最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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26話 強襲? その2

 南の海岸地帯付近、その場所には王国のラグア・ハインリッヒの私設部隊が待機していた。それぞれ名のある賞金首や盗賊団で構成された犯罪集団。その数は軽く100人を超えており、南と東……両方からの攻撃を予定されていた。

 

「はいはいはい、正確に答えればよろしっ、OK?」

「へ、へい……襲撃の時間は、あと1時間後でした……げほっ。時計塔を破壊して、ギルド本部を占拠して……それで拠点は確保できたも同然って感じで……」

「ほほう、それはなかなかエキサイト。で? お前らは内通者のアルゼル・ミューラーに手引きされてたんだな?」

「は、はい……」

 

 赤髪で耳を覆うくらいの長さの男が、盗賊の一人を尋問していた。赤い髪をつんつんに立てている。他の強盗団はほとんどが死亡しているが、生きている者も重症者が多い。

 

「オ~ル~ガ~、ど~う~?」

「メドゥ、相変わらず妙ちくりんな話し方だぜ。語尾が長いっての、ドゥーユーアンダースタン?」

「オ~ル~ガ~には言われた~くな~い~」

 

 妙なイントネーションで滑舌は良いながらも、とても早口なオルガ。それとは逆にテープをスローにしてるように話すのはメドゥだ。メドゥは美しい銀髪を背中の辺りまで伸ばしており、前髪は7:3くらいに分けていた。おでこの真ん中に黒い斑点があるのも特徴で、目は焦点が定まっていない。

 

「しかし、アルゼル・ミューラーはグリフォン、私設部隊の襲撃に乗じて逃げようとしていたぜ! 街でお気に入りの女を何人か攫ってな! 全く、油断も隙もないぜ!」

「で~も~計画は潰~し~た。私たちは、Aランク冒険者~は~か~た~い~」

 

 

 オルガとメドゥ、彼らの目的は冒険者になることだ。彼らの話からもそれは想像できる範囲だった。てっとり早く功績を上げようとしているわけだ。

 

 

「つ、強すぎる……あんたらは、一体……?」

「ノンノンノン、正体は隠すから意味があるんだぜ? 人間、隠し事がある方が魅力的に映るだろ?」

 

 オルガは先ほどまで尋問をしていた強盗団の一人に諭すように話す。格好は赤髪のつんつん頭。服装も赤を基調とした闘牛士のような格好だ。英国紳士も兼ね備えているのか、意外にもきっちりと服装は整えている。

 そして、話し方は早口な男だが、諭した内容はまともであった。言われた盗賊団の一人もなぜか納得してしまっている。

 

「オル~ガ~、そ~ろ~そ~ろ~」

「OKOK、ジャミル達と合流するとしようかっ」

 

 オルガとメドゥは盗賊団に興味がなくなったのか、そのまま背を向けてアーカーシャの街の方向へと歩いて行った。

 

「なんなんだよ……なんなんだよ、あいつらは……ありえないだろ……!」

 

 有名な強盗団の一員……先ほどまで尋問を受けていた男は自らの自信が全て否定されたような感覚になっていた。違う……自分達の力は本物だ。オルガとメドゥがそれ以上に強いだけ。残された男は周囲の200体はあろうかという死体を前に戦意を完全に失っていた。

 

 

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「グリフォン? やばいんじゃないか?」

「すぐに向かうなら、この男は殺しましょう、もう死んでいますが」

 

 グリフォンが街のすぐ近くに現れた。酒場の外の人々の叫び声から、春人達もそれは理解した。グリフォンのレベルは90になり、Aランク冒険者のアルゼル以上の強さである。目の前のかつてアルゼルであった者。サキアはアルゼルの強さをすぐに看破した。

 

 

「ぐううう……」

 

 アルゼルの二撃目はその後、すぐに繰り出された。アンデット化した両腕を高速で振り抜く攻撃、しかし、その攻撃はすぐにサキアによって受け止められてしまう。今度の攻撃は誰も傷つけることはできなかった。

 

「ぐぬっ!?」

「その程度の攻撃では私には届きません。もちろん、我がマスターには尚更です」

 

 サキアはそう言いながら、アルゼルの両腕を握りつぶした。細い腕での行為とは思えない程その光景は異常だった。しかし、アルゼルの腕は地面へと鈍く落ちた。まさしく彼女は、アルゼルの腕を握りつぶしたのだ。

 

「サキア……」

「この男は既に死んでいます。これ以上の放置は被害が大きくなるだけですよ、マスター」

 

 咎めたわけではないが、サキアはそうように忠告をした。春人はこの時、まだ気付いていなかったが、サキアは主人である春人に危害を加える存在は容赦しない。そのまま、春人の指示を待たずしてアルゼルの首を飛ばした。

 そして、彼の亡骸はその場に倒れ込み、二度と起き上がることはなかった。

 

「す、すごい……! あのアルゼルを、いとも簡単に! なんだあの少女は?」

 

 その一連の行動を遠目で見ていたセドランは驚きを隠せないでいた。セドラン自身ではもちろんあんな芸当はできないことからくる賞賛の言葉だ。周囲の人間の大半も同じ感想を持っている。

 

「確かにすごいけど……でも、サキアは春人の半分の実力確定なのよね」

 

 サキアに対する賞賛より、アメリアだけは春人に対して賞賛の念が勝っていた。

 

「マスター、申し訳ありません。勝手な行動をしてしまいました」

 

 アルゼルを殺したあと、サキアは春人に謝った。この時は普通の少女に戻っている。しおらしさも普通の少女のそれだ。

 

「いや、構わないさ。結果的にエミルたち、皆が助かったんだから。俺はまだまだ人殺しを躊躇ってしまうし。躊躇っていたら、エミルが無事だったかも保証できないしね」

 

 春人は全くサキアを責めることはせず、彼女の頭を優しく撫でる。サキアは少し嬉しそうにしていた。そして、地面に這っていたエミルを起こす。

 

「大丈夫? エミル」

「は、はい……大丈夫です。春人さんは大丈夫ですか?」

「俺は平気、よし、俺は外の様子を見てくるから、エミルは出来るだけ安全に隠れててくれ」

「はいっ! 気を付けてくださいね!」

 

 そう言って、エミルは周囲の散乱した机を片づけ始めた。他の冒険者たちも春人に歓声を上げながらも、周囲の大けがをした者達の看護へと移った。街の冒険者が1つになっている。アーカーシャに迫る危機に対して、街の結束は非常に重要なものだ。

 今回の騒動が街の危機になるほどのものとは思えないが、春人の中で今回のことはいずれ訪れるかもしれない、真のアーカーシャの危機の際に、必ず役立つだろうという確信があった。

 

「春人、グリフォン討伐行くでしょ?」

「もちろん、サキアも行くか?」

「同行いたします、マスター」

 

 春人は近づいて来たアメリアとハイタッチで呼吸を合わせた。そして、二人は酒場の外へと出て行った。

 

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