最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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149話 久しぶりの帰還 その4

 

「2000万……多すぎるわ……」

 

 

 鑑定が終了したローラだが、あまりの結晶石の多さに度肝を抜かされていた。

 

 

「宝石類とかも入れるともっとあるんだけど……流石にすぐの換金は厳しいでしょ?」

 

「ごめんなさい、勘弁して」

 

 

 アーカーシャはマシュマトと同じというわけではない。ギルドの規模が違うのだ。結晶石2000万ゴールドの換金で精一杯だったようだ。他の冒険者への配慮もしなければならないのだから。

 

 

 

「いや~~儲かったわね、春人。まさか1日でこんなに稼げるとは思ってなかったわ」

 

「俺もだよ。鉄巨人たちが出て来るようになったのは、俺達からすればいいのかな」

 

「他の人からすれば散々っだろうけどね」

 

 

 話しをしながら2000万ゴールドを魔空間にしまうアメリアだった。いつの間にかアメリアも使用可能になっていたのだ。詳しい経緯はわからないが春人も敢えて突っ込むことはしなかった。優秀な魔法使いなら出来るのだろうと決めつけたのだ。現にレナとルナは可能だったのだから、アメリアが出来ても不思議ではない。

 

「宝石類とかレアメタルを売ればさらに儲けがあるけど、流石にあれ以上換金するのは迷惑になるだろうしね」

 

「そうね」

 

「信じられない……1日で2000万ゴールドも儲けるなんて。あり得ないわ」

 

 

 リッカは春人とアメリアを見ていたが、まるで違う生物のような感覚で見ているようだった。同じ人間だとは思えないのだ。

 

「戦い方をみていたが……私より強いのは確実なようだ」

 

 

 同時にタナトスレーグも春人を称賛していた。自分では勝てないことを悟ったのだった。2000万ゴールドは日本円で2億4千万円に相当する金額だ。1日で稼いだというのはまさに信じられないレベルに到達していた。

 

 

「この後、どうしようか?」

 

「春人、こういう時のルールを忘れたの?」

 

「いや、なんだっけ?」

 

 

 意味が分からないという風な表情を見せる春人。アメリアの気持ちを読み切れていなかった。

 

「アルマークと行ったり、ルナと行ったことがあるでしょう? あれよ、あれ」

 

「ああ、そういうことか……」

 

 

 ようやく春人にも通じたようだ。要はパッと使うということを意味していた。もちろん、今まで以上に使い切る所存なわけだが……。

 

 

 

------------------------------

 

 

 

「今日は飲みましょうね」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 

 夜のお店に来るのも3回目になる春人。流石に今までよりは慣れている雰囲気を見せていた。この店はアーカーシャの街の中でも一番高級なバーと言われている。その名も「ナイアガラ」だった。バーモンドからの情報で知ることができた店だ。

 

 客もトネ共和国やアルトクリファ神聖国の重鎮くらいしか来れないと言われている。春人とアメリア、リッカの3人で店に入った。タナトスレーグは外で留守番だ。

 

 

「男性一人に女性が二人で来られるとは……珍しいですね」

 

「あはは……前にも言われましたね。それ」

 

 

 女性を侍らして来る人はあまりいないということだ。春人としても何も言えなくなっていた。

 

 

「あんたら随分若いみたいだけど大丈夫か? ここの酒は全部時価だぜ?」

 

 

 店長のような男がカウンター越しに話し掛けて来た。確かにメニュー表の酒に値段は書かれていない。通常なら怖くなってしまうところだが、今日は所持している現金が違い過ぎた。

 

「大丈夫だと思います。ええっと……メニューにあるお酒、右側から順番に下さい」

 

「まあっ! すごいですね!」

 

「こりゃあ、大したお客様が来たみたいだな。ソード&メイジとネオトレジャーの面々だとは聞いてはいるが……なかなか、面白そうだぜ!」

 

