金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第一章 ~『圧倒的力』~

リーゼたちは懸命に働き、株を投資家たちから買い漁ってくれた。そのおかげで、俺が株式市場から集めた株と合わせて三分の一を超えた。

 

 

 

 これ以降の株式はTOB(株式公開買い付け)により、こちらが提示した金額で、株主たちから株を買い集めることになる。

 

 

 

 この際の株価は市場価格より高い金額になることが多い。だいたい一割増しで提示するのが普通だ。

 

 

 

 TOBを仕掛ける際、まず最初にすべきことは、既存株主への周知である。

 

 

 

 俺は情報を展開するために、新聞記者を城に招いていた。

 

 

 

 三人の記者が談話室に通される。二人は若い男で、一人は片目が潰れた中年男だ。全員背広姿である。

 

 

 

「唐沢国王、今回の買収の意図についてお聞かせ願いたい」

 

 

 

 若い新聞記者が訪ねる。

 

 

 

「一番の目的は我が国の宣伝だ。ご存知の通り、我が国は魔法石の採掘に頼り切っている。宣伝力を強化し、観光客を呼び込みたいのだ」

 

「それだけが目的ならわざわざ買収する必要はないのでは?」

 

「もちろんそれだけが目的ではない。我々が設立した政府系投資ファンドは、有望な会社を買い、そこで得た利益を投資家たちに還元する」

 

「その有望な投資先が魔王ラジオですね」

 

「ああ。魔王ラジオは有望な子会社をいくつも抱えている優良企業だ。買収しない手はない」

 

「なるほど、納得しました」

 

 

 

 三人の内、二人の若い新聞記者と話を進める。買収した後の展望などを語る。若い新聞記者たちは俺の話に納得したのか、礼を残して去っていった。

 

 

 

 片目が潰れた男だけが談話室に残っていた。まだ一言も言葉を発していない。他の二人の新聞記者が帰るのを待っていたのだ。

 

 

 

「あんた魔人だろ」

 

 

 

 俺がそう指摘すると、片目が潰れた男は口元を歪める。

 

 

 

「分かるのか?」

 

「ただの勘だ。ただし魔王放送局の人間がいずれ接触してくるという確信があった上での勘だがな」

 

「そこまで知られているなら仕方ないな」

 

 

 

 片目が潰れた男の体が銀色の体毛で覆われていく。シルバーファングという種族の魔人だ。

 

 

 

 俺はこの魔人を知っていた。魔王放送局の副社長をしているドレイクという男だ。経営手腕を評価する声も多い。

 

 

 

「わざわざ新聞記者などと嘘を吐かなくても、君が相手なら俺は会っていた」

 

「そうか。なら初めから名乗ればよかったな」

 

 

 

 魔人相手に直接会おうとする馬鹿は中々いないからなと、ドレイクは笑う。

 

 

 

「私の用件は分かっているな」

 

「魔王ラジオから手を引けと」

 

「その通りだ」

 

 

 

 ドレイクは威嚇するように牙を剥き出しにする。今にも襲い掛からんとする態度に、俺は少し笑ってしまった。

 

 

 

「なにがおかしい!」

 

「昔飼ってた犬みたいだなと思って」

 

 

 

 馬鹿にされたドレイクは、立ち上がろうと腰を浮かせる。

 

 

 

「まぁ、待て。君に素敵なプランを提示してやろう」

 

「なんだ?」

 

「社長のエドガーを追い出して、君が社長にならないか」

 

 

 

 ドレイクを社長にしたい理由は、魔王領との国際問題に発展させないための保険だった。人間である俺が魔王領の企業の社長になれば、少なからず反発を生む。オーナーが変わるだけで、経営者が同じ魔人であれば、多少なりとも反感を抑えられるはずだ。

 

 

 

 だがそんな俺の提案をドレイクは「断る!」と、一蹴する。

 

 

 

「調子に乗るなよ、人間。貴様の首を刎ねることなど容易いのだぞ」

 

「やってみろよ」

 

 

 

 俺が挑発すると、ドレイクは拳を振り上げて殴り掛かってくる。

 

 

 

 牙で威嚇してきたのに、素手で殴ってくるのかよ! 笑えるんだけど。

 

 

 

 能力値がカンストしているおかげか、ドレイクの拳は止まって見える。俺はドレイクの拳を人指し指一本で止める。

 

 

 

「なんだと!」

 

「シルバーファングという種族は力にしか敬意を払えないと聞いていたが、これで力の差は分かって貰えたか?」

 

「ありえない。私が人間に劣るなど……」

 

「もっと分かりやすい力を見せてやる」

 

 

 

 俺は談話室の窓を開ける。窓の外に手を伸ばし、覚えた『炎弾』の魔法を発動させる。魔力の弾丸が上空へと飛んでいく。

 

 

 

 数瞬後、魔力は炎となり、空を覆う業火となった。

 

 

 

 まるで太陽が空に出現したかのような炎に、ドレイクは腰を抜かす。歯をガタガタと震わせ、怯えている。

 

 

 

 それにしてもカンストした魔力で魔法を使うと、ミサイルなんかと変わらない威力になるんだな。非現実的な力に、なんだか笑えてくる。

 

 

 

 それに今回使用した魔法は『炎弾』だ。より強力な魔法であれば、国を亡ぼせるかもしれない。

 

 

 

「さて交渉を再開しよう。現社長を追い出し、君が社長になる計画に協力してくれるかな?」

 

 

 

 ドレイクは必死に首を縦に振る。媚びを売るような引き攣った笑いを見る限り、こいつが裏切ることはないだろう。




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