えっと、パーティーで具体的に何があったか知りたい人も多いと思うんだけど、普通にパーティーやっただけだよ?
あのメンツで何も起こらないわけないだろとか思うかもしれないけど、本当に何もなかったからね?
…………恵がウチに泊まっていったこと以外は。
閑話休題。
今俺は恵と一緒に校内を回っている。
あ、日時としてはとりあえず入学式の直後ということで。
散策の目的は、もちろん校内を把握するためもあるんだけど、サークル活動が出来る場所を探すためというのが大きい。
真司も増えた今、俺の部屋は拠点にするには小さすぎるだろうってことで、大学で探すことにした。
「この部屋とかどうかな、倫也くん。確かこの部屋教授たちもあんまり使ってない部屋だったと思うんだよね」
「うーん、もうちょっと机がある部屋はないか? 作業する場所はもうちょい広い方がいいんだよな……ほら、今年はともかく先のことを考えると原画が出海ちゃん一人っていうのは負担が大きいだろ?」
「確かにそうだね。それに出海ちゃんにしろ真司くんにしろ今年受験だし」
「そ~なんだよな、シナリオの方は俺がヘルプに入れる、っていうか何ルートかは元々俺が書くつもりでもあるしまだ大丈夫だろうけど、原画の方はヘルプ出来そうな人がいないんだよな」
「じゃあ次に良さそうな部屋行こっか」
「そうだな──あ、ごめん恵。ちょっと電話来たわ」
そんなこんなで、俺と恵は校内を歩き回ってたんだけど……ある人……あ、人じゃないや、あるバケモノからの電話がすべてを台無しにした。
「…………っ?」
スマホの画面に現れた名前は……
『よ~元気にしてたか~少年』
紅坂、朱音だった…………。
「…………??」
いやいやいや、訳がわからないよ(QB風)。
なんで紅坂さんから俺に電話なんて……。
『時間ね~からとっとと要件だけ言うぞ』
と、紅坂さんは回避不可能(ついでに予測も不可能)の攻撃を食らってスタン状態の俺を完全に無視して話を続ける。
『今日の夜7時に○○ホテルの最上階にある御影亭までこい。伊織はもう呼んであるからよ』
「いやいやいやいや、急に話を進めないでくださいよ。突然呼び出して何があったんですか?」
というか待ち合わせに指定された場所がとてつもなく高い店だった件。
…………嫌な予感がする…………。
『ま、そういうことだ。遅れたらネットであることないこと脚色つけてばらまいてやるからな~』
「あんたが脚色つけたら大変なことに、ほんっと~に大変なことになるからやめてね!?」
…………訂正、嫌な予感しかしない……。
「電話の相手、誰だったの?」
憂鬱な気分でスマホをしまうと、恵が電話の相手を訊ねてきた。
「えっと、その……紅坂さん」
俺がビクつきながら答えると恵は……
「へ~そうなんだ~、で、倫也くんはどんな話をしたのかな~?」
……だから怖いってその反応!
なんていえるわけないので、紅坂さんが言ったことをそのまま恵に伝えた。
そしたら…………
「ねえ倫也くん、それ、私も行っていいかな」
という提案が。
「別にいいと思うけど、なんでわざわざ」
「わざわざっていうか、これ、サークルの案件じゃないの? 倫也くんだけならまだしも、波島くんまでいるみたいだし」
あ。
「言われてみれば……」
でも、それこそわざわざ、あの紅坂朱音が俺たちに何か話すことがあるかなぁ?
「ま、今考えても仕方ないか」
「うん、聞いてから考えればいいんじゃないかな」
「それもそうだな」
ということで、恵と俺は○○ホテルの御影亭に行くことになった。
「支度とかもあるし、今日はもう帰ろうか」
話が決まったところで、恵からそんな提案があった。
まあ、当初の目的だった校内ツアーとサークルの活動場所探しもとりあえず目処がたちそうだから、続きはまた後日ということに。
……………………紅坂さんのことさえなければデートなのになぁ。
……それにしても、わざわざ紅坂さんのお呼び出しの理由はなんだろう。俺だけだったら柏木エリと霞詩子のことなんだろうとも思えたけど、伊織もいるんじゃあ違うだろうしなぁ。
…………考えても仕方ないか。
─────────────────────────
ってことで、現在時刻6時30分。
俺と恵は○○ホテルの入り口で待ち合わせをしていた。
いや~ほんと紅坂さんのことさえなければデートなんだよなあ。
ま、まあ紅坂さんの要件っていうのも気になるからいいけど。
「ちょっと早いけどもう行っちゃおうか、倫也くん」
「そうだな」
ちなみに来る前に御影亭について少し調べてみたら、ランチだけで万越えするのに数ヶ月先まで予約で一杯の人気店だった。
英梨ヶのお父さんがイギリスの来賓をもてなすのに使いそうだな……。
そんなことを考えてるうちに、エレベーターが来てたので、無意味に天井に高いエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。
店内に入ると、そこにはビルの館内とは思えないほどの広い庭園が広がっていた。
川が流れ、橋が架かり、鯉が泳ぎ、鹿威しがなり、けれどしっかり暖房は効いていてこの店の値段の高さを醸し出す。
……えっと……GS読んでください。
店員さんに案内されてたどり着いたのは、長々と廊下を歩いた先の個室だった。
俺たちは顔を見合わせて頷くと、同時に一歩を踏み出して、室内にはいる。
そこには、食べ散らかされた料理と、すでに空になっている一升瓶。そして、だらしない格好で酒を呑む紅坂朱音……。
あとついでにその怪物の隣に座っている伊織。
「倫也君、いいかげん僕の扱いをどうにかしてくれないかい?」
「俺のモノローグに突っ込んでくるな」
「ま~いいからとりあえず座れよ少年。あとそっちの彼女も」
「初めまして……blessingsoftware副代表の加藤恵です」
「お~聴いてるぜ、何でも叶巡璃のモデルなんだってな」
挨拶だけして座ると、紅坂さんが足元から一つのファイルを取り出す。
…………まさか。
「1時間だけ待ってやる。んで決めろ」
この中身は、まさか……。
俺たちを呼んだ理由は…………。
俺は、いてもたってもいられずに、紅坂さんの手からファイルをひったくった。
「倫也くん──?」
恵の驚いたような声が聞こえたけど、止まれない。止まることなんて出来るわけがない。
だって、分かってしまったから。
これが、あの紅坂朱音の仕事の成果だって。
あのメディアミックスの女王が、詩羽先輩と英梨々をシンデレラにしたあの紅坂朱音が、俺たちに見せるために作ったものだって理解してしまったから。
そして、1ページでも読んでしまったら…………
「…………──っ」
もう、引き返せない。