ムラクがオレルアンで、マリオネスがレフカンディで戦死したのは聞いている。……二人の戦いぶりはどうだった?」
「ムラクは俺の部下が討ちとったんで、よく知らねえ。最後まで城門を守り通そうとしたのは聞いている。マリオネスは俺が討った。言っておくが、戦場で堂々と戦ってだぞ。強かった。しかもハーマインと組んで二人がかりで来やがってな。死ぬかと思った」
「そうか……」
黙祷するように、ミネルバは目を閉じる。ふと見ると、マリアも同じようにしていた。マリアもマリオネスたちのことを知っていたんだろう。
ミネルバが目を開けるのを待って、俺は言った。
「お前、あいつらを率いてオレルアンを攻めたんだよな」
ミネルバが頷く。俺は続けた。
「だが、オレルアン城を占領したにもかかわらず、王弟ハーディン、オレルアン王、そしてニーナというどでかい大将首を三つも残したまま、お前はマリオネスたちに後を任せてオレルアンから姿を消した。ずいぶん中途半端じゃねえか」
マリアを人質にとられているから仕方なく戦ったので、ミネルバは戦意に乏しかったって説があるが、正直俺は疑問に思ってる。
アカネイア戦記では「オレルアンはミネルバの指揮する竜騎士団によって領土の大半を失った」と書かれているからだ。戦意の乏しい指揮官の率いる軍に蹴散らされるほど、オレルアンの軍は弱いのか?
アカネイア戦記は別物だから根拠としては弱いかもしれない。
だが、オレルアン城をミネルバが落としたのは確かだ。ムラクが「この城はミネルバ様からのあずかりもの」って言ってるしな。他の奴が攻略したなら、城の管理をミネルバの部下には任せないだろう。
城を落とし、ハーディンたちをあそこまで追い詰めて、なんで急にいなくなる?
せめてハーディンかニーナのどっちかを捕らえるなり討ちとるなりするまでは、オレルアンにいるべきだろう。こいつがそれを嫌がったとは思えねえ。