金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~ 作:上下左右(じょうげさゆう)
唐沢はエドガーに呼び出され、魔王領を訪れていた。
エドガーが呼び出したのは有名な観光名所で、見渡す限り岩しかない峡谷だ。グランドキャニオンのような場所である。
観光名所だったことが幸いし、アリスが一度訪れたことがあった。そのため『転移魔法』で一瞬で移動できた。
待ち合わせ場所にはエドガーとドレイクの二人がいた。対してこちらは俺とアリスとイーリスの三人である。
「おい、小僧! 調子に乗るなよ!」
エドガーの第一声は威嚇だった。雑魚にありがちな台詞である。
「何を怒っている。俺はルールに則って経済活動をしただけだ」
「不意打ちのような真似をしたくせに何を言うか!」
「違法ではないんだ。文句を言われる筋合いはない」
エドガーは黒い羽をピンと張る。エドガーは吸血族という種族で、怒ると感情が羽に現れるのだそうだ。
「今ならお前の株をすべて譲れば命だけは許してやる」
エドガーは鋭い目つきで俺を威嚇する。
上から目線なエドガーの提案に怒りを通り越して笑えてさえくる。
「何が可笑しい!」
「いや、雑魚に脅されるのってこんなに笑えるんだなと思って」
「馬鹿にするなよ、人間!」
エドガーは掌に魔力の球体を作り出し、それを巨岩に向かって放つ。魔力の球体はレーザーのように飛んでいき、巨岩を粉々に破壊する。
「見たか、人間! これが種族の差だ! 我々魔族が魔法を使えば低位魔法でさえこの威力となるのだ!」
さぁ震えるが良いと言わんばかりに、エドガーは大笑いする。
機嫌良く笑うエドガーには悪いが、笑いたいのは俺の方だった。チェックしておいたエドガーのステータスを思い出す。
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名前:エドガー・ド・リュック
評価:B
称号:魔界十六貴族
魔法:
・魔力砲
スキル:
・剣術(ランクB)
能力値:
【体力】:100
【魔力】:450
【速度】:200
【攻撃】:120
【防御】:130
拡張機能:
・唐沢への愛情(ランクG)
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魔力だけは突出して高いが、それでも俺の半分以下しかない。正直デコピンで倒せそうだ。
この程度の能力値しかないにも関わらず、「これが種族の差だ!」と粋がるのだ。笑いを我慢するのも大変だ。
「折角だから俺も同じものを見せてやるよ」
エドガーと同じように魔力の弾丸を巨岩に対して放つ。岩の大きさはエドガーが破壊した物と比べて数十倍の大きさだ。
着弾した俺の魔力は炎の爆発となり、巨岩を燃やし尽くす。岩がドロドロに溶けていく様は、まるで地獄の業火に焼かれる罪人のようだった。
「見たか、魔人! これが人間の力だ!」
エドガーは信じられないと、目を見開いて驚く。
「魔力が優れているからと粋がるなよ、人間」
魔力で負けても体術なら負けないと言わんばかりに、エドガーが腕を振り上げて、俺に殴り掛かる。
止まって見えるようなノロサに、あくびがでそうだった。
「ほれっ」
俺は指一本で受け止める。圧倒的な力とは悲しいだけだ。
「俺は殴られそうになったんだ。これで正当防衛が成り立つよな」
俺はエドガーに会ったなら、必ず殴ってやると決めていた。
死なないように手加減しつつも、俺の気が晴れるくらいには思いっきり、エドガーの腹部を殴りつけた。
殴られた衝撃でエドガーは宙を舞い、遥か彼方へと吹き飛んでいく。その様子を眺めていたドレイクは歯をガタガタと震わせ、アリスはよくやったと親指を突き立て、イーリスはさすがだと尊敬の眼差しを俺へと向けた。
魔人は体が丈夫だというし、死んではいないだろう。
「俺の嫁をブス呼ばわりしやがって! 反省しろ!」
やっぱり嫌いな奴を殴るのはすげえ楽しい。
「お、お前、いったい何者なんだ?」
ドレイクが怯えながら訊ねる。
「外資系投資銀行に勤めるハイエナ――ではないな。サイゼ王国の国王で、三国一の美女イーリス姫の旦那様だよ」
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