「ここはどこだ?」
気が付くと僕は真っ黒な空間にいた。
僕の体は鮮明に見えるが、それ以外が真っ黒であり、どこが上で下なのかも分からない。普通なら不安や恐怖に駆られて何かしら叫んだりするのだろうが、何故だろう、僕はここがどこなのか見当がついてしまっていた。
もしかして、ここは――
そんな事を考えていると自分の体を中心にして景色に色が付く、音が広がる、感触が生まれる、温度が伝わる。
「地面は砂利……と言うよりは丸石と表現するべきか。ある一定以上の距離は相変わらず真っ黒。そして、この音…水………川か?」
行く宛も無く、仕方ないから水の音のする方へと近づいていく。
20秒ほど歩いた頃だろうか、少し離れたところに看板らしき物がぼんやりと見える。さらに近づいて行くとその姿ははっきりと見えるようになり、案の定看板であった。
『第一級河川・三途の川
綺麗な川を皆で守ろう
日本19072番地区・冥府役場』
色々ツッコミどころは多いのであろうが、その看板はあまりにも決定的情報である。
僕――神崎 圭一は死んでいるのである。
「そうか、僕は死んでしまったのか……」
夢だとか幻だとかそういう類いの冗談なのではないことを認識できたのは、先ほども書いたと思うが『何となく見当がついている』からである。
そして、自分の心は驚くほどに冷静であり、自分が死んでしまったことよりも、自分がどのようにして死んでしまったのかを考えてしまう。しかし、死ぬ直前の記憶が無く、ただぼんやりと茶色い何かが関係しているということしか分からなかった。と言うか、死ぬ直前どころか多くの記憶を思い出せなくなっていた。
「はてさてどうしましょうかねぇ。」
誰もいない空間に僕の声が響き渡り、独りぼっちを駆り立てる。
地面の石で遊んだり、寝転がって目を瞑ったり(寝ることはできなかった)して数分を過ごした頃であろうか、突然白い光の柱が僕の体を包み込んだ。
僕はそこまで学がある方ではないため、その白い光を正しく説明できる自信はない。しかし、あえて光の柱を言葉で表現するとしたら『パアァァッって効果音が流れるのがふさわしいような光の柱』である。
うん、やっぱり僕はこの手の説明は下手だな。
そうこうしていると、光がより一層明るさを増していった。
温かい……この温もりは愛だ。すべてを受け入れ、すべてを抱き寄せる――優しくて野性味のある母なる愛。
光が途切れ、辺りが鮮明になる。
先程までの空間ではない、ここはどこかの部屋だ。
机があり、上木鉢があり、タンスがあり、明かりがある。
そして、一人の男とゴリラがいた。
「初めまして、圭一くん。」
「ウホッ!」
二人(正確には一人と一匹)は神妙な面持ちで挨拶をした後、これでもかと言うほどのスピードで地面に伏し、
「すいませんでした!」
「ウッホホ、ウホウホ、ウホッウホー!」
謝ってきた。
to be continued………