 

 店長であるマクス・バイゼルンは唸っていた。入り口の店員から正体は聞いていたがそれ以上に楽しくなりそうだったからだ。このお客なら大枚をはたいてくれる……そんな気持ちがあるのかもしれない。

 

 

「大丈夫なの、春人? かなり高いんじゃない?」

 

「大丈夫だと思うよ、リッカ。今日は過去最高の稼ぎをしたんだし、このくらい使っても罰は当たらないよ」

 

「そ、そうかな……? 私達のパーティーでは1日で2万ゴールドくらいだから、なんか感覚がおかしくなっているけど……」

 

 

 リッカ、ナーベル、ミーティアのパーティでは1日2万ゴールドくらいが普通だった。生活に十分な稼ぎではあったのだが、今回はその1000倍だ。まさに格が違うといった結果だった。

 

「どんどん使って行って問題ないわよ。ここって食べ物も時価なの? すごいわね」

 

「ええ、そうなんですよ。うふふ、どれを頼まれますか?」

 

 

 春人やアメリアに付いていた女性が怪しく微笑む。ある意味では勝負のようなものなのかもしれない。どちらの懐が勝つかといった勝負だ。双方ともに懐事情は分かっていないのだから。まあ、普通に考えれば勝負なんてものは起きないが、今回は特別ということだろうか。

 

 

「高そうなお酒ね」

 

「ビアンカ、アプール、ササノハクレ、ネテロ、アンバサダーというお酒になりますね」

 

 まずは5本の酒が並べられた。春人はアプールだけは知っているが、それでも10万ゴールドしている酒である。他の酒の値段も相応に高いのだろうというのは容易に想像できた。アプールも時価ということになっているので、もっと高いかもしれない。

 

「とりあえず飲もうか」

 

「そうね、春人」

 

「本当に私も参加していいの?」

 

「もちろんだよ。これも場の流れってやつで」

 

 

 春人が先人を切るのはめずらしいことだった。以前までの経験が活きているということなのだろう。5本すべてのお酒の封を開けた。これで後戻りはできない。しかし、春人には余裕があった。

 

「ここに来るお客さんは結構使われるんですか?」

 

「国の重鎮の方が多いですので、それなりの額にはなりますね」

 

「へえ、そうなんですか」

 

 こんな軽口が出て来る始末だ。2000万ゴールドの収入というのは、一時的に人を狂わせてしまうのかもしれない。

 

「春人けっこうやるじゃない。なんだかんだで慣れていってるのね。女の立場からすれば微妙なところもあるけど」

 

「すごい……こういうお店でもああいう態度が取れるなんて。春人、格好いい」

 

 

 アメリアはいつも通りの態度といった感じだった。春人とデートをしてペアリングまでしているのだから当然かもしれないが。逆にリッカは春人のことをあまり知らない為に、恋する乙女状態になっていた。リッカは見た目こそ派手な印象があるが、意外とこういう経験はなかったりする。まだ、17歳ということも大きいが。

 

 

「あ、これ美味しいですね。ネテロ、でしたっけ。アプールは10万ゴールドくらいだった記憶があるんですが」

 

「あら、よくご存知ですのね。時価になりますので難しいですが、そのくらいの価格にはなりますわね」

 

「春人さんでしたっけ? いい飲みっぷりですね。こういうお店には慣れていますの?」

 

 

 春人の隣にいた女性が腕に手を絡めながら話してくる。しかし、春人はあくまでも平常心だった。

 

 

「まだ、3回しか来たことはありませんよ。初心者みたいなものです」

 

「あら、その割には慣れている感じがしますね」

 

「そうですか? ありがとうございます」

 

「いえいえ、素晴らしいことですわ」

 

 

 春人も3回目になるとこういう女性がお金で雇われているから、こういう態度を取っているのだと分かって来るのだ。アメリアやリッカは無償の好意であるためにそれだけ価値が大きい。ルナも含めて無償の好意にさらされた反動なのかもしれない。今の春人は明らかに冷静だった。

