(FE紋章の謎の世界に転生したので)海賊王に俺はなる! 作:大目玉
まあ、マチスが仲間になって状況が一気に好転するかっていうと、そんなことはないのだった。しょせんマチスだし。
こいつレベル2なのにカインにもアベルにも、ビラクにすらも初期値負けてんだぜ。武器レベルだけ高くたってなあ。
さて、マケドニア軍にはまだアーマーナイトもアーチャーもソシアルナイトもいる。司祭も。
オレルアン軍は無傷。
こっちはリライブをガンガン使わせたこともあって、海賊、戦士、ハンターは健在。
俺はマチスとレナ、それからヴィクターを呼んだ。ヴィクターは元サムシアンの戦士だ。他のやつよりも物分かりがいい。
俺はオレルアンの地図を広げて、南西部を指さしながら言った。
「オレルアン軍がいるこの草原は、険しい山に囲まれていてな。道は東と西の二本しかない。お前らはまっすぐ南下して、この東の道をおさえろ。森があるはずだから、そこに身を隠して戦え。前衛はマチス。お前だ」
俺は意地の悪い顔でマチスを見た。マチスはごくりと息を呑んだ。
「ドルーアでもグルニアでもマケドニアでもねえが、やれるな?」
「やってやるさ!」
「よし。後衛はレナ。兄貴が傷を負ったら何とかしてやれ。ヴィクターはその後ろで待機。オレルアン軍がマチスの手に負えないようだったら代われ。それからマケドニア軍の動きに気をつけろ」
「親分はどうします?」
手下たちがそう呼ぶのを見たからか、ヴィクターは俺をそう呼ぶ。
「俺は西側の道をおさえる。海賊とハンターは全員連れていくぞ。戦士はお前が使え」
元サムシアンにマチスとレナのサポートを任せるのはちょっと不安だが、海賊に任せれば安心かっていうとそんなこともないしな。
ちなみに戦闘面での不安はない。ヴィクターは傷薬を持っているからだ(サムシアンが持っていたものだ)。北の砦から援軍が出てきても、しばらくは持ちこたえられるだろう。
マチスたちが東の道をふさいだのを横目に見ながら、俺たちは険しい山沿いに西の道へと向かった。マケドニア軍のアーチャーが2ユニット向かってくる。俺は海賊たちに撃退の指示を出しながら、シーダとハンターを率いてさらに西へ。
ここで一度シーダを偵察に出した。ハーディンは俺たちが西側の道に向かっていると気づくと、軍をわけたようだ。西の方に来るのはハーディンと、あとは誰だろうな。
西の道にある砦が見えてきた。砦にはソシアルナイトの姿がある。さすがに速い。
だが、この砦の北側は開けているので、ハンターが北と北東から矢の雨を浴びせられるのだ。カシムとアイルトンを配置し、残ったハンターには北の方を警戒させる。
そして、俺は手下を率いて砦に向かった。海賊とソシアルナイトが砦の前で激突する。
俺たちは鉄の斧を振りまわして騎士たちを次々に馬上から叩き落とした。もちろん連中も負けてはいない。鉄の槍で突かれたり殴られたりして海賊もばたばたと倒れていく。
しかも、砦の後方から矢の雨が降ってきた。ウルフかザガロのどっちかを連れてきやがったな。まあ想定の範囲内だ。
カシムとアイルトンたちも負けじと矢を射放った。名前ありのカシムも強いが、アイルトンも一章からついてきてるだけあって、成長している。悲鳴が重なって、騎士と馬が折り重なるように倒れていった。
「貴様らがタリスを襲った海賊どもだな!」
白いターバンを巻いた騎士が鉄の槍を振りかざして現れた。ハーディンだ。俺は笑って手斧を投げつける。ハーディンは手斧をかわし、まっすぐ向かってくる。海賊たちを蹴散らして。ナバールほどじゃあないが、ジェイガン並みに速い。
「タリスにやったように、我がオレルアンも食い散らかすつもりだろう! そのような真似はさせん!」
ハーディンの槍を俺はかわして、左側へと回りこみ、馬の脚に斧で斬りつけた。傷は浅かったが、馬が痛みに悲鳴をあげ、竿立ちになる。
ハーディンは馬を御しつつ、俺の肩を槍で突いた。肩がちぎれたかと思うほど力強い一撃で、血が盛大に飛び散る。一瞬、気が遠くなった。
やっぱり強えな、こいつ!
