最強冒険者コンビの大活劇~パートナー居るのに協力する必要が生まれない~   作:イリーム

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91話 新たなる冒険者パーティ その1

 

「悟! 任せるわ!」

「分かりました! 来い、化け物!」

 

 悟たちのパーティは回廊遺跡の27階層に侵入していた。悟の相手は黒いローブを身に着けた魔導士、パラサイトだ。レベルは16に相当する。

 

 ラムネの援護射撃により、かなり体力は減っていた。悟はミスリルソードとシールドを手に弱ったパラサイトへと向かって行く。フィジカルアップやガードアップをかけて、パーマネンスで永続化しているパラサイトであるが、元々の能力が高くない為、比較的容易に狩ることはできる。

 

 悟もレベル15程度に上がり、装備も強力な物に替えている為、たとえ全開のパラサイトと言えども敗れはしない。パラサイトの炎の魔法を上手くシールドで防ぎ、目の前まで侵入する。

 

「終わりだぜ、おっさん!」

 

 パラサイトの外見を侮辱しつつ、悟はミスリルソードを振り払った。その一撃は止めとしては十分であり、パラサイトはその場で倒れこみ結晶石の塊を残した。

 

 強くなっている……悟は確実に以前とは違う自分を感じ取っていた。少し前まではお化けガエルすらも危うかったのだ。

 

「悟、この2か月で大分成長したわね」

「そう言ってもらえるのはありがたいっすけど……まだまだですよ」

 

 ラムネは悟に近づき称賛の言葉を贈る。少し前まで恋人という噂が流れていただけに、悟は少し照れ臭かった。そして、彼女の誉め言葉にも否定的だ。まだ自分のレベルは15~20程度だ。最初に比べれば3倍以上になっているとはいえ、上を見ればきりがない程に壁がある。

 

 ラムネはそんな彼の心中を察したのか、強く背中を叩いた。

 

「なに落ち込んでいるのよ。あなたの年齢は17歳なのよ? アーカーシャだけでも1000人は冒険者が居るけど、半分以上はDランク以下であることを考えると、あなたの成長は大したものよ」

 

 ラムネの励ましは決して大袈裟ではない。アーカーシャのギルドに出入りしている冒険者は1000人以上と言われており、半分はDランク以下だ。単純に計算しても悟は真ん中程度の能力は有していることになる。

 

 もちろん、冒険者として登録だけはしても他の仕事で稼いでいる者や、活動を行っていない者もいるので、一概に言うことは難しいが、ラムネはそれでも悟の成長を高く評価していた。

 

 離れた場所のパラサイトの集団を倒したレンガートとヘルグも悟の前に現れる。その表情はラムネと同様のものだった。

 

「くっくっく、俺達もかなり強くなったが、悟の成長は予想外だったな。お化けガエルにやられてた時はどうしようかと思ったもんだが」

 

 レンガートは大きな腕を悟の肩にかけながら話した。

 

「ありがとうございます」

 

 レンガートへ素直な感謝を贈る悟。現状の力には決して満足はしていないが、彼らの励ましの言葉は嬉しいのは事実だ。

 

「悟、満足行ってないって顔だな? そういう感情は重要だぜ。高みを目指す上でな」

 

 リーダーのヘルグも悟の表情を察したのか、笑顔になっていた。自分と同じ学校だった春人がはるか高みに居るのだ。彼はこんなところで燻っているつもりなどなかった。もちろん、ヘルグ達3人も悟と同様だ。悟の台頭によりその気持ちは上昇していると言えるだろう。

 

 しかし、そんな彼らの前に新たな敵が現れた。リーダーのヘルグも含め、パラサイトを全滅させた余韻で一瞬、判断が遅れてしまったのだ。

 

「悟!」

「えっ?」

「キキィィィィィ!」

 

 悟の死角から現れたのはレベル28の玄武コウモリだ。悟にとって明らかな格上……しかも死角から現れたのでは、防ぎようがない。冒険者の中での死亡例として多いのはこういった一瞬の油断から来る奇襲というのもある。

 

 死を覚悟してもおかしない状況ではあった。悟はこの時、確かに死亡していたと言える。

 

 だが、玄武コウモリは悟に攻撃を与えることはできなかった。突如現れた長細い刃物が、玄武コウモリを切り裂いたからだ。奇襲の奇襲により攻撃を受けた玄武コウモリは致命傷を受け、その場で絶命した。

 

「あ~あ、私が助けに入らなかったらどうなっていたのかしらね~~?」

 

 その場で立ち尽くしている悟の前に現れたのは少女。肩や胸元が大胆に露出した赤いドレスを身に着けている。ワンピースタイプのドレスでスカートの部分はかなりのミニだ。太ももが半分以上露出していた。灰色の髪をツインテールにした彼女はとても美しい顔をしている。

