最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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49話 助け

 

 

「おらっ!」

「きゃあっ!」

「うぐっ!」

 

 神経毒によりフラフラの状態にされたアルマークとイオ。ゴイシュにより、近くの空き部屋に連れ込まれた。そして、アルマーク達の首にかけていた警報機や金の首飾りはジスパが没収した。

 

「ほほほほ、素晴らしいですな。これは金の首飾りですぞ」

「パーマネンスの魔法が使えるやつね。そういえば、「センチネル」が発見したんだっけ。きゃはははは、ありがたく頂いてやるわ!」

 

 勝利を確信しているのか、キャサリンやジスパは彼らの持ち物を物色していた。ゴイシュはそんな宝よりも、警報機に目を向けている。

 

「これはなんだ? 場所を知らせるアイテムか? まあ、一応破壊しとくか」

 

 彼らが春人達に渡された警報機。作動させる暇もなく、ゴイシュにより握りつぶされた。それを見たアルマークとイオは激昂する。

 

「おまえ……!」

「よくも……!」

「ん? そんなに大事な物だったか? ははは、まあそれは悪かったな」

 

 尊敬する者からのプレゼントとして考えていた彼ら。それを目の前で破壊されては、ある意味で金の首飾りの没収より以上に許しがたいことであった。

 だが、彼ら二人の体力低下は深刻だ……通常の3割も力を出せない状況になっている。

 

「まあ、これからもっと忘れられないことになるからよ? 前から考えていたんだが、まさか実現できるなんてな」

 

 そう言って、ゴイシュは舌なめずりをしながらイオに目をやった。ゴイシュの半分程度の年齢の少女ではあるが、その美しさは以前から気に入っていた。白いポニーテールを振り上げて元気いっぱいに街中を走っている姿は何度も見てきた。

 

「イオ、お前みたいな女を支配するのが夢だったんだよ。大好きな男の前でな」

「な……! ……なにするつもりよ、この変態!」

 

 ゴイシュは笑いながら満身創痍のイオに近づいて行く。現在の状態では組み合った場合、イオに勝ち目はなかった。アルマークはすぐさまゴイシュに攻撃を加えようと、腰の剣に手を出した。もはや、彼を殺しかねない殺気を出しながら。

 

「おおっと、無駄ですぞ? 我々を忘れておいでか?」

「キャハハハハ、召喚って便利ね~!」

 

 しかし、アルマークの剣撃を阻止したのは、ジスパの呼び出した首長イタチだった。レベル20のモンスターが、アルマークに覆いかぶさりそのまま押し倒したのだ。

 

「ぐう……! 首長イタチ……!?」

 

 アルマークは首長イタチに倒される自分にむしろ驚いていた。通常では考えられない状態だからだ。アルマークは全く身動きが取れない状態になってしまった。

 

「アルマーク!」

「い、イオ……!」

「へへへ、そこでたっぷりと見てな。自分の女が犯される瞬間をな。それで、一生目に焼き付けておくんだぞ?」

「や、やめろ!」

 

 アルマークはゴイシュをこの日、この瞬間ほど憎んだことはない。幼なじみのイオに対してこれからゴイシュがすること……。この男は、アルマークに一生ものの傷を残すことを考えている。イオにも同じように一生残る傷をつける気だ。

 

 許せない……ゴイシュを殺す勢いでアルマークは憤怒の炎を燃え上がらせた。絶対にこの男は殺す……それほどまでの殺気だ。だが、神経毒により動かない身体は、途方もなく精神とは乖離していた。

 

「キャハハハハ、ゴイシュ。こいつ、ものすごく悔しそうよ? あんた、こいつの二枚目な顔が嫌いなんでしょ? なんかそんなこと言ってたし」

「黙れよ、キャサリン。ここに残して行ってやろうか?」

「冗談よ、冗談。ここまでして、寄宿舎に残ってたら殺されるわ。私達より強い冒険者グループなんてたくさん居るんだから」

 

 キャサリンはゴイシュに素直に謝罪した。ゴイシュの目的は嫉妬が大量に含まれている。イオに対する個人的な興味も非常に大きいが、自分以上の才能ある二枚目のアルマークを憎んでいることも、こういった凶行を駆り立てる原動力になっていたのだ。

 

「ゴイシュ殿、犯すのなら早くした方がいいですぞ? あまり時間はありませぬ」

「ああ、そうだったな。早く済ませるか」

 

 そう言って、ゴイシュはイオの唇を奪おうと彼女を乱暴につかんだ。

 

「い、いや! ……キスなんて絶対いや!」

「い、イオ……!」

「へへへ、そういって叫んでくれないと意味がないからな、嬉しいぜ」

 

 嫌がるイオを楽しみながら、ゴイシュは自らの口を彼女に近づけていく。力の差は大きく、イオはほとんど抗うことができない。

 

「キスくらいで嫌がるんじゃねぇよ。最後まで全部アルマークに見られるんだからよ」

「い、いやーーー! や、やめて……! ……本当に、ダメ……!」

「や、やめてくれ! ゴイシュさん……お願いだから……! 僕が悪いなら、謝る……だからイオに手を出すのはやめてくれ!」

 

