最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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131話 迫る脅威 その1

 

「どう春人? 美味しいでしょ?」

 

「うん、リッカ。すごく美味しいよ」

 

 

 得体の知れない獣の肉ではあったがリッカが作った料理はとても美味しかった。日本では到底考えられない工程を踏んでいたように思える。それだけでも彼女のスキルの高さが垣間見えた。

 

「ウサギを焼いてみた。春人、食べて欲しい」

 

「ルナさん……これは……」

 

 日本でも見た経験のある料理……もとい生き物だ。日本では一般的にはウサギを食べないので抵抗感が大きかった。調味料などで味付けはされているようだが……。

 

 

 しかし、せっかく用意してくれたのに食べないのでは失礼過ぎる。春人はウサギの肉を頬張るのだった。

 

 

 ……意外にも美味しい。

 

 

「あ、美味しいです……ルナさん」

 

「ホント? うれしい……」

 

 

 控えめなルナからの好意の言葉と言えるだろうか。春人はその言葉に本気の何かを感じてしまった。以前のキャバクラでの発言では異性としては見ていないような発言だったが……今のルナは違うと言える。

 

 

「ふ~ん、それで私の料理とどっちが美味しいの?」

 

「いや……優劣を決めるものではないだろ? 両方、美味しかったでは駄目なの?」

 

「駄目に決まってるでしょ」

 

「駄目、どっちが美味しかったか教えて」

 

「え、ええ~~~?」

 

 リッカもルナも真剣な表情をしていた。その顔を見て春人は二人とも本気なのだと悟る。これはどちらが美味しかったのか答える必要があるだろう。そんな風に考えていた時……。

 

 

「お楽しみなところ悪いんだけど。春人、仕事の話が出て来たわ。イチャイチャするのも一旦、やめてよね」

 

「アメリア……? べ、別にイチャイチャしていたわけじゃ……!」

 

「何言ってんのよ。リッカとルナから料理を振る舞われて楽しかったでしょ?」

 

「あ、いや……それは……」

 

 

 春人としては何も言えなかった。楽しくなかったと言えば嘘になるからだ。リッカとルナからの好意は本当に嬉しいと思っている春人。無下にするわけにはいかなかった。

 

「本命が来たってわけね」

 

「本命と思っているのにあなたは料理なんて振舞ったんだ」

 

「まあ、そういうことになるわね」

 

「まあ、そのことはいいんだけど……」

 

「どうでもいいなら言わないでよね」

 

「……」

 

 

 二人はどこか火花を散らしながらも、スムーズに言葉を交わしていた。春人からすると胃が痛くなる展開ではあったが。

 

「アメリア……仕事の話ということは闇の軍勢のこと?」

 

「そうなるわね、ルナ。悪いけど、春人を巡る抗争は少し止めてもらうわ」

 

「……仕方ない」

 

 

 不満そうではあったがルナは理解したようだ。リッカも特に口を挟むことはなかった。その後、春人達は話を聞かされることになる。

 

 

 

 

------------------------

 

 

 

「裏組織アンバーロードが動いているって……?」

 

「そうよ、マシュマト王国内部でね。北からは闇の軍勢、南からはアンバーロード……最悪な挟撃と言えるかしら?」

 

 

 アメリアの話は予想以上に大きな内容だった。春人達も先ほどまでの雰囲気から一変している。

 

 

「じゃあ、俺達はどうすればいいんだろう? 闇の軍勢とアンバーロードが繋がっていると考えれば」

 

「戦力を分散するしかないわね。でも、それだと問題があるわ」

 

「問題?」

 

 

 アメリアは神妙な顔立ちになっていた。春人としても彼女の言った問題に興味津々だ。

 

 

「戦力分散に伴う総合的な戦力の低下だよ。そういうことだろう、アメリア?」

 

「ええ、そういうことね」

 

 

 アメリアの代弁としてリグドが口を開いていた。彼女の考えを先に読んでいたことになるだろうか。

 

「じゃあ、つまりはここにいるメンバーを分散させないといけないってことよね?」

 

「そういうことになるわね」

 

 

 リッカの疑問にアメリアは答えた。少し嫌そうな表情をしていたのはこの際、ご愛敬だ。

 

「まずいですわね……戦力を分散させるとなると、敵の総力が分からない以上は不安しか残りません」

 

「レナの言う通りだわ。まあ、春人なら単独でもなんとかなると思うけど」

 

 

 アメリアからの絶対の信頼に春人はなんとも返せなかった。

 

