金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~ 作:上下左右(じょうげさゆう)
リストにあるダンジョンを調査するため、俺はコスコ公国へ向かった。コスコ公国への移動は飛行船を利用した。『転移魔法』が使えれば便利なのだが、一度行ったことがある場所にしか行けない制約があるため、今回は利用できなかった。
「良い景色ですね」
イーリスは飛行船の窓から、楽しそうに景色を眺めている。
「思えば二人で遠出するのも初めてだな」
「新婚旅行ですね!」
イーリスは嬉しそうに答える。
言われてみれば結婚したのに、新婚旅行に行ってない。
何だか自分が最低の夫な気がしてきた。
「今回はダンジョンの調査がメインだからな。新婚旅行もまた行こう」
「はい。楽しみにしています」
飛行船の一番グレードの高い席を予約しただけあり、快適な空の旅を楽しめていた。
外資系投資銀行で働いていたときのことを思い出す。
俺が勤務していた会社では、マネジングディレクターになると、出張にファーストクラスを使えるようになる。
機内食はマズイと良く言われているが、ファーストクラスの機内食は高級レストラン顔負けの味だ。景色を眺めながら食べた子羊のステーキの味は今でも思い出せる。
ちなみにだが、外資系投資銀行では新入社員でもビジネスクラスで出張させて貰える。ビジネスクラスの移動はファーストクラスに劣るモノの中々に快適だ。学生時代は平気だったのに、ビジネスに慣れてしまったせいで、エコノミーに耐えられなくなる社員も多いと聞く。
他にも空の旅で思いつく福利厚生といえば、実家への帰省についてだ。
ニューヨークに勤務していた頃、一年間に三度までなら実家への飛行機代を会社が負担してくれる制度があった。
ちなみに実家への帰省も、マネジングディレクターならファーストクラス、それ以外でもビジネスクラスに乗ることができる。ニューヨークから東京まではファーストクラスなら二〇〇万円ほどかかる。それが無料になるのだから、なんとありがたい話だと会社に感謝したものだ。
「そろそろ到着するようですね」
飛行船は予定通りの時刻に到着した。飛行場からダンジョンまでは車で移動する。ちなみに車を動かすエネルギーは、サイゼ王国で採れる魔法石だ。
「まるで水族館のような建物だな」
建物の一階や二階は観光施設になっていた。強化ガラスの中で、ダンジョンで出現するモンスターたちが見世物にされている。
」
「ダンジョンは地下に生成されるんだな」
ダンジョン内には凶悪なモンスターが跋扈しており、冒険者を襲うのだと施設内の説明書きに書かれている。
ダンジョンに入るためには金貨一〇〇枚の入場料を払わなければならない。だが冒険者は金貨一〇〇枚を払ってでもダンジョンを攻略しようとする。
それには理由があった。ダンジョンの最深部にはダンジョンマスターがおり、そいつはレアな魔道具を保持しているのだ。
ダンジョンマスターは強力なモンスターだが、もし倒してレア魔道具を手に入れれば、一生遊んで暮らすことも夢ではない。
一攫千金を夢見る冒険者が集う場所。それがダンジョンなのである。
「さて早速攻略しますか」
俺とイーリス、二人分の入場料を払い、ダンジョンへと進む。楽しい楽しい冒険が始まるのである。