(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる! 作:大目玉
腹に食いこんでいた銀の剣を抜くと、痛みとともに血が噴き出した。
傷薬を使いつつ応急手当をする。いくらか楽にはなった。
廊下を歩いていって、俺たちは血に染まった床と、その中に倒れているヴィクターたちを発見した。こういうのは見慣れているはずだが、ひどく凄惨な光景に思えた。
ヴィクターは一目で死んでいるとわかった。頭が半分吹き飛んでたからだ。
「親分、どうしますか……」
アイルトンが疲れ切った声で聞いてくる。俺は背中を向けたまま答えた。
「俺はちょっと行くところができた。お前らはニーナたちに合流しろ」
巨大な柱と、宝物庫らしき部屋の扉を見つけたおかげで、どのあたりにいるのか、だいたい分かった。マップ左上あたりってとこだ。
このあたりに敵の気配はない。ヴィクターたちが片付けたんだろう。合流するのはそれほど難しくねえはずだ。
北へ通じる廊下を歩いていく。牢屋はすぐに見つかった。牢屋というよりは、客室に手を加えたものだったんだな。向かってきた魔道士とアーチャーたちを、俺は鉄の斧で葬った。傷薬と聖水はまだ残ってるから、たいした手間はかからなかった。
客室の扉を叩き壊す。
薄暗い中には、二人の男女がいた。ミディアとボアだ。二人とも脚を椅子にくくりつけられ、両手には手枷をはめられている。
「何者だ……?」
警戒するような目で見てくるボアを無視して、俺はミディアに歩み寄る。ミディアは無言で俺を睨みつけた。
ミディアの脚を椅子に拘束している鎖を、俺は斧で叩き切る。それから、ミディアを抱きあげて肩に担ぎあげた。さすがにミディアは驚き、慌てた。
「な、何をする……!?」
「決まってるだろう、そんなの」
俺は笑った。
「外の騒ぎは聞こえてただろう? ここは戦場だ。戦場で丸腰の女がどんな目に遭うか、説明されなくとも分かるよな?」
「ま、待て!」
ボアが体を揺すりながら声を上げる。俺は容赦なくボアを蹴り倒した。椅子のせいで身動きが取れないボアは、床に転がる。俺はミディアを担いだまま客室を出た。
少し離れたところにある、空いている客室に入る。あまり上等じゃない客用なのか、飾り気がなく、家具もほとんどなかった。とはいえ、ベッドがあるから十分だ。
俺はミディアをベッドの上に放り投げる。そして、その上にのしかかった。
「離せっ……!」
ミディアは暴れたが、両手は手枷で封じられているし、腰から下も俺におさえつけられている。
俺はミディアの服に手をかけ、無理矢理引き裂いた。大きくはないが、小さすぎるということもない、形の整った胸が露わになる。ミディアの顔に怯えの色が浮かんだ。
これだけやっておいてアレだが、一物はいきりたったものの、心は弾まなかった。
俺はミディアの胸を左手でゆっくりと、丁寧に揉みしだく。ミディアの口から悲鳴に近い声が漏れた。だが、どれだけ顔を歪めても、ミディアは泣きだしはしなかった。ただ、殺意を込めて俺を睨みつけてきた。
俺はシーツの端を適当に破くと、ミディアの口に無理矢理ねじこんだ。それから、再び胸を責める。乳首を指先でいじってやりながら、俺は淡々と言った。
「アストリアは俺が殺した」
ミディアの目が丸く見開かれる。
「トムスも、ミシェランも、トーマスも俺が殺した」
胸を揉まれていることなど忘れたかのように、ミディアは呆然とした顔で俺を見上げた。
「俺は、アカネイア同盟軍の総指揮官だ」
ミディアの目の端に涙がにじむ。何かを叫んだようだったが、それは言葉にはならず、くぐもった呻き声にしかならなかった。
やることはやったが、傷口が開いてシーツを血で汚しちまった。
ミディアは涙を流しながら、虚ろな顔で天井を眺めている。半分放心状態だ。俺はすばやく服を身につけると、シーツでミディアの身体を大雑把に包みこもうとした。
その時、扉が開いた。
敵兵かと思って俺は手斧を握りしめたが、入ってきたのはニーナだった。
俺は驚いてニーナを見つめる。ニーナは俺を見て、それからベッドの上のミディアを見た。
ニーナは怒りも露わに駆けてきて、俺の頬を殴りつけた。握り拳で。
「どうして! どうしてあなたは……!」
それ以上は言葉にならないらしく、ニーナはすさまじい形相で俺を睨みつける。だが、俺は怯まなかった。俺だって怒りがおさまっちゃいねえからだ。
「こいつは俺が手に入れた、俺の戦利品だ。何か文句があるか」
「あるに決まってるでしょう!」
部屋の外にまで響くほどの大声で、ニーナは叫んだ。俺はニーナの顔を眺めながら、外の戦況はどうなってんだろうか、とか場違いなことを考えた。
「囚われている者たちを助けるために、あなたは策を考えてくれたのではありませんか! なぜ、それを自分の手で、こんな……! こんなっ……!」
泣きじゃくりながら、ニーナは肩を震わせ、拳を握りしめて俺に訴えた。俺は言った。
「状況が変わった」
こいつがここに来たのは、ちょうどいいか。手間が省けた。
俺はミディアを顎で示して言った。
「そいつはお前に預ける。もう一度言っておくが、俺の戦利品だからな」
「待ちなさい!」
外に出ようとした俺の前に、ニーナは素早く回りこんだ。
「状況が変わったというなら、説明してください。私には聞く権利があるはずです」
その時、開いたままの扉からシーダとミネルバが顔を覗かせた。二人は俺を見て、それから俺の肩越しに部屋の中を見て、状況をおおよそ理解したらしい。見る見る嫌悪感に顔を歪ませた。
「総指揮官殿。私も事情を聞かせてほしい」
手に持っていた剣を握り直して、ミネルバが言った。
「女好きなのは分かっていたが、それも時と場合によりけりだ」
「私も説明を求めます」
シーダがニーナの隣に立つ。俺を何としてでも行かさねえって態度だ。
「外の状況は?」
俺が聞くと、ミネルバは一瞬呆れた顔をしながらも答えた。
「半分ほどは制圧した。宝物庫もおさえてある」
半分ほど。じゃあ、火竜のいる広間の手前あたりまで進んだってところか。それなら休憩にしてもいいだろう。
落ち着くと、ニーナに殴られた頬がうずいた。俺はニーナに言った。
「説明してやるから場所を変えるぞ。あと、お前は手を冷やせ」