金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~ 作:上下左右(じょうげさゆう)
ブルータス銀行を後にした俺たちは次なる目的地へと向かうべく車を走らせていた。周囲には一台も車が走っていない。快適なドライブだった。
「旦那様は次にどこへ向かわれるのですか?」
助手席に座るイーリスが訊ねる。
「今度は保険会社だ。その次は証券会社。他にも色々回って、サブプライムローンをばらまかないと」
「契約してくれると良いのですが、今回のように簡単にいくでしょうか?」
「いくさ。そのための準備はしてある」
「準備ですか?」
「ああ。サブプライムローンの債権を証券化し、格付け機関に評価させたんだ。見てみろ。信用度は最高のトリプルAランクだ」
外資系投資銀行では、金融商品を開発すると、格付け機関に評価させる。そうすると金融に関する知識がない者でも、その商品が如何に優れたモノなのかを知ることができるのだ。
ただこの評価に関してだが、所詮人が行うモノであるという点が重要だ。
格付け機関に依頼する場合、その金融商品に関する膨大な資料を送りつける。中身は専門用語と数式で溢れかえっている。その中から小さなリスクを見つけ出し、格付けを行うのだ。サブプライムローンの致命的なリスクに気付けないのも無理はない。
さらにだ。格付け機関に評価を依頼するのは、金融商品を開発した人間だ。当然お客の商品には良い評価を与えようと心が動く。
「その結果がトリプルAだ。これがあれば、誰もが権利を買いたいと手を挙げるはずだ」
「格付け機関の信頼とは凄いのですね」
ちなみに株を買うときにも、格付け機関の評価は重要になる。日本人だとあまり見ている人間はいないかもしれないが、外国人投資家は結構見ている人が多い。もし企業の格付け信頼度に変動が生じれば、売りや買いへの流れが生まれる。
つまり儲けのきっかけとなるのだ。
例えば外資系投資銀行だと、企業の信頼度の格付けが低下した段階で、空売りという株価が下がれば下がるほど儲かる手段を取ることがある。
個人投資家でもこの信頼度は役に立つ。
この評価が高いと値崩れしにくいのだ。つまり中長期的な運用をするなら、評価が高い企業を買う方が良い。
値崩れしにくいのには理由がある。評価が高く信頼度が高いとは、つまり倒産する可能性が低いということである。
倒産するリスクが低いのだから、株価が安くなった段階で購入し、高くなるのをじっくり待つことができるのである。こういった思考をする投資家が多いため、株価が一定水準を下回るリスクが低い。つまり値崩れしにくいのである。
ちなみに日本企業で格付け機関の評価が高いのは、キヤノン、NTT、トヨタなどである。大企業だから信頼度が高いのは当たり前だという声があるかもしれないが、誰でも知っている世界的な有名企業でも格付け機関から最低評価を受けている場合もあるので、株を購入する場合は、一度チェックしてみるのも悪くないだろう。
「旦那様、誰かいますよ」
イーリスが指さす方向には赤髪の少女がいた。九本の尻尾を生やし、頭からは狐のような耳が生えている。顔はイーリスに比肩するほど整っている。きめ細かい肌は触るとさぞかし柔らかいに違いあるまい。
「魔人でしょうか?」
「だろうな。こんなところで何をしているんだろうな」
速度を緩めて様子を伺いながら車を走らせていると、少女が道路の真ん中に飛び出してきた。
急ブレーキを踏み、俺は車を停止させる。少女にぶつかることはなかった。
「危ないだろっ」
扉を開けて、外に出た俺は、少女へと駆け寄る。
「ワッチもこんなことはしたくなかったでありんす。しかしどうしても、お願いしたい頼みがあったでありんすよ」
「なんだそれは?」
俺の質問に回答する前に、少女が腹の虫を鳴らす。
「ワッチにご飯を恵んで欲しいでありんす」
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