(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる! 作:大目玉
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次の更新は8月の中旬あたりの予定です。
夜が明けた頃、ジオルは毒杯を呷った。俺が見届けた。
戦後処理がある程度片付いた数日後の夕方、俺とニーナは、居館の執務室でシーマと顔を合わせた。
俺はいなくてもいいはずだが、ジオルに降伏を迫ったのも、その死を確認したのも俺なので、必要ということらしい。
シーマは俺の記憶よりも幼い感じがしたが、俺の知ってるシーマは第二部登場時のものだから当然か。だが、その割に受け答えはしっかりしていた。ニーナは悪い印象を持たなかったようで、グラの降伏も、シーマが新たな統治者となることも承認した。
「ニーナ様にはどれだけ感謝したらよいか……」
シーマは立ちあがって、深々と頭を下げた。ニーナは世間話でもするような口調で聞いた。
「立ち入ったことを聞きますが、あなたはジオル王の第二夫人の子だとか……。このグラで生まれ育ったのですか?」
「はい。母は、このグラの大地を愛していました。私もです」
「そうですか。ジオル王の遺言とはいえ、その若さで一国を背負うのは大変でしょうが、がんばってください。私からもできるかぎり支援させていただきます」
シーマに激励の言葉をかけて、ニーナは俺を見た。何か話はあるかという顔だ。
「お前、少し前までパレスにいなかったか」
俺がシーマにそう聞いたのは、第二部のこいつとサムソンの会話を思いだしたからだ。
母を無理矢理奪ったジオル王を憎んでいたから、パレスに隠れ、国に近寄らなかった。
たしかサムソンがシーマについて、そう言っていたはずだ。
ちなみに、今まで完全に忘れていた。パレスでは色々忙しかったからなあ……。
シーマは驚いた顔で俺を見る。
「私のことを、どこまでご存じなのですか」
「少し気になっただけだ。答えたくねえなら答えなくていいぞ」
「いえ、隠すようなことではありませんから」
シーマは首を横に振った。
「母が……もう亡くなりましたが、私がパレスで暮らせるよう取りはからってくれたのです。私には自由に生きてほしいと。二年前から、つい最近まで」
「それが、なんで戻ってきた?」
「父の部下に連れ戻されたのです。アカネイアのラング卿が処刑されたのを知って、父はたいそう怯えていました。私を人質にされることを恐れたようです」
えっ、俺のせい?
「不本意ではありましたが……。父のためではなく、母が愛し、私も大切に思うこの地を守るために、槍を手に取る決意を固めました」
「傭兵を雇ったのはお前の考えか?」
「そうです。戦場での配置を決めたのは父ですが……。彼らはよくやってくれましたが、申し訳ないことになりました」
なるほど。この時点ではシーマは総指揮官じゃないから、サムソンと仲を深める余裕もなかったわけか。
シーマだけじゃなく、サムソンまでジオルのそばにいたら、まとめて叩き殺すしかなかったかもしれねえな。先のことは分からねえもんだ。
「二つ、お前に要求がある」
俺の言葉に、シーマは緊張した顔で頷いた。
「一つ。一部隊でいいから兵を出せ。そうすりゃ、グラはアカネイアに臣従して戦ったと言うことができる。戦いが終わった後で、これは重要な意味を持つ。分かるな?」
「はい。できるだけ早く兵を選抜します」
「もう一つはだな。一晩やらせろ」
場の空気が固まった。
隣に座っていたニーナが勢いよく俺の顔を殴った。グーで。
「お前、いきなり何しやがる!」
「それはこちらの台詞です! あなたという人はどうしてそう……」
「美人を見つけたら抱きたいと思うのは当たり前だろうが。それに悪い話じゃないんだぜ、こいつは」
二発目の拳を繰りだされる前に、俺はニーナの手を掴んだ。もう片手で服の上からおっぱいを揉んでやる。おお、服越しって最近やってなかったから新鮮な感触だな。ぐははは、俺とお前とシーマの三人で密室にしたのが、お前の運の尽きだ。
「詳しく、説明して、ください……」
おっぱいを揉みしだく俺の手を必死に押し戻そうとしながら、ニーナは言った。俺は手を休めずにシーマに向き直る。呆気にとられた顔で、シーマは俺たちのやりとりを見ていた。
「アカネイアの貴族に対して、お前はどんな印象を持っている?」
「それは……」
俺の質問に、シーマはニーナを見た後、目を泳がせた。
「その反応で十分だ。一言でいえば、ろくでもねえってとこだろ。ラングあたりが代表例か。お前がグラの統治者になったら、アカネイアの貴族は絶対にここへ来る。近いからな。奴らがお前に何を要求するのかも、想像できる」
シーマは悔しそうに口を引き結んだ。パレスで暮らしてたんだ。生き延びたアカネイア貴族の横暴を、その目で見る機会もあっただろう。ラングやサムスーフみたいに裏切った奴らもいたわけだからな。
