7つの歌姫と音楽の仮面ライダー “ビート”   作:よなみん/こなみん

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合間 、合間の投稿。c言語難しいんじゃ。


第37話 月の侵略者 二人の絆 獄鎌・イガリマ、塵鋸・シュルシャガナ

パッションリップがここに来たことで状況が変わった。俺と帝、そして切歌ちゃんと調ちゃん。状況的には4:2だがパッションリップの性能は未知数だ。メルトリリスですら二人でやっとだと言うのにコイツを抑えるのには何人要することか。

 

それを考えさせるのはあの大きな腕、肩まではなんとか人間の形を保っているもののそこからは完全に化け物だ。大きな金属の爪は地面を擦り、耳には嫌な金属音が聞こえる。

 

「・・・化け物が」

「なんですか・・・貴方も敵ですか・・・」

 

パッションリップの瞳。まるで俺たちのことが見えていない。焦点の合わない目をしていた。彼女の目には何が見えているか分からない上に、何とは言わないがデカい。それとメルトリリスと同じような服だから目のやり場に困る。が、私情を挟んでいる理由はない。やらなければやられる。そんな状況なのだから。

 

静かに切歌ちゃんと調ちゃんが構える。帝はまだメルトリリスと戦っている途中だろう。奥で金属がぶつかる音が聞こえる。それもかなり連続でだ。

 

目の前の彼女の様子がおかしい。声が聞こえない・・・いや、正確には喋っているが小声なのだ。まるで呪詛を呟くような彼女の声に、俺は咄嗟に行動に出る。

 

その直後、俺の悪い予感が当たった。パッションリップはいきなり飛び上がるとそのまま俺に向けて大きな手を振り下ろしてくる。前へ倒れるように滑り込み、ギリギリ回避する。俺が居た場所には既にパッションリップが手を振り下ろしていた。

 

もしあそこにいたらと思うとゾッとする。しかし、最悪はまだ終わらない。彼女の視線がこちらに向くと彼女の手が宙に舞う。いや、浮かせていると言うべきか、自分の身体を捻らせ、その回転力で重い腕に力を入れて無理矢理動かしているのだ。その攻撃は俺だけではなく切歌ちゃん調ちゃんも攻撃対象になる。

 

周りの障害物を諸共せず腕は俺の方へ寄ってくる。が、俺は腕の親指の部分にゆっくり手を当て、手を乗り越えるように側転をしながら彼女の手を飛び越える。

 

切歌ちゃん調ちゃんは下がって回避する。フリーになったもうひとつの腕は的確に俺を狙ってくるが、今度はさっきよりも早い。さっきみたいなカッコイイ回避は出来ないだろう。

 

と、そこに切歌ちゃんの鎌が飛んでくる。天井に奥深く刺さり、簡単には抜けそうにない。俺ぐらいの体重ならギリギリ支えてくれそうだ・・・そうか!

 

俺は彼女の手の手が来るタイミングに合わせ踏み台にしてジャンプ、そのまま鎌を一気に抜き取り、そのままの勢いでパッションリップ向け振り下ろす。

 

「っ!?」

「腕が重くて身体が操れないだろ!?もらっ!?」

 

が、俺のあては外れた、彼女は少し身体を下げると両手を俺に向けて飛ばしてくる。両側から大きな手が迫ってきて、このままではサンドイッチにされてしまう。

 

「・・・惜しいです」

「ちっ。あと少しでぐちゃぐちゃの具になっちまう所だったぜ・・・」

 

 

――――――――――――

 

 

その一海とは反対に、メルトリリス、帝の方も熾烈な戦いが始まっていた。オーガのまま、帝は剣を振るうが、メルトリリスの華麗な立ち回りと回避が、帝の振るう剣の直撃を躱す。

 

それもただでは無い。少しずつ少しずつ慣れているのだ。回避する動きに迷いが無くなっていく。その段々と楽々かわされていく動きに帝は焦り始めていた。

 

「くそっ!なんで当たらない!」

「あら、もう終わりなの?残念」

「巫山戯るなよっ!」

 

耐えかねて剣を投げる。メルトリリスは両手で受け止めるが、その瞬間に帝は詰める。姿勢を低くし、速攻で拳を構えてメルトリリスの懐に入り込んでアッパーカットを入れようとするがメルトリリスの膝蹴りが仮面に当たる。オーガの頑丈な仮面にヒビが入る。

 

隙を疲れたのかそのまま姿勢を直し帝は横殴りを入れようとするが、それもメルトリリスの手に止められ最後は彼女の脚で横腹に直撃を喰らう。

 

「がぁっ!?」

「・・・惜しい惜しい」

 

子供のように笑うメルトリリスに帝は怒りを募らせていく。メルトリリス・・・BBもそうだが、コイツらは戦いを遊びを思っているのだ。ましてや命を奪う行為そのものもオマケ程度にしか思ってはいない。コイツらが楽しんでいるのは戦っている間・・・だ。人を虐める、苦しませる事が彼女たちが楽しいこと。彼女たちにとっての快楽そのものなのだ。ましてやメルトリリスは性格上どう見てもドSの性格だ。楽しむのも納得してしまう。

 

しかし、帝の怒りは頂点に達していた。そんな人が苦しんでいる戦いすら遊びでしかないコイツらに嫌気が刺していたのだ。

 

「お前たちは・・・っ!お前たちだけは!」

「もういいじゃない。早くあの人を寄越しなさいよ」

「断るっ!鈴夢は・・・お前たちには相応しくないっ!」

 

鈴夢は帝たちに戦う理由を打ち明けていた。歴代の仮面ライダーたちに託された希望を守るため、そしてその希望を次の未来へと繋げるため・・・、大切なもの、人、そして守れる全ての命を守るために・・・と。

