金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~ 作:上下左右(じょうげさゆう)
魔王領の魔王放送局では緊急会議が開かれていた。親会社である魔王ラジオが買収された場合、自社もサイゼ王国ファンドの持ち物になってしまうからだ。
「なんとかしなければ!」
社長であるエドガーが他の役員たちに向かって叫ぶ。彼は頼りにならない部下たちにイラついていた。
「ドレイク、状況を説明しろ!」
副社長のドレイクはビクビクと怯えながら、スクリーンに現在の状況を映し出す。
「こちらが昨日までの状況です。我々が十パーセント、サイゼ王国が四十パーセントの株を保有しています」
「なら過半数はまだなんだな!」
「いいえ、これは昨日までの状況です。本日のデータがこちらになります」
ドレイクがスクリーンを更新する。そこにはサイゼ王国が七十パーセントの株式を握ったと示すデータが表示されていた。
「なんだこれは! なぜたった一日でこんなにも増える!」
「社長、転換社債です」
転換社債とは株式と交換可能な社債のことを指す。
株価が安い時は利率の高い社債として持っておき、株価が高くなれば株と交換して、売ることができる便利な証券だ。
唐沢はこの証券の特徴を利用し、一気に転換社債を株券へと変えたのだ。持ち株比率が急上昇するので、防衛側に対策の時間を与えない効果がある。
ちなみにだが転換社債を利用した企業買収は、村上ファンドが阪神電鉄株を買った時にも利用された手法である。
「三分の二を買われた以上、彼らは我々の親会社となります」
「うるさい! まだ方法はある!」
「何か考えがあるのですか?」
「お前、この国がどこかを知っているか?」
ドレイクはエドガーの言わんとしていることを察した。
「暴力で解決するおつもりですか?」
「相手は政府系のファンドだ。従わなければ戦争をすると脅せばいい」
「サイゼ国王がそのような脅しに屈するとはとても思えませんが……」
「従わないなら我が国に呼び出し、殺してしまえば良い。所詮は小国の国王。消えたところで騒ぐのはあの国の連中くらいだ」
エドガーはニヤリと笑う。他の役員たちも「買収されるくらいなら」と消極的な肯定の態度だった。
だが副社長のドレイクだけは知っていた。
あの男を敵に回してタダで済む訳がないと。
そして内心ほくそ笑む。唐沢がエドガーを撃退すれば新社長は自分になるし、仮にエドガーが唐沢を殺したとしても自分は副社長のまま。
どちらに転んでも美味しい展開だと、ドレイクは媚びを売るような笑顔を浮かべて、エドガーの提案に同意した。
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