最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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107話 三天衆 その1

 

 その日、レヴィンの根城に現れた者たち……一人は金髪をお洒落に整えた男だ。七三分けの髪形で、耳に掛かるくらいの長さで整えている。黒いスーツを身に着けた出で立ちであり、明らかに礼儀作法を重視する人物だった。

 

 二人目は、その男とは真逆の存在。茶髪を肩辺りまで伸ばしている髪形であり、前髪は眉の位置までとなっていた。色黒の筋肉質な外見をしている。しかし、その表情は明らかに嫌悪感を抱く顔つきだ。半袖の服にジーンズを着こなしている男ではあるが、ランファーリを見るなり目の色が変わった。

 

「こりゃイケてる女じゃねぇか? レヴィンの奴の女かよ?」

「……」

 

 ランファーリは突然話しかけて来る男の方向を向いている。仮面を付けているので、美人かどうかの判定はできないはずだが、話しかけた男は彼女の全く露出度のない服の上から美人と評していた。

 

 確かに、ランファーリのスタイルは服の上からでも非常にバランスが良いということは伺える。その為か、男のテンションは上がっていた。

 

「へへへ」

 

 男の手が彼女の後ろへと回される。本来であれば、抵抗をするところではあるが、

 

「触るつもりですが? 私にそのようなことをするとは、命知らずですね」

「なかなか気が強い女みたいだな。気に入ったぜ」

「……それに、私は本体ではありません。幻影でしかない……あなたの欲望は叶えられないでしょう」

「幻影? その割にはいい尻をしているじゃねぇか」

 

 男はランファーリと話しながらも、しっかりと後ろに回した手で弾力を味わっていた。美しい尻肉、ランファーリ自身が美しい女性であることは確信しているようだ。

 

「………」

「……ん?」

 

 だがその時、ランファーリの存在が希薄になる。先ほどまでは確かに実体を持っていたはずだ。確かな柔らかさを感じていたのだから。急に背景溶け込むように彼女の身体は変化し、男の手は中空に舞う形になった。

 

 男は目の前の状況を呑み込めないでいたが、特に汗を流していることもない。自らを「幻影」と評した通り、明らかにランファーリの身体は透けていたのだ。

 

 

「命知らずな人間……三天衆の一人とのことですが、一人くらい殺しても問題ないでしょう」

「へへへへ、相当に勝気な女みてぇだな。お前みたいな女を屈服させるのが楽しいんだよ」

 

 そう言いながら男は両手を天に掲げた。透けていた身体を戻したランファーリも何事かと構える。

 

 男が天に腕を掲げると同時……男の周りには土砂が舞い降りて来た。周囲を囲み、根城のロビーはその土砂で埋まっていく。

 

「仰々しい技……虫唾が走りますね」

「いいね、その性格。すぐに俺の虜にしてやるよ」

「やれるものならと言っておきましょうか」

 

 男は醜い笑みを浮かべ獣になった。ランファーリを襲うことしか考えていない目をしている。しかし、そんな時に邪魔が入った。

 

「は~い、そこまでだ、グロウ」

 

 グロウと呼ばれた男。彼の攻撃を止めたのはロビーに最後に入って来た男だ。グロウよりも明るい茶色をした髪の色であり、その長さは比べ物にならない。地面につきそうな程の髪を大きくうねらせていた。

 

「やめるだ、仲間同士で。僕はとても悲しいよ」

「アインザーか。邪魔するんじゃねぇよ、殺すぞ」

 

 少しナルシストな印象のあるアインザー。顔つきも細く、頬骨が長い。目つきも優しいながらも非常に細かった。グロウからすれば嫌悪感の出る印象なのかもしれない。

 

「野蛮だよ、君は。本当に僕は悲しい」

 

 アインザーはそう言いながら、自らの髪をグロウに向けていた。その光景を見ていたランファーリは仮面越しに声を漏らす。

 

「髪の刃……」

「知っているのかい? 博識だね。確か、ランファーリという名前だったかな? 僕はアインザー・レートルだよ。よろしくね」

「……ええ」

 

 アインザーは自らの技を認知しているランファーリに親近感が湧いた。その為か、髪の刃で創り出した腕を彼女に向けて握手を求める。その不思議な行動にランファーリも戸惑ったのか、すぐに腕を出すことはなかった。

 

「心配しなくても大丈夫だよ。僕は友好を求めてるだけだからさ」

「そのようですね」

 

 彼の真意が分かったのか、ランファーリも警戒を解き、彼の髪の腕と握手を交わす。その器用な扱いからもレベル23のメデューサが使う髪の刃とは比べ物にならないのは明白であった。

 

「トランスウェポンの一種……それも、髪の刃を使える者が居るとは」

「トランスウェポンを知っているんだ。本当に博識だね! そうだよ、髪の刃はメデューサなどが使えるトランスウェポンさ。使える者は少ないと思うけど、君も使えるの?」

「いいえ、私は使えません」

 

 ランファーリはアインザーの質問に首を横に振った。しかし、多少含みを持った言い方となっている。アインザーは気付く、彼女の右手の甲に書かれている「4」という数字に。どういった意味合いなのかはわからないでいたが。

 

 トランスウェポンは武器を自在に具現化させる魔法の一種であり、使用者の強さによって破壊力などに大きな差が生まれる。また、その上限値はないともされている強力な特殊能力だ。使用できる者は多くはないが、トランスウェポンの定義は曖昧な部分も多い。

 

 例えば、ミルドレアの創り出す氷の槍はトランスウェポンに該当するが、レナやルナの硬流球はトランスウェポンには該当しない。あくまでも、武器を創り出す必要があるのだ。

 

「君も相当に謎の多い人物みたいだね。ますます親近感が湧くよ!」

「そうですか」

 

 若干、アインザーのテンションの高さに付いていけていないランファーリ。仮面の下は呆れ顔になっているのかもしれない。二人の会話にテンションが下がったのか、グロウは生み出した土砂を消した。

 

「今日のところはこれくらいで許してやるか。だがな、ランファーリ。てめぇは、俺の女決定だ。覚悟しておけよ」

 

 

 女性であれば、嫌悪感を剥き出しにするような表情をグロウは見せる。色黒の肩辺りまで伸ばした男は自信満々にそう言い放った。

 

「……命知らず。本当におめでたいことです」

「ははは、実力が見えていないのはどっちだ?」

 

 グロウは全くランファーリに怯む様子は見せない。それどころか、自らの手籠めにすることを誓っているようだ。二人はしばらく見据えていたが、やがてそれも終わる。

 

「レヴィン殿がお待ちだ。行くぞ」

 

 彼らに声を掛けたのは最初に館にやってきた人物。短い金髪のスーツの男だった。グロウとアインザーより格上の印象のある人物であり、三天衆の事実上のリーダー格であった。

 

「行くぞ」

「シルバか。わかったよ」

「すみません、シルバさん」

 

 グロウとアインザーは彼の前では態度を変えていた。ランファーリとしても、目に見えない序列がそこにあるように映っている。リーダー格のシルバ・ケレンドを先頭に、三天衆とランファーリはレヴィンの部屋へと向かった。

 

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