最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

129 / 152
129話 モテる春人の不幸物語 その1

 

「ねえねえ、春人。今は魔物の料理を作ってるから期待しててよね」

 

「あ、ああ……リッカ、ありがとう。その魔物って……?」

 

「近くの獣を適当に倒したのよ。まあ、料理には自信あるから期待してくれて構わないわよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

 リッカにやや押され気味の春人であった。リッカは周辺の獣を倒してそれを料理していた。彼女はその獣をまともに調理できる自信があるようだ。モンスターは魔法生命体である為に調理することは出来ない。

 

 その為、通常の獣……熊や狼などが標的にされた。

 

 春人としてはかなり心配ではあるが、彼女の勢いに押されているのであった。そして、春人の元に訪れたのは何もネオトレジャーの面子だけではない。少し遅れた形ではあるが、センチネルの二人も到着していた。

 

 アルマークとイオの二人も到着したのだ。

 

 

「やっほー! 春人さん、お久しぶり~~~!」

 

「春人さん、こうしてまた会えて感激です!」

 

 

 アルマークとイオからの挨拶はとても励みになるものだった。春人としても嬉しくなってしまう。自分と会えただけでこれだけ感激してくれるのは。ただ……今は状況が悪かった。

 

「アルマーク、イオ……久しぶりだね。会えて嬉しいのは俺も一緒だけどさ……あはは」

 

「あれ? なにか問題があるんですか?」

 

「アルマークは周りの雰囲気とか考えた方がいいよ」

 

「ええ、イオ……?」

 

 

 アルマークとは違い、イオは周りの雰囲気がよく分かっているようだった。それは春人にとってもありがたいことだ。

 

 

「リッカ……」

 

「リッカは敵……」

 

 

 アメリアとルナからの視線がとても痛い春人であった。春人の立場からしてみれば苦笑いをするしかないのだった。

 

 

「アメリアさんや……ルナさんでしたっけ? なんだか睨んでいるような……」

 

「アルマーク、つまりはそういうことだよ」

 

 

 現在は近くでリッカが料理を作っていて、それをアメリアやルナが見ているという状況だった。アメリアもルナも実力行使に出ているわけではないが、明らかに視線を感じる事態だ。春人はその状況で頭を悩ませていた。自らに好意を示してくれているリッカを無下にはできないという彼なりの優しさだ。料理を作ってくれているのだから、その料理を見もせずにどこかへ行くわけにもいかない。最悪の状況ではあったが、アルマークとイオの二人が来てくれたのは良かったのかもしれない。

 

 

「アルマークとイオの二人よね? アーカーシャでは有名だし」

 

「はい、そうです。ネオトレジャーのリッカさんですよね?」

 

「そうよ。よろしく」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 アルマークはリッカに特に敵意を見せることなく挨拶をした。彼女が1歳年上であることを理解しての反応だと言えるだろうか。

 

「……」

 

「お連れのイオに関しては敵意が感じられるんだけど?」

 

「いえ……そんなことはありませんが……」

 

 

 イオの方はリッカを認めたくはない雰囲気であった。

 

 

 そこはかとなくイオはアルマークに現状を伝えていた。ようやく彼も周りの状況を理解する。アメリアやルナの視線にアルマークも気付いたのだ。

 

 

「私になにか恨みでもあるの?」

 

「いえ、そういうわけじゃないですけど……すみません、不快な思いをさせて」

 

「別に謝らなくてもいいけどさ」

 

 

 イオの敵意をリッカはさほど気にしていない様子だった。春人としてもその部分は安心していた。

 

 

「それよりもリッカ……彼は……」

 

 

 春人としては女性関係の事柄も気になってはいたが、それよりも重要なことがあった。リッカの近くに座しているタナトスレーグの存在だ。

 

「私の存在に注力するか。やはり只者ではないな」

 

「そっちこそ……」

 

 

 春人はタナトスレーグの実力をある程度は理解していた。自分であれば戦える相手であることも理解している。だが、他の者達では……彼の心配はそこにあった。

 

「心配するな。私は別に無差別に暴れる気はない。お前は他の事柄に注力しているんだな」

 

「なるほど……信じていいのか分からないけれど、それは安心だな」

 

「大丈夫よ、別に。こいつは暴れる気がないのは確かだしね」

 

 

 レベル的な意味合いを考えれば、リッカの言葉はやや不安が残るところではあるが……今は信用するしかなかった。タナトスレーグが暴れたとしてもここにはアメリアやレナ、ルナの他にもミルドレアもいるのだから。何よりも春人がいる。レベル1000を超える存在にタナトスレーグも勝負を挑もうとは思わないわけだ。しかし、もしもタナトスレーグがその気であれば、彼が倒されるまでに何人が殺されることになるのか……そういう不安は大きかった。

 

 そういう意味ではタナトスレーグが暴れないことを願うしかないのだ。春人がいかに強いといっても全ての人物を守りながらは戦えないのだから。

 

「どのみち相当な実力者のようだ。今は暴れないことを祈るしかないね」

 

「マスター、あの者から敵意は感じられません。それにマスターの方が強いかと思いますので、大丈夫です」

 

「といっても、楽に勝てる相手じゃないだろ」

 

「それは……」

 

 サキアはタナトスレーグの強さがタナトスと互角以上なことは看破しているようだった。いかに春人と言えども簡単に倒せる相手ではない。こういったレベルの話に於いて、互いの致命傷、という部分は非常に大きい。春人はその部分では負けてしまうのでより慎重に戦わないといけないのだ。

 

 それでもまともに戦えば春人に軍配の上がる勝負ではあるが。

 

 

「はい、出来たわよ春人」

 

 

 タナトスレーグのことを心配していた春人だが、リッカによって料理がもたらされた。近くの魔物を倒して調理した物であるが……。

 

 

「いい匂いだ……すごい」

 

「獣の出汁にも気を配ったからね。調理器具を持ってきておいて正解だったわ」

 

 リッカはここに来る時に最低限の調理器具や調味料なんかも用意していた。まだ、調味料は使っていないが出された肉料理は香ばしいかおりがしている。出汁によるものらしいが。

 

「あ、ありがとうリッカ。こんな料理作ってくれて」

 

「なによ感謝なんかいらないって。こういうのも互いの親交を深めるのに重要でしょ?」

 

「確かにそうだね」

 

 リッカへの態度が柔らかくなった春人だった。彼女への信頼が生まれたのかもしれない。

 

「春人」

 

「えっ……ルナさん?」

 

 

 そんな時、彼らの前にルナが現れた。

 

「私も料理を作るから……是非、食べてほしい」

 

「えっ……?」

 

 

 なにやら不穏な空気が流れて来た。ルナは明らかに敵意のまなざしをリッカに見せている。春人は苦笑いをするしかなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。