(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる! 作:大目玉
オレルアンに着いた俺が真っ先にやったことは、シーダを使者としてオレルアン軍へ向かわせたことだった。
「助けに来たぞ! これからは力を合わせて戦おう!」と、まあ要約すればそんな感じの文書(シーダに書かせた。字が綺麗だったから)を持たせて。
三章でいきなりジュリアンが死んでいた時も不思議に思ったんだが、どうも俺は自分の軍しか動かせないらしい。一部のユニットはNPCといった方がいい扱いになってるっぽい。
なので、こんなことをわざわざやらなくちゃならなかった。
結局、俺がマルスじゃなくてガザックだからってことか。
手下たちにはテントを張らせたり野営の準備をさせる。軍資金が手に入っていろいろ揃えることができたってのもあるが、連中も最近ようやくこういうことに慣れてきた。
それまでが地面にごろ寝する生活だったからな。環境変えてやらねえといつまでも海賊感覚が抜けない。
一日たった昼過ぎにシーダは帰ってきた。
「申し訳ありません。彼らは、私たちと行動をともにしたくないと」
俺のテントの中で、シーダは頭を下げる。
「具体的には何て言ってた? お前が言われたことを全部話せ」
シーダは悔しそうに手を握りしめた。
「いまのタリスは海賊に乗っ取られた海賊国家だと……。誇りある我が国が海賊と肩を並べて戦うことなどありえない、ニーナ様へのお目通りも承知できないと……。こんなところまで来るぐらいなら、早くタリスへ帰って海賊を追い払ってはどうかと……」
俺の隣に控えていたレナが顔を曇らせる。俺はシーダに聞いた。
「俺の言ったことは伝えたんだろう?」
「はい。我々は正規のタリス軍であり、タリスは海賊国家などではなく、正しき心に目覚めた海賊たちを味方につけ、ドルーア、グルニアと手を結んでいた非道な海賊たちを追い払ったのだと、そう説明しましたが、聞き入れてもらえませんでした」
うーん、俺が考え、言わせたことながら、こうして聞くと実に白々しい。
「ちゃんと言ってやったのならいい。下がって休め。レナ、何か飲みものでも用意してやれ」
俺はシーダとレナを下がらせた。
くっそ、畜生。
ハーディンの、ぶぁーっっっっか。こっちが差しのべた手を払いのけやがって。
まあねー。僕たち正義のアリティア軍じゃないからねー。略奪上等な海賊集団だからねー。そりゃ手を組めないよねー。
一応そのへんも考えて「タリスの王女」という肩書きが使えるシーダに「タリス軍」の代表として行ってもらったんだがなあ……。やつはそのへんが読めなかったのか。意図的にスルーしやがったか。
まあいい。
ソシアルナイトもホースメンも、今の俺には喉から手が出るほど欲しい戦力だが、そういう態度をとってくるならもういらねえ。
後悔させてやる。
俺は手下どもを一ヵ所に集めた。台を用意させて、その上から連中を見下ろす。大声を張りあげた。
「俺が、ガルダでお前たちに言ったことを覚えているか!」
よしよし、声の調子はまずまずだ。
なにせ一章以来の正規軍との戦いだからな。気合いを入れてやらねえと。
「俺に従えば、いまよりもいい目を見せてやる。俺はお前たちにそう約束した! うまいものを食い、多くの財宝をつかみ、女を抱く! 俺についてくれば、国だって手に入ると! 国盗りの手始めが、このオレルアンだ!」
おおーと、手下どもが歓声をあげる。
「俺はこの国を奪い、王となる! でかい手柄を立てたやつを二人、貴族にしてやる! もちろん他のやつらにも、頑張り次第でお宝をくれてやる! 銀貨のつかみ取りをさせてやるぞ!」
うぉぉーと、さきほどよりもでかい歓声があがった。
「行くぞ!」
国盗り開始だ。十○刀みたいなのがいてくれると楽なんだがな。
オレルアンを占領しているマケドニア軍は、とりあえず俺たちを敵と見做したらしい。セオリー通りに南下してきた。
こちらもさっさと橋を渡り、敵の攻撃を受けとめる位置に、とくに体力があって頑丈な連中を配置する。
本来なら敵に先制されないようにもうちょい下げるんだが、今回は仕方ねえ。さっさとこいつらをかたづけないと、盗賊に村を焼かれちまう。こっちは全員移動力が低いんだ。レベルも高くない。
ソシアルナイトが3ユニット、ペガサスナイトが1ユニット、おそろしい速さで向かってきて、ついにぶつかりあった。
「親分、前衛が敵の騎兵と衝突しやした!」
「押し負けたところは出たか!」
「今のところは全員耐えておりやす!」
俺はハンターたちに矢を射かけさせながら、ソシアルナイトを次々に囲んで潰させる。余裕ができたところで、海賊を1ユニットだけ北に向かわせた。村をおさえないと。
そばにいるレナを見る。
「おう、出番だ。ガンガン治せ」
レナはこくりとうなずいた。今必要なのは戦闘員だ。リライブを使いきってもかまわねえ。
カシムの放った矢がペガサスナイトを一撃で倒す。それがこの場での勝敗を決した。
俺は戦士ユニットを敵アーチャーへの撃退に向かわせ、南の村もとい田舎町を訪れた。
「最近、ペラティに行ってきたってやつがいるだろう。出せ」
すみやかに火竜石をゲット。ついでに金をばらまいて飯と女を用意させる。この場合の女ってのはいわゆる一夜妻ってやつだ。いい響きだ。
俺がシーダとレナを好き放題にする代わりに、手下にも女を与えないとならねえし、このマップの東側をおさえとく必要もあるからな。
そして、今度は北の村に向かった。盗賊たちは手下が首尾よくかたづけたらしい。よしよし、死なずに成長してくれよ。
「カダインから来たっていう旅の魔道士がいるだろう。出せ」
さもなきゃ焼き払うぞと恫喝すると、半日でさがしだしてきた。よしよし。
その魔道士……マリクは、凜々しい顔つきで俺を睨みつけてきた。
「私に何の用ですか」
たとえ殺されてでも海賊なんかには協力しない。そんな目だ。正直やりあう気はねえ。相打ち覚悟でエクスカリバー使われたら死ぬし。
かといって味方につけるのも無理だろう。俺はこいつの親友のマルスを殺している。
「カダインから来たんだってな。ウェンデルってジジイのことは知ってるか?」
「むろん知っている。いや、カダインで魔道を学んだ者で、ウェンデル先生の名を知らない者などいないだろう。貴様、ウェンデル先生に何を……!?」
マリクが血相を変えて、魔道書に手をかける。俺は違うというふうに手を振った。
「俺じゃねえ。西の城に立てこもっているマケドニア軍が、ウェンデルっていうカダインの司祭を捕らえたって話を聞いたんだ。有名な司祭らしいと聞いたが、知らない者などいないってほどすげえのか、そのジジイは。助けたら、カダインは謝礼をたっぷりくれるかな」
俺はにやにやと笑って、マリクが歯ぎしりするさまを見て楽しんだ。それからウェンデルの特徴を細かく聞いて、マリクを解放する。
さて、先生思いの勇敢なエクスカリバーマンはどうするかね。