第一話 唐突すぎるプロローグ
春のうららかな日差しが視聴覚室に……じゃない、俺の部屋に差し込む三月下旬。
俺たちblessingsoftwareはいつも通りの俺の部屋でパーティーを開いていた。
……あ、原作に倣ってこの物語は俺ことblessingsoftware代表安芸倫也が語り部を務めさせていただきます。
そして、パーティーの内容は…………。
「ってことで、トモ大学合格おめでと~」
ってことで、俺の大学合格を祝う回だ。
わざわざこんな物語読んでるくらいだから誰が最初のセリフ言ったかはわかるよね? ほら、あのいろいろ危なかったあの従兄弟だよ。
「おめでとうございますっ、倫也先輩っ!」
次にお祝儀…………じゃなかったお祝いの言葉をくれたのは、相変わらずのボリュームを誇るあの子だった。別にいいよね? ほら、あのポンコツ幼馴染みのライバルで、ある部分に関しては勝負にすらなっていないあの子だよ。
恵は、なぜかこの場にいない。おっかしぃなぁ。あぁいや、恵が何でいないかは俺は知らないよ?
伊織は……まああいつは出海ちゃんたちがどう誘ってもこないだろ、『僕はフィクサーだからね』とかなんとか黒幕っぽいこと適当に言って。
残るは…………
「倫也先輩、不死川大学合格おめでとうございます!」
出海ちゃんと同じ呼び方をするのは、豊ヶ崎学園二年、出海ちゃんの同級生の竹宮真司。今年度からblessingsoftwareにサブライターとして加入して、俺たちの三作目である『愛情コンフリクト』の共通ルートとヒロイン個別ルートをワンルート書いてもらった。今では恵や美智留、同学年の出海ちゃんとも壁が無くなっていまや完全に俺たちの頼れる仲間だ。
真司は、何でもたまたま初参加したコミケで偶々『cherry blessing 』を買って、ADVに興味を持ってくれたそうだ。で、『冴えない彼女の育てかた』も買ったと思いきやこれまた偶然にも去年出海ちゃんと同じクラスになって二人の間でいろいろあったらしい。
いやぁ、受験勉強もしなくちゃいけないし全ヒロインルート書くのは無理かと企画書の前で頭を抱えてた所に急に出海ちゃんが真司を連れてきたときは驚いたなぁ。
「ありがとう、美智留、出海ちゃん、真司。でもさ、ひとつ聞いていい………?」
「はい……なんですか、倫也先輩?」
「あ、いやうん。たいしたことじゃないんだけどさ」
「たいしたことでないのなら、わざわざ言う必要はないのではないかしら?」
今ので感づいた人がほとんどだと思うけど…………
「なんで恵はいないのに英梨ヶと詩羽先輩がいるの……?」
そう、今現在この部屋には現blessingsoftwareである恵がいなくて、元blessingsoftwareである某金髪幼馴染みと某毒舌黒髪先輩がいる。
いや、ほんとになんで……?
「そんなの加藤さんがいると誘惑できな……じゃなくて倫理君を責められないからに決まっているじゃない」
「言い直すならせめて真意を隠す努力をして下さい……」
いや、英梨々はまだわかるんだけど(家すぐそこだし)。
「え~っとですね、倫也先輩、その、この前町田さんと会ったときに少し話してたらいつの間にやらこんなことに」
と、真司の男子にしてはかなり高い声が詩羽先輩と英梨ヶがここにいる謎を解き明かす。
あ~そういうことね、完全に理解した(理解してない)。
いや、それ先輩と英梨々がいる理由にはなっても、恵がいない理由にはなってないよね?
「あ~センパイがあんなこと言ったのはこ~ゆ~ことだったのか~」
「どういうことだ美智留」
「いや~なんかね? センパイが今まで一回だってセンパイの方からかけてきたことないのに、いきなり電話してきたと思ったら、私も参加するわ。準備は任せなさい。加藤さん達にも私から連絡しておくから、ってなんか捲し立てて来てさ」
気付いている人は気付いていると思うけど、このパーティーは三人の主催だ。
っていうか伊織は出海ちゃんが来るときに気付くんじゃ…………? あいつのことだから直接は来なくても何か伝言くらいはしてきそうな気がするんだけど……。
ああ、いや別に伊織から何も来なくて寂しいわけじゃないんだから誤解しないでよねっ!
