金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第三章 ~『フォックス家の令嬢』~

「ワッチのご飯~、ワッチのご飯~、美味しい美味しいワッチのご飯~」

 

 

 

 少女が歌いながら、俺が飯を用意するのを待っている。美少女だから許されているが、ブスだと目も当てられない振る舞いだ。

 

 

 

「仕方ないな」

 

 

 

 俺は『空間魔法』を使い、次元に穴を開ける。穴に手を伸ばし、目的のモノを手探りで探す。

 

 

 

「見つけたっ」

 

 

 

 取り出したのは、皿に乗った肉厚のステーキだ。皿からは湯気が浮かんでいる。

 

 

 

「『空間魔法』、さすがは五大魔法なだけはある」

 

 

 

 『空間魔法』は敵の攻撃を防ぐだけでなく、次元の狭間に入れたモノを自由に出し入れできるマジックボックスとしても利用することができた。

 

 

 

 しかもこの魔法。次元の狭間に入れたモノの時間が経過しないのだ。つまり肉厚ステーキも焼きたてのまま取り出せるのである。

 

 

 

「いただくでありんすぅ」

 

 

 

 俺から奪い取るように皿を受け取った少女は、手づかみでステーキを口に放り込んだ。一口でぺろっと平らげた少女は皿を俺へと返す。

 

 

 

「おかわりでありんす」

 

「もうねえよ」

 

 

 

 ステーキは本来なら俺の昼飯だった。イーリスの分まではさすがにやれん。

 

 

 

「……頼みごとを断られたのは初めてでありんす」

 

「美少女は得だな」

 

 

 

 顔が良いからこそ許されるワガママだ。

 

 

 

「いや、待てよ」

 

 

 

 この世界では髪の色が美醜を決定するのだ。赤髪は美人なのだろうか。イーリスにこっそり聞いてみる。

 

 

 

「……恐ろしい容姿ですね」

 

「赤髪はブスだということか?」

 

「いえ、もっとシンプルに恐ろしいのです」

 

 

 

 イーリスから詳しく話を聞いてみると、赤髪は強面のようなものらしい。

 

 

 

 俺の世界の価値観で髪の色を表現する。

 

 

 

 銀髪はデュフデュフ笑う豚のような容姿で、赤髪は顔中サンマ傷のヤクザのような容姿なのだそうだ。

 

 

 

「赤髪の男性が好きな方は稀にいますが、赤髪の女性を好きな人は中々いませんからね」

 

 

 

 純度の濃い赤髪のこの少女は、この世界だとブスなわけだ。それなのに頼みごとを断られたことがない。

 

 

 

 つまりは皆、この少女の容姿が怖くて、頼みごとを断れなかったのだ。

 

 

 

「それにしても美味しい料理だったでありんす。一日ぶりのご飯は格別でありんす」

 

「一日ぶり?」

 

「ワッチはさっきまで誘拐されていたでありんす」

 

 

 

 俺には美少女に見えるが、この世界では強面の少女を誘拐する。随分と勇気ある誘拐犯だ。

 

 

 

「で、誘拐犯はどこに行ったんだ?」

 

「ワッチが誘拐犯ごと車を吹き飛ばしたでありんすから、今頃ボロボロになって気絶しているでありんすよ」

 

「随分と武闘派なんだな」

 

「母上の口癖が『欲しいモノは殴って手に入れろ』だったでありんす。おかげで、戦闘系ステータスへの課金は十分でありんすよ」

 

「それは頼もしい」

 

 

 

 余程ステータスが高いのだろう。俺は課金アプリで自信のほどを伺う。

 

 

 

――――――――――

 

名前:キルリス・ド・フォックス

 

評価:B

 

称号:九尾の狐

 

魔法:

 

・幽炎

 

スキル:

 

・妖術(ランクB)

 

能力値:

 

 【体力】:180

 

 【魔力】:400

 

 【速度】:210

 

 【攻撃】:200

 

 【防御】:190

 

拡張機能:

 

・唐沢への愛情(ランクF)

 

――――――――――

 

 

 

 評価はランクBである。イーリスと同じランクだ。珍しい魔法とスキルを保持しているので確認してみる。

 

 

 

『幽炎。消費した魔力の分だけ魔炎を生み出す特殊魔法。人やモノはもちろん、魔法ですら燃やせる。魔界十六貴族の一席であるフォックス家の当主だけが購入できる。他人に売却する場合は魔人でなければならない』

 

 

 

『妖術。体力を消費することで多種多様な奇跡を起こせる。スキルランクが上昇すると、使用できる妖術の種類が増える。課金することで誰でも手に入るが、魔界十六貴族の一席であるフォックス家の血を引く者以外が使用すると、消費体力が増加する』

 

 

 

「魔界十六貴族……」

 

「ワッチのことを知っていたでありんすね」

 

「まぁな……」

 

「けれどもワッチは実家と縁を切ったでありんすから、今はフォックス家のキルリスではなく、ただのキルリスでありんすよ」

 

 

 

 キルリスはそう言うが、縁は切れていないと考える者も多いはずだ。その証拠に彼女は誘拐された。わざわざ強面を誘拐する理由は、彼女が魔界十六貴族の血を引いているからだとしか考えられない。

 

 

 

 つまりだ。この状況はあまりよろしくない。貴族である彼女が誘拐されて、そのまま放っておかれるとは到底思えないからだ。

 

 

 

「キルリスっ!」

 

 

 

 若い男の声が聞こえた。嫌な予感がする。声がした方向を見ると、赤髪の男が掌に青い炎を浮かべていた。キルリスと違い尻尾は生えていないが、顔に彼女の面影がある。

 

 

 

「またこのパターンか」

 

 

 

 俺はため息を漏らすのだった。

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