最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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54話 鉄巨人 その2

 

 

 伝説のモンスター鉄巨人……フィアゼスの親衛隊として切り込み隊長を担っていた最強クラスのモンスター。アルトクリファ神聖国に存在する文献をひも解くと、その強さは嫌でも理解せざるを得なかった。

 

 春人は現在、そんな太古の化け物に遭遇していたのだ。1対1……サキアはむしろ足手まといになることを考えて、後方に待機させた。

 

「……春人」

「アメリア、鉄巨人は俺がやるよ」

「わかった。なら、他の連中は私とサキアが引き受けるわ」

 

 そう言いながら、アメリアは周囲を見渡した。鉄巨人の前まで歩いて行く春人に目もくれず、パイロヒドラはアメリアとサキアを標的に絞っていた。春人を素通りして、8本の首×5体はアメリアとサキアに迫ってくる。

 

「パイロヒドラ達って知能あるの? なんか、やけに統率されてない?」

「実際のところは不明ですね。私もモンスターというカテゴリではないので。ただ、レベル200を超えるモンスターはフィアゼスの中でも特別な存在……自然発生するかどうかの境界線でもあります」

 

 

 サキアのその言葉は初めての情報だ、アメリアもそんなことは知らない様子だった。

 

「なんか思い出したの?」

「いえ、これは私の中の基本情報です。ただ、良くない言葉で言い換えれば、200未満のモンスターは雑兵程度……フィアゼスからすれば雑魚も同然だったということになります」

 

 自然発生のモンスター……街の人々を含め、多くの冒険者にとっても命を脅かす存在だ。そう、アルマークやイオにとってもそれは例外ではなく、例えSランク冒険者でも命の危険が全くないというわけではない。

 

 そんなレベルのモンスターがフィアゼスの軍勢の中では雑兵程度に認知されていた。アメリアは表情こそ変えないが、ギルド本部の前方に位置する教会内部のフィアゼスの像を思い浮かべていた。

 

「さすがは世界を掌握した英雄ということかしら? ホント、面倒なモンスターを寄越してくれて」

「来ます、アメリア」

 

 レベル240の精鋭クラスのパイロヒドラ5体は大きな奇声を上げながら、二人に攻撃を開始した。

 

 

 

「これが、鉄巨人か……」

「………」

 

 春人は鉄巨人を眼前に見据える位置まで来ていた。赤い丸みを帯びた甲冑と巨大な銀に輝く大刀を携える巨人……そこから発せられる闘気はいままでのモンスターとは比較にすらならなかった。

 

「簡単に倒せる相手じゃない。サキアの話では俺とほぼ同じ強さを持つ相手ということだけど」

 

 レベルは共に400で対等と言える……これは春人を誉めるべきなのか? 太古の伝説のモンスターと並んでいると。それとも圧倒的な才能の春人に強さで追いついていると、鉄巨人を誉めるべきなのか……。

 

 

「しかし、致命傷の度合いは圧倒的に俺が不利だ。全力で動き、致命の一撃はなんとしても避ける!」

 

 人間である春人と魔法生物である鉄巨人。単純な生命力ではどちらに分があるか、火を見るよりも明らかだった。春人はユニバースソードを取り出し、瞬間的に鉄巨人に攻めて行った。鉄巨人も春人のそんな動きに反応するかのように、大刀を薙ぎ払う。

 

 その巨体とは思えない程の攻撃スピードに春人は飛んで避けながらも、冷や汗をを抑えることはできないでいた。

 

「確実に俺の防御を貫通する攻撃だ……絶対に油断はできない!」

 

 その鉄巨人のスピードと攻撃力に驚愕をした春人はすぐに着地して態勢を取り、そのままユニバースソードを鉄巨人の肩の辺りにお見舞いした。

 

「ゴオオオ」

 

 春人はまだ剣技は覚えていないが、力任せの一撃は鉄巨人を見事に捉え、その鎧の部分を砕いた。

 

「よしっ! やった!」

 

 彼は地面に着地し、肩を砕いたことを喜んだ。攻撃さえ命中すれば、倒せるだけの防御力と判明したからだ。さすがの鉄巨人も、同じレベル400の人間の攻撃は簡単には防げなかった。