「お兄ちゃんなら今日はどうしても外せない用事ができたって、朝早くに出かけていきましたよ?」
「そうなのか…………」
じゃあ、呼ばないつもりだったのは恵だけ……?
っていうか英梨々は何やってるんだ?
「って……」
こいつ俺の机とパソコン勝手に使ってやがるし。
何しに来たんだよ。ほんとに。
「そんなことはどうでもいいじゃない。今はパーティーを精一杯楽しみましょう?」
「って言われても」
「まあ、別に私だって純粋に倫也くんの入学を喜ぶつもりがないわけでもないのよ? ただこんなに絶好の機会はなかなかないわけだし、ちょうどいいかなって」
詩羽先輩はそう言うとベッドに腰掛けてる俺の目の前に陣取って、肩に手を置き、そのまま俺のほうに体重を掛けてきた。
──って、ええ!?
待って、俺学んでなさ過ぎでは? 前にもあった気がするんだけど。あと真司と出海ちゃんは二人で仲よさそうに今期アニメの話しないで!? 俺も入りたい……というかなんで助けてくれないの!? 気付いてるよね? さっきからチラチラ見てるよね!?
「──さあ、倫理くん? 一年間の大学生活で培った私の技に酔いしれなさい? ……大丈夫よ、優しくしてあげるから…………。──フゥーッ」
「ひっ、せせせ先輩!?」
ちょっ、まっ。やばいやばいやばい! このままだと何がヤバいとは言わないけど確実にヤバい!
「──なにやってるのよ、霞ヶ丘詩羽」
と、戦慄しつつ、下手に動くと先輩のあんな所やこんな所がもろに当たってしまうせいで動けなかった俺に救いの糸を垂らしてきたのは完全に空気と化していた……というか何かの〆切でも迫ってたのか、ずぅっと俺のパソコンで作業していたクソオタクモードの英梨々だった。
「あら、英梨々。私、何かおかしいことをやったかしら」
「よくヌケヌケとそんなことを言えるわね……。今日一日は何もしないって約束でしょ」
「ええ、今日一日は何もしないわよ? 今日一日は」
その言い方だと日付が変わった瞬間に何かありそうなので止めてください。
「……はぁ。なんでこの毒舌物書きはこんなに馬耳東風なのかしらね」
「あら? あなたも大概だと思うけれど?」
「なっ」
「……というか、そうね。……ねぇ英梨々」
「──何よ」
「いっそのこと二人で迫ってしまえば抜け駆けではなくなると思うのだけど」
えっ。
「……」
「よく考えてみなさい、英梨々。これほどおおっぴらに倫理くんに迫れるのなんて正妻である加藤さんが居ない今だけよ?」
「……で、でもあたしは……」
「とか言いつつも、加藤さんに心の中で謝りつつも、あなたはどんどん私の提案を飲み込み始めているでしょう? ……認めなさい、今が最大のチャンスなのよ?」
「あたしは……」
と、俺に躰を預けたまま詩羽先輩が圧倒的独壇場を展開していると…………
「──何やってるのかなあ。どういう状況? これ」
「…………」
「────」
一体いつの間に入ってきたのか、詩羽先輩によると呼ばれていないはずの恵が部屋の扉から姿を現した。
「め、恵……。あのな、これは……」
「うん、分かってるよ。全部二人からやったんだよね?」
うん、いつもはクリティカルすぎてちょっと怖いけどこういうときはむしろ頼もしい!
「あ、加藤先輩。すごくどんぴしゃなタイミングですね」
「連絡してくれてありがとね、真司くん」
「いえいえ。……何もかもやったのは霞先生なので僕たちは見逃してもらえると……」
「……心配しなくてもなにもしないよ」
恵を呼んでくれたのはありがたいんだけど、もっと早くにもっと直接的に助けてくれると嬉しかったなあ……。もう遅いけど。
……なんとなくこの先の展開は読めてると思うけど。まあ、恵と詩羽先輩が英梨々を中途半端に巻き込んでいろいろしてました。
でも、ここから先はミセラレナイヨ。
そんなこんなでよく分からない俺の合格おめでとうパーティーはお開きになりましたとさ。ちゃんちゃん。