最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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72話 戦いの傷跡

 

「……血と肉片の跡……多分「シンドローム」の他のメンバーは助かってないわね」

 

 アクアエルス遺跡の最深部の奥、隠しエリアに入った春人達であったが、そこは激しい戦闘の跡が残されているだけだった。棺が開いており、おそらくヘカーテが眠っていたのだろうと予測できる。

 

 周囲の遺跡の壁は所々が破壊されており、相当に激しい戦闘が行われたことが伺えた。そして飛び散っているのは肉片と思しき物体と血の跡……モンスターのそれらはすぐに消滅する為、「シンドローム」のメンバーのものであることは疑いようがない。

 

 

「自然の掟と言うのでしょうか……今まで、何人もの方の遺体は見てまいりましたが」

「慣れないわね、こういうのは」

 

 

 

 レナとアメリアは静かに手を合わせ、祈り捧げていた。春人も無言で彼女たちの行為に続く。アメリアもレナも決して、倒されたことに関して恨み言は言わない。遺跡を荒らしているのは人間側。返り討ちにされたからといって、恨むというのはお門違いということなのだろう。

 

 

「アメリア、この後どうしようか? オルランド遺跡も回った方がいいよね?」

「そうね……ここだけだと、あいつらが何処にいるかはわからないし」

「あら、アメリア。もしかしたら、オルランド遺跡へは行かなくても大丈夫かもしれませんよ」

 

 アメリアはオルランド遺跡へ行くことも前向きではあったが、レナは彼女の考えを否定するように言った。彼女はアクアエルス遺跡の隠しエリアに入ってきた人影に気付いたからだ。春人とアメリアもその気配を察知した。

 

「こうして会うのは、随分と久しぶりだな……」

「ミルドレア・スタンアーク?」

 

 春人は現れた意外な人物に目を丸くしていた。その隣にはエスメラルダの姿もある。

 

「高宮 春人か。久しぶりだな」

「あ、ああ……どうして此処に?」

 

 ミルドレアは体調が優れないのか、春人の質問にはすぐには答えず近くの壁にもたれかかるように腰を下ろした。

 

「……アテナとかいうモンスターにやられたの?」

「これは意外だ。まさか、その名前を知っているとはな」

 

 アメリアが既にアテナの名前を知っていることに、ミルドレアは驚く。だが、一流の冒険者である彼女の口から出てきたためか、そこまで疑問に思っている口調ではなかった。

 

「ま、予想は付くと思うけど、ジラークさんがアシッドタワーから新しい文献を持ってきてね、そこに書かれていたのよ。あとは、他にもあるけど、オルランド遺跡にはアテナっていうモンスターが眠ってるんじゃないかと想像したわけ。まさにビンゴみたいね」

 

 アメリアの言葉にミルドレアは小さく頷いた。

 

「ミルはアテナと一騎打ちをしたのよ……」

「残念ながら敗れてしまったがな。その後、奴は鉄巨人8体を引きつれて出て行った」

「鉄巨人8体って……また、ぶっ飛んでるわね」

 

 ミルドレアとアメリア、その後も多少の情報交換は進められていく。

 

「そうか……アテナは1200レベルか……」

「1200? そんな数値……嘘でしょ……!」

 

 あり得ない程のレベルにミルドレアとエスメラルダは驚きの表情を隠すことができない。さらに、もう1体そのレベルの者が居るのだ。それを聴いたエスメラルダの表情は絶望に満ちていた。

 

「今回の隠しエリアの開放は……恐ろしい傷跡を残した」

「……そうね」

「アテナは結局は俺を殺さなかったからな……実力差は明白……。まあ、それよりも奴らはアルトクリファ神聖国に向かった可能性が高いな」

 

 ミルドレアはアテナとの戦いを思い浮かべながら考えていた。フィアゼスの信奉する国家を滅ぼす……そのような気迫を彼はアテナから読み取っていたのだ。

 

「アルトクリファ神聖国か……フィアゼスを信奉する教会団体の国家」

「ええ、なるほど。あいつらがそこに向かってるなら……決戦は神聖国になりそうね」

「一度、ルナを呼び戻しますわ」

 

 春人、アメリア、レナ……それぞれの瞳には強大な敵に立ち向かう確かな覚悟が宿っていた。

 

 

 

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 その頃、バーモンドの酒場では護衛の為に残っていたサキアと美由紀の二人が話をしていた。

 

「あなたは影……なの? 信じられないのだけど……」

「既に影の状態はお見せしたと思いますが? もう一度、ご覧になられますか?」

「いえ、大丈夫よ。ところで、私に何か御用かしら?」

 

 話しを振って来たのはサキアの方からだ。美由紀の存在について興味があるのか、先ほどから彼女の体型などを確認している。

 

「どうかしたの?」

「……予感ではありますが、あなたはやはり、マスター達にとっての「切り札」になりそうです」

 

 美由紀の頭の中は混乱する。サキアが何を言っているのか理解できない。それは、この世界に飛ばされて来てまだ日が浅いこととは無関係な気がしていた。

 

「よくわからないけど……高宮くんの役に立てるのだとしたら、それは嬉しいわね。どうも雰囲気だけだと、私なんて何の役にも立ちそうになかったから」

 

 美由紀は春人の強者の雰囲気も相当に感じており、アメリア達の強さも感じ取っていた。魔法が当たり前に存在する世界に於いて、ただのクラス委員長である自分など、何もできないのではないか……そのことにわずかに歯がゆさがあったのだ。

 

「そちらに関しましては……悟? だったでしょうか。あの者とは全く違うようです」

「え?」

 

 美由紀はサキアに聞き返すが、それよりも先に、もっと大きな事象により邪魔をされた。美由紀の近くから生み出される黒い物体……。

 

「え……こ、これって……?」

「まさか、そんなはずは……」

 

 美由紀だけでなく、サキアも驚いている。その黒い物体はサキアと同じく影のようであり、たちまち人間の姿へと変貌したのだ。

 

「久しぶりっすね、母さん。お呼びですか?」

「……は?」

 

 影は人間の男性へと姿を変え、美由紀にそう言ったのだ。全く意味がわからず裏声を上

げてしまう美由紀……目の前の青年の姿を、ただ茫然と見上げていた。

 

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