部屋から出て、十数分後に戻ってきた二人は何があったのか、やたらと吹っ切れた顔をしていた。
恵は少し微妙な表情をしていたけど。
「「やりますっ!」」
二人は腰を下ろすと、事前に打ち合わせでもしてきたかのように、声を合わせてこう言った。
ちょっと待って、それ何をやるのか微妙に分からないから。目的語が致命的に足りてないから。
「──と、とりあえず、落ち着いて、二人とも」
「倫也くんこそ落ち着こうよ。いったい何を想像したのかなぁ」
───────────。
「べ、べべべ別に変な妄想なんてしてないぞ!?」
「なるほど。変な妄想をしたんだね」
してないって…………してない……。
「と、とにかくっ、何をやるって!? 目的語を教えて目的語を!」
いやまあ、なんとなくわかるけど。
「「あの企画ですよ! あの企画!」」
二人とも凄いな。息ピッタリにもほどがあるだろ。
でも、このサークルの代表として一応言っておかなきゃいけないことが一つだけ。
……まあ言うまでもないことだけど。
「あの二人に負けるなよ? もちろん、紅坂朱音にも」
「「もちろんですっ!」」
うわ、また揃った。
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「──ってことだ伊織。紅坂さんに言っといてくれよ」
『……倫也君、君は僕のことを最近頼んどけば何でもやってくれるチョロいヒロインみたいに扱ってないかい?』
だれがヒロインだ、だれが。
「実際、大概のことはやってくれるだろ? どうせ、今も紅坂さんと一緒にいるんだろうし」
『ああ、今は違うよ。今は朱音さんが若干修羅場でね。話し合いの続きはまた明日からってことになったのさ』
半分適当だったのにまさか半分当たってるとは…………。
「じゃあ明日にでも言っておいてくれ。俺たちblessing softwareはメンバー全員であの企画に参加する」
『……わかったよ』
「なんだ、あんま気乗りしなさそうな感じだな」
『別にサークル全体での参加について思うところがある訳ではないんだけれど、ただ、また朱音さんに振り回されるかと思うと軽く頭痛がね……』
あ~。
「悪い、それに関してはご愁傷様としか言えん」
『とか相手を思いやるふりをしつつ、心の中では特別何を思っているわけではないんだろう?』
「……もしそうだとして、素直にそう言うと思うか?」
『ははっ、それもそうだね』
──ったく。
「じゃあそろそろ切るぞ」
『ああそうだ。倫也君、君も覚悟しておいたほうがいいよ? 今回君はクリエイターというよりはこっち側なんだから。確実に朱音さんにふりまわされるよ? ……まあそれはクリエイター側にいたとしても同じだけど』
伊織の話し方がなんかムカついたからそのまま電話を切った。
今は真司達が帰ったあとの、夜8時。
夕食やら風呂やらを済ませて、伊織に今日のミーティングの内容を話していた。
にしても、真司と出海ちゃんのシンクロ率高すぎだろ、っと思う今日この頃。
ソレはともかく。
二人が覚悟を決めたことで、俺たちの進むべき道は決まった。
あとは、なるようにしかならない。
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こうして、俺たちと紅坂朱音の戦いは始まったのだった。