金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第一章 ~『初夜に爆睡する銀行員』~

 寝室に入ると、室内は薄暗く状況が伺えない。かろうじてベッドがある場所は分かる。キングサイズのベッドで、前国王が俺たちの新婚祝いに用意した特注品だった。

 

 

 

 布団を捲り、ベッドの中に入る。隣に人の気配を感じる。振り向くとイーリスが俺の方をじっと見つめていた。

 

 

 

「お父様から頂いたこのベッド、使うのははじめてですね」

 

「そうだな」

 

 

 

 手を伸ばせば届く距離に、絶世の美少女の顔がある。息遣いが聞こえるこの距離で見ると、如何にイーリスの顔が整っているかが分かった。

 

 

 

 この世界の人間は、この顔がブザイクに見えるという。

 

 

 

 俺、本当に日本人で良かったよ!

 

 

 

「旦那様の髪、とても綺麗」

 

 

 

 イーリスが俺の頭に触れる。碌に手入れもしていないボサボサ頭を、愛でるようにゆっくりと撫でる。

 

 

 

「旦那様はどうしてこれほどの美丈夫でありながら、私を選んでくれたのですか?」

 

 

 

 美人で性格が良くで金持ちで権力まであって俺を養ってくれるから、とはさすがに言えない。

 

 

 

「感情に理由なんて関係ないだろ」

 

「私は不安なんです」

 

「不安?」

 

「これは旦那様の復讐なんじゃないかと」

 

 

 

 イーリスが俺の手を掴んで、胸元へと持っていく。

 

 

 

「私の手が震えているのが分かりますか」

 

「ああ」

 

「毎日毎日不安になるんです。今日こそ旦那様に捨てられるんじゃないかって」

 

「いや、捨てるなら何のために結婚したんだよ」

 

「私への復讐のために結婚したのではないのですか?」

 

 

 

 一度持ち上げてから落とすためにと、イーリスは口にする。彼女は幸せの絶頂からどん底へ落とされる辛さを知っていた。今まで何度もそういった経験を重ねてきた。

 

 

 

 唐沢に捨てられたなら、絶対に立ちなれないと不安げな眼差しを向ける。目尻には涙が溜まっている。

 

 

 

「そもそも復讐って何のために? 俺はイーリスに恨みなんてないぞ」

 

「お優しい旦那様はそう言ってくれます。ですが私は旦那様を無実の罪で傷つけてしまった。それなのに贖罪するどころか、私に幸せまで与えてくれました」

 

 

 

 イーリスの瞳から涙が溢れ、枕を濡らしていく。

 

 

 

 俺は完全に忘れていたが、イーリスはいまだに出会った時のことを覚えていたらしい。

 

 

 

 別に気にしなくても良いのに、とも思うが、客観的に考えてみると、俺は拉致監禁された上に殴られまでしたのだ。

 

 

 

 普通の人間なら一生忘れられない思い出になっていてもおかしくない。

 

 

 

「まぁ気にするな。時間が経てば、そんなこともあったなと思い出になるさ」

 

 

 

 イーリスは泣き続けていた。鳴き声に耳が慣れた頃、実に最低なことをしてしまう。長時間労働による疲労と睡眠不足のせいで、一人先に寝てしまったのだ。

 

 

 

 目を覚ましたのは、翌日の昼頃だった。城内がざわついており、起こされてしまったのだ。

 

 

 

「唐沢君、ここにおったか! 大変なことが起きた!」

 

「ブス姫、初夜を逃すとでもニュースが流れたか」

 

「冗談を言うとる場合かっ! 魔王軍の侵略が始まったのじゃ!」




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