土下座――それは謝意や尊意を示す際に行われる高等的日本儀式。頭を地面に付き、伏すことである。その歴史は長く土下座の姿を模した埴輪すら見つかっているほどである。
そして、そんな土下座が僕の目の前で繰り広げられている。しかも、一人の男と一匹のゴリラが、である………シュールとはまさにこのことを指すのだろうか…。
「圭一くん、ほんとうにすまなかった!」
「ウッホホ、ウホウホ、ウホッウホー!」
再度、額を地面に押し付けこれでもかと言わばかりに謝る。
「あのー……どうして僕に謝っているのですか?」
「君が死んでしまったのは……僕たちが原因なんだ。」
なるほどそういうことであったか。やはり僕は死んでいて、どこかに移動したものの、まだここは冥界ではあるのか。
「えっと、僕の身に何があったのですか?」
「まさか、死亡前の出来事を思い出せないのかい?」
「えぇ………。」
と言うか、僕のほとんど全ての記憶が抜けている感じがする。どんな人間だったのかとは覚えているが、どんな人間と関わってきたのかを思い出すことができないのである。正直な話、僕は両親のことすらまったく思い出せないのだ。
「魂のメモリが破損しているのか……そうだな、俺には話す義務がある。」
「ウーホホー……」
彼は土下座をやめて、僕にソファに座ることを勧める。そして、彼も向かいのソファに座って語りだした。
曰く、この人は神様である。
曰く、このゴリラは神の使い魔である。
曰く、ゴリラはバナナを食べていた。
曰く、バナナの皮が下界に落ちてしまった。
曰く、僕はことあろうかその皮を踏んでしまった。
曰く、こけて頭部の強打。
曰く、死んでしまった。
この話が終わった後、僕はどんな顔をしていたのだろうか?
この時、僕の気持ちは一つの事で満たされてしまっていた。
「僕の死因は……バナナの……皮……だと!?」
「だからほんとにすいませんでした!」
「ウウホホ~!」
先程、『シュールとはまさにこのことを指すのだろうか』とか書いたが訂正をする。
シュールとはまさにこのことを指すのだろうか?
しかし、ふと我に返る。気になることがまだあるのだ。
「あれ?じゃあ、記憶の断片でぼんやりと見えた茶色い物は何だ?」
「ソレハ、ナンデモナイデス。」
そうか、何でもないことなのか。さっき魂のメモリが破損しているとか言っていたが、記憶の混合でも起きてしまったのだろう。何せ、ほとんどの記憶が抜けている状態だからな。
二度目の感想になるのだが、それにしても死んだと言うのに僕の心情は穏やかである。それもそうだ、思い出の欠如しているのだから、未練も クソ もない。
「えっーと、ここに呼ばれたってことは、僕はこのままあの世へgoってわけではないのですね?」
「普通の死ならそうなるけど、今回は別。本当なら『生き返らせる』という選択をしてあげたいんだけど、残念ながらそれが出来ない。」
「出来……ない?」
「詳しくは話すことはできないけど、大雑把に言ってしまえば、神は万能であるがゆえに自分達を無能にすることができた。ということだね。」
うーむ、よく分からないが、とりあえず神様たちは自分達に枷を付けたって認識で良いのかなぁ。
「とにかく、君を以前の状態として生き返らせることはできない。」
そして、神様は続けてこう言った。
「……だけれども、君を生まれ変わさせることはできる。俗に言う『転生』ってやつだよ。」
転生……?
to be continued……