金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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異世界転生したら美少女と会いました

「死になさい、このクズ!」

 

 

 

 俺は人生最大のピンチを迎えている。今まで多くの困難を乗り越えてきた俺だが、今回ばかりは無理かも。

 

 

 

 腹部には陽光が反射して禍々しく輝くナイフが刺さり、そこから血が溢れ、背広の下の白いシャツを真っ赤に染めていた。

 

 

 

 刺されて初めて知ったのだが、刃物で刺されると傷口が痛いより熱くなる。そして頭が冷静になっていくのだ。

 

 

 

 これ、絶対助からない。

 

 

 

 思えば碌な人生歩んでないな。

 

 

 

 友人が一人もいない。当然彼女もいない。

 

 

 

 人生に価値を付けられるなら、絶対下から数えた方が早いな。

 

 

 

「パパとママの仇を討ったよ!」

 

 

 

 俺を刺した少女は笑いながら遠ざかっていく。

 

 

 

 少女の背中を見つめながら思い出す。彼女と彼女の両親は俺の被害者だ。

 

 

 

 外資系投資銀行で働く俺は、技術力の高い日本の中小企業の債権や株式を買いあさり、会社を乗っ取るビジネスをしていた。

 

 

 

 中国やインドの新興企業は日本の技術力を求めている。コア技術を抽出し、転売する俺のビジネスをハイエナやハゲタカと揶揄する者も大勢いた。

 

 

 

 少女の両親もそんな大勢の一人だった。

 

 

 

 少女の両親が経営する会社は技術力こそ高いものの、多角経営により業績を落とし、倒産寸前だった。そこで俺が債権を買占め、会社を乗っ取った。

 

 

 

 俺は魅力的な提案を行った。会社名こそなくなるが、社員はそのまま残すこと。少女の両親も社長ではなくなるが、副社長の椅子を用意する。そして会社の借金は転売先が肩代わりしてくれること。

 

 

 

 皆が幸せになれる提案だった。だが少女の両親は社長の椅子が惜しいのか、俺の提案を受け入れなかった。

 

 

 

 その後、少女の両親は自殺した。遺言状には俺への恨み言が記されていたそうだ。

 

 

 

 死が近づいてきたのか、走馬灯のように自分の人生が頭をよぎる。

 

 

 

 思えば俺は専業主夫になりたかったのだ。だが俺は絶望的にモテない。顔は悪くないと思うのだが、なぜだがモテない。

 

 

 

 そもそも専業主夫になりたかったのは、六十歳前後まで働き続けたくなかったからだ。

 

 

 

 働いたら負け。至言だ。コンピュータにより機械化された現代社会で、そもそも労働が必要な理由が分からない。働きたいやつが働けばいいのだ。俺は家事とネトゲを嗜む専業主夫になるから。

 

 

 

 だが目指した先に到達したのが、外資系投資銀行のバンカーだ。激務で知られる外資系投資銀行と専業主夫希望の俺。水と油のような関係だが、俺には考えがあった。

 

 

 

 高給取りになれば定年まで働かなくて良いんじゃないかと。

 

 

 

 俺は自己分析をした。

 

 

 

 顔はそこそこ良く、頭も良い。スポーツも平均レベルは維持している。こんな俺が大金を稼ぐには、どうすれば良いのか。

 

 

 

 プロスポーツ選手。残念、俺にそんな才能はない。

 

 

 

 芸術家。図工の成績下から数えた方が早いな。

 

 

 

 ラノベ作家。億稼ぐ奴なんて一握り。ほとんどが年収二百万以下ですよ。

 

 

 

 色々な職業を考察してみた結果、俺はサラリーマンでも億以上を稼げる業界を発見する。それが外資系投資銀行だ。

 

 

 

 新卒の初年度の年収でも一千万円を超える高給取り。マネジングディレクターになれば、年収億を超える。

 

 

 

 数年働いて、金を貯めたらリタイヤしてやる。

 

 

 

 後ろ向きに前向きな気構えで、俺は外資系投資銀行に入社した。

 

 

 

 そこから色々あり、日本一のハイエナバンカーの異名を得るまでに成長した俺は、遊んで暮らせるほどの金を貯め、退職を決意した。

 

 

 

 で、退職した日に刺されて死んだわけだ。

 

 

 

 これから金を使うだけの毎日が待っていると胸を躍らせていたのに、結末は呆気ない死だ。

 

 

 

 意識が途切れていく。視界がブラックアウトしていく。

 

 

 

 死は眠るのと変わらない感覚だ。心地よい感覚に体が包まれていく。

 

 

 

「起きなさい」

 

 

 

 女性の声が聞こえる。凛とした声は、俺を刺した少女の声とは違う。

 

 

 

 いったい誰なんだと、俺は瞼を開ける。そこには見たこともないような美人がいた。

 

 

 

 女性はダークグレーのスーツ姿で、銀色の髪を頭の上で三つ編みにしている。紅い瞳は宝石のように輝いている。まるで女神のようだ。手に持った銀色の剣が殊更そう思わせた。

 

 

 

 ちょっと待て、剣?

 

 

 

 スーツ姿に剣。コスプレにしてもアンバランスだ。この女性はいったい誰なのだ。

 

 

 

 疑問が頭を埋め尽くすが、答えは出ない。周囲の様子を伺うが、そびえ立つビル群があるだけだ。

 

 

 

 東京? それともニューヨークか?

 

 

 

 どちらにしろ大都市であることに間違いはない。周囲に人の姿がないことだけが不思議だが、外はまだ薄暗いことから、朝の早い時間なのだと予想がつく。

 

 

 

「――返せ」

 

 

 

 女性が目尻に涙を貯めながら、剣を振り上げる。

 

 

 

 なんだ、何を返せと言うのだ。

 

 

 

「妹ちゃんを返せええええっ!」

 

 

 

 振り下ろされた剣は俺の頭を直撃した。峰打ちだが、俺の意識を奪うには十分な衝撃だった。




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