(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

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「ノルダの奴隷市場」4

 城下町を出て、俺たちは北上する。先行していたミネルバたちと合流した。

 

「状況はどうだ?」

 

 俺はミネルバに聞いた。

 

「敵に動きはない。不気味なほど静かだ」

 

「援軍は?」

 

「一度シューターの射程外まで見てきたが、援軍が現れた様子はないな。それで、どうやって突破する? 城門を守るシューターを潰せば、火竜とスナイパーが襲いかかってくる。かといって、南から回りこもうとすればシューターの餌食だ」

 

 さすがにミネルバも攻めあぐねているようだった。シューターの持つクインクレインはペガサスナイトやドラゴンナイトにとって脅威だからな。

 

「ここはいっちょ派手にいく」

 

 俺は笑って答えると、軍の後方の、負傷者や非戦闘員が集まっているところに向かった。バヌトゥはすぐに見つかった。マリアと何やら話している。俺に気づいて顔を上げた。

 

「何を話してたんだ?」

 

 俺が聞くと、バヌトゥは短く答えた。

 

「飛竜の話だ」

 

「バヌトゥさんは竜のことにとても詳しいの。マムクートだって聞いて、納得したわ」

 

 マリアも笑顔で言った。俺はマリアを見下ろす。

 

「竜族だ。このジジイのことを嫌いじゃないなら、そう呼んでやれ」

 

 意味が分からなかったらしく、マリアは首をかしげる。マムクートって、何百年も前から一般用語化してるんだっけか? 響きは嫌いじゃねえんだがな。俺はマリアに言った。

 

「マリア。お前んとこの先祖のアイオテは、かつて奴隷だったそうだな」

 

 急に話が飛んだと思ったのか、マリアはきょとんとした顔のまま頷いた。

 

「じゃあ、お前とミネルバのことを、これからずうっと奴隷の子孫て呼んでいいか?」

 

 俺の言いたいことが分かったらしい、マリアはさっと顔を青くして、バヌトゥに「ごめんなさい」と謝った。バヌトゥは気にしていないというふうに、マリアの頭を撫でる。それから、バヌトゥは俺を見上げた。

 

「……わしの出番かな」

 

 察しがいいな。伊達に年はくってねえってか。

 

「敵に火竜がいる。倒せとはいわねえ。引きずりだしてくれ」

 

 

 バヌトゥは、敵のシューターの射程外ぎりぎりのところに立った。懐にしまっていた火竜石を取りだし、握りしめて掲げる。呪文めいた何ごとかを呟いた。

 次の瞬間、バヌトゥの周囲に風が巻き起こった。バヌトゥの目が光を放つ。火竜石から炎の帯が噴きだして、その体を幾重にも取り巻いた。

 バヌトゥが白い光に包まれる。猛烈な突風に俺は吹き飛ばされて、地面に転がった。

 立ちあがった時、さっきまでバヌトゥが立っていた場所には、体長五、六メートルはあるだろう巨大な竜がたたずんでいた。全身が燃えているように赤い。かなり離れているはずなのに熱を感じる。

 

 離れたところで様子を見守っていた兵たちは呆然としている。俺は振り返って叫んだ。

 

「驚いたか! すげえだろう! こいつは、お前らも知っているあのバヌトゥだ! 見ての通り、こいつは竜族だったんだ! 俺たちに力を貸してくれるこいつを、マムクートなんて呼ぶなよ。片耳を切り落としてやるからな!」

 

 俺はバヌトゥを振り返る。俺の視線を受けて、バヌトゥはのそりと歩きだした。ずしん、ずしんと一歩ごとに地面が揺れ、足に振動が伝わってくる。シューターが慌てて攻撃したようだが、たぶん鱗を傷つけることはできなかっただろう。バヌトゥはかまわず前進する。

 

 シューターとの距離を詰めたバヌトゥは、咆哮をあげた。雷鳴にも似た轟音だった。バヌトゥの口から紅蓮の炎が吐きだされ、シューターをあっという間に焼き尽くす。炎はそれに留まらず、シューターの周囲までをも火の海に変えた。壮絶な光景に、俺は唖然として立ちつくす。言葉が出てこなかった。

 

 この目で見ると、恐ろしさがよく分かる。火竜でさえ、これだ。なるほど、竜を恐れるようになるわけだ。だが、恐ろしいって感想だけじゃあない。正直、俺は見入っていた。ゴ○ラしかり、大怪獣が暴れまわるのってロマンだよな。

 だが、あまり見入っている余裕はなかった。敵の火竜ショーゼンが現れたのだ。

 ショーゼンが炎を吐き、バヌトゥも対抗して炎を吐く。あたり一面が再び業火に包まれた。遠く離れたここからでも分かるほど炎が激しく踊り、黒煙がいくつも立ちのぼる。二つの咆哮がアカネイアの空に響き渡る。すげえぜ! 怪獣大決戦だ!!!

