7つの歌姫と音楽の仮面ライダー “ビート” 作:よなみん/こなみん
視点変わります。鈴夢sideの方へ。
時は戻り、鈴夢と剣崎が分かれた後にまで戻る。
「俺が道を開くっ!急ごうっ!」
ビート、サンダースタイルを駆り、鈴夢が先人を駆けて道を開く。相手しているのはメルトリリスが出てきたコピー。所謂レプリカだ。
後ろからはイガリマを纏った切歌、シュルシャガナを纏う調が後続を退けながら続く。
鈴夢たちが目指しているのはBBが掌握しているメインルームでは無く、メルトリリスが掌握しているであろうエンジン部の方だった。
メルトリリスの
ジャンヌたちはそのまま後ろで戦っている戦兎たちの援護だろう。あの二人とジルにはほぼ不覚などないはず。そう信じて俺たちは前へと進む。
「あら。向かってくるのね」
「無駄だと言うのに」
彼女たちの戯言が聞こえるが俺の耳には入れず。ただ手に持った槍で彼女たちを刺し穿つ。
スカサハに教えてもらったケルト仕込みの槍さばきがここで役に立つなんてのは考えてなかった。
彼女を相手する時に最も注意すべきなのはあの脚だ。まるで作られたかのような鋭利な刃物のようになっていた。
「・・・アーマーが持つか。彼女の脚が強いかだな」
アルターエゴ。メルトリリス。俺の微かに残った記憶の中では彼女とはろくな思い出がない。監禁する。幸せにしてみせる。だの戯言しか思い出せない。
パッションリップも同様だ。全く。恋は盲目とはよく言ったものだ。
稲妻の槍を振るう、その槍先でメルトリリスの影を溶かしていく。消える際に彼女が不気味な笑顔を零すものの、俺は無視していく。
一切の感情は要らない。敵は切り捨てる。目の前のコイツらはただの邪魔でしかない。
俺とその道を邪魔する。敵。
「鈴夢さん!?」
「と、止まるデス!」
倒す、倒す、倒す、倒す、倒す。
その時。俺の視界が黒くなった。
――――――――――――
鈴夢さんの身体が突然、私たちの方に押し出される。咄嗟の判断で私と切ちゃんは鈴夢さんの身体を受け止める。
目立った傷はない。しかし、仮面ライダーとなった鈴夢さんの身体を軽々と吹き飛ばすほどの力。誰なんて考える暇もなかった。
「あら。まだあなたたちは居たのね」
「調、鈴夢さんを頼むデス」
切ちゃんが鎌を持ち、こちらに歩み寄ってくる敵に構える。こちらに歩み寄ってくる人は綺麗で、まるでお人形さんのようだった。脚まである長い髪、露出の多い服、そして何より、そのすらっとした綺麗な脚に目がいった。
彼女が鈴夢さんの言っていたメルトリリスなのだろう。そして鈴夢さんを吹き飛ばしたのも彼女。
「・・・さて要件だけいうわね。その人を頂戴」
「断ったらどうなるデス」
「アナタたちの命はないわよ。そうね・・・私の部屋に玩具として飾ってあげるわ」
言い終わった後、切ちゃんが床を蹴ってメルトリリスまで一気に距離を詰める。そしてそのまま鎌を外から大きく振って首を落とそうとするがメルトリリスが長い脚で切ちゃんを吹き飛ばす。
「切ちゃん!」
私もヨーヨーで追撃をしようとするがメルトリリスが正面まで流れるように滑ってくる。まるでスケーターのように滑らかな動きに攻撃は当たらず、そのままメルトリリスの脚が私を吹き飛ばす。
今度は切ちゃんと私が同時に攻撃するがメルトリリスは一回転、私たちを軽くあしらう。
「むぅ・・・っ。アイツ。動きが嫌いデス」
「まるで見透かされてるみたいで・・・なんか嫌だ」
「ふふっ。アナタたちが単純なのよ。おバカさん」
「じゃあ・・・単純じゃないやつと戦ってみるか?」
突然。本来ここには居ないはずの声がする。その主は、本当ならここには居なくて、かつ、今頃お説教を受けているはずなのに。
全員が入り口に視線を向ける。そこには二人のライダーがいた。
