(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

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「ファイアーエムブレム」2

 アカネイア王国の政治体制について、簡単に説明する。

 

 王家はパレスを主とした直轄領を持ち、他に五大侯爵家と呼ばれる連中が広大な自治領を持っている。五大侯爵家というのはディール、メニディ、レフカンディ、アドリア、サムスーフ。前にも少しだけ触れたな。

 ちなみにミディアはディール家の、ジョルジュはメニディ家の出身だ。

 

 ゲーム上の説明だと、王家が支配しているのはパレスだけっぽかったが、このあたり微妙にこの世界は違う。五大侯爵家は、それぞれが一国に匹敵する勢力を誇っており、彼らが王家を支えることでアカネイアは繁栄してきた……という感じらしい。

 

 その五大侯爵家の一人ラングが、俺に会いに来た。

 俺の部屋にはふっかふかのソファーが二つ置いてあり、俺とラングはそれに座る。

 挨拶もそこそこに、ラングは笑顔でお世辞を並べたててきた。

 

「このパレスに来る道すがら噂を聞いてな。ガルダの海賊の出ということだが、いやいや、どうして。ニーナ姫を擁してグルニア、マケドニアの軍勢を次々に打ち破り、パレスを奪還してみせたその手腕。また一人の戦士としても、数多の将軍に一騎打ちで勝利したその武勇、実にお見事。このラング、感服いたした。ガザック殿の武勲の数々にはただ見惚れるばかりだ」

 

 いやあ、すげえな。口が回る回る。

 あまりに長すぎたんで要約したが、実際の台詞はこの十倍以上あった。ラングはだいたいこんな感じで俺を褒めちぎって褒めちぎって褒め殺した。

 最初は内心で呆れていた俺も、終わった時には感心していた。よくこれだけ言葉が出てくるもんだ。

 

「言葉というのは便利だな。いくら費やしても金がかからないからな」

 

 俺が皮肉を言うと、ラングは「いやいや」と首を激しく横に振った。そして、扉の外に向かってぱんぱんと手を叩く。

 すると、外に控えていたらしいラングの部下たちが、壺やら箱やらを抱えて入ってきた。金貨や銀貨の詰まった壺、宝石や絹布を満載した箱、他にも指輪に首飾り等々。いかにも高級そうな葡萄酒や、その他色々な酒もたくさん。おおっ、すげえ。

 

「少なくて申し訳ないが、お近づきの印だ。どうぞ受けとっていただきたい」

 

 そうしてラングの部下たちは静かに退出していったが、ひとりだけ残った。

 黒髪、褐色の肌、切れ長の目の美人だ。スタイルもいい。ただ、異国風の衣装も含めてどこかで見たような気もする。ラングが笑顔で言った。

 

「この娘は道具屋を営んでいるララベルという一族の娘でな。ララベル一族はわしとも懇意にしておるのだが、ぜひガザック殿に紹介したいと思って連れてきたのだ」

 

 あっ! そうか、道具屋のあの娘か!

 やるねえ、ラング。これは引っかからずにはいられないハニトラですよ。

 俺がおもわず身を乗りだしたせいか、ラングはいやらしい笑みを浮かべた。

 

「そういえば、ガザック殿もなかなかの女好きとか」

 

「も、と言われると、ラング殿も?」

 

 俺があえて乗ってやると、ラングは同好の士を見つけたような笑顔で頷いた。

 

「うむ。定期的に領内で娘狩りを行ってな、若い娘をいただいておる。あの初々しさ、そして何よりもはじめての男がわしであると教え込んでやることが何より……ふふふ」

 

「さすが五大侯爵家。うらやましいかぎりですな」

 

 うーむ、我ながらゲスい会話だ。しかし、うらやましいというのは半分本音だ。

 

「ガザック殿。今夜はこれで失礼させていただくが、あなたへの贈りものはまだまだ用意しておる。一度に運び込むと、ニーナ姫がうるさいのでな。あれでも王家の血を引く者には変わりない……。夢みたいなことばかり語るあの小娘には、さぞ苦労させられただろう」

 

「わかっていただけますか。まったく、その割に、こっちが言ったことの半分もできやしないんで、何度放り捨ててやろうと思ったことか……」

 

 俺は慎重に言葉を選びながら、同意を示す。慎重に選んでんだぞ、これでも。

 ラングは親しげに俺の肩を叩くと「では、楽しんでくれ」と笑って部屋から出ていった。

 後には、俺と財宝とララベルの娘だけが残る。

 俺はため息をついて、ソファに体を沈めた。

 いやー、緊張した。

 話を合わせて笑ってはいたが、いつ「と……油断させといて……馬鹿め……死ね!!!」って叫びながら隠し持っていた武器を取りだして斬りつけてくるか、気が気じゃなかったぜ。

 てめえがそういう奴だって、俺は知ってるからな。

 