 バヌトゥが尻尾の一撃でショーゼンをよろめかせれば、ショーゼンは体当たりでバヌトゥに反撃する。地面が揺れる。土埃がすさまじい。

 頭突き、引っかき、炎、炎、めくるめく炎。地面の焼け焦げる匂いがここまで届いてきそうな錯覚を抱く。俺は手に汗握ってバヌトゥの戦いぶりを見つめていた。

 

「ガザック様?」

 

 いつのまにかそばに来ていたシーダの声で、俺は我に返った。おっと、いかんいかん。

 俺は急いでシーダのペガサスの後ろに乗った。シーダが手綱を握りしめて、俺たちは空に舞う。バヌトゥたちに近づいていった。とはいえ、炎が届く距離まで近づきはしねえ。俺たちの存在をバヌトゥに気づかせることができればいいんだ。

 バヌトゥは俺たちに気づき、慎重に後退をはじめた。それを怖じ気づいたとみたのか、ショーゼンは猛然と追いすがってくる。

 

 パレスの近くにいる敵のスナイパーが動く気配はねえ。怪獣大決戦に巻きこまれるのを避けたんだろう。おかげで、ショーゼンを釣りだすことができた。

 バヌトゥは後退を続ける。ドラゴンキラーを持ったミネルバと、サンダーを持ったエステベス、そしてオーラを持ったリンダが待ちかまえているところに。

 ノルダで俺に犯されてから数日しかたってないってのに、リンダは張り切って戦列に加わった。俺という悪人から自分を助けようとしたニーナの態度に感激したり、俺という悪人に体を差しだしてでもパレスを取り戻そうとしているニーナの態度に感動したりしたらしい。

 城下町を出る時、こいつは俺に指を突きつけて言ったもんだった。

 

「ガーネフもメディウスも私が倒してみせるわ! ニーナ様があんたみたいな人間のクズに頼ることのないようにしてみせるんだから!」

 

 ガーネフはともかく、メディウスは無理じゃねえかなあ。奴の地竜としての能力と魔法防御から考えて。

 ともかく、こいつが元気に戦ってくれることは俺にとっても有り難い。とにかく急いで鍛える必要もあったんで、渋い顔のニーナを説得して、戦場に出した。

 ちなみに俺はブリザーを使わせるつもりだったんだが、リンダはオーラにこだわった。まあ命中率は変わらねえしな。

 

 バヌトゥが足を止め、炎を吐いてショーゼンの視界を奪う。そこへミネルバがドラゴンキラーで斬りつけた。火竜の固い鱗を、ドラゴンキラーはあっさり切り裂く。ショーゼンは悲鳴をあげ、炎を吐き散らす。ミネルバはかろうじてそれをかわした。

 そこへエステベスとリンダが魔法を叩きこむ。雷撃がショーゼンの頭部を撃った。

 

「オーラ!」

 

 リンダのてのひらが光に包まれ、それに呼応するかのようにショーゼンの足元が光り輝いた。そして、天を突かんばかりに光が噴きあがる。天と地をつなぐ光の柱の中で、ショーゼンの絶叫が響き渡った。

 

「メディウス陛下、お許しを……」

 

 

「なるほど……」

 

 俺はおもわず唸っていた。こいつが自信満々で言うだけのことはある。これならガーネフとも戦えるかもしれないと、マフーのことを知らなければ期待しちまうほどの、すげえ威力だった。

 光がほどなく消える。火竜の姿もまた、消えていた。俺はシーダに言って、ショーゼンが立っていたあたりへ向かう。

 そこには、焼け焦げた小柄な老人の死体があった。

 死んで、戻ったのか。

 火竜石の効果が切れたのか、老人の姿に戻ったバヌトゥがこちらへ歩いてくる。バヌトゥは黙ってショーゼンの死体を見下ろしていたが、俺を見て言った。

 

「ガザック殿。できれば、この男を弔ってやりたいのだが……」

 

「知りあいだったのか?」

 

「いや」

 

 バヌトゥは首を横に振る。

 

「だが、同胞だ」

 

「……少し待ってろ。ウェンデルのジジイと、あとリカードを手伝いによこしてやる」

 

 ショーゼンが死んだ以上、あとは掃討戦だ。ミネルバとヴィクター、マチスあたりに任せとけば問題ないだろう。

 俺はウェンデルを呼びに行くとシーダに告げた。シーダは俺をペガサスの後ろに乗せて、再び空へ駆けあがる。本陣が見えてきたころ、シーダが言った。

 

「おかしなことを聞くようですが、もしかしてガザック様は竜族なのですか?」

 

「そんなわけねえだろ」

 

 俺は呆れた顔で答える。俺がマムクートじゃなくて竜族と呼び、また呼ばせるようにしていることが、シーダにとってさえ不思議らしい。

 

「では、竜族の友人がいるとか」

 

「いねえよ。ただ、思うところはいろいろある。今度、気が向いたら話してやる」

 

 わかりましたとシーダは答え、それ以上は聞いてこなかった。




ガザック軍編成
ガザック   シーダ    アイルトン
海賊     海賊     カシム
レナ     ヴィクター  戦士
戦士     マチス    ニーナ
リカード   ウェンデル  バヌトゥ
エステベス  カーツ    マリア
ミネルバ   リンダ
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