 

 

 その後も以前のルナと来たときと同じように時価のお酒を開けて行くのだった。どんどん酔って行く春人。アメリアやリッカも同じように酔って行く。違いがあるとすれば値段の分からない酒ばかり開けているという点だろうか。

 

 

「だから、春人は格好いいのよ。これは間違いないわ」

 

「それは同感だけれど、誰が春人の愛を一心に受けるかよね。これが重要だと思うわ」

 

「それは確かに……あんまり八方美人でも困るしね」

 

 

 リッカとアメリアの二人は酔いながら春人のことを話していた。普段よりも饒舌になっている節がある。彼女達の前のソファに座っている春人はなんとも言えない感情が芽生えていた。嬉しいやら苦しいやらといった感情だ。

 

 

「モテていますわね、春人さん」

 

「はあ……なんともいえないですが。嬉しいことではあるんですが」

 

 

 春人は酔っている影響からか、かなり素直になっていた。態度だけで見れば素面とあまり変わらない。

 

 

「言っておくけど、アメリアには負けないんだからね!」

 

「随分と余裕じゃない、リッカ。お手並み拝見させてもらうわ」

 

 

 アルカディア島にも参加する二人の争いは続いていた。春人はそんな光景を苦笑いで見ていた。

 

 

「春人さんもそろそろ限界ですか?」

 

「ああ……これ以上はあまり飲まない方がいいかもですね」

 

「それなら、そろそろお会計をしますか?」

 

「そうですね、今の段階でいくらなんです?」

 

「こちらになります」

 

「ええと……210万ゴールド……? なるほど……」

 

 

 普段であれば驚くほどの金額ではあるが、酔っているし前のところで慣れていたのでそれ程の額とは思えなかった。時価の酒の中にはアプールよりはるかに高い酒があったのは事実だが。1日で稼いだ金額の10分の1の金額なため、楽勝で払える額だった。

 

「アメリア、支払いお願いしてもいいかな?」

 

「いいわよ、はいっ! 現金で支払います!」

 

「210万ゴールドを即金で出すなんて……信じられない……!」

 

 

 リッカは余裕で用意するアメリアに度肝を抜かされていたが、アメリアもテンションがおかしくなっていた。なんだかんだで酔っているということだ。

 

 

「210万ゴールドを余裕で支払えるのはすごいですね。流石はトップクラスの冒険者様といったところでしょうか……」

 

 飲んだ酒は10本に満たない。食べ物もそこまで多く注文したわけではないのだ。それだけで日本円で2500万円以上が飛んだことになる。国家レベルの人でないと来れないというのは当然だった。

 

「いや~~、春人とアメリアの凄さが良く分かったわ。本当にもう信じられないくらい凄い……! ヒック!」

 

 リッカもすっかり酔っている印象だった。テンションが上がっている。

 

 

「いや~~負けたぜ。兄ちゃん。まさか210万ゴールドを一括で支払ってくれるとはな。バーモンドの奴も鼻が高いだろう。わはははははは!」

 

「いや、まあ……ははは」

 

 

 愛想笑いで誤魔化した春人だったが、店長はバーモンドの知り合いだった。勝負には勝ったが支払えなくなるまで追い詰めるつもりはなかったと言えるだろうか。

 

 

「明日は頭が痛くなりそうだな……はあ」

 

「まあいいじゃない! 楽しく飲めたんだからさ!」

 

「うん、アメリア。そうだね」

 

 

 春人達3人はその後、ナイアガラの店を後にした。外で待っていたタナトスレーグを回収してバーモンドの店に戻ったのだった。

 

 タナトスレーグは暇を持て余しており、〇×ゲームをひたすらしていたと言う……。意外とお茶目なモンスターと言えなくもないかもしれない。

 

 

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