金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~ 作:上下左右(じょうげさゆう)
ライザック軍は約束通り、魔王領へ引き返していった。魔王領では早急な撤退に非難の声も挙がったそうだが、ギルがすべて封じ込めたそうだ。
ブルータス軍はいまだサイゼ王国へは攻めてこない。魔王領最強のライザック軍が撤退したのだ。その理由を掴むまでは動けないのだろう。
「今回の儲けは金貨二〇〇万枚か」
金貨百万枚はギルから貰った賠償金だ。そして残りの百万枚はコスコ公爵から購入した資産を使って得た利益だった。
特にリーゼを含む奴隷たちが頑張ってくれたおかげで、不良債権を上手く回収できたのが大きかった。
どうしても回収できない企業債権は新株を発行させ、その株を売却することで債権を回収した。もっともこの方法を使うと、一般投資家が損をするので、その会社の信用がズタボロになる。俺にとっては回収後にその会社がどうなろうが知ったことではないので、躊躇なく利用するがな。
「金貨二〇〇万枚の一割、金貨二〇万枚が俺の給料になるわけだ」
金が入ったらやることは一つ。
「やっぱり課金でしょ」
俺は課金アプリを起動し、自分のステータスを確認する。
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名前:唐沢太一
評価:S
称号:専業主夫希望の国王
魔法:
・炎弾
・空間魔法
・回復魔法
スキル:
・なし
能力値:
【体力】:999
【魔力】:999
【速度】:999
【攻撃】:999
【防御】:999
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評価がAからSになっている。『空間魔法』を取得したのが評価されたのだろう。
「やはりスキルがないのが気になるな」
折角金貨二〇万枚を手に入れたのだ。この機会にスキルも手に入れてやる。
スキルの項目を上から眺めていく。
「『剣術』スキルか~」
ギルが使っていたスキルだ。詳細説明に目を通す。
『剣術。スキルランクに応じた剣技を習得する。高スキルランクになると魔法を切ることも可能。また剣を装備しているとき、能力値に補正が掛かる。補正値はスキルランクに応じて異なる』
俺の『炎弾』を弾いたのは『剣術』スキルのおかげだと、ギルが話していたことを思い出す。
「最強剣士になるのもありだな」
けれど剣を持ち歩かないといけないのか。面倒だな。
「デコピンで大抵の奴は倒せるし、他の面白いスキルを探すか」
項目をスライドさせて、スキルに目を通していく。だが欲しいと思えるスキルを見つけることはできなかった。
「課金はいつでもできるし、ここは財テクもありだな」
流動性の高い株を買って、金が必要になれば売却する。そうすれば買値と売値の差額を得ることができるし、なにより配当金も入ってくる。
「どうせ買うなら配当利回りが多い企業がいいな」
配当金は一年間に二回支給される事が多い。最も法律などで決まっている訳ではないので、一年間に一回の会社もあるし、逆に四回の会社もある。四回出す会社で有名な日本企業といえば自動車メーカーのホンダなどが挙げられる。
ちなみに日本企業だと年二回が基本だが、アメリカの企業では配当金を年四回出すのが普通である。日本人でも知っている有名企業だと、IBMとかアップルとかも四半期配当を採用している。
さて話を戻そう。
配当利回りとは一年間に支給される配当金のことで、配当金を株価で割ったパーセンテージのことを指す。
例えば配当利回りが五パーセントなら、一〇〇円の株券を購入すれば、一年間に五円の配当金を貰えるという訳だ。
つまりだ。この配当利回りが高い企業の株券を購入すれば、配当でウハウハという訳である。ちなみに高配当と世間一般で言われるのは二パーセントからで、アメリカの企業だと四パーセントからだと言われている。投資家たちがアメリカに資金を集中させる理由の一端が垣間見える。
「だが単純に配当利回りの高い株券を買えば良いという訳ではないからな……」
配当利回りが高くなっている場合、本当に利益が出ているのか、それとも株価が暴落していることによって配当利回りの数字が増えているのかを考える必要がある。
例えば配当金を一株当たり五円出す企業があるとする。株価が一〇〇円だと、配当利回りが五パーセントだし、株価が五〇円だと配当利回りが一〇パーセントになる。
倒産すれば株の価値はゼロになるのだから、会社の経営状況や財務状況を示した財務諸表を読み判断していく必要がある。
「さてこの世界の会社についてだが……」
スマホで配当利回りが多い順に会社を並べてみる。
上位に並んでいる企業はどれも倒産寸前のものばかりだ。悪いニュースで株価が暴落しているのだ。
「やっぱり軍需メーカーが儲かっているんだな」
配当利回りの高い企業の中で経営状況が優良な企業をピックアップしてみると、軍需メーカー中心になってしまった。
その中の一つ、戦車を開発している企業が目に入った。
「ライザック自動車か。あの戦車隊は自前のモノだったのか」
サイゼ王国にもあんな戦車隊があればカッコいいのに。
この世界で戦車は無課金者でも使用できる強力な兵器である。いつまでも俺がデコピンで戦う訳にもいかないし、いずれサイゼ王国にも欲しい企業ではある。
「恩もあるし、買ってもいいか」
ライザック自動車の株価は思った以上に安い。サイゼ王国から撤退したことが響いているのだ。
「ん? なんだこれ?」
配当利回りのページを見ていると、下に実質配当利回りも記載されていた。その数字がとんでもなく高い。
「株主優待でも付いてくるのか……」
株主優待とはお金以外のモノ。飲食店なら食事券や、メーカーなら自社製品などが株主優待として送られてくるのである。
その株主優待の価値を配当金に加算したモノが実質配当利回りである。もちろん金と違い、株主優待はモノなので要らないモノである可能性もある。それでも欲しいモノであるならその株は宝の山となる。
「そういえば友人に株主優待だけで一年間食事を済ませていた奴がいたっけ」
株主優待は飲食店などのサービス業で高い利回りである事が多い。近所の牛丼屋やファミレスの株を格安の時に購入することで、早ければ一〇年で投資金額を回収できる。
「自動車メーカーの株主優待。あまり聞いたことがないな」
特にライザック自動車は戦車を中心に開発している。
株主優待ってまさかな。
ページを開くと、そこには戦車購入割引優待券と書かれていた。あまりの馬鹿さに笑えてくる。
「この優待だと一般投資家は絶対見向きもしないだろ」
戦車が欲しい俺としては渡りに船なので、株を購入する。金貨二〇万枚を投資という形で返すことになるが、だからこそ俺はこの買い物に納得していた。
「ギルと揉めるのは極力止めよう」
あいつの攻撃地味に痛いし。株価が下がるのも嫌だしな。
俺はそう決心するのだった。
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