一人は仮面ライダーオーガ。黒にところどころ緑のラインが入っているのが気になるライダー。
そしてもう一人は仮面ライダーグリス 、ブリザード。本当ならこの人は今一番お説教を受けてるはずだがどうしてここにいるのか。
「なぜ俺たちがいるのか気になるか?」
「鈴夢を追ってきた。それだけでいいだろう」
オーガ、帝とグリス、一海はそれぞれ調、切歌の前に出る。拳を構えて殴り合う気満々の姿勢を見せる。
「へぇ。武器は構えないのね」
「・・・構えたところで君に届かないのは理解してる。なら殴り合うのが手っ取り早いだろ?」
「女に手を上げるなんてサイテー」
「・・・人じゃないからセーフ」
その言葉が開戦の合図となった。痺れを切らしたメルトリリスが一海の足元まで詰めてくる。が、一海はそのメルトリリスが来る僅かな隙をついて、拳を胴体に叩き込む。霊基によって強化されてる肉体にブローをぶち込むが逆に一海が激しい痛みに襲われる。
が、それでも思いっきり力を入れ、メルトリリスを大幅に後退させる。そしてそこに帝が詰めてくる。振り放たれた剣はメルトリリスの硬い脚に当たる。
「反応がいいなっ!」
「帝!しばらく頼む!俺は鈴夢を!」
帝はそのままメルトリリスとの戦いに興じてくれる。一海は鈴夢たちに駆け寄りに行く、切歌、調が付いてくれたのか、その後の鈴夢には新しい傷は一つもない。が、鈴夢の意識が戻らないのも気になる。
「一海さん!鈴夢さんが!」
「分かってるよ!助けてやるから泣くな!」
泣きそうな二人を慰めながら鈴夢の容態をとりあえず確認する。意識は落ちているものの・・・脈があるかどうか。そして変身が解けていないのも気にかかる。もしかしたら・・・いや。それだけは考えないようにする。最悪の展開は鈴夢に限ってはないのだから。
しかし、不死を無効にする方法はいくらだってある。そもそも、不死と言うのは本当に死なないものなのか、誰だって分かりはしない。だが、剣崎さんのように不死の人間でもその人の形を保つことが出来るのか、あるいは身体に流れる年月が俺たちと違うのか、その疑問に答えてくれる人はいなかった。
「・・・大丈夫だ。鈴夢は多分、ただの脳震盪で倒れてるだけだ」
「それって重症・・・」
「こいつの事だ。数分したら目を覚ますだろ」
脳震盪で死ぬ例も多い。このまま死んでくれれば鈴夢はまた目を覚ますのだろうか。だが、一海の頭にはそんな思考はない。仲間を助ける。ただそれだけが存在していた。
簡単に応急処置だけ施し、後は二人に任せる。俺は急ぎ帝が抑えている現場まで戻ろうと走る。
「帝!待たせたな!」
「めっちゃ早くないか!?」
「アイツは死にはしない!それだけ確認した!」
ブリザードナックル両手に、メルトリリスへと肉薄する。メルトリリスが蹴りを主体とした動きに対して一海は拳による打撃から脚術まで使える。手を使わない相手には遅れを取らない。
メルトリリスの鋭い脚が横一閃に空を切り裂く。そこにいたはずの一海は既にしゃがみこみ、下から拳を突き上げる。弦十郎仕込みの腹パンアッパーだ。自分もジャンプすることでさらにそのダメージは加速する。
「帝!」
「任せろっ!」
上に上がったメルトリリスの身体はそのまま帝がかかと落としで地面に叩きつける。フロンティアの古くなっていた床に大きな窪みが出来る。
「ふぅ・・・」
「強くやりすぎデース!沈んだらどうするデスか!」
そこに遅れて切歌と調がやってくる。調に至っては呼吸が荒れているが・・・何かあったのか。彼女たちの額には汗がある。
「どうしたんだ?」
「不味いのがきます!」
その時部屋の扉が思いっきり破壊され、もう一人のアルターエゴ、パッションリップが大きな腕と共に姿を表した。