金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第二章 ~『嵌められた銀行員』~

 俺はダンジョンに銀髪奴隷たちを集めていた。荒んだ目で俺とイーリスを見つめている。

 

 

 

「集まってもらったのは他でもない。これから君たちにはダンジョンを攻略してもらう」

 

 

 

 銀髪奴隷たちの間にざわめきが生じる。

 

 

 

「言わせて頂きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

 

 

 銀髪の大男が手を挙げる。

 

 

 

「いいぞ、なんでもいえ」

 

「我々奴隷は課金をしていません。つまり戦闘力は皆無に近い。その状態でダンジョンへ

 

挑むということは我々に死ねと言っているのですか」

 

 

 

 大男の発言で、銀髪奴隷たちから非難の視線が向けられる。

 

 

 

「殺すならこんな面倒なことはしない」

 

「なら炎龍やリザードマンと戦って勝てと!」

 

「そこについては説明する」

 

 

 

 報酬の半分を課金して貰って構わないという話と、課金なしでも地下一階のスライムなら勝てることを伝える。

 

 

 

 銀髪奴隷たちの間に笑顔が浮かび始める。

 

 

 

「納得してもらえたか」

 

「話は分かりました。ですが一点だけお願いしたいことがあります」

 

「なんだ?」

 

「私には妹がおります。体が弱く、スライム相手でも殺される可能性があります。妹の分も私が働きますので、ダンジョン探索を免除してもらえないでしょうか」

 

「それは構わないが……その妹とやらはどこにいる」

 

「こちらに」

 

 

 

 銀髪の大男が、一人の少女を紹介する。銀色の髪と銀色の瞳、そして頭には角が生えていた。

 

 

 

 顔には至る所に切り傷がある。人が意図して切った傷跡だった。

 

 

 

「この傷はどうした?」

 

「妹が魔人であるからという理由で、奴隷商人に痛めつけられたのです」

 

 

 

 自分の商品を傷めつけるとは商人の風上にも置けないな。

 

 

 

「妹が魔人なら、兄である君も魔人なのか?」

 

「私は違います」

 

「どういうことだ?」

 

「妹と申しましたが、妹のような関係でして、知り合ったのは互いが奴隷になった後なのです」

 

 

 

 見ず知らずの少女を守るために倍働くと男は言うのだ。

 

 

 

 こいつ良い奴だな。

 

 

 

 こういう善良な奴は忠義のために働く。恩を売っておけば、将来倍になって返ってくるはずだ。

 

 

 

「よし特別サービスだ。奴隷からも解放してやる」

 

「よろしいのですかっ!」

 

「ついでにオマケだ。その傷も治してやる」

 

 

 

 俺は課金アプリを立ち上げ、『回復魔法』を購入する。それほど高位の魔法ではないので、価格はさほど高くない。といっても金貨百枚、つまり百万円である。それでも今後の治療費などを考慮すれば、格安といえる。

 

 

 

「顔をこちらに向けろ」

 

 

 

 少女は言われるがままに顔を俺へと向ける。傷跡に手を当て、魔力を込める。みるみるうちに、傷が消えていった。

 

 

 

「これで顔の傷もなおったな」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「礼は働きで返してくれ」

 

「国王様のお役に立てるよう懸命に働きます」

 

 

 

 銀髪の大男が地面に頭をつけるような勢いで首を垂れる。この男の誠実な態度を見ていると、ついつい助けの手を差し出したくなってしまう。もちろん忠誠心を高めるという打算の上での行動だ。

 

 

 

「君の妹の本当の家族については分かっているのか?」

 

「いいえ。昔辛いことがあったようで、妹は話すことができませんから」

 

「ならば俺が探してやろう」

 

「本当ですか!」

 

 

 

 課金アプリを立ち上げる。ステータスを見れば、名前が分かるはずである。

 

 

 

――――――――――

 

名前:レイリス・ド・ラザリック

 

評価:G

 

称号:魔界十六貴族の一人娘

 

魔法:

 

・なし

 

スキル:

 

・なし

 

能力値:

 

 【体力】:1

 

 【魔力】:1

 

 【速度】:1

 

 【攻撃】:1

 

 【防御】:1

 

拡張機能:

 

・唐沢への愛情(ランクG)

 

――――――――――

 

 

 

「レイリスという名前だそうだぞ。それに魔界十六貴族の一人娘でもあるそうだ」

 

 

 

 俺は口にした言葉の違和感に気づいた。

 

 

 

 魔界十六貴族の一人娘が奴隷になっている。

 

 

 

 借金奴隷。ありえない。相手は貴族だ。

 

 

 

 戦争奴隷。この年齢とステータスで戦場へ送られるわけがない。

 

 

 

 犯罪奴隷。そもそも法が適用される年齢ではない。

 

 

 

 ならばなぜ奴隷の身分に堕ちているのか。可能性がもっとも高いのはリーゼと同じ誘拐で無理矢理奴隷にされることだ。

 

 

 

 そう考えると、貴族でありながらこれほどに貧弱なステータスであることにも納得がいく。課金は自分の意思で行う必要があるため、物心付く前に誘拐されたのであれば、無課金のままであるからだ。

 

 

 

 俺には今後の展開が予想できた。

 

 

 

 誘拐された子供の居場所を知る善意の第三者が、あいつが犯人だと密告するのだ。そうなれば子供を取られた親は怒り狂う。

 

 

 

「やばい、これ絶対やばいっ」

 

 

 

 スマホが震える。登録しておいたニュースアプリが新着情報を表示していた。

 

 

 

 画面には、魔王軍がコスコ公国と和平条約を結び、サイゼ王国に進軍していると表示されている。

 

 

 

 しかも進軍しているのは魔界十六貴族の中でも最強と名高いラザリック家だとも書かれている。

 

 

 

 ニュースの詳細を確認すると、ラザリック家のコメントが載っている。

 

 

 

「長年行方不明の娘がサイゼ国王に誘拐されていたことが判明した。私は必ず鉄槌を下す。正義は我にあり!」

 

 

 

 コメントに目を通した俺は乾いた笑いを漏らす。

 

 

 

 百戦錬磨の銀行員である俺が、コスコ公爵に嵌められてしまったのである。

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