我が道をさまたぐなかれ。   作:Villager.exe
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展開どうしようかなーとか考えてたら、気付けば二週間も経ってました


第三話 夢剣乱舞

 入学初日の晩、大多数の新入生達はルームメイトや早速できた友人と友好を深めていたが、ジークリッド達は夕方から夜にかけて騒ぎすぎたのが原因で、きっかり22:00には就寝した。

 穏やかに寝息を立てて就寝しているイリスに対して、なにやらジークリッドはうなされているようで──。

 

■~ジークリッドの夢の中~■

 

 (……ここは?)

 

 突如深い霧が晴れたかのように意識が戻り、ふと辺りを見回してみる。

 私が今立っている場所は広く開けた足場で、地表に小さなクレーターのような物がある。少し進んだら急な崖があるようだ。背後は岩肌がそびえ、それにも何かが衝突した痕のような物が残っている。

 

 (山脈のド真ん中にでも居るのかしら……?)

 

 散策してみようと一歩踏み出すと、腰のあたりからガチャ、と金属の音が上がった。其処には何の変哲もない一振りの太刀が差されていて、服装の袴と相まってなんだかコスプレのようだった。

 次の瞬間、突如として私の前方に何者かが現れた。無意識に一歩後ずさり、様子を見る。

 性別は顔を見た限りだと男。体格はかなり良く、脇から覗く筋肉は美しい隆起を見せている。身なりは近代的な質感を漂わす軽装鎧を纏い、顔つきは俗に言うハンサムに当たるのかもしれない。くすんだ白色の髪は腰辺りまで伸び、終端あたりで束られている。

 そして、腰には、私と同じように太刀が差されていた──。

 

 「フフフ。アナタがワタシの相手デスか。成る程、確かに普通の女性とは放つ気が全く違うようデスね」

 「それはどうも。貴方は?」

 「ワタシは千子村正。今回は、さるお方に”アナタに稽古をつけてやってくれ”と頼まれ、こうしてやって参りました。では早速で悪いデスが、始めましょうか」

 

 千子村正と名乗った男は、そう言うと洗練された所作で抜刀し、構えた。こちらも抜刀し、目の前の相手を見据えて構える。

 そして、どちらかが始まりを告げる事もなく、実戦さながらの”稽古”が始まった。

 

 先手をとったのは相手の方だった。彼は様子を伺う事もなく、瞬く間に間合いを詰めて居合いを放ってきた。咄嗟に後退しつつ、一撃を防ぎ、その後に続く瞬撃の数々を、確実に見極めて最低限の力と動作だけでいなしていく。

 技量なら判らないが、鍔迫り合いなどの単純な力量で勝てる訳がないので、目の前の力を御するかのように上手く立ち回るしかない。

 

 「フッフッフ!よく女性の身でワタシの剣を凌げるものデスねぇッ!!」

 「フンッ、そうやって余裕でいられるのも──!」

 

 彼の太刀筋を先読みして刀を払い、返す刀で追撃する。刃先から鎧を掠める感触が伝わり、紙一重で避けられた事を直感的に(さと)った。

 しかし、折角掴んだ反撃の機会を逃す訳にはいかない。前に一歩踏み出し、今の自分が出せる、最速の居合い斬りを放つ。

 

 「なっ!?」

 

 (──よしっ、捉えた!!)

 

 男の動揺がその声から感じられた。

 次の瞬間、一撃が決まった──かと思いきや、残念ながらその刃は硬質な何かに弾かれて、彼自身に届く事は無かった。

 何事かと確認してみると、なんと彼は腰の鞘を抜き、それで受け止めていた。

 その事に思わず呆けていると、彼の反撃がきたので惜しいが一旦後方に飛び退いて様子を見る。

 

 (それにしても、鞘を使うなんて……)

 

 その咄嗟の判断は評価されるべき箇所ではあるが、私の居合いを片手の力だけで受け止めるその豪腕も称賛せざるを得ない。

 

 「フッフッフ、中々に良い居合いでした。流石、”あのお方”が目にかけているだけありマスね」

 「どうも。そっちこそいい腕だわ、人の稽古を任されるだけあるわね」

 

 お互い、口を動かしつつもいつ始まっても良いように構え直す。

 間もなくして、いつ決着がつくともしれない対決が再開するのだった。

 

 ■

 

 「──んぅ……朝?」

 

 窓から差す朝日で私は目覚めた。窓の外からは雀の囀りが聞こえる。

 時計を確認すると時刻はAM6:00。授業開始が8:00からだから、かなり早めの起床になってしまった。

 

 (イリスはまだ寝てる……わね)

 

 可愛らしい寝顔で気持ちよさそうに眠っている。まあ起こしても仕方ないので放っておこう。

 

 (それにしても、夢に出てきた人──。今まで戦った中では上位に食い込む強さだったなあ)

 