 実のところ、ラングの名前を聞いた時、俺はあまり驚かなかった。むしろ、やっぱり来やがったかという思いの方が強かった。

「紋章の謎」をやりこんでいたころ、ラングという人間について、俺は少し考えたことがある。

 

 第二部でのジェイガンの説明によると、ラングは「前の戦いの時にはドルーア帝国に取り入って、人々から金を巻きあげ、私腹を肥やした」という。

 具体的には、ラング(とサムスーフ侯)は、この戦争の初期にアカネイアを裏切ってドルーア連合についた。

 レフカンディ侯はお家騒動で軍を動かせず、ディール侯とメニディ侯だけがドルーア連合と戦って負け、大司祭ミロアもガーネフ率いるカダイン魔道軍に負けた。

 で、カミュに攻められてパレスが陥落したわけだ。

 

 ラングとサムスーフ侯が裏切らなかったらアカネイアは負けなかったのかというと、それでもたぶん負けたと俺は思うが、とにかくアカネイア敗北の要因の一つには違いない。

 ところがラングは、マルスがメディウス(地竜バージョン)をぶっ倒し、アカネイアが逆転勝利を果たした後も、お咎めなしで生き延びる。

 多くのプレイヤーは疑問に思ったんじゃないか。

 

 第一部が終わってから第二部が始まるまでに、なんでラングは処刑されなかったのかと。

 

 戦争序盤で裏切ってんだぜ? 性格もこれだから、はっきりいって許す理由がどこにもない。五大侯爵家の一人だから、放置しておくレベルの小物ってわけでもない。

 処刑はやり過ぎだというなら、領地召し上げと追放処分ぐらいはあってしかるべきだ。

 

 エンディングで流れるアカネイア大陸史によれば、第一部の終わりが605年。第二部の始まりが607年。二年もの時間があったわけだ。

 それなのに、ハーディンもニーナも、そしてニーナを補佐するボアも、ラングを許した。

 

 ハーディンもニーナも清濁併せ呑むってキャラじゃない。ハーディンなんかは、むしろ積極的に正義を求めるタイプだ。だからこそ俺を叩き潰そうとしたんだろうし。

 

 ハーディンが闇のオーブに飲まれて闇堕ちしたから、って説があるが、あれには段階がある。

 国王になってから、ハーディンはニーナが自分に思いを寄せていないことに気づき、さらにアカネイア貴族たちが自分を蔑んでろくすっぽ協力しやがらないことに悩み、部屋に引きこもって酒浸りの生活を送り、そこへ商人に化けたガーネフが闇のオーブを持ってきて……という流れだ。

 ラングを処罰する時間はあったんだ。

 だが、ハーディンはしていない。

 

 こいつは俺の推測だが、ラングは、ハーディンに公然と味方したんだと思う。

 すでに言った通り、王になったハーディンは早々に孤立した。

 戦友といっていいはずのジョルジュやアストリア、ミディアでさえ、ニーナにしか忠誠心を抱いていない。ハーディンをニーナの夫に推薦したボアも、協力的だった様子がない。

 

 味方がいない者に積極的に協力することで、恩を売る。

 

 こいつは政治の一つの手だ。ラングはそれをやったんだろう。よくも悪くも時勢を読む目はあるみたいだしな。

 だから、ハーディンはラングを切り捨てたくてもできなかった。ラングがいなくなれば、完全に孤立するからだ。お飾りの王として無為に生きることになる。そして、裏切り者の汚名を負ったラングが味方にいることで、他の者はますますハーディンから遠ざかった。

 

 ニーナも、ラングを許すしかなかった。ニーナにとっての計算違いは、アカネイア貴族や騎士たちがハーディンにとにかく非協力だったことだ。ニーナの立場と性格から考えて、ハーディンへの忠誠を貴族たちに呼びかけたとは思うが、効果はなかったんだろう。

 第二部終章での、ハーディンに向けたニーナの台詞は、カミュのことだけじゃなくて、本心を打ち明けなかったことなども含めた全体的なものだったと思う。

 

 ボアがラングを許した理由についてだが……。

 ちょっと長くなるんで話が脱線しちまうが、ボアがニーナ第一主義だからだ。

 ただし、それはニーナの考えや理想に感銘して、その願いが実現するように動くって意味じゃない。とにかくニーナの身の安全、評判が最優先で、そのためにはニーナの意志なんて知ったことじゃないって代物だ。

 

 第二部十九章で、ニーナとハーディンの結婚がどのように決まったか、ボアの口から語られるんだが、こいつは結婚相手としてハーディンかマルスの二択をニーナに突きつけ、答えを先延ばしにしようとしたニーナをせかし、しかも本心をハーディンに告げないようにと、ニーナに口止めさせてるんだよな。

 なんで、そんなに急いで王を迎えなければいけないのかというと、アカネイアを再建するためだという。

 

 この会話を見た時、俺は二つばかり引っかかった。

 一つ。ニーナの力では、アカネイアの再建は無理なのか? ニーナに忠誠を捧げているジョルジュやミディア、アストリアがいるのに?