「……そのことと、私があなたに体を差しだすことに関係があるのですか?」
「俺に抱かれるなら」
ニーナのおっぱいの感触を楽しみながら、俺は言った。
「面倒な奴が来たときに、俺の名前を出すことを許す。悪い話じゃねえと思うぜ?」
「そんな条件をつけなくてもかまわないではありませんか」
ニーナが不満そうに口を挟んだ。俺はニーナを軽く睨む。
「なんでタダで使わせてやらなくちゃいけねえんだよ。文句があるなら、お前だって焚き火感覚でサムスーフ侯の館を燃やしてやればよかっただろうが」
ニーナはため息をつくと、シーマに向き直った。
「私が許します。ガザック殿の名を好きに使ってかまいません」
おいこら、勝手に決めるな。
「お心遣い、感謝します、ニーナ様」
シーマは礼儀正しく頭を下げる。
「ですが、そのお気持ちだけいただいておきます」
顔を上げて、シーマは俺を見た。
「承知した。あなたと閨をともにしよう」
さっきまでとは違う、毅然とした態度と口調で、シーマは言った。
「シーマ王女!」
ニーナが止めるように叫んだが、シーマは首を横に振った。
「ニーナ様、お気になさらないでください。私はむしろ感謝しているのです。このグラを守るためには必要なことですが……。それでも、私から言いだすことはできなかったでしょうから」
シーマの態度には、それ以上の言葉を受け付けない硬い雰囲気があり、ニーナも黙らざるを得なかった。
その日の夜、グラ城の居館の一室で、俺はシーマを抱いた。
アーマーナイト用の鎧をつけられるだけあって、女にしてはしっかりした体つきで、やや固い。
とはいえ、出るとこは出てるし、やわらかいところはやわらかい。感度もまあまあ。将来が楽しみだ。ただ、初めてだったので一戦でぐったりしちまった。これは仕方ないか。
「……ガザック殿」
横になったまま、シーマが話しかけてきた。
「あなたに一つだけ、礼を言う」
「何のことだ?」
礼を言われるようなことをした覚えはない。シーマは言った。
「父のことだ。あなたが死か降伏かを迫ったとき、私は絶望していた」
シーマはじっと天井を見つめている。
「父が、生きることを選ぶかもしれないと思ったからだ」
シーマの声は俺に語りかけているようにも、独り言のようにも聞こえた。父親のことを、誰かに話したかったのだろうか。
「私の知る父は、そういう人だった。他者に厳しく、自分の欲に忠実で、民や兵を顧みようとはしない方だった」
そういや、ゲームでも十一章冒頭で兵にやつあたりしてたっけか。
「だが、最期になって、父は己よりもグラの大地と民を選んだ。立派だとか、素晴らしいとは思わない。ただ、王としての矜恃が、わずかにせよ残っていた。そのことに少し安心した」
「それで俺に礼を言うのは筋違いじゃねえか」
「いや。あそこまで追い詰められなかったら、父があのような姿を見せることはなかっただろう。私があなたに抱かれてもいいと思ったのは、このことに対する礼でもある」
生真面目な奴だ。だが、なるほど。この気性なら「今日からあなたがグラ王です」と言われても、やる気になるのかもしれない。
俺はシーマの長い黒髪をわしゃわしゃと撫でた。
シーマはおとなしく、されるがままにしていた。
数日後、俺たちはグラを発ってカダインに向かった。
ファルシオンはやはりガーネフに持っていかれていたらしいんだが、正直それについてはどうでもいい。俺、使えないし。
ただ、アリティア、グルニア、マケドニアと進む前に、カダインに打撃を与えておく必要がある。
あと、いくつかの書類をあさってみたところ、やはりミシェイルは、天馬騎士団をあえて派遣しなかった可能性が濃厚になってきた。書類通りなら、とっくに到着していたはずだからだ。
ミシェイルの意図についても、カダインに行けばはっきりするだろう。
そして、グラ兵だが……。なんとシーマがついてくることになった。
「統治者として、まず実績がほしい」
シーマはジオルの唯一の血縁とはいえ、第二夫人の娘だ。加えて、ジオルは評判のいい君主ってわけじゃなかった。極端に悪かったともいえねえが。
もちろん、籠城戦でシーマは戦った。だが、最終的には敗れた。
統治者として、グラを治め、守るにあたり、実績が必要だと考えたらしい。
ニーナはため息まじりに承諾したが、代官の選定など、すぐには無理だろうから、俺たちがカダインから戻ってアリティアに進軍するときに従うという形になった。カダインは砂漠だし、妥当な判断だ。
さて、次はガーネフだが……。あいつ、ゲーム通りに途中で引き上げてくれんのかなあ。引き上げなかったら俺たち全滅するぞ。
ガザック軍編成
ガザック シーダ アイルトン
海賊 カシム レナ
マチス ニーナ リカード
ウェンデル バヌトゥ エステベス
マリア ミネルバ リンダ
ララベル ワイアット ミディア
ワインバーグ パオラ カチュア