 ゴイシュの手が止まる。まさに考えていた通りの言動だったのか、その表情は余裕が感じられた。

 

「あ? なんだって? やめてほしいのか? なぜイオに手を出すのをやめてほしいんだ? ん? 言ってみろ」

「ぼ、僕の……好きな人だから……」

「アルマーク……」

 

 ゴイシュはアルマークの望まない告白を聞いて、心底満足そうな笑みを浮かべた。もはや、そのまま昇天しそうな勢いだ。だが、ゴイシュの手は止まらない。

 

「ははははっ! 始めてはお互いがいいってことだよな?」

「うう……」

「くっ……」

 

 二人はゴイシュの質問に答えなかったが、図星を突かれたのか真っ赤にして俯いた。

 

「はははははっ! そうだよ、お前らのこういう顔が見たかったんだ! 餓鬼のくせに俺を見下しやがって! 満足だ、たっぷり後悔してろ!」

 

 そしてゴイシュはイオの胸を鷲掴みにする。もはや、そこには獣の動作しか残されていなかった。

 

「い、いや……!!」

「イオ!!」

 

 まさに、その瞬間。彼らの入っていた扉が勢いよく開かれた。キャサリンとジスパがその方向を見る。現れたのは、「フェアリーブースト」の面子だった。

 

「てめぇらか。なんの用だ?」

「終わりだ、ゴイシュ。おまえらの計画も想像がついた」

 

 ヘルグはゴイシュに対して、臆することなく言い放った。そこに、以前までの恐怖の念はない。レンガートとラムネも表情は真剣だ。

 

「今日で、この地を離れるつもりなんだな? アルゼルと同じ方法で。腰巾着のお前らしいな、逃げ方までアルゼルと同じとは……こんな奴に従ってた俺が恥ずかしい」

「はっ! ずいぶんと頭が冴えるな、ヘルグ。いままで俺にペコペコしてた野郎が。いつからそんな偉そうなことが言えるようになったのか知らんが、そういうお前はどうなんだ? 弱っちい底辺じゃねぇか」

 

 ゴイシュはイオから一旦離れ、ヘルグに向き直った。

 

「てめぇみたいな野郎に呼び捨てとは……吐きそうな気分だぜ。ちょうどいい、おまえらは全員殺して行くとするか。ラムネ、てめぇも含めてな」

「あっそ」

 

 ゴイシュの言葉など、ラムネは聞いてはいなかった。彼女が心配していたのは、「ハインツベルン」のメンバーが問答無用で攻撃を仕掛けて来ないかということ。その為に、ヘルグは言葉での挑発をゴイシュにしたのだ。

 

「爆裂陣」

「!!」

 

 そして、部屋の内部で放たれる魔法。火属性の攻撃であり、その名の通り、一定範囲を爆発により消滅させる技だ。威力自体はそこまででもないが、目隠しとしては十分の威力を発揮する。

 

 大きな爆発音と共に、寄宿舎の一区画が吹き飛んだ。その部屋の窓や壁も破壊され、ゴイシュ達は中庭に降り立つ。「ハインツベルン」のメンバーはほとんどダメージを受けていないが、煙により他の者達の場所が把握できなくなってしまった。

 

「ち、こういうつもりだったのかよ! 野郎!」

「さっさと殺すべきでしたな。しかし、奴らの姿が把握できない現状では……」

「ちょ、かなりまずいんじゃないの?」

 

 ゴイシュは怒りを露わにしながら、煙の方向を見ている。しばらく、その煙は晴れそうにない。キャサリンはこの状況を不味いと考えた。

 

「アルマークとイオはまだ動けないはずだ。おい、首長イタチはどうなってる?」

「あの程度の攻撃では首長イタチも大したダメージは……うっ!?」

 

 召喚士であるジスパの表情が変わる。顔色が真っ青になったのだ。

 

「おい、ジスパ。どうした?」

「こ、こんなことが……」

 

 驚き慄いているジスパに対して、ゴイシュは不審に思い声をかけた。

この時、一瞬の隙と言えるのか、彼は背後を見せていた。そこに高速で近づく男が一人。大河内 悟であった。

 

 

「もらった!!」

「あ?」

 

 最大の隙に対して放った悟の渾身の攻撃は……ゴイシュにより、受け止められてしまった。ゴイシュは欠伸をしながら悟を見ている。

 

「まあ、お前が居なかったから不意打ちで攻めてくるとは思ってたぜ? しかし、こんな隙で攻撃してもその程度かよ。もう、死ねよお前」

 

 まさに虫けらを見るような目つき。ゴイシュのその瞳を見て悟は確信した。ここでたやすく殺されると……。

 

 この地を去る人間が、悟一人の命を奪うのを躊躇うわけがない。彼は走馬灯のように今までのことを思い出していた。自らの両親、高校のトップグループのメンバー、クラスの人気者たち、学年一の美人と称されていた委員長……そして、なぜかそこには高宮春人の姿が……。

 

 

「え?」

「大丈夫か? 悟」

 

 煙から出てきた人物。高宮春人は落ち着いた口調で悟の名前を呼んだ。走馬灯ではなく、悟の目の前に本人の姿があったのだ。

 

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