(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる!   作:大目玉

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「オレルアンの戦士たち」2

 俺が北の村を出たところで、偵察に出していたシーダが戻ってきた。こいつには、オレルアン軍の様子を定期的に見に行かせていた。

 俺が用意した地図を見ながら、シーダは状況を説明する。

 

「オレルアン軍は、南西の平原から動いていません」

 

「漁夫の利狙いか。せこい連中め」

 

 俺はせせら笑った。俺たちとマケドニア軍がやりあって、おたがいに消耗したところに、オレルアン軍が攻撃をしかけるという腹積もりだろう。せこいとは言ったが、ハーディンの立場なら俺もそうする。しかし、村は見捨てる気だったんだな、あいつ。「草原の狼」にも限界はあるってことか。

 

「お前はしばらく休め。あと、レナを連れてこい」

 

 そうしてやってきたレナは、リライブを使いまくってさすがに疲れているようだった。やや顔色が悪い。

 

「悪いが、もう一働きしてもらうぜ。ここが無理のしどころだ」

 

「……どなたの傷を癒やせばいいのでしょうか」

 

 レナがそう聞いてきたので、俺はおもわず笑った。本当に真面目なやつだ。

 

「ちょっと前線につきあえ。お前を戦闘に巻きこむつもりはねえから、そこだけは安心しろ」

 

 オレルアンの東の平原と西の平原を結んでいるのは北と中央の二本の橋だが、俺たちは北側の橋を使って西の平原へと渡った。中央の橋を渡ると、オレルアン軍に狙われる可能性が高いからだ。

 

 そして、俺たちに気づいたマケドニア軍のソシアルナイトが距離を詰めてきた。うん、マチスっぽいやつはいるな。俺は万が一に備えてハンターを控えさせ、マチスが近づいてくるのを待った。

 

 向こうからもこちらの様子がだいたいわかるぐらいになったところで、俺は同行させていたレナを前に立たせる。後ろから抱きしめ、純白の法衣の上からでかい胸をまさぐった。

 

「い、いきなり何をするのですか! こんなところで……!」

 

「騒ぐなよ。毎晩やってることだろうが」

 

 俺はグヘヘと下品な笑い声をたてて、レナのおっぱいと腹のあたりを撫でまわした。レナの頬が赤く染まり、声に吐息が混じる。俺はそれを横目で楽しみながら、敵の様子を観察した。

 

 急にシスターが出てきて気になったのか、マチスは慎重に近づいてくる。三、四十メートルぐらいの距離まで来たとき、さすがにあのバカ兄貴も、俺が抱きしめているシスターが妹だってことに気がついたようだった。当然、レナもマチスに気がついている。

 羞恥からか、レナは涙さえ浮かべて、顔をそむけた。正直そそる。

 

「レナ! やっぱりレナなのか! お前、どうしてこんな……いったい何が……」

 

 マチスは呆然として、俺に抱きすくめられたレナを見つめている。レナは答えようとしないので、俺が代わりに答えてやった。

 

「見りゃあわかんだろう。俺とレナはお楽しみの真っ最中なんだよ。もう何度もつながってるふかいふかーい仲だからな。で、お前は何だ?」

 

「俺はレナの兄だ! その薄汚い手を離せ! さもないと……」

 

「さもないと? お前の妹がどうなるって?」

 

 俺は腰に下げていた手斧を左手で持ち、柄の部分でレナの腹を軽くつついた。効果は覿面でマチスは怒りに顔を歪めたものの、動きを止める。俺はレナの胸を揉みしだき、耳たぶを舐めながら、その耳元にささやいた。

 

「お前から事情を話せ。足りない部分は俺が補足してやる」

 

 うわははは、マチスの視線が心地いい。俺、いまゲスなクズ野郎やってる! 寝取りではないが、これに近い感じなんだろうな。すごーい。たーのしー。がはははは。

 

「は、話します……。話しますから、手を動かさないで……」

 

 レナが必死に懇願するので、手を止めてやる。レナは呼吸を整えて、兄を見上げた。

 

