最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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8話 強大な魔物 その1

 

「……戻ってくる気配はないわね。私達の存在に気付いたのか、それともたまたま居ないだけか」

 

 暗殺者のリガインを退けてから3日が経過していた。春人とアメリアは小屋の近くで信義の花が咲くタイミングを見計らっている。それと同時に、小屋の住人であるミルドレアが来ないかを警戒していた。

 

「ね、春人もそう思うでしょ? 人が近くに来た気配もないし」

「ま、まあそうだけど……そう思う……」

「なに? はっきり答えてよ」

「そんなこと言われてもな……。アメリア……早く水浴び終わらせてくれないか? 目のやり場に困るんだけど」

 

 先ほどから話しているアメリアは小屋の近くの池で水浴びをしていたのだ。もちろん服が濡れると困るので、何も着ていない状態で。

 

「見ようとしないのはポイント高いわよ、春人」

「からかわないでくれよ。そんなことしたら殺されるだろ」

「大丈夫よ、大切なパートナーだし」

「え? 見ても許してくれるのか?」

 

 アメリアの無防備な姿と安心の言葉に少し期待感を持った春人。これは見ても許してくれる流れかもしれない。

 

「まあ、半殺し程度で許してあげる」

 

 春人は見ることを諦めたそうな。

 

 

 

「しかし、そろそろ反応があってもいいと思うんだけど……ホントに2週間も待たないとダメなのかしら」

「2週間経ったら、円卓会議始まらないか?」

 

 一通り春人をからかって満足をしたアメリアは池から出て、旅の服に着替えた。そして荷物も方から下げ、準備を終える。春人の心配は円卓会議の日程であったが、そこはアメリアからの返答があった。

 

「円卓会議は今から20日後よ。最悪、今回のエミルの依頼がギリギリまでかかっても間に合うわね。そろそろアーカーシャの街には要人達が集まり始める頃かもね」

 

 アメリアは意外にも真剣な眼差しで言った。円卓会議は基本的に年に1回は必ず行われる各国の会議となっている。それぞれの利害を確認し、時には牽制をする場でもあるのだが、リガインの話が本当であれば、緊張状態の糸は一気に切れることになる。

 

「そっちも気になるけど、まずは信義の花だな。エミルの依頼をこなしてあげないと」

「当然よ、ソード&メイジの名に傷つけるわけにいかないし。……来たわね」

 

 アメリアは突然小屋の方向に目をやった。いや、正確には小屋の奥から続いている獣道といった方が正しい。春人もそちらに目をやった、相当な距離を感じたが、確かにその方向からは強烈な光が灯っていた。

 

「光っている時間は1時間もないわ。早速行きましょう」

「向こうでも強く光ってる所があるけど?」

 

 春人はいくつかの方向から同じように光を放つ地点があることを見つけた。アメリアもそれには気付いていたのか、すぐに返答が返ってくる。

 

「大体、同時に複数の場所で花は開くのよ。2週間、この森で生き残れるなら、入手自体はそう難しいものではないわ」

 

 モンスターの襲撃に耐えきれる精神力と武力が何よりも大事と、付け加えた。二人はその後、最初に観測した光の地点へと走った。そして数分でその場所に辿りついた。

 

「これが信義の花?」

「うん、まあ見た目は普通の白いバラって感じだけどね」

 

 アメリアは春人に話しかけながら、その地点に咲いていたバラのような花を摘み取った。強烈な光を放つ花。超常現象的な花にも見えるが、目の前に来ても眩しさはそこまで感じることはない。

 

「すごいな……どういう原理かわからないが、あんなに光っていたのに」

「結晶石の輝きと同じく、人間の眼を傷つけない輝きを放ってるらしいわ。この花で灯りを作れば、結晶石と同じく重宝するかもね。まあ、勿体ないけど」

 

 摘み取った花の輝きを見ながら、どこかうっとりとした表情でアメリアは冗談を言った。春人もその花の輝きは目を奪われそうになる。眩しさを感じない輝き……結晶石はそういったことにも供給されているのだ。

 

「これで依頼は完了か。良かったよ、上手く行って」

「そうね、あとはこの花をケースに入れて持って帰るだけね」

 

 

 魔法瓶のように保存状態を確保するものだ。ケースに鍵をかけて依頼は完了、後は戻って報告をするだけである。

 

「そういえば、エミルと正式な依頼の契約結んでたっけ?」

「いいえ、口約束だけだけど、まあ15万の債務は背負ってもらわないとね」

「あ、そこは本気なのか」

 

 アメリアはニヤリと口を歪ませて春人の顔を見る。

 

「バーモンドさんのところで働いてもらうことにはなってるけど、もっと早く返せる方法もあるよね~?」

「え?」

「春人と同じく2階で寝泊まりしてるだろうし、春人がチンピラ風に押し掛ければいいのよ」

 

 アメリアのとんでもない発言に春人は驚きの表情へと変わった。具体的なことを言わずともアメリアが何を言いたいのか、容易に想像がついたのだろう。

 

「な、何言い出すんだよ! アメリア!」

「冗談よ、冗談。もう、春人ってば予想通りの慌てようで面白いわ。強さの割に、感情のふり幅が大きいし」

 

 アメリアは笑顔になって春人を見ていた。そこには、誰もが振り返るであろう程の美少女の顔があった。これほどの美少女にからかわれて、気分が悪くなる男はほとんどいないだろう。むしろ、相手にされて喜ぶ男の方が多いくらいだ。春人もそんな男の一人であったのか、悪い気はしていないことを少し恥じていた。

 

 

「あ、ごめんね。春人はこういう冗談あんまり好きじゃない?」

「いや、そんなことないよ。別に謝る必要はない」

 

 

 春人はアメリアにそう言って、怒っていないことを伝えた。今後も色々とからかわれるだろうと頭を抱えながら。

 

 と、その時だった。冗談めいた会話の一瞬、力が抜け周囲への警戒が弱まった瞬間を狙うかのような凶器。強大なモンスターの爪による一撃が春人の背後から襲ってきたのだ

 

「春人!」

 

 アメリアが咄嗟に声を上げた時には、既に春人はその一撃を受けた後だった。そのまま勢いよく飛ばされ、木をなぎ倒した。

 

「このモンスターは……!?」

 

 アメリアの前に現れたのは、木々に同化した魔物。全身が緑の鎧に覆われたグリーンドラゴンであった。

 

「ドラゴン……」

 

 アメリアの態度からも、賢者の森に通常現れるはずのない化け物だ。巨躯を前面に押し出したドラゴンは轟音の叫び声を上げた。思わずアメリアも耳を塞ぐ。

 

「いててて……! くそっ!」

 

 木に激突した春人はなんとか立ち上がり、アメリアの近くまで歩いて出てきた。彼を覆っている鋼体の闘気を貫通されたのか、出血を負っている。

 

「意外と元気ね。安心したわ」

「おかげ様で……でも、ドラゴンか。当然今までとは比べ物にならない相手だろ?」

 

 アメリアは目の前のドラゴンを見上げながら、何やら計算をしていた。強さを測っているのだろうか。

 

「レベルは……110ってところね」

「110か……一気にジャンプアップした敵だ……なんでこんな奴がいるんだろう」

「さあ、原因は今考えても仕方ないわ。どうする? 二人でやる?」

 

 アメリアは春人に尋ねるが、春人は首を横に振った。

 

「いや……いきなり不意打ちされたしね。俺が行くよ」

 

 春人の真剣な表情にアメリアは軽く笑いながら、彼の前から離れた。そして、春人はグリーンドラゴンを見据えた。

 

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