金で買えないスキルはない ~『外資系投資銀行に勤める俺が、異世界転生して金の力でチートする』~   作:上下左右(じょうげさゆう)

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第三章 ~『キルリスの兄』~

俺はため息を漏らす。どうせデコピンで勝てる相手だが、雑魚だからこそ絡まれるとウザイ。

 

 

 

「この誘拐犯がっ」

 

 

 

 若い男が青い炎を俺へと飛ばす。それに対して『空間魔法』で次元の裂け目を生み出し、吸い込もうとする。

 

 

 

 だが炎は吸い込まれることはなかった。それどころか『空間魔法』の魔力を燃やし、さらに大きな炎となる。

 

 

 

「魔力を燃やすとはこういうことかっ」

 

 

 

 同時にこの魔法の弱点が分かった。この炎は魔法を焼いている間、その場で静止する。獲物を食い尽くすまで次の獲物を襲わないのだ。

 

 

 

 ならばと『炎弾』を飛ばす。大規模な魔力の弾丸だ。焼き尽くすまでは時間がかかるはずだ。

 

 

 

「どんなに強力な魔法でも、術者が倒れれば消えるだろ」

 

 

 

 俺は赤髪の男の背後に一瞬で移動する。音速に近い速度で動く俺を、男は確かに眼で追っていた。

 

 

 

「なんだぁ、てめえ!」

 

 

 

 赤髪の男は慌てて振り返る。俺の速度に付いてこれることに少し驚く。一応ステータスを確認しておく。

 

 

 

――――――――――

 

名前:シーザー・ド・フォックス

 

評価:B

 

称号:フォックス家の養子

 

魔法:

 

・幽炎

 

スキル:

 

・格闘術(ランクB)

 

能力値:

 

 【体力】:300

 

 【魔力】:230

 

 【速度】:400

 

 【攻撃】:250

 

 【防御】:230

 

拡張機能:

 

・唐沢への愛情(ランクG)

 

――――――――――

 

 

 

 キルリスと同じく評価Bで、スキルランクBの『格闘術』も習得している。

 

 

 

『格闘術。無手で戦うことで能力値に補正がかかる。スキルランクが高ければ高いほど補正値が高い』

 

 

 

 能力値は速度が頭一つ抜けて高い。速度の数値が高ければ高いほど、動体視力も高くなる。格闘術のスキル補正も合わさって、俺の速度を目で追うことができたのだろう。

 

 

 

「ただそれでもデコピンで十分だな」

 

「誘拐犯のくせに、喧嘩売ってるのかっ!」

 

 

 

 俺は男の顔をマジマジと見つめる。肌黒い顔に、燃えるような真っ赤な髪。顔はキルリスと同じく整っている。目つきは鷹のように鋭く、能力値がカンストしていなければ絶対に戦いたくない顔だ。

 

 

 

「年齢から察するにキルリスの兄か?」

 

 

 

 ステータスにはフォックス家の養子と書かれていた。血が繋がっていないにも関わらず二人の顔はどこか似ていた。

 

 

 

「兄だとしたらなんだっ」

 

「俺から説明しても信じないだろうし、面倒だから妹に事情を説明して貰え」

 

 

 

 俺はシーザーにデコピンを食らわせる。遥か彼方へと吹き飛んで、道路の上を転がっていく。死んではいないだろうが、意識は失ったはずだ。

 

 

 

 その証拠に『炎弾』を燃やしていた青い炎は消えていた。

 

 

 

「なぜ俺はこうも面倒事に巻き込まれやすいんだろうな」

 

 

 

 日頃の行いが悪いからか。そんなことないと信じたいが。

 

 

 

 気絶したシーザーを妹のキルリスに任せ、俺はこの場を後にする。この出会いが後々大きな事件をもたらすとは、この時の俺は予想すらしていなかった。




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