(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

32 / 61
ここまでで前半戦です。この先は次の更新で。
それでですね。
今後のために少し書きためというかストックを作りたいので、申し訳ないですが、次の更新は週末ぐらいになります…… <(_ _)>
お待ちいただけると、幸いです。


「アカネイア・パレス」4

 ミディアはシーツにくるんで、シーダとミネルバが運ぶことになった。

 シーダたちの後について廊下を歩きながら、俺はニーナに話した。アカネイア騎士が敵として襲いかかってきたことと、それによってヴィクターたちが壊滅的な打撃を受けたことを。

 

「だから、あなたはその怒りをミディアにぶつけたということですか……?」

 

 ニーナの顔は紅潮している。その目には変わらず怒りが浮かんでいた。

 

「言っただろう。俺はあいつを戦利品として手に入れた。だから、やりたいようにやった」

 

「そうですか」

 

 ニーナの声は氷のように冷たかった。ニーナは足を止める。俺も釣られて足を止めた。

 

「あなたを解任します」

 

 さきほどまでの怒りを両目にだけ残して、感情をまったくうかがわせない無表情で、ニーナは言った。シーダやミネルバがおもわずこちらを見るほど事務的な口調だった。

 

「これ以上、あなたに同盟軍の指揮を執ってほしいとは思いません」

 

 これほど意味のない言葉もない。だが、これほどニーナの決意を示す言葉もないだろう。

 

「待ってください」

 

 シーダが声を上げた。ミディアを運んでいなかったら、ここまで駆け寄ってきたに違いない必死さだった。

 

「ニーナ様、せめて……せめて、この戦いが終わるまで、待っていただけませんか」

 

「あなたは、この男の肩を持つのですか」

 

 ニーナが語気も荒くシーダを睨みつける。はじめて見る光景だった。シーダは臆さない。ミネルバにミディアを任せて、こちらまで歩いてきた。ニーナをまっすぐ見つめる。

 

「兵たちの気持ちを、お考えになってください。ここで総指揮官がいなくなったら、彼らは動揺します。ここまで来ておきながら、敵に押し返されるかもしれません。このパレスを奪還することは、いまや私たち、そして兵たちの悲願でもあるのです。どうか、お願いします……!」

 

 シーダの表情も、口調も、必死だった。シーダらしからぬやり口だというのに、ありったけの思いが込められているのが俺にもわかった。

 ニーナは苦い顔をしていた。シーダが兵をダシに使ってまで説得してきたことに驚き、腹を立てているのがわかる。

 だが、こいつが何より腹立たしく思ってるのは、総大将として、シーダの言葉を認めざるを得ないことだろう。こいつは、それがわかるようになっちまった。

 戦は、佳境だ。

 ニーナはミネルバを見た。ミネルバは淡々と答えた。

 

「一人の戦士として、私はシーダ王女の言葉を支持します」

 

 ニーナは肩を落とした。辛そうな顔で俺を見る。ニーナが何かを言う前に、俺は言った。

 

「このパレスを奪還するまでは、俺にやらせてくれ」

 

「それは、総指揮官としての矜恃ですか……?」

 

 ニーナの声は、おさえきれない感情に震えている。

 そんなもん、はじめっからねえよ。

 

「パレスは取り戻したと言ってやりたいだろ。相手が墓であっても」

 

 俺の考えが足りなかったばかりに死なせちまった。

 挙げ句、王宮も奪れなかったとなれば、合わせる顔がねえにもほどがある。

 ニーナの顔から、一瞬怒りが消え去ったように見えた。

 目を見開いて、ニーナは呆然と俺を見ている。やがて我に返ると、ニーナはうつむいた。

 

「そう、ですね……。ええ、墓であっても」

 

 墓であっても。もう一度繰り返して、ニーナは呟く。

 やがてニーナは顔を上げた。頬には涙の跡があり、目の奥には怒りがあったが、また違う決意がその表情からは感じられた。

 

「あなたの願いを、聞き入れます。パレスを奪還したら、あなたの処遇について、あらためて話しましょう」

 

「おう」

 

 答えてから、俺は舌打ちした。

 気分が、いくらか軽くなったことに気づいたからだった。

 

 

 ミディアとボアが閉じこめられていた客室の前につくと、そこには全軍がそろっていた。

 俺はマチスから状況を聞く。宝物庫にいたジェネラルは、こいつとエステベスが倒したということだ。アーマーキラーの扱いにすっかり慣れたようだ。

 

「奥にいる火竜はどうしやすか?」

 

 アイルトンに聞かれて、俺は奥にたたずんでいるバヌトゥを見た。

 

「悪いな、また頼む」

 

「悪い、と言う時ぐらい、申し訳なさそうな顔をしてほしいものだな」

 