 

――――――――――――

 

 

「身体の侵食?」

 

とある日のこと。鈴夢、シンフォギア装者を除く二課メンバーが、エルフナイン、キャロルによって司令室に集められていた。題材は・・・鈴夢のこと。

 

そして全員が到着するや否や、エルフナインによってモニターが表示される、鈴夢の身体のデータが隅々まで表示されるが、表示された鈴夢の身体の半分が黒く点滅していた。

 

「そうです。霧夜 鈴夢さんの身体検査の結果・・・鈴夢さんの身体は身体、及び精神的に侵食されている事が判明しました」

 

黒く点滅しているのがその侵食部位であるとさらに補足される。現時点で、既に身体の三分の一が侵食されているとこの画面で判明した。

 

これには戦兎たちは唖然としていた。別世界で鈴夢に会ったが、そんな異常があるとは誰も分からなかったからだ。ただ、剣崎だけは分かっていたかのように腕を組み冷静に画面を見つめていた。

 

「・・・どうして俺たちだけなんだ」

「装者の皆さんには引き続き、プロジェクト・イグナイトに専念してもらうつもりですし・・・鈴夢さんは言うこと聞かないので・・・」

「そういうやつだからな。概要は?」

「私が説明しよう、錬金術にも通じたものだからな。この手のものは」

 

キャロルが説明をするために前に出る。エルフナインとお揃いの格好の為、どちらがどちらか全く分からない。

 

・・・本題だが、まず、鈴夢の身体はビートと完全に融合しつつある。しかし、それだけならまだいい。しかし、ビートの身体は同時に別の病に侵されていた。それはビート肉体の変化である。

 

ビートの肉体は天霊と呼ばれる存在であるが、何者かの手によってその肉体は堕天しつつあった。地上に居すぎたせいか、他の外敵によるものかは不明である。

 

現状では、右腕、右脚が汚染されており、まるで筋肉がそのまま出たかのように赤く、そしてリアルになっていた。

 

「二つ目は人間として出来ていないからだ。それ故に鈴夢は不安定な姿になる」

「人間にすることは出来ないのか?」

「人体錬成でもしない限り無理だな。まぁ、私の力を使えば出来んくもないが・・・厄介だな」

 

厄介な理由、それは鈴夢の魂が、ビートの肉体に定着しているからだ、まるで糸のように結びついた魂は簡単にはビートの肉体からは離れようとはせず、さらには肉体も、魂を離そうとしない。

 

「・・・なるほど」

「じゃあこのまま鈴夢が壊れるのを見ろと!?」

「戦兎落ち着け!誰もそうとは言ってないだろ!」

 

二人の葛藤、少なからずも仮面ライダーチームの間には動揺が発生する。戦兎、一海が争い、他のメンバーは動揺をそれぞれ隠していた。

 

冷静な剣崎にすら迷いが見える。それほどこの問題は深刻で、彼が人で無くなる問題なのだ。

 

「・・・人の心でいるのは簡単なのさ。だが、人であり続けるには難しい」

「剣崎さん?」

「・・・なんでもない」

 

 

――――――――――――

 

 

「冷静になれ、何かヤツの弱点みたいなのがあるはずだ」

「あら無駄よ?私たちは完璧な生命体。あらゆるモノも、あらゆる存在も私たちを否定することは出来ない」

「・・・嘘だろ?お前たちは未完成なんだ」

「・・・なんですって?」

 

帝は変身を解く、強烈な光が発生すると共にオーガのアーマーが剥がれ帝の生身の身体が姿を表わす。そしてオーガのドライバーを外し、その場へと落とす。

 

一つ深呼吸、メルトリリスはもう相手にもしていないのかその場でクルクル回ったりしている。

 

「鈴夢から聞いてる。お前たちはある人間のデータを元に作られたただの人形だと。人形には心がない。だからお前たちは人を殺すんだ」

「心がない・・・ですって?」

「だってそうだろ?人形に余分な感情は必要ない。ただ、言うことを聞いていればいいんだもんな?」

 

その後、メルトリリスの鋭い足蹴りが飛んでくる。帝はそれをスレスレで躱す。二回、三回と同じように飛んでくる足を躱していく。軽くフットワークを刻み、ステップを踏みながらリズムよく回避していく。

 

「私は人形じゃないわ!私は・・・!」

「人間には自我がある。自分を認識し、律する力を少なからず持っているんだ。お前たちは子供なんだよ」

「黙れっ!」

「変身!」

 

新たなベルトを通し、サイドにトリガーをはめ込むと青い光に包まれて帝が新たなライダーへと変身する。仮面ライダーデルタ。オーガと同じ次元の仮面ライダーである。

 

その後の帝の動きは簡単だった。冷静さを欠いたメルトリリスは本物の子供のように突っ込んできては足蹴りを何回か帝へ当てようとする。まずはご丁寧に脚払い、それを帝は軽くジャンプしてメルトリリスの無防備な腹に両足蹴りを決め込む。

 

次に回し蹴り、それを簡単に腕で受け止め、彼女の顔向けて拳を叩き込む。蹴りの具合は先程より弱い。精神的に弱っているのか彼女の動揺がひしひしと帝には伝わっていた。

 

次に連続攻撃、コンビーネーションアタックだ。連続で飛んでくる攻撃すらも帝は回避する。

 

今の帝は怒りなど頭には無かった。ただ集中することで得るもの、超認識能力が今の帝には備わっていた。飛んでくる瞬間に攻撃コースを想定し、回避する。まるで未来を見る能力そのものだ。

 

「・・・ゲームは終わりだ。ここからは戦いってのを教えてやる」


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