金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第二章 ~『ギルからの賠償金』~

「すまなかった」

 

 

 

 俺はギルに事情を説明した。コスコ公爵から奴隷の権利を購入したこと、その奴隷の中にレイリスが含まれていたこと、そしてレイリスの体が病弱なため、倍働くと申し出た兄の言葉に感動し、奴隷から解放したことを。

 

 

 

 話していくうちに、ギルの顔が見る見るうちに青ざめていく。説明を終わる頃には、地面に頭をつけ、土下座していた。

 

 

 

「勘違いとはいえ、娘の大恩人を傷つけてしまうとは、何たる不覚!」

 

「そうだぞ、俺は大恩人なんだから反省しろよ」

 

 

 

 勘違いとはいえ襲われたのだ。反省して貰わなければ襲われ損だし、こいつの攻撃はかすり傷だが地味に痛かった。謝られて、少しは溜飲を下げておきたい。

 

 

 

「……そろそろ顔を上げてくれ。話がしたい」

 

「恩人の頼みとあらば」

 

 

 

 ギルが頭を上げて、正座する。背筋がピンと伸びた姿は武士のようだ。

 

 

 

「まず当然の要求なんだが、魔王軍の侵攻を止めてくれ」

 

「無理だっ」

 

「なぜだ。俺たちはコスコ公爵に嵌められたんだぞ」

 

「それは分かっている。だが魔王軍全体の侵攻を止める権限が私にはない」

 

「今回の侵攻の責任者はギルだろ」

 

「ライザック軍に限ればそうだな」

 

 

 

 なんだか話がかみ合わないな。同じ感想をギルも抱いているようだ。

 

 

 

「サイゼ国王は魔王領のシステムについては知っているのか?」

 

「システム?」

 

「まずはそこから説明しよう」

 

 

 

 魔王領は魔界一六貴族たちが治める一六の領地から構成されている。一六貴族はそれぞれ軍隊を保持し、戦争を自由に行える。税を課すことも自由で、それぞれの領地で法律も異なる。

 

 

 

 つまりだ。一六の国が集まってできたのが魔王領なのだという。制度的にはEUに近い気がする。多種多様な国家が集まり、一つの強力な集合体となっているのだ。

 

 

 

「今回サイゼ王国に侵攻しているのは、ライザック軍とブルータス軍だ。ライザック軍が侵攻から手を引くことは私の権限で可能だ。だがブルータス軍までは止められない」

 

「ならライザック軍だけでもいいから手を引いてくれ」

 

 

 

 単純に戦力が二分の一になるのだ。それだけでもありがたい。

 

 

 

「で、そのブルータスは強いのか?」

 

「序列一五位だな。ちなみに最弱はサイゼ国王が倒したエドガーだ」

 

 

 

 やっぱりあいつ雑魚だったのか。

 

 

 

「序列一五位なら楽勝だな」

 

「そう楽観視できるものではないぞ。今回の侵攻は魔王軍として動いている。つまり魔王領全体の後方支援があるからな」

 

 

 

 物資や人材、そして金がブルータス軍に提供される。さらにブルータス軍がピンチに陥れば魔王が出てくるかもしれないとのことだ。

 

 

 

「魔王は強いのか?」

 

「私の知る限り、世界で最も強いお方だ。もちろんサイゼ国王よりもな」

 

「へぇ~」

 

 

 

 デコピンで倒せないかもな。そんな面倒な敵とは戦いたくない。

 

 

 

「私の心情としてはサイゼ国王の味方になりたい。だが同じ魔王領であるブルータス軍や、和平条約を結んだコスコ公国とは戦えない。すまないな」

 

 

 

 和平条約を破ると莫大な謝罪金をコスコ公国に払わなければならないそうだ。下手な信頼関係よりも拘束力が高そうだ。

 

 

 

「本音を言うと、娘を奴隷としたコスコ公国を滅ぼしたいのだ。それを分かってくれると嬉しい」

 

「ギルが悔しいのは分かるさ。その悔しさは代わりに俺が晴らしてやるよ」

 

 

 

 コスコ公爵をぶん殴るのが今から楽しみである。

 

 

 

「サイゼ国王、今回の詫びについてだが、金貨百万枚でどうだ」

 

 

 

 金貨百万枚。日本円で百億円相当の賠償金である。こちらの被害はほとんどないのだ。破格の条件と言えた。

 

 

 

「随分と多いな」

 

「それだけサイゼ国王との仲を大切にしたいということだ」

 

「まぁ、くれるなら貰うけど」

 

「その代わりと言ってはなんだが、レイリスの兄を私に譲ってくれないか」

 

 

 

 元々は銅貨一枚で買った奴隷だ。それにギルはレイリスを連れて帰るだろう。その時、兄がいないのは寂しいはずだ。

 

 

 

「いいぞ。ギルに譲ろう」

 

「ありがとう、この恩は忘れない」

 

 

 

 ギルは礼を言うと、レイリスとその兄を連れて、魔王領へ引き返していった。去っていく三人の後ろ姿はまるで本物の家族のようだった。




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