金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~ 作:上下左右(じょうげさゆう)
俺がファンドを設立すると、すぐにニュースが広まった。
サイゼ王国の政府系ファンド。新しい王の政策に国民たちの関心が集まっていると報道されている。
だが最も注目しているのは国民ではなく投資家たちの方だ。世界中の金の亡者どもが、ファンドの行方を伺い、投資する価値があるかの品定めをしているはずだ。
「投資は集まっていますか?」
イーリスが心配そうに訊ねる。
「少しだけな。まだまだ目標金額までは足りない」
「やはり投資家の人たちに信頼してもらえていないのでしょうか」
「金に聡い奴らは実績がないファンドに投資なんてしないからな」
「ではお金はどうするのですか?」
「当面は国庫金からの運用になるな。あとはLBOでもしてみるか」
「LBO? 何の略なのですか?」
「レバレッジド・バイアウトの略だ。企業買収の資金調達法の一種だな」
LBOとは買収先企業の資産を担保に金を集めてくることを指す。魔王ラジオのように豊富な資産を保有している会社を買収する際には有効な一手だ。
「悪魔のような手法ですが、本当にうまくいくのでしょうか」
「俺のいた世界だと、金貨三億枚の会社をLBOで買収している」
「金貨三億枚ですか……」
イーリスがゴクリと喉を鳴らす。
LBOの実施例で世界最高のものが、アメリカの投資ファンドKKR社によるナビスコ買収事件だ。
買収に必要だった資金三〇〇億ドルの内、二五〇億ドル近くをLBOで集めたのである。
国家予算規模の資金を動かすのがファンドの仕事なのだと知り、責任の重さをイーリスは感じていた。
「早速だが魔王ラジオの株を集めよう」
「市場から株を買えばいいのですね」
「その通りだ。だが市場だけだと足りない。市場外の取引でも株を集めよう。そのためには手足となって動く人間が欲しいな」
「でしたら奴隷を買ってみてはどうですか?」
やはり異世界。奴隷の売買は普通に行われているらしい。
イーリスの提案に従い、俺たちは城下にある奴隷商店を訪れた。商業ビルの一階にある奴隷商店の店前には、「奴隷、特売セール」との暖簾が立っている。
「ここが奴隷商店か」
店の中に入ると、スーツを着た美男美女が出迎えてくれる。店員かとも思ったが、首輪が嵌められており、ネームプレートには値段が記されている。
「奴隷といってもあんまり悲壮感はないんだな」
「お父様の方針で、サイゼ王国では奴隷でも人権が保証されていますから」
他国では悲惨な扱いを受けているそうですがと、イーリスが続ける。
「これは国王様! 本日はどういった奴隷をお探しでしょうか?」
中年男性が店の奥から姿を現す。揉み手をしながら、サービスさせていただきますよと、媚びを売る。
「そうだな……」
ネット小説なんかだと、ここで美少女を買い漁ってハーレムを形成するのだろうけど、俺が欲しいのは優秀なスタッフだ。
個人的には美少女奴隷は凄く欲しいが、ビジネスライクに能力優先で探したい。
「能力の高い者ですか、それなら――」
「いや紹介して貰わなくても大丈夫だ。自分で探すから」
国王アプリを起動する。このアプリを使えば国民のステータスを知ることができる。つまり能力の高い者を選別できるのだ。
「最低でも十人は集めたいな」
投資銀行は階級が四つ存在する。
アナリスト。若手の新入社員で、上司から奴隷のように働かされる存在。データ集めやプレゼン資料作りを行う。年収は基本給が七〇〇万円程。ちなみに俺の初年度の年収はボーナスが八〇〇万追加され、一五〇〇万円だった。
アソシエイト。アナリストが集めたデータの中で必要な情報をまとめたりしている中堅社員。MBA(経営学修士)を取得している者がほとんど。アナリストを三年経験すると、会社の金でMBAを取得させて貰え、その後アソシエイトになる者が多い。年収は基本給が一〇〇〇万円程。ボーナスが加算されれば二〇〇〇万円を超す者も少なくない。
ヴァイスプレジデント。普通の会社の課長に相当する役職。この階級になるとノルマが課せられることが多くなる。だいたい一年間に純利益で五億円稼がないとクビになる。優秀な人材であれば年収五〇〇〇万円を稼ぐことも夢ではない。
マネジングディレクター。天才だけが到達できる投資銀行界のアイドル。いろんな会社の社長と一緒に仕事をする機会が多く、年収は億越えが当たり前。稼ぐ奴なら年収一〇億。トップクラスになると百億稼ぐ者もいる。
奴隷を購入するなら、アナリスト六名、アソシエイト三名、ヴァイスプレシデント一名の構成で採用したい。
「こいつとこいつをくれ。あとこいつも」
奴隷を指さし、次々と購入していく。だがヴァイスプレシデントを任せられるような人材は見つからない。
「奴隷はここにいるだけなのか?」
「優秀な奴隷はここにいるだけです」
「優秀でない奴隷はここ以外にもいるのか?」
「はい。ただ性格や外見に難ある者ばかりなので、見てもお気に召す商品はないかと」
「一応見せてくれ」
男に連れられ、奴隷商店の二階へ移動する。特売セールの暖簾と共に、背広姿の奴隷たちが並んでいた。
ステータスを確認していく。説明された通り、能力の低い奴隷が多い。そんな中で一人だけ特異な存在がいた。
金髪色白の少女だ。瞳は綺麗な緑色で、一階にいたどの奴隷よりも美しい。口には猿轡が咥えさせられており、話せないようにされている。
「あの奴隷なんだが、なぜセール品なんだ?」
「人ではなく、エルフだからです」
魔人の中でも魔法を得意とする種族。それがエルフだと男は説明する。
言われてみれば、耳が細長い。ゲームで良く見るエルフそのものだ。
「エルフは主だと認めた者には懐くのですが、認めない者には強い拒絶反応を示します。この国では奴隷にも人権が認められていますから、無理矢理従わせることもできません。扱いにくい商品なのです」
性格に難があるから安い訳だ。
国王アプリでエルフのステータスを確認してみる。
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名前:リーゼ・エルフリア
評価:C
称号:奴隷に堕ちたエルフ
魔法:
・確率判定魔法
スキル:
・なし
能力値:
【体力】:3
【魔力】:15
【速度】:3
【攻撃】:5
【防御】:3
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エルフはリーゼという名前らしい。能力値はエルフだけあって魔力がずば抜けて高い。魔法は課金アプリに記載されていなかったものだ。内容を確認してみる。
『確率判定魔法。事象の確率を導き出す特殊魔法。魔力を込めれば込める程、導き出せる確率の信頼度を上げることができる』
リーゼは課金アプリで購入できない特殊魔法の保持者だった。
日本人だからだろうか。限定とかレアモノを見ると何だか欲しくなってしまう。
「このエルフが欲しい」
「よろしいので」
「ああ、ぜひとも欲しい」
事象の確率が見える。色々な金儲けに応用できそうな魔法だ。ヴァイスプレシデントはこいつで決まりだ。
男に金を払い、リーゼの猿轡を外す。
「これから君の主人になる唐沢だ、よろしくな」
リーゼに握手を求める。するとリーゼはその手を払いのける。
「死んじゃえ、人間!」
リーゼは奴隷商店に響き渡るような声でそう叫んだ。
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