最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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117話 断章 ミルドレアとの談話 その1

 

「ていうか、なんで私達が教会の仕事を手伝ってるのよ?」

 

 ソード&メイジの片割れであるアメリアが不満げな声を出した。その相手はアルトクリファ神聖国の神官長ミルドレア・スタンアークだ。近くには苦笑いをしている春人の姿もある。

 

「まあ、そう言うな。ちょうど仕事の話が入っていたのでな。協力してもらっただけのこと。お前たちとしては情報と報酬を受け取れるのだから、文句もあるまい」

 

 そう言いながらミルドレアは氷の槍を創り出しては目標に向かって撃ち出している。突き刺さる目標は、金色の熊……ゴールデンベアードと呼ばれるモンスターだ。レベルは70にも達しているゴールデンベアードであるが、撃ち出された氷の刃はそんなモンスターを容易く撃ち抜いていた。

 

 彼らはゴールデンベアードの生息地である、神聖国の東方に位置する湿原地帯に脚を踏み入れていたのだ。足場を取られる危険地帯であり、戦闘には向かない地形であるが、彼ら程の強さの者達にはそこまでのペナルティにはならない。

 

「相変わらず強いわね。さすがは最強の神官長様って感じ?」

 

 同じくホワイトスタッフから炎を次々と撃ち出しているアメリアは彼を称賛していた。討伐している数で言えば二人は互角くらいだ。向かって来る70レベルのモンスターの軍勢を、全く苦にしている様子はない。

 

 ゴールデンベアードは炎と氷の刃により、相当数が絶命していた。残るのは結晶石と上質な金だけとなっていく。アメリアからの称賛は本来であれば名誉なことだ。彼女ほどの実力者の言葉というのは非常に説得力に満ちている。だが、ミルドレアは嬉しそうな表情を見せなかった。要因は彼の隣で戦っている春人にある。

 

 春人は近距離戦をゴールデンベアードに仕掛けており、3メートルを超える巨体をユニバースソードで一瞬の内に両断していたのだ。スコーピオンの軍勢や闇の軍勢の騎士に比べれば恐れる相手ではなかった。その動きは明らかに自分よりも洗練されている……そんな確信のせいで彼は、アメリアからの称賛を受け取ることが出来ないでいたのだ。

 

「最強という言葉など、もはや意味をなしていない。同じ人間の領域でもこの男が居るからな」

「ミルドレアさん……」

 

 ミルドレアは静かに春人を見据えていた。そんな視線に気づいた春人は一旦、討伐の手を止める。

 

「また強くなっていないか?」

「俺ですか……? えっと」

「マスター、先日の戦いでさらにレベルが上がっているようです。私のレベルが500を超えていますので」

 

 彼らの話に割って入って来たのはサキアだ。無表情ではあったが、どこか春人を称えているのか誇らしげであった。

 

「ということは、高宮春人の実力は1000以上か。いよいよ、化け物として見た方が正確な領域になっているな」

「やめてくださいよ。ミルドレアさんも強くなったんでしょ?」

 

 ミルドレアからの称賛とも皮肉とも取れる言動は春人としてはなんと答えれば良いのかわからないものであった。とりあえず、差し障りのない返答でその場を濁す。

 

「確かに以前よりは力をつけたが、まだまだお前には遠く及ばんさ」

 

 ミルドレアの言葉はどこか儚く感じられた。自らを最強と疑わなかった神官長。その名声は自他ともに認めるほどであり、事実、彼の実力を超える者などほとんど存在していなかったのだ。それは現在でも変わりない。

 

 だが、2か月以上前に起きたフィアゼスの親衛隊との戦いで、自らの実力を持ってしても胃の中の蛙であるところからの脱出はできていないと思い知らされた。

 

 そして、春人の実力だ。春人の存在は、彼の信念が多少なりとも揺らぐきっかけにもなっていた。

 

 

 

「ところで、東の大陸? ていうか島のことだけど」

 

 隣で聞いていたアメリアが、大半のゴールデンベアードを始末できたことを確認しつつ、話を本題へと移した。ソード&メイジはミルドレアに東のアルカディア島の件について質問をしにやって来たのだ。

 

 現在、オードリーの村にはレナ、ルナ、ニルヴァーナが待機している。ゴールデンベアードの討伐は教会が引き受けた仕事の一つであり、ミルドレアはアルカディア島のことを話す代償として、討伐任務の手伝いを提示してきたというわけだ。

 

「アルカディア島……フィアゼスの信奉者の一部の者達が造った人工島だな。確かに、文献の中にその記述は存在している」

「ええ、私たちが知りたいのは、北の方面で活発になっている軍勢がアルカディア島からの者達かってことだけど」

 

 ミルドレアは目を閉じ、なにかを考え始めた。自分が過去に見た文献の中から、最適解を探しているのだ。アメリアと春人もその状態を見守る。

 

「可能性としては考えられるな。特に、その仮面の人物。名をランファーリと言ったのだな?」

「ええ、確かそう言ってたわ。ねえ、春人?」

「うん、確かにランファーリと言ってたね」

「ランファーリ……か」

 

 ミルドレアの表情は一層真剣なものへと変わった。元々、堅い表情を崩すことは少ない為、変化を見つけるのは難しいが。

 

「知ってるんですか?」

「……文献には、島には新たなる神を創造すことに成功したという記載がある。その名も生体兵器ランファーリ……おそらく、偶然ではないだろう」

 

「生体兵器……?」

 

 ミルドレアの言葉に、思わず息を呑んでしまう二人。生体兵器の創造よりも、むしろ驚いているのは新たなる神についてだ。つまりは、信奉者たちはフィアゼスに代わる新たなる信仰の対象を自ら作り上げたということを意味していた。

 

「それって、本当なの?」

「神聖国では否定的だ。事実は事実だろうが、アルカディア島自体が過激派が作り上げた島だからな。新たなる神の創造など、フィアゼス神への信仰の教えにも反している」

「神聖国の立場からすれば受け入れられないってことね」

「ああ、そういうことだ。800年前に創造された島と神だが、その後、しばらくして断絶状態になったらしい。自滅したのか、昔の神聖国に滅ぼされたのかはわからないが、過激派連中は滅んだとするのが通説だ」

 

 ミルドレアは語るが、その言葉は事実ではないことは彼自身もわかっているようだった。春人たちの話を聞いた為だ。

 

「ランファーリという人物が、マッカム大陸に現れた。……最初にアルカディア島を創り上げた連中は、ランファーリ自身に滅ぼされたと見ることもできるな」

 

 長年の通説を崩しかねないミルドレアの発言。しかし、この場の誰もがその言葉に異論を唱えることはなかった。それほどに彼の言葉は的を射たものであったのだ。

 

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