「アメリアの言葉は正しいと思います。私も付いているのですから、最悪の場合を想定しても逃げるくらいはできるでしょう」

 

 

 春人の影に潜むサキアも自身満々だった。確かにレベル1000を超える春人ならば単独で行動したとしてもなんとかなるだろう。サキアもいるのでなおさらと言える。

 

 

「それを言うなら、リッカも大丈夫だと思うわ」

 

 

 話に入って来たのはリッカの戦友であるミーティアだった。彼女はリッカの能力を信頼しているようだ。

 

「ちょっと、ミーティア……」

 

「タナトスレーグを支配しているくらいなんだから。それに……アインザーの攻撃も防いだと聞いているけれど?」

 

 

「それはまあ……そうなんだけど」

 

 

 レベル900のタナトスレーグを支配しているリッカだ。彼女も単独で行動することになってもなんとかなるだろうという意見が出るのは自然のことだった。

 

 

「あなたのレベルは?」

 

「一応、80くらいかな」

 

「全然足りないじゃない。私やレナ、ルナですら単独行動は危険かもしれないのに……」

 

 

 アメリアの言葉はリッカの身体を案じてのことだった。いくらタナトスレーグがいるとは言っても、レベル80の彼女を単独にするのは疑問なのだ。

 

 

「まあ、リッカは念のため、単独行動をさせない方向でいいんじゃないかな。それよりも……」

 

「どうしたの、春人?」

 

「闇の軍勢や裏組織と本気で戦うなら……さらに戦力が欲しいところだね。相手の上限が分からない以上は」

 

 

 相手の上限が分からない状況では、どうしても自分達だけでの行動は危険と言えた。さらに戦力を増強することは間違いではない。

 

 

「そうは言ってもさ。新しい戦力なんてそんな簡単には……」

 

 

 アメリアは新しい戦力について心当たりがないようだった。しかし、春人は異なる。

 

 

「いるじゃないか、アメリア。グリモワール王国という存在が」

 

 

 春人の言葉にアメリアは言葉を失う。予想していない言葉が出て来たからだ。

 

 

「本気で言ってるの? 何をされたか忘れたわけじゃないわよね?」

 

「わかっているさ。でも、未知の敵に挑むならグリモワールに協力を要請するのは間違っていないと思うんだ」

 

 

 テラーボムと呼ばれる爆弾を投下した国だ。一歩間違えれば大惨事になっていたかもしれない。それだけにアメリアは眉を潜めていた。

 

 

「闇の軍勢の人数が多すぎることを考えれば、テラーボムの一撃は非常に助かると思うんだ。協力関係になっておくのは悪いことではないと思うよ。闇の軍勢は放っておけばグリモワールにまで行くかもしれないんだし」

 

「それはそうだけど……でも」

 

「いや、悪い話ではないだろう」

 

 

 春人の案に賛成の意を示したのはミルドレアだった。皆、彼の方向に目をやっている。

 

 

「俺達だけで戦う場合、人数不足になる可能性が高い。ここに集まっている面子もレベル差はかなり開いているようだからな」

 

 

 周囲のメンバーを見てのミルドレアの意見だった。ナラクノハナやセンチネル、ネオトレジャーも含めればかなりレベル差があると言えるだろうか。

 

 

「テラーボムという強力無比な一撃を持つグリモワール王国と協力関係になるのは、悪くはないだろう。俺達の戦力増加という面から見てもな」

 

「確かに……悪い案ではありませんわね」

 

「うん、私は春人に賛成」

 

 

 レナやルナは春人に賛成しているようだった。アメリアはあまり気が進まないみたいだが。

 

 

「俺とアメリアで交渉に行くのはどうかな?」

 

「はあ……まあ、確かに強力な助っ人なんて都合よく現れるわけないしね。心当たりのある面子に頼むのは仕方ないか」

 

 

 周囲が賛成気分なことを考慮し、アメリアも折れる形になった。今はマッカム大陸を火の海にしないことが大前提なのだ。アメリアもそれは分かっている。アーカーシャにまで被害が行ってからでは遅い。

 

「神官長という立場で考えれば、俺も行った方がなにかと有利に働くかもな」

 

「ミルドレアさん」

 

 

「お前達が行っている間、敵が攻めて来ないか警戒しておこう」

 

「遠距離なら、ニルヴァーナが得意だ。不意を突かれることはないと思うよ」

 

「交渉の方、任せましたわ」

 

 

 春人とアメリア、ミルドレア。それから影であるサキアがグリモワール王国に向かうことになった。目指すは戦力の増強である。

 

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