最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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136話 断章 とある山脈にて

 

 マッカム大陸東に位置するミッドガル山脈。年中、極寒の地域として有名であり、人間の生存能力を楽に超える環境は自然と弱き者を遠ざける。その地域に到達できるのは強き者だけとなっていた。

 

 

「レグルス、グロリア! いるんだろ!?」

 

「アテナちゃん、雪だるま作ろうよ~~~」

 

 

 そんな極寒の地域を物ともせず歩を進め、とある洞穴に辿り着く者達がいた。アテナとヘカーテの二人である。辿り着いた洞穴には二つの大きな巨体が鎮座していた。金竜レグルスと銀竜グロリアの二体である。

 

 

「……フィアゼスの親衛隊か」

 

「そうだぜ。1000年振りじゃねぇか。まだ生きてたんだな」

 

 

 アテナはレグルスと相対しながら語気を強めていた。1000年前に一度、彼らは会っているのだ。

 

 

「……何か用か」

 

「相変わらず辛気臭い野郎だぜ。こんなところに籠ってるから、そんな性格になるんだろうな」

 

「……」

 

 

 アテナは挑発ともとれる言葉を投げかけるが、大陸の調停者は動揺する気配を見せていない。アテナとしても予想通りの反応なのか、彼女も気にしている素振りは見せなかった。

 

 

「ねえ、アテナちゃん、雪だるま~~~~!」

 

「ヘカーテ、お前は遊ぶことしか頭にないのかよ」

 

「え~~~、でもこんな寒い地域に来たんだからさ。遊ばないと損だよ?」

 

「意味がわかんねぇ……」

 

「一体、何用だ?」

 

「ああ、用件だったな。私達は東の島に行く予定だ。それだけ言いに来たんだよ」

 

 

 アテナのその言葉にレグルスは敏感に反応してみせた。グロリアも同じく上体を起こしている。

 

 

「東の島……アルカディア島のことか」

 

「そんな名前だったか。人間たちから聞いた話だけど、そこはジェシカ様とは別の神を創造した島らしいじゃねぇか。今では新たなモンスターが蔓延る地獄とか言われてるらしいが……なかなか楽しそうだと思ってよ」

 

「アルカディア島か~~楽しみだよね」

 

 

 ヘカーテは満面の笑みを浮かべながら尻尾を振り回していた。アルカディア島に行くのも遊び感覚なのだ。アテナは少し様子は違うが、島に行くことに恐怖は感じていない。

 

 

「行くのは自由だが気を付けろと忠告はしておこう」

 

「はっ、大陸の調停者様はこれだから。前はジェシカ様を殺そうと現れたくせによ」

 

「昔の話だ。奴とは話をしてみて秩序を乱す存在ではないと判断できたのだ。国同士の争い程度であれば私達が動くことはないからな」

 

「ふん、よく言うぜ」

 

 

 1000年前に対峙した時には下手をすれば戦闘になる可能性もあった。しかし、現実として彼らが戦うことはなかったが。ジェシカ・フィアゼスがそこまでの悪ではないと判断されたのが大きい。お互いが戦わなかったのは幸運の事態と言えるだろうか。戦えばある地域が消滅するかもしれないからだ。

 

 

 それほどに互いの力量は凄まじいものだった。

 

 

「アルカディア島には我が同胞である黒竜が向かったことがある」

 

「へえ、それは初耳だな。どうなったんだよ?」

 

「わからない……数百年の間、音沙汰無しだ。奴がやられたとは考えにくいが、下手に関わらない方が賢明だと判断した」

 

「……」

 

 

 アテナは何も返すことがなかった。黒竜ことダークドラゴンのディミトリ。それほどの存在が返って来ていないのだ。向こうに住み着いた可能性はあるが、かなり不気味な事態であった。

 

 

「そのくらいでないと面白くないな。ジェシカ様の後釜がどんな顔なのか、拝んでやる」

 

「後釜ってことは二代目ってことかな?」

 

「さあな。向こうはそんなつもりはないんだろうがな。どうやら人間が勝手に祀り上げたものらしいからな。その結果、人間の文明は滅んでるんだとか。かなり過激な二代目かもな」

 

 

 アテナは静かに話した。彼女からしてみればアルカディア島の謎の存在が二代目かどうかはどうでもいいことだ。勝手にフィアゼスの名前を使っているとかそういうことはなかったので、興味の枠からは外れていた。

 

 

「忠告って言えば、私からもあるんだったぜ」

 

「どういうことだ?」

 

 

 話の流れが変わる。アテナは真剣な表情で言った。

 

 

「秩序が本気で乱れたらお前らは動くんだよな?」

 

「……時が来ればな。来たらの話だが」

 

「この大地はジェシカ様の物だ。他の連中に掌握されることはあってはならないぜ」

 

「ずいぶんと身勝手な言い分だな」

 

 

 戦争による国家間の争いを言っているわけではない。アテナが言っているのはもっと本格的な戦いの予兆に関してだった。嫌な予感……大気が乱れ秩序が乱れ狂うことを彼女は敏感に感じ取っていたのだ。ある意味ではレグルス、グロリアと同じ感覚を持っているのかもしれない。

 

 だからこそ、もしもの場合を想定しての話をしたのだった。

 

 

「言いたいことはそれだけだ。んじゃな。行くぞヘカーテ」

 

「ケルベロス達のところに帰るんだね? 雪だるま作りたかったけどな~~~」

 

「お前はそればかりだな本当に。まあいいや、フェンリルのところに戻るぞ」

 

「は~~~~い!」

 

 

 アテナとヘカーテは他愛もない会話をしながら暗い洞穴から出て行った。

 

 

「レグルス、どうするつもりだ?」

 

「いつもと変わりはない。静かに時を待つだけだ」

 

 

 二体の調停者……ゴールドドラゴンとシルバードラゴンはいつもの雰囲気に戻っていた。上げていた上体を元に戻し再び静かに眠るのだ。

 

 ミッドガル山脈にて行われた邂逅……それは静かに行われたが非常に重要なものとなっていた。

 

 

 

 

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