 

 そして、茫然としている悟に向かって言葉をかけた。

 

「あんたってフェアリーブーストの大河内 悟よね? 私が助けなかったら死んでたわよ? 感謝しなさい」

「くっ……!」

 

 少女は悟の顔を覗き込むなり、とても優越感に満ちた表情を取っていた。ラムネたちも彼女のことを知っているのか、溜息をついていた。

 

「リッカ、助かったわ。悟を助けてくれてありがとう」

「なんでラムネが礼を言うのかわからないけど、まあいいわ」

 

 ラムネはリッカにお礼を言った。固まっている悟ではお礼の言葉は難しいと判断したからだ。彼女は「ネオトレジャー」のメンバーである、リッカ・マクマホン。今年で17歳になり、性格には難があるが、とても美少女だ。赤いミニのドレスはとても似合っており、彼女のスタイルの良さを強調している。胸もかなり大きい。

 

 灰色の長髪をツインテールにしており、青い髪を三つ編みにしているラムネとは違った魅力を持っていた。ラムネもホットパンツ姿が眩しい18歳の美少女だが、リッカの方が顔やスタイルは勝っている。

 

 アメリアやエミルといった少女はアーカーシャでも指折りの美少女とされているが、リッカは外見の魅力だけであれば彼女たち以上かもしれない。

 

「それにしても、凄い技ね」

「私の髪の刃にかかれば、玄武コウモリなんて余裕よ」

 

 そう言いながら、リッカはツインテールの髪を掻き揚げてみせる。彼女の「髪の刃」は自らの髪を自在に操り、刃物のように変化させ、敵を攻撃する技だ。長距離の攻撃も可能にしており、使用者の強さに応じて技の威力も変化する。

 

 同じ技を使うモンスターとして、レベル23のメデューサがいるが、レベルが低いためにリッカほどの能力は出せない。

 

「無事でなによりだな」

「地下27階で玄武コウモリが出て来るなんて、珍しいわ」

 

 リッカの背後から聞こえて来る女性たちの声。ネオトレジャーの残りのメンバーが現れたのだ。一人は黒髪をストレートに伸ばした女性だ。大和撫子のような印象を受ける武人といった女性だった。薙刀を背中に構えており、服装も露出度が少ない袴姿だ。下に穿いている物も裾は広いが、足をすっぽりと覆っている。

 

 もう一人の女性は赤いロングの髪をサイドテールに結んでいる。リッカに近い美貌をもっており、ネオトレジャーのリーダーを務めていた。

 

 薙刀の女性はナーベル・サクリス 21歳。リーダーの女性はミーティア・ライト 24歳だ。ネオトレジャーの結成は2か月ほど前と最近であり、正真正銘の天才たちとの呼び声も大きい。期間的にはセンチネルに続く、Sランクへの有力株であった。

 

「ミーティアさんとナーベルさんも来ていたんですね」

「ああ、リッカが申し訳なかったな」

 

 ラムネは二人とも知り合いであった。ナーベルからはリッカとは違い、神経を逆なでする雰囲気は感じられない。それはリーダーであるミーティアも同じであった。

 

「本当に無事でよかったわ。でも、リッカが助けなければ悟くんはどうなっていたかわからないわよ。チームである以上、彼のレベルに合わせることも重要よ?」

「……そうかもしれないですね」

 

 ミーティアの言葉は正論に満ち溢れていた。悟を心配すると同時に、ヘルグやラムネたちも叱責しているのだ。事実、あと少しで悟は死亡していたかもしれない。ラムネもそれを痛感したからか、何も言い返せないでいた。

 

「まさか、冒険者経験の浅いあんたらにそんなことを言われるとはな。実力は負けていても、遺跡探索の回数では俺達の方が上だ。自分たちの限界くらいはわかっている」

 

 ミーティアの忠告に反論したのはフェアリーブーストのリーダーであるヘルグだ。ミーティアよりも歳下ではあるが、男としてのプライドなのかその表情は真剣だった。

 

「アーカーシャの冒険者に限らず、この世界は実力主義よ? あなた達はCランク。上位の私たちの忠告は聞いておいた方がいいと思うけど」

「そうよね~。実際、大河内 悟だって玄武コウモリにやられかけたんだし~。私がゴイシュみたいなカスだったら、きっと見殺しにしてたよ~?」

 

 

 ミーティアの続けての正論とリッカからの挑発の言葉だ。ヘルグの眉間にはしわが寄っていた。しかし、格上の存在でもあるので、強く言い返すこともできない。彼女たちが無意味に力に訴える者たちではないことはわかっていたが、それでもヘルグは黙り込んでしまった。

 

