金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第二章 ~『不良債権買いたたきます』~

 俺とイーリスはコスコ公爵の館へと訪れていた。館はバロック建築のような様相で、派手派手しい見た目が、来客を委縮させる。

 

 

 

「馬鹿と成金は派手なのが好きだというが……」

 

 

 

 館の中に入ると、金の彫像が並べられている。歴代の公爵の顔を模したモノだ。コスコ公爵の彫像もあるが、最も大きく、自己顕示欲の高さが伺えた。

 

 

 

 この彫像や館を売却すれば、少しは金になるだろうに。あのセコイ男がポケットマネーを削るような真似は絶対にしないだろうけど。

 

 

 

「ようこそ、サイゼ国王! どうぞこちらへ」

 

 

 

 案内された貴賓室は黒塗りのソファが並べられ、壁には絵がかけられている。ソファに腰かけ、何気なく絵を見ていると、

 

 

 

「この絵が気になりますかな」

 

 

 

 と、コスコ公爵が訊ねてきた。

 

 

 

「この絵は館のひまわりを描いたものです」

 

「へぇ~」

 

「ちなみに私が描いた絵なのですよ」

 

「それは凄い」

 

 

 

 あまりに下手な絵なので子供が描いたのかと思った。もちろん口にしないが。

 

 

 

「さて本日の用件は、資産の買い取りの件だと思ってよろしいですか?」

 

「ああ」

 

 

 

 俺は資産と購入金額を記載したリストを手渡す。そのリストは価格が高い順に並べられている。

 

 

 

 コスコ公爵は満足した表情を浮かべながら、読み進めていく。だが後ろに行くに連れて、怒りが顔に現れていく。

 

 

 

「なんですか、これは!」

 

「何を怒っているんだ? 俺は正当な価格を付けただけだぞ」

 

「馬鹿を言うな! 資産の一割近くが銅貨一枚になっているじゃないか!」

 

「それがその資産の価値なんだから仕方あるまい」

 

 

 

 俺はわざと挑発するように口元を歪める。

 

 

 

「例えばこのダンジョン経営権、普通なら金貨一万枚はするはずだ!」

 

「ダンジョンマスターがいればな」

 

 

 

 俺の台詞にコスコ公爵の顔が青ざめる。

 

 

 

「な、なにを言って……」

 

「とぼけても無駄だ。俺が直接この眼で見てきたんだからな」

 

「あのダンジョンを攻略したというのか!」

 

「ああ。楽勝だったぞ」

 

 

 

 俺がデコピンでダンジョンを攻略したことを話すと、コスコ公爵は驚きで目を見開く。

 

 

 

「あのダンジョンの難易度はランクBだぞっ」

 

 

 

 コスコ公爵が語るには、俺が攻略したダンジョンの難易度は、かなり高いのだそうだ。難攻不落のダンジョンだと、冒険者の間では噂になっていたらしい。

 

 

 

「他にも問題点を挙げてやろうか」

 

 

 

 例えば奴隷の権利だ。調べてみると銀髪の奴隷や魔人の奴隷がかなり混ざっている。もちろん渡されたリストに、その注意書きはない。リーゼたちが自分の足で見つけてくれた情報だった。

 

 

 

「企業債権も問題ある会社ばかりで回収の見込みは薄い。だから銅貨一枚にしている」

 

 

 

 回収できなければ、そのまま俺の損になる。銅貨一枚なら、最悪債権放棄しても良い。

 

 

 

「だが銅貨一枚はいくらなんでも酷いのではないか!」

 

「もっと高い金額を付けることは可能だ」

 

「ならば、是非ともそうしてくれ」

 

「だがそのためにはより詳細な調査の時間が必要だ」

 

 

 

 コスコ公爵は魔王軍との戦争のために金が必要なのだ。資金を得るのに時間がかかるのでは本末転倒だ。

 

 

 

「さらにもう一つ。不良品を掴まされるリスクがあるんだ。その場合のリスクは君にとってもらうぞ」

 

 

 

 購入した後のリスク保証は企業買収などで良く結ばれる契約だ。買収した後で不正が発覚して株価が暴落したり、訴えられたりした場合、それによって生じた損失を売り手側に保証してもらうというものだ。

 

 

 

「そんな契約結べるわけがない!」

 

 

 

 コスコ公爵は不良品を押し付けようとしているのだ。中には犯罪に使用されたものなどもある。可能性は低いだろうが、もし明るみになれば、その損失をすべてカバーすることになる。

 

 

 

「話を戻そう。そのリストに書いてある通りの値段なら、リスク保障なしで買っても良い」

 

 

 

 リーゼたちの調査のおかげもあり、買収した場合のリスクは洗い出せている。もし不正が明るみになったとしても、銅貨一枚で手に入るメリットと天秤に賭けたなら購入する価値はある。

 

 

 

 一方コスコ公爵側も自分の不正を闇に葬れるチャンスなのだ。それに俺はリストすべてがセットでなければ購入するつもりはない。売るしか選択肢がないのだ。

 

 

 

「わ、分かった。この価格で売ろう」

 

「契約成立だな」

 

 

 

 俺は勝ち誇った表情を浮かべながら、公爵の館を後にする。だがこの時の俺は気づいていなかった。公爵が俯きながら笑いを浮かべていることに。




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