 もう一つ。どうして国外から候補者を選んだのか?

 いくら戦争で大勢死んだとはいえ、ニーナと結婚できるアカネイア貴族が一人もいないってことはなかっただろう。

 先祖のアルテミスは、勇者アンリではなくアカネイア貴族のカルタスを選んで、貴族たちの反発をおさえたじゃないか。

 稀代の英雄よりも国内貴族。

 これがアカネイアの価値観だ。アカネイアの、この傲慢な姿勢が変わってないことは、ミシェイルの台詞などからもうかがえる。

 じゃあ、どうして?

 そこから俺は考えた。

 

 ボアが必要とした「国王」は、ニーナの盾になってくれる人間だったんじゃないか。

 

 国を再建するとなれば、問題のあった人間を処罰する必要も出てくる。そうすれば反発もあるだろう。第二部でクーデターを起こされたミネルバがいい例だ。

 そして、アカネイアには処罰しなければならない裏切り者が二人いた。ラングと、サムスーフ侯だ。

 だが、こいつらは腐っても五大侯爵家だ。罰するとなれば、貴族たちが反発することは容易に予想できる。

 ボアは、そんな役回りをニーナにやらせたくはなかった。だが、同じ五大侯爵家のジョルジュやミディアにやらせれば、ラングたちも必死に抵抗するだろう。

 国が割れる。再建どころじゃない。アカネイア貴族にやらせることはできない。

 外から、高い名声を持つ人間を呼ばなくてはだめだ。

 ニーナの代わりに汚れ役になってくれる、貴族たちの反発を受けてくれる、それでいてニーナの体面を潰そうとしない人間を。

 だから、結婚をせかした。国のためという理由でニーナの気持ちを無視し、ニーナにあっただろう政治方針をも無視しながら。

 だから、それまでラングたちは放っておいた。

 国王になったハーディンに、彼らへの処罰をやらせるつもりだったからだ。

 そして、命をつないだラングは、さらに生き延びるためにハーディンに接近した。

 サムスーフ侯については逸話も何も出てこないから、前の戦争時に死んだか、この時ハーディンに処刑されたんじゃないかと思う。

 ハーディンが処刑したんだとすれば、アカネイア貴族たちが非協力的な態度をとったことの裏付けにはなるんだが、本当に何も話がないからなあ、サムスーフ侯。

 

 

 脱線して長々と語っちまった。話を戻そう。

 ようするに、俺は予想していたんだ。ラングが接近してくるんじゃねえかって。

 いくらツラの皮が厚いラングでも、ニーナに土下座すれば裏切りの罪を許してもらえるなんて甘い考えは持ってねえだろう。同盟軍の中に味方を作る程度の手間はかけるはずだ。

 そして、ニーナにものを申せる奴がここにいる。総指揮官なのに手下と傭兵ぐらいしか味方がおらず、素性も定かじゃない海賊が。今はニーナと喧嘩してるけどなー。

 

 実際、ここで俺とラングが組んだら、ニーナを傀儡にして、アカネイアを好き放題にできるだろう。俺が口添えをして、ラングは罪を許され、同盟軍の中でもかなりいい役職につく。そして、ラングは俺に敵意を向けるだろうアカネイア貴族どもをおさえつける。

 素晴らしい手だ。

 

 だがねえ、ラング君。

 君が誤解していることが一つある。

 俺はアカネイア貴族の反発とか全っ然怖くないんで、お前の協力なんざいらねえんだよなあ。矜恃や責任感から玉座にしがみつくしかなかったハーディンとは違うんだよ。

 

「あの……」

 

 心細そうな声をかけられて、俺は我に返った。おっと、ついつい考えごとをしていた。

 ララベル(と呼ぶことにする)が、途方に暮れた顔で俺を見ている。

 

「私は、どうすればいいのでしょうか……」

 

 俺はいやらしい笑みを浮かべて、暗○拳闘伝セス○スに出てくるローマ人のおばちゃんみたいなことを言った。

 

「体を観たいな。裸を見せてくれ」

 

 武器を隠し持ってる可能性は捨てきれねえからな。裸が見たいのも本音だが。

 ララベルは恥じらうように頬を染めながら、一枚一枚服を脱いでいき、全裸になった。おっぱいはそれなり、尻も小ぶり、腰は細い。脚線美は艶めかしい。いやあ、褐色の肌ってそそりますなあ。恥ずかしがっているのもポイント高い。

 せっかくの贈りものだ。据え膳食わぬは何とやら。

 ラングを安心、油断させるためにも、いただくとしようか。

 俺はソファに座ったまま、ララベルに手招きをした。

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