「マチス兄さん……。ごめんね。こんなところを見せてしまって」

 

 それから、レナはこれまでの経緯を話した。旅をしていて、悪魔の山で山賊に襲われそうになったところを俺たちに助けられたのだと。うーん、その通りだけどちょっと胸が痛むな。

 

「兄さんこそ、どうして軍隊なんかに……?」

 

「お前がミシェイル王子を嫌って国を出てから、マケドニアもひどくなる一方でな……」

 

 今度はマチスが身の上話を語る。それが終わるのを待って、俺は口を挟んだ。

 

「おい、マチスとやら。妹を俺から取り戻したいか?」

 

「何だと!?」

 

 マチスが鉄の槍を振りあげる。案外妹思いじゃねえか。

 

「冷静になれよ。妹を取り戻したいか、って聞いてんだ。別に、こっちはレナの体の具合がどれだけいいかを語ってやってもいいんだぜ」

 

 なにせ素敵な人たちぞろいのアリティアの同盟軍じゃねえからな、こっちは。面倒な真似をしなくちゃいけねえんだ。アットホームな職場と血まみれの戦場を提供いたします。

 

「……何が望みだ」

 

 肩を怒らせ、息を荒くしながら、マチスは言った。俺は答えた。

 

「マケドニア軍を離れて俺の部下になれ」

 

「ふざけるな!」

 

「俺は大真面目さ。お前、軍隊に未練はねえだろう? 無理矢理入れられた、ってさっき言ってたもんなあ」

 

 声に詰まるマチスに、俺は続けて言った。

 

「お前が十分な手柄をたてたら、レナを解放してやる。奴隷の買い戻しみたいなもんだ。お前の離脱も認めてやるし、手柄に応じた報酬もやる。兄妹でマケドニアに帰るなり、旅をするなり好きにすればいいさ」

 

 ガーネフをその魂まで完全に滅ぼしたら、の話だけどな。

 

「手柄って……俺に、海賊に混じって略奪をやれっていうのか」

 

「敵はドルーア、グルニア、マケドニアだ。あとグラか。略奪は嫌ならしなくていい」

 

 俺の言葉に、マチスの顔から怒りが消える。薄気味悪いものを見るような目で俺を見た。

 

「お前、何を言ってるんだ……?」

 

「信じたくなきゃ信じなくてもいいぜ。で、どうする?」

 

 マチスは混乱しているようだった。迷うような目で、俺ではなくレナを見る。レナは俺を横目でちらりと見たあと、マチスに向かって言った。

 

「兄さん、私のことは気にしないで。勇気をもって、信じる道を進んで」

 

 俺は思わず笑みを浮かべてしまった。つくづく、ものにしてよかった。

 

「信じる道か」

 

 マチスは決意を固めるように目を閉じる。目を開けて、俺に言った。

 

「さきほどの言葉は本当だな」

 

「半分ぐらいはな」

 

「何だ、半分って」

 

 むっとするマチスに、俺は言ってやった。

 

「お前、略奪と無縁の軍隊をどこかで見たことがあったか?」

 

 俺の言葉にマチスは黙りこんだ。それが今の現実だ。

 

「だが、俺から略奪をしろとは命令しねえ。少なくともお前にはな」

 

「……わかった」

 

 十秒ぐらい葛藤していただろうか。ともかく、マチスは承諾した。

 

「ご苦労さん」

 

 俺はレナの耳にぼそぼそとささやく。レナは不思議そうな顔で聞いてきた。

 

「あの……どうしてマチス兄さんのことを?」

 

「村で話を聞いてな」

 

 俺は濁した。説明できるわけがねえ。レナとマチスの関係って、マチスが動いて台詞出てこないとわかりようがねえし。この状況でそんなまどろっこしいことしてられっか。下手すりゃマチス殺しちまう。

 

「言っておくが、兄貴と逃げようなんてするなよ」

 

「そんなこと、しません……」

 

 俺の脅しに、レナはうつむいてそう答えた。

 よっしゃあ! ようやく念願のソシアルナイトが手に入ったぞっ!


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