 バヌトゥはそう言ったが、本気ではなく皮肉交じりの冗談のようだった。手下たちが「違えねえ」と笑った。

 ミディアたちの件が片付いた以上、あとは掃討戦でしかねえ。とはいえ、何が起こるか分からねえからな。これ以上、油断はできねえ。

 敵の火竜は、こちらも火竜と化したバヌトゥで注意を引き、ミネルバとリンダで葬った。

 聖水を使うよう全員に指示を出して、玉座の前の広間にミネルバとマチスを突入させる。

 アイルトンとカシムが続き、さらに火竜状態のバヌトゥが広間へ歩いていく。最後に、カーツ率いる義勇兵たちが入っていった。

 魔道士たちはたちまち一掃された。

 

 玉座に居座るボーゼンの面倒くささは、ボルガノンを使うことだけじゃない。回復の杖を持った司祭に左右を固めさせていることだ。しかも、この司祭を倒せば、控えているスナイパーが穴埋めとばかりに出てくるというおまけつきである。

 問題はスナイパーだ。

 俺はバヌトゥとカシムに指示を出して、ボーゼンの左(画面的には右)にいる司祭をまず焼いた。そして、キルソードを持ち、聖水をふりかけたミネルバが間髪入れずボーゼンに斬りかかる。

 

「ドルーアにたてつく反乱軍の兵士ども……うぬっ、貴様、ミネルバ王女か!」

 

「そういえば、見覚えのある顔だな」

 

 驚愕するボーゼンに、ミネルバは涼しげに応じる。

 

「裏切ったとは聞いていたが、まさかこのようなところで会うとはな……。わしのボルガノンで骨まで焼き尽くしてくれるわ!」

 

 炎の魔法が大地を走り、火柱を噴きあげる。だが、それに耐えて、ミネルバはボーゼンを斬り伏せた。

 

「この程度で勝ったと思うな。ドルーアは不滅なのだ……ぐふっ」

 

 そうして空になった玉座へ、俺が足を進めた。司祭を鉄の斧で脅しつつ、その奥の回廊を睨みつける。

 案の定、スナイパーが飛びだしてきた。放たれた矢を、俺は斧で弾き返す。この玉座に俺が立ちふさがらなかったら、こいつに行動の自由を許しちまうからな。しかし、人手不足をさっそく実感してるぜ。

 司祭とスナイパーは、杖と武器をそれぞれ捨てて降伏した。また、奥の部屋にいたソルジャーたちも同じく降伏する。

 そいつらが拘束されるのを確認すると、俺はニーナのところへ歩いていった。

 

「出番だ、総大将」

 

 ニーナは頷いた。玉座の前まで歩いていくと、ニーナはこちらを振り返って兵たちを見回す。

 

「みなさん……」

 

 そう言って、ニーナは両手を胸の前に持っていき、目を閉じた。

 

「みなさん、本当にありがとうございます。あなたがたの助けがなければ、今日、私がここにいることはなかったでしょう。どれほど感謝の言葉を並べても、まるで足りない思いです。アカネイアの王家に生まれた者として、みなさんの勇気と奮戦には必ず報いることを、ここに約束させていただきます」

 

 誰もが黙って耳を傾けている。ニーナは凛とした顔で続けた。

 

「まだ、戦いは終わっていません。ドルーア、グルニア、マケドニア、そしてグラの四王国は健在であり、遠くアリティアは圧政に苦しみ、カダインも悪の司祭ガーネフの支配下にあります。諸国を解放し、過ちを正す。そのための戦いは、今までよりもさらに苛烈で、厳しいものとなるでしょう。ですが、私たちは大陸全土に平和を取り戻さなければなりません。私たちのためだけではなく……」

 

 この時、ニーナは一旦言葉を切った。俺の方を見たように思えた。だが、それは一瞬のことだったから、はっきりとは分からなかった。

 

「家族のために、友人のために、愛する人々のために、失われてしまった大切な人たちのために。神々に彼らの魂の安らぎを祈る時、彼らに笑顔で語りかけられるように!」

 

 誰もが、自然と目を閉じた。

 あるいは胸に手を当てた。

 拳を握りしめた。

 この世にいない者たちへ呼びかけるかのように。

 俺も、無意識の内にそうしていた。

 

「私には、ちからがありません。あなたがたに支えられて、ここまでたどりつけたように。私が示すことができるのは、ドルーアと戦うという意志だけです。だから、お願いします。あなたがたのちからを、いまいちど貸してください。ドルーアと戦うために」

 

 誰かが声をあげた。

 誰かが拳を突きあげた。

 声は次第に増えて大きくなり、突きあげられる拳の数もまた、増えていった。

 俺も拳を突きあげた。

 歓声が、玉座のあるこの空間を包み込んだ。

 ニーナを称える歓声は、いつまでも続いた。

 

 アカネイア・パレスは、同盟軍の手に取り戻された。




ガザック軍編成
ガザック   シーダ   アイルトン
海賊     カシム   レナ
マチス    ニーナ   リカード
ウェンデル  バヌトゥ  エステベス
カーツ    マリア   ミネルバ
リンダ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。