最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

151 / 152
151話 東へ その2

 

 

 東のアーバンスへと向かった春人達であったが、特に何事もなく港町に到着することができた。途中の町々で休みながらで1週間ほどの旅路だったわけだ。

 

 それからは先に到着していたナラクノハナとミルドレアと合流することになった。春人達はそのまま港へと向かう。

 

 

「巨大な戦艦が2隻……あれで東のアルカディア島へ向かうんですね……」

 

「そういうことだね。第一陣が先に向かい、その数日後に俺達の第二陣が向かうといった寸法だ」

 

「なるほど」

 

 

 二つの戦艦は相当に大きく、内部で何日も過ごせる想定になっていることは容易に想像できた。下手をすれば何か月もの航海を想定しているのかもしれない。食料は入るだろうしエンジンに至っても魔法で代用できるのだから。結晶石でも代用は可能だったりする。

 

 春人はナラクノハナのリグドと話ながら戦艦を見渡していた。こんな大きな船に乗れると言うだけでもかなりの経験と言える。春人は豪華客船に乗ったことはないのだから。どちらの戦艦に乗るかはわからないが初めてのことだった。

 

 

「おや、お出ましのようだ。ジスパー・ライノフ大佐とカール・レギンス総督だ。総督の方はアルカディア島遠征の最高現場責任者だよ」

 

「最高責任者……」

 

 

 本来の意味の最高責任者はマシュマト国王にはなるのだが、現場の指揮をすると言う意味ではカールが最高責任者になっていた。二人の闘気の流れを春人は冷静に分析していた。

 

 

「サキア、強いよね?」

 

「はい、マスター。マスターほどではないと思いますがあの二人の実力は高いと思います」

 

 

 一見しただけでただ者ではない闘気を纏っていた二人だった。流石は最強軍隊と名高いマシュマトを指揮している者達と言えばいいだろうか。

 

「おや、これはこれは。冒険者様のご到着というわけか」

 

 

 春人達に気付いたジスパーが足を止めた。春人やリグド、アメリア達と視線を交錯させる。

 

 

「ジスパーさん、なんだか棘のある言い方に聞こえますが?」

 

「リグドか。そのつもりはないんだがな。しかし、今回、お前達の招集は意味がないとだけ言っておく」

 

「どういう意味ですかそれは?」

 

 

 ジスパーとリグドは知り合いのようだった。年齢的な差がある為かリグドは敬語になっていたが。

 

 

「簡単なことだ。私達の部隊とアルミラージの面子だけでアルカディア島を制圧してしまうからだ」

 

「随分な自信ですね……大丈夫なんですか? 安全性を取るなら同時に行った方がいいと思いますが……」

 

 

 リグドからの意見だった。確かに安全性を考慮するならば第一陣と第二陣をセットで行かせた方がいいのだ。それをやらないということは利権的な何かがあるのだろう。

 

 

「我々の部隊は仮想敵にあの鉄巨人を想定した訓練をしていたのだ。最早、進むところ敵なしといった感じだな」

 

「それは凄いけど……」

 

 

 鉄巨人を想定した訓練というのがどういうものか見てみたくなるほどだった。春人としても素直に尊敬の念を送る。しかし、それ以上の敵も存在しているのが事実だ。

 

「何か言いたそうだな? どうかしたのか? そっちの少年」

 

「鉄巨人は確かに強敵です。俺も最初は苦労して倒しました」

 

「なるほど、Sランク冒険者ともなれば鉄巨人を倒せるレベルに到達するのか」

 

「ですが……世の中にはもっと強いモンスターもいるんです。アルカディア島に鉄巨人以上の怪物がいないと想定するのは危険ではないでしょうか?」

 

 

「ははは、これは面白いことを言うな。あの伝説のモンスターよりも強い存在が乱立してたまるものか。局所的にはいたのかもしれんが、アルカディア島とは関係があるまい」

 

「いえ……関係ないとは言い切れなくて」

 

 

 春人としても確信のある内容ではなかった。その分、弱気になってしまったのだが、それが災いしてかジスパーには上手く伝わらなかったようだ。

 

 

「お前達は制圧したアルカディア島で結晶石でも集めていれば十分だろう? それだけでかなり稼げるんだ。楽な仕事じゃないか。私達の活躍をマッカム大陸全土に広めてくれればいいんだ」

 

 

 第二陣の主な役割が見えた瞬間だった。数日離して送られるのは既に制圧していることが前提になっているのだ。結晶石という報酬はありつつも、マシュマト王国の軍隊の強さを世界に広める役割を担うわけだ。それが第二陣の仕事というわけだった。

 

「とにかく気を付けて行ってくれればいいのよ。それだけ約束してもらえれば」

 

「心配するな。慎重にという点では我が部隊は優れている。影からの奇襲にも長けているからな」

 

 

 アメリアはこれ以上話しても意味がないというばかりに適当に言葉を並べていた。春人も同じ気持ちを持ちつつある。

 

「ま、とにかくお前達は私の部隊の活躍を伝記にでもしてくれればいいんだ。よろしく頼むぞ」

 

「そういうことだ、行こうか。ジスパーよ」

 

「はい、カール総督」

 

 

 そう言いながらジスパーとカール総督は去って行った。こちらの話した内容の何パーセントを分かってくれただろうか? そんな感じだった。

 

 

「かなりの自信をお持ちのようですわね……実際にジスパーという方の実力は本物でしょうが」

 

「でも、未知の領域だけに危険なことに変わりはない。大分、驕っているように感じた」

 

 

 レナとルナの二人はあまり良い印象を持ってはいないようだった。

 

 

「マシュマトのギルドにはレベル1200のモンスターがいたことは伝わっているわけだが。マシュマトの軍隊には伝わっていないようだな」

 

「アルカディア島に注力するあまり、情報不足になっている可能性はあるだろうね」

 

 

 ディランもリグドもジスパーの態度には納得行っている節ではなかった。ジスパーを心配しているというのもあるが。

 

「どうでもいいけどさ。あんまり好きな連中ではなかったわね」

 

「自分に絶対の自信を持っている者は大体あんなものだ。昔の俺みたいにな」

 

 

 リッカもあまり好いている様子ではなかった。ミルドレアに至っては過去の自分を思い出しているのかもしれない。

 

「ジスパーさん達がアルカディア島を制圧してくれるのが、一番安全なことではあるんだけど……」

 

「それだと私達の儲けが低くなりそうだけどね」

 

「命あってのお金だからね。彼らの作戦が上手くいくことを願ってるよ」

 

「それはその通りね」

 

 

 春人とアメリアも作戦失敗を望んでいるわけがなかった。第一陣で解決できればそれに越したことはないのだから。しかし、未知のアルカディア島という場所が相手なわけだ。言い知れぬ不安感はどうしても拭えないのだった……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。