 それだけに二人の言葉……特にリッカの言葉に打ちのめされたのだ。レベル28の玄武コウモリの一撃を無防備に受けた悟がどのようになっていたかを考えれば、ヘルグの態度も頷けるものだった。

 

 性格に難があるリッカではあるが、紛れもなく自らの仲間を救ってくれた恩人でもあるのだ。それは「ハインツベルン」のメンバーなどと比べては失礼過ぎる態度と言えるだろう。リッカは高飛車かつわがままでも、目の前の冒険者を放っておく非人道な人間ではない。

 

 それに気付いているからこそ、ヘルグは強く出たことを後悔していたのだ。だが、対立関係にある冒険者だけに素直に謝ることもできない。リーダーゆえの難しさも持ち合わせていた。

 

「ミーティアさん、助けていただいてありがとうございました。それと、リーダーのヘルグの失礼は許してください」

 

 ヘルグより先に謝ったのはラムネだ。深々と頭を下げている。

 

「気にしないでいいわ、元々の原因はリッカなのだし。リッカはわがままな性格だけれど、それも彼女の外見の良さと才能から来ている。ラムネも冒険者をしているのならわかるでしょ? 冒険者の世界は実力主義。上位の者はそれ相応の態度が許されるのよ」

「ええ、わかっています」

「ならいいわ」

 

 ミーティアの真っすぐな瞳と、ラムネの全てを受け入れている表情は対照的に映っていた。春人のような態度は異端とすら言えるのだ。そういった意味ではネオトレジャーのミーティアの態度はごく自然のものと言えるだろう。

 

「ま、そういうことよ。あんた達は自分たちの弱さを噛み締めながら生きて行けばいいのよっ」

 

 リッカの見下すような発言。その言葉は悟の感情を高ぶらせたことは言うまでもない。

 

「このアマが……! 調子に乗るなよ!」

「へえ、結構好戦的じゃない、あんたって。悟って言ったっけ? 強さは伴ってないから全然怖くないけど」

 

 悟はリッカの余裕の表情に言葉を失ってしまう。実力的に負けているだけではなく、言葉でも煽ることすらできない。悟の中で、自信が崩れていくのを感じた。手を上げたい衝動に駆られるが、そんなことをしてはすぐに手籠めにされてしまう。彼とリッカの間にはそれだけ明確な実力差があったのだ。

 

「まあ、悟も落ち着け。ところで……ネオトレジャーのあんたらも回廊遺跡を探索しているんだな」

 

 ヘルグは話の流れを変える意味も込めて、話題を急変させた。悟は不満気な表情をしていたが、特に反論はしておらず、ミーティアたちも何も言わなかった。これ以上の争いは無意味との判断だろう。

 

「ええ、リッカの発案だけど。この遺跡は本当に興味深いわ、10年以上も探索が完了していない広大なマップ……最下層は96階みたいだけど」

「現在は56階までの探索が完了しているらしいな。危険は伴うが、挑戦するに値する」

 

 ミーティアとナーベルの二人はまだ見ぬ遺跡の先を楽しみにしていた。既に最下層の階数とタナトスが存在していたことはギルドにも話が伝わっており、彼女たちの耳にも届いていたが、それでもまだ見ぬモンスターや宝など、楽しみは多いと言える。

 

「この階層に来るまでの間にも、機械関係の道具や機具が散在していたわね。きっとここはフィアゼスの遺した遺跡の中でも、科学技術が結集しているところよ」

 

 ミーティアの考えは的を射ていた。この遺跡は、あまり注目はされていないが、機械関連の遺物が多く発見されている。一つの区画には、研究施設のような設備も搭載されていたくらいだ。マシュマト王国のダールトン市街地を思わせる設備もある為、その道の者であれば興味は倍増するということだ。

 

「リッカの奴が理系の女とは思えねぇけどな。なんでこの遺跡に興味持ってんだ」

「あんたなんかよりは賢いから安心していいわよ? そんな煽りにもならないセリフしか言えないなんて、あんた本当に馬鹿なんじゃないの?」

 

 リッカの倍返しは、実力で劣る悟の精神を刺激した。悟は日本でのことを思い返していた。自らの地位から下の者を見下していたことは何回あっただろうか? 現在は、自分が日本でしていたことを、相手からされているだけなのだ。

 

「私が発案したのは……なんでだっけ? まあ、なんでもいいじゃん。とにかく、私は結構科学とかも得意だから~。ここは飽きないよね」

 

 リッカは両腕を後頭部に当てて、適当な態度で話していた。露出している肩や胸元が反り返り、非常に魅惑的に映っている。

 

 リッカに反抗している悟も思わず、その大きな胸に見惚れていた。そんな状況の彼らは、ある意味では平和な時間を共有していたと言えるだろう。しかし、そんな彼らの時間を破壊する者たちはすぐそこまで来ていたのだ。

 

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