「志ある王族でもなく、高潔な騎士でもない貴様らが! 何がタリス軍だ! 襲い、奪うことしか知らぬ極悪非道のごろつきどもが! ここでマケドニア軍ともども葬り去ってくれる!」
激昂するハーディンを俺は鼻で笑ってみせたが、それが精一杯だった。さらに斧を振るう。今度はハーディンの左太腿を斬った。手応えとしては浅くも深くもねえというところか。
ハーディンは顔をしかめたが、悲鳴はこらえた。鉄の槍の穂先で、俺の頭を殴る。痛みというよりも熱が走った感じだった。
そこへ、両軍から飛んだ矢の雨が降り注ぐ。何本か矢をくらって、俺はよろめいた。
ハーディンは俺以上に矢を受けていた。こっちの方が多いからな。だが、ハーディンは気力を振り絞って馬首を返す。鉄の斧の間合いから逃れ、そのまま砦へ引き返そうとする。
「逃がすかぁぁぁ!」
俺は咆えた。鉄の斧を落とし、手斧を投げつける。回転しながら飛んだ手斧は、ハーディンの背中にくいこんだ。血飛沫が飛び、短い悲鳴があがった。
ハーディンは馬の首にもたれかかり、崩れ落ちて落馬する。まわりにいた騎士たちがハーディンを助けようとしたが、カシムたちが浴びせる矢の前に怯んで立ちすくんだ。
俺は鉄の斧を握り直して、ハーディンのそばに歩み寄る。落馬した拍子にか、ハーディンの頭からターバンは外れていた。
やつは、どこかうつろな目で俺を見上げている。出血の量が多すぎて意識がなくなりかけているのかもしれない。
「お前、ここでも道を間違えやがったな」
ハーディンを見下ろしながら、俺の口から出てきたのはそんな台詞だった。割り切って俺たちを戦力として使おうとするなら、まだ話し合いの余地はあったのにな。
「すまぬ……ニーナ姫よ……」
俺は鉄の斧を振りおろす。「草原の狼」は死んだ。
「ハーディン様!」
遠くで絶叫があがり、ソシアルナイトが駆けてくる。ビラクっぽいな。俺は手下どもに迎撃を命じた。ハーディンさえ死ねば、ここでの戦いは終わったようなもんだ。
しばらくして、ビラクとザガロの死体を俺は確認した。
こっちの被害も小さくない。海賊を再編成したら、1ユニット分がごっそり消えた。
俺は三人の首を並べて砦の前に晒すよう指示を出すと、シーダとわずかな手下を連れて砦に入った。
砦を制圧した俺は、真っ先にある部屋へと向かった。
背もたれつきの立派な椅子に座っていたその女は、扉を乱暴に開け放って入ってきた俺を、驚いた顔で見た。
「何事ですか?」
「お迎えにあがりました、ニーナ様」
俺はせいぜいおおげさな挨拶をして、女の前へと歩いていく。そう、この女こそニーナだ。
四章開始時の会話がこの砦で行われているので、たぶんそうだろうと思ったが、間違いなかった。だからこそハーディンたちもこっちに急いで戻ってきたんだしな。
「あなたは、何者ですか」
露骨に警戒する目つきでニーナは俺を見る。まあ敬意とかかけらもねえからな。俺は下卑た笑みを浮かべて答えてやった。
「ハーディンから聞いてねえか? 海賊ガザックだよ」
ところがニーナは知らないというふうに首をかしげた。あれ、本当に聞いてねえのか。ちょっと調子狂うな。
「ハーディンたちは砦の外で晒し首になってる。俺は、お前を犯しに来たんだ」
ニーナは一瞬呆然とした顔で俺を見た。何を言われたのか分からなかったらしい。だが、俺が何も言わねえで黙って見ていると、ようやく事態が理解できたらしい。ニーナの顔は見る見る青ざめた。
「ま、まさか、そんな……」
「そのまさかだ。とりあえずさっさと犯らせてもらうぞ」
俺はニーナに近づいて、強引に抱きあげる。ニーナは「ひっ」と悲鳴を上げて俺の腕の中で体を硬くして縮こまった。かと思えば、身をよじって暴れだした。
「嫌っ! 嫌、嫌、嫌! 離して! 離しなさい! 誰か、誰か助けて! 誰かーっ!」
あまりにうるさいので、唇を奪って口をふさぐ。それでもなお、ニーナは腕と脚をジタバタさせて暴れた。おい、傷に障るだろうが。こちとら傷薬一回しか使わねえでここに来てんだぞ。そりゃあ血と汗と雄の匂いはきついだろうが。
ああもう、犯る前に現実を見せた方がいいな、こりゃ。
砦のバルコニーに出てオレルアン軍の死体の山を見せたら、ようやくニーナはおとなしくなった。俺は満足してこいつを寝室に運んだ。