 脳裏どころか、実際に起きた事のように記憶に残る交戦した感覚を思い出し、ぼんやりと考える。

 ──私は、八歳の頃からこうしてハッキリと感覚や経験が体感的に残る夢を頻繁に見るようになった。噛み砕いて言えば、ある特定の夢の中で起きた事は自身の経験にフィードバックされる、という事である。

 一年前くらいまでは、夢にはグラトスと名乗る女性かモードレッドという男性のどちらかが現れ、前者は剣術を、後者は格闘技を中心とした武術を私に一から叩き込んでくれたのだが、中三に進級してからという物、今日のようにその二人の知り合い?との稽古に変わり、久しく本人達には会っていない。恐らく、”多くの猛者達と交わり世間を知れ”という二人からの啓示なのだろう。

 ならば私はその配慮を受け止め、地道に実力をつけていくのみである。その暁に、あの二人と相まみえる事ができるのを信じて──。

 そんな訳で、今日も入学前と変わらず朝稽古に励むべく、刀を手にして部屋を後にする。

 

 (道場は確かこの時間から開放されてるから、そこにしよう)

 

 私は学園の各所に設置されている道標を頼りに、道場に向かった。

 目的地に到着すると手始めに準備体操をして、続いて素振りを始めた。そんな時──。

 ──ガララッ。道場の戸が開く音が上がる。反射的に音がした方に振り返ると、其処には袴姿で黒髪ポニーテールの子が居た。その腰には日本刀らしき物が差されており、同じく朝稽古をしに来たのだと察する事ができる。

 その少女はこちらに気付いたようで、

 

 「し、失礼しました」

 

 若干戸惑った様子で場を後にしようとする。

 

 「別に気にしないわよ。朝稽古しにきたんでしょ?していきなさい」

 

 そう呼びかけると、立ち去ろうとしていた彼女の体がぴくっと止まり、再度こちらにふり返った。

 

 「で、では、お言葉に甘えて」

 

 少女は道場に入ると、私から少し距離をおいて準備体操を始めた。

 

 (同じ真剣持ちなんだから、知り合わないのはもったいないわよね)

 

 素振りしつつ、そんな事を考える。

 そして、少女が準備体操を終えた所を見計らって声をかけた。

 

 「ねえ、つかぬ事を聞くけど、貴女も剣術を嗜んでるの?」

 「え──?ま、まあ、実家が道場をやっていた関係で、剣道を幼い頃から」

 「へえ。という事は、それで真剣を?」

 「はあ、そうです」

 

 少女は若干話しづらそうにそう言う。敬語を使っている辺り、私を先輩だと勘違いしているのだろうか。まずは自己紹介のついでにそれを言及してみよう。

 

 「あぁ、自己紹介してなかったわね。私はジークリッド・クラウゼヴィッツ。ルクーゼンブルクの生まれで、貴女と同じく幼い頃から剣術を嗜んでるの。因みに学年は貴女と同じかそれ以下の一年生。よろしくね」

 「えっ、一年生──!?なんだ、同学年だったのか。変に緊張してしまったではないか」

 

 彼女は半笑い気味にそう言った後に、表情を改めて自己紹介をしてきた。

 

 「私は篠ノ之箒、先程も言った通り同じ一年生だ。よろしく頼むぞ、えっと……クラウゼヴィッツ?」

 「ジークリッドでいいわ」

 

 この後、私達は朝稽古を通じて互いに親睦を深めるのであった。

 

 ◇

 

 放課後──。

 体験入部が早くも各部活で始まる、とHRの時に先生に言われたのでイリスと共にどこに行くか話しあった結果、水泳部という案が挙がったので早速それに向かう事になった。

 現在は、支給された水着に着替えている最中である。……が。

 

 「う……若干キツい」

 

 なにやら私の身体バランスに合う水着は学園にはないらしく、仕方なく一つ小さいサイズのを選んだが、ミスだったかもしれない。ウエストやヒップはともかく、身長が合ってないから下半身は少しくい込むし、胸周りはコルセットを着けているかのように窮屈だ。

 

 「なんか変にいかがわしくなってるわね、アンタ」

 「ちょっとそこうるさい」

 

 イリスは流石に自分の水着を持っていたので、それを着ている。認めたくはないが、ユニフォームとも言うべきそれを纏った彼女の姿はとても様になっていた。

 

 (……というか、金メダリストなのにそのスタイルは反則じゃない?)

 

 競泳のオリンピック選手は男女関わらずガチムチというイメージがあるが、目の前の例外は、言うなればエロゲーのヒロインもビックリな色気200%の体付きであった。

 

 「……そっちも大概いかがわしいと思うけど?」

 「どこ見てんのよ変態」

 「えー……」

 

 そんなこんなで着替え終わるとプールサイドに出ていき、先に居た水泳部の部員と共に準備体操を始めた。

 それが終わると部長らしき人が前に出て、後ろに腕を組み言い始めた。

 

 「えーと、体験入部って事なんで、今日はメニューの一部を一年生の皆さんにはやってもらいます。具体的に言えばウォーミングアップに100mを6本とかなんだけど──、まあ未経験の子も居るだろうし、まずは50mをニ本やってみよっか。ええと、先頭は──」

 

 部長?らしき人は、私達に──否、イリスに視線を向けるとすぐさま判断を下した。

 

 「まあ、ここは金メダリストにお願いしよっかな」

 「了解、じゃあ早速──」

 

 イリスは指示を受けてから間もなくして、素人目

からしても綺麗なフォームで飛び込み、クロールですいすいと進んでいった。

 

 「うひゃ〜、やっぱ速いなあ。まあそれはさておき、次、誰がいくの?」

 

 そう聞かれたので、他に数名居る体験入部勢よりも先に主張する。

 

 「では私が」

 「はーい、じゃあ後の子も自分達で順番決めて後に続くように」

 「部長、私達は別のレーンでやっておけば良いですか?」

 「ん、じゃあいつものメニューね」

 

 

 部員達のそんなやりとりを耳にしつつ、私は飛び込んだ。

 今まで学校の授業で身に付けた技術を最大限に活かし、遥か先に見える影を追う。

 が、当然の如く距離を詰められる訳がなく、ほどなくしてイリスは50mを折り返し、私の横を通り過ぎていった。

 

 ウォーミングアップが終わると基礎練習に入り、それも終わると最後に200mの個人メドレーをやって体験入部のメニューが終わった。

 他の一年生達が更衣室に向かう一方、イリスは部員達(ファン)に囲まれていた。

 

 「あのっ、ファンです!後でサインくれませんか!?」

 「あ、ズルい!私も!」

 「タイムで伸び悩んでるんですけど、なにか良い特訓ってありませんか?」

 「ねえねえ、どこに入部するの?やっぱ水泳部だよね?」

 「テレビで見るよりもずっと良いスタイル……。ねえ、触って良い?」

 「サインは後でね。メニューはコーチに聞きなさい。あ、部活はまだ検討中です。あとガチレズはNG」

 

 絶え間なく飛んでくる言葉に対して、一つ一つ答えていくイリス。この手の対応は流石に慣れた様子だ。

 それにしても、こういうのにちゃんと対応するのは意外だった。てっきり無視でもすると思っていたのだが。まあなんにせよ、アレが終わるのを待っていたら時間がかかりそうなので先にお暇しよう。

 

 「私は先に戻ってるわね」

 「え?あー、うん。りょーかい」

 

 それだけ言うと、彼女はまた対応に戻った。

 私は背伸びをして肩の力を抜きつつ、プールサイドを後にした。

 

 ◇

 

 翌日。

 時は放課後、場所は剣道場。──私達は、剣道部の体験入部に来ていた。現在は基本的な動作やルールの説明を受け、さっそく参加者全員の総当たり戦を始めようという感じになっている。

 

 「ふふん、全員打ち負かしてやるわ」

 「相変わらずスゴイ自信ね」

 

 話を聞く限り、この手の競技はほとんど未経験なのにも関わらず、余裕しゃくしゃくなイリスに思わずそう呟く。

 そんな時、対戦相手を決めるアミダくじの集計が終わったらしく、部員がこちらに呼びかけた。一戦目の相手が誰なのかを確認しにいく。

 

 (……ええっと、一戦目は──)

 

 篠ノ之 箒──。その名がそこにあった。直後、背後から声をかけられる。

 

 「一戦目はジークリッドか。その実力、とくと拝見させてもらうとしよう」

 

 今朝本人から聞かされた話では、この子は全国大会で優勝する程の腕前だ。剣術大会では剣道の流れを組む参加者は全く居なかったし、これはいい経験になるだろう。

 

 「そうね、こちらこそ楽しみにしてるわ」

 

 その後、防具を装着した後に再度ルールを確認して、総当たり戦が幕を開けた。

 

 「試合開始」

 

 審判役の部員にそう言われ、位置につく。目の前の相手から発せられるプレッシャーを受け流しつつ、始まりをただ待った。

 

 「──始めッ!」

 

 ◇

 

 「はぁ……」

 

 体験入部が終わったあと、食事と風呂を済ませて自室でくつろいでいた。イリスは現在トイレに行っていて、部屋は私一人だ。

 ──結局、総当たり戦では全試合で勝利して、名乗りを上げた主将も打ち負かした。おかげで激しく勧誘されるわ、主将に教えを乞われるわで大変だった訳だが。

 

 (……やっぱ、なんか違うのよね)

 

 今まで培ってきた剣術と『剣道』の違いが、私にそう思わせた。

 

 (当分は入部は見合わせね……)




後半ちょっとダレてきてます。

次回は多分クラス代表決定戦だと思うので、早めに投稿できるかと。
誤字とかあれば言ってくださると助かります。





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