ーーーーーーおや、あんなところに小さい子供が
家出でもしたのかな?)
男「行くところがないならうちにおいで
絶対変なことしないよ
したら警察に突き出してくれてもいい」
少女「お兄さんいい人なんですね
下心がないならどうして見ず知らずの女の子を家に泊めてくれるんです?
泥棒かも知れませんよ?」
男「だからってこの寒空の下、
女の子が街角で野宿なんて見てられないよ。
もし仮にこの善意が裏切られたとしても自分の善意が全うされれば満足なんだ。」
男「まあ、ようするにただの自己満足だよ
だから君は特に恩を感じる必要性はないんだ
何の代価も要求するわけじゃない」
少女「今どき奇特な方なんですね
ご両親は一緒では?」
男「一人暮らしの学生だよ
親は地方で暮らしてるんだ」
男「何があったかしらないけど、明日になったらおうちに帰るんだよ。キミくらいの歳の子はなんだかんだで親に反発しがちだけど結果的には親の言うとおりにするのが一番よかったって後になってからわかるものなんだ。」
少女「⋯⋯」
男「まあ、説教するつもりもないよ。風呂はそこのドア、トイレはその隣。ベッドは使っていいよ、俺は床で寝るから」ゴロン
少女「⋯⋯」ピッピップ
(電話の音が聞こえる……ああよかった、親御さんと和解するんだな。やれやれ、事件にならずにすんでよかった……)ウトウト
(⋯ん、朝か⋯⋯)チュンチュン
男「⋯え?」
男「え、なにこれ?!
ここどこ?!牢屋?!
寝てる間に逮捕されたの?!」
少女「おはようございます、お兄さん。」
男「あっ、昨日の子!おまわりさん呼んで!なんか逮捕されてるけど、違うって説明してあげて!!」
少女「落ち着いてください、お兄さん。ここは私のおうちです。」
男「え? ああ、ご両親と
仲直りできたんだ、それはよかった。それで、なんで僕がキミの家に……。」
少女「少女って呼んでください。お兄さんは今日からここで生活するんです。 私とずっと一緒に暮らしてくださいね。」
男「は……?いや、意味わかんない。なんでキミと一緒に暮らすの?」
少女「やだ、もう……恥ずかしい。お兄さんのことが……好きにになっちゃったからに決まってるじゃないですか♥」
男「いや、おかしいおかしい!
どういう理屈だそれは!?ご両親はこのこと知ってんの!?」
少女「当たり前だよなぁ?
え? だって愛し合うふたりが一緒のおうちで暮らすのは当たり前じゃないですか。」
少女「そもそも私が家を飛び出したのは、私を無理やりお見合いさせようとする親に反発してのことでした……。愛のない結婚なんて、私は絶対嫌なんです。夫婦っていうのは、結婚前からお互いを想い慕う
強いきずなで結ばれているべきですよね?」
男「まあ価値観は人それぞれだが、恋愛結婚の方が気心は知れてていいかもな。で、なんで僕がこんな目に?」
少女「よかった! お兄さんも私と同じ考えなんですね!
やっぱり私たち運命のふたりですね!」
……いいから続きは?>
少女「そう、そして家を飛び出した私は行き場もなく寒空の下をさまよっていました。そんなときに声を掛けてくれたのが、お兄さんだったんです……!」
少女「お兄さんは約束したとおり、私には指一本触れませんでした。今どき珍しいほど善良で、優しくて⋯⋯。私はすぐに好きになりました。そして思ったんです。お兄さんのような清らかな心の持ち主は、この悪意で穢れた人間社会ではすぐに汚されてしまう。私 が 保 護 し て あ げ な き ゃ っ て……。」
少女「これからは私がお兄さんを護ります。どんな薄汚い悪意の手も、決してお兄さんには近づけません。すべて私が盾となって防ぎます!」
男「今まさに薄汚い悪意の手に
とらわれてるんですけど!?両親なんて言ってんの!?」
少女「両親には私から、私の運命の結婚相手だと告げておきました。突然境遇が変わったことで、混乱して逃げそうなので座敷牢に入ってもらうって伝えてあります。」
ああ、逃げたいよ!至って正気で!!!>
少女「逃げちゃ嫌ですよ。どうして逃げるんですか?ご飯ももちろんお出ししますし、三食昼寝付きですよ。」
男「僕は動物じゃないんだよ!食って寝るだけの生活なんて耐えられるか!!」ドンッ!
少女「なるほど、それもそうですね。人間は動物じゃないですから、そんな生活じゃ満足できないですよね。」
男「わかってくれたか。今初めて意思疎通に成功した気分だよ。」
少女「やっぱり文化的な生活は必要ですよね。漫画でもゲームでも小説でも、好きなものを用意しますね!パソコンも手配しますから、創作活動もできますよ!!」
男「通じてねえええええ!!」
少女「何が不満なんですか?最新鋭のゲーム機もKindleの入ったタブレットもありますよ?やりたいゲームや読みたい本はいくらでも買ってもらっていいです。うちはお金持ちなので。」
男「自由! 自由がないでしょ!?」
少女「あ、なるほど⋯そうですね!
食べて寝てゲームしたり小説を読むだけの生活じゃ体がだめになっちゃいますもんね!大丈夫です、好きな時にお散歩できますよ!」
男「だからそうじゃなくって……」
男(いや……待てよ?散歩で外に出たときに助けを求めれば……)
少女「もちろん散歩の途中で危険なことがないように、ボディーガードも完備していますよ。 ねっ、ポチ。」
ポチ「わんわん、クーン」(野太い声)
男「初めての第三者が出たと思ったらアンタ一体なんなんだ。」
ポチ「忠犬だよ、見て分かるだろうボーイ。」
「いや止めろよ、いい大人が何やってんの!?子供が道を踏み外しかけてるじゃねえか!!」
ポチ「いいか、ボーイ。よく聞くんだ」
ポチ「金は! 良心より!! 重い!!!」
男「ガチクズゥ!!!」
男(いや、そうか……この子は、子供の頃からこんな大人に囲まれて育ったせいで良心が育たなかったんだな……かわいそうに……)
男(決定的に道を誤る前に、僕がこの子を正しい道へ導いてあげなくては……)
男「わかった、君と一緒に暮らそう。」
少女「本当ですか! わーい!!」
男「その代わりちゃんと学校に行くように。 親の言うことも聞いて、人間として恥ずかしくない生き方をするんだ、いいね?」
少女「アッハイ
あなたを養うために立派なビジネスマンになります!」
ーーーーーー別室
少女母「まあ、あの子の重しになってくれるなら夫が誰でもいいですわ。」
少女父(歴史は繰り返す……)
カンッ!