 

「なっ!?」

 

 だが、その直後、飛んで来たのは肩を砕かれた鉄巨人の強烈な蹴りだ。想像以上に速いその蹴りは、春人に避ける暇を与えなかった。

 

 そのまま直撃に近い形で、春人はそのまま外壁に身体をめり込ませる。すぐに外壁から姿を現す春人だが、ダメージを負っており、口からは出血をしていた。

 

 

「くそ……やっぱり、籠手によって闘気を収束させてもダメージを喰らうか」

 

 まだまだ元気そうである春人だが、いままでは装備を新調してからの臨戦態勢時にダメージは負わなかったので、鉄巨人に対してある種の尊敬の念が生まれていた。

 

 相当な強敵だ……春人はそのように感じながらも、久しぶりの苦戦に心を震わせていた。彼も戦闘狂の部分を十分持ち合わせていたのだ。

 

 そして、春人と鉄巨人はその後、激しく剣で打ち合うことになる。まさに、互角の勝負が可能な者同士の決まりごとと言えるのかもしれない。

 

 

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 そして、時を同じくしてアーカーシャの街の目と鼻の先では、鉄巨人とアルマーク達との戦闘が繰り広げされていた。

 

「く、くそう……! 強すぎる……まさか、こんな怪物が居るなんて……!」

「アルマーク! だ、大丈夫!?」

「う、うん。大丈夫だよ…ガードアップの永続化も完了しているから」

 

 アルマークとイオは、フィジカルアップ、ガードアップの魔法をかけつつ、パーマネンスにより、それらを永続化していた。1.4倍の攻撃と防御の上昇ではあるが、鉄巨人の前ではその程度の上昇はあまりに無意味だった。

 

「ぐぎゃ!」

「ぎえっ!」

 

 短い断末魔の悲鳴と共に、30体のゴブリンロードは確実に数を減らしていた。

レベル55とはいえ、鉄巨人にダメージを与えるにはあまりに無力だからだ。もはや鉄巨人からすれば雑魚もいいところである。

 

「ダメージを与えられない……? 数ではこちらが有利なのに……」

「アルマーク……」

 

 もはや二人は精神喪失状態だ、各々が自分達と互角以上のゴブリンロードが成す術もなく敗れ去っている。もはや、アルマークとイオが魔法で強化した程度でどうにかなる相手ではなかった。

 

 彼らができることなどもはやない。少しでも住民が避難できるように時間を稼ぐくらいだ。二人は手をつないで、鉄巨人の大刀を見据えている。ゴブリンロードの数も数体に減っていた。その次は自分達だ。そういった確信が二人にはあった。

 

 

「アルマーク……こういう最後も悪くないのかな?」

「イオ……できれば、イオをもっと抱きたかったかな……」

「バカ……じゃあ、もしも生き残れたら……好きなだけ抱いていいよ」

「ほ、本当に……はは、なら尚更死ねないな」

 

 アルマークの率直な欲望……お互い死を確信しているからこそ漏れた本音とも言える。

 

 そして、鉄巨人はゴブリンロードをいとも簡単に排除して、アルマークとイオに迫った。大刀は大きく振りかぶられる……アルマーク達は、より強く手を握り合った。そして、二人共、同時に目を閉じる。

 だが、鉄巨人の大刀はアルマーク達には振り下ろされなかった……彼らが目を開けると、鉄巨人は別方向に視線を移している。

 

 

「一体なにが……?」

 

 アルマークとしても何が起こっているのか分からなかった。イオも同じではあるが、彼らの視線の先、鉄巨人の見据える先には、二人の人物の姿があった。

 

 

「鉄巨人……やはり眠っていたか。こうして会えたことを神に感謝したい気分だ」

「ミルドレア……私は、戦うことすらできないから、離れてるわ」

 

 鉄巨人が見据える二人。アルトクリファ神聖国の神官長である、ミルドレアとエスメラルダの二人であった。エスメラルダは後方に、ミルドレアは鉄巨人の眼前へと向かった。

 

「さて、俺の防御はせめて貫通してくれることを願っているぞ」

 

 ミルドレアは自分の周囲にバリアを展開し、戦闘体